特許侵害訴訟ガイド:経営者・起業家のために

株式会社IPリッチのライセンス担当です。
本記事では、経営者・起業家の皆様に向けて特許侵害訴訟の手順と費用に関するガイドをお届けします。自社の特許が侵害された場合に取るべき法的手順や、その際に発生する費用の概要を分かりやすく解説します。特定の分野に限らず包括的な内容とし、日本国内での手続きを中心に、経営判断に役立つ知識をまとめました。
特許訴訟の基本概要
特許侵害訴訟とは、自社の特許権を侵害している相手に対し、権利の差止めや損害賠償を求めて起こす民事訴訟です。日本では特許侵害に関する訴訟は専門性の観点から、第一審は東京地方裁判所または大阪地方裁判所の知的財産専門部(知財部)で取り扱われます[3]。これは民事訴訟法の特別な規定に基づくもので、東日本の案件は東京地裁、西日本の案件は大阪地裁が管轄となる仕組みです[3]。訴訟では主に「特許権が侵害された事実があるか(侵害の有無)」と、侵害が認められた場合の「損害額」が争点となります。特許訴訟では技術的な専門知識が必要となるため、裁判所には技術に明るい裁判官や専門官(技術アドバイザー)が関与し、公平な判断が下されるよう配慮されています。加えて、被告(訴えられた側)は原告の特許権自体に無効理由があると主張(無効の抗弁)できる点も特許訴訟の特徴です。つまり、裁判所は特許権の有効性も含めて判断することになり、場合によっては特許が無効と判断されてしまうリスクもあります。このように、特許侵害訴訟は通常の商取引の訴訟とは異なる専門的な手順で進められるため、全体像を把握することが重要です。
特許侵害訴訟の手順
特許侵害訴訟に至るまでの手順を、時系列に沿って具体的に見ていきましょう。訴訟準備から判決に至る主な流れは以下のとおりです。
- 事前調査と警告: まず自社特許の権利範囲と相手の製品・サービスを比較し、本当に侵害に当たるかを慎重に調査します。また特許が有効で強固なものか(無効にされる欠陥がないか)も確認します[1]。侵害の確信が持てた場合、いきなり訴訟を提起する前に警告書を送付し、相手に特許侵害行為の中止やライセンス交渉を促すのが一般的です[1]。警告書(内容証明郵便など)によって相手に正式に通知することで、まずは任意の解決(製品の自主的な販売停止やライセンス契約締結等)を試みます。警告を受けた相手方は、応じなければならない法的義務はありませんが、これを無視すると将来の訴訟で悪質と判断される可能性もあります。したがって、警告を受けた側では自社製品が本当に特許を侵害しているか精査し、必要に応じて特許専門の弁護士や弁理士に相談することになります。
- 訴訟の提起(第一審): 警告や交渉でも解決しない場合、いよいよ裁判所に訴えを提起します。訴訟提起時には、訴状(原告の主張を記載した書面)や証拠を管轄の地方裁判所(前述のとおり東京または大阪の地裁知財部)に提出します。裁判所は訴状を受理すると形式面の審査を行い、被告に訴状副本を送達します[3]。被告は通常、初回の口頭弁論期日までに答弁書(反論を記載した書面)を提出し、特許権侵害を否認したり、特許の無効を主張したりします。こうして訴訟が正式に係属し、審理が開始されます。
- 審理の進行(口頭弁論と準備手続): 訴訟係属後、裁判所は第一回口頭弁論期日を指定し、原告・被告双方の主張立証活動が本格化します。特許訴訟では、原告は「①自分が有効な特許権を保有していること、②被告による特許発明の実施(製造や販売等)の事実、③それが特許権侵害に該当すること」を立証する必要があります。一方、被告は「特許発明を実施していない(非侵害)」といった主張や、「特許権に無効理由がある(無効の抗弁)」などを繰り広げます[1]。裁判所ではまず侵害の有無(侵害論)を集中的に審理し、ここで侵害が成立しないとの判断に至れば、その時点で原告の請求を棄却します(損害賠償の検討まで至らず訴訟終了)。侵害が認められる見込みの場合、続いて損害額の審理(損害論)に移ります[1]。この二段階の審理方式により、無用な争点に時間を割かず効率的に進める狙いがあります。審理の進行は、概ね1〜2か月に1回程度のペースで期日(口頭弁論または弁論準備手続)が開かれ、書面による主張反論と証拠提出が繰り返されます[3]。証人尋問や当事者尋問が行われることもありますが、技術的争点が中心の特許訴訟では書面と物的証拠による立証が主となり、尋問は多くありません。なお、原告が早期に侵害行為を止めたい場合は仮処分(差止の仮処分命令)を別途申し立てることも可能です。特許訴訟ではこの仮処分手続も本訴訟の裁判体(同じ裁判官グループ)が担当し、並行して審理が行われるため、迅速な救済が図られます[1]。被告は仮処分命令が出れば直ちに製品の販売差止め等を強いられるため、本訴と合わせて大きなプレッシャーとなるでしょう。
- 判決、和解と控訴: 双方の主張・証拠の提出が一通り出揃い審理が尽くされると、裁判所は判決を言い渡します。判決では、侵害が認められれば差止命令(製品の製造・販売停止)や損害賠償命令が出されます。また必要に応じて、侵害品やその製造設備の廃棄、謝罪広告等による信用回復措置なども命じられ得ます[3]。一方、侵害が認められなかった場合や特許が無効と判断された場合には原告の請求は棄却されます。特許訴訟の判決に不服がある側(敗訴側)は、高等裁判所(知的財産高等裁判所)に控訴することができます。知的財産高裁は知財専門の高等裁判所で、東京に設置され全国の知財事件控訴を扱います。控訴審でも事実認定や法律判断が行われ、最終的には判決が確定します(さらに上告して最高裁判所で争われるケースもごく稀にあります)。もっとも、多くの特許訴訟案件では判決に至る前に当事者間で和解が成立することも少なくありません[1]。和解とは双方が譲歩し争いを終わらせる合意であり、裁判所がそのタイミングで仲介に入ることもあります[3]。特許訴訟では損害額の算定が難航したり、企業秘密である売上データの開示を避けたい事情もあるため、判決より和解で解決する方がお互いにメリットが大きい場合も多いのです。
以上が特許侵害訴訟の基本的な手順の流れです。ケースによって細かな手続きの追加や省略があり得ますが、経営者・起業家の方々はこの一連のプロセスを把握した上で、自社の方針を検討する必要があります。
特許侵害訴訟にかかる費用
特許訴訟を起こす場合、費用の面も経営判断において重要な要素です。ここでは特許侵害訴訟に関連して発生する主な費用項目とその概要を説明します。
- 裁判所への手数料(訴訟費用): 訴えを提起する際には、請求金額に応じた収入印紙代を裁判所に納める必要があります。例えば、数百万円程度の損害賠償請求であれば数万円規模、数億円規模の請求では数十万円以上の印紙代が必要になります。これらの裁判所に支払う費用や、証人の日当・鑑定料など訴訟手続に直接要した費用は、最終的に敗訴した側の負担となるのが原則です[2]。つまり、勝訴した側(特許権者が勝った場合)は、これら訴訟費用を相手方に請求できます。ただし訴訟費用には弁護士報酬は含まれない点に注意が必要です[2]。
- 弁護士費用: 特許訴訟を専門とする弁護士に依頼する費用です。一般に着手金(依頼時に支払う費用)と報酬金(成果に応じて支払う成功報酬)、あるいは時間単価によるタイムチャージ制などで支払うことになります。金額はケースバイケースですが、技術的専門性と長期の審理を要する特許訴訟では費用総額が高額になりやすく、少なくとも数百万円単位の支出を見込む必要があります。訴訟の難易度や請求額が大きくなるほど費用も上昇し、大企業同士の特許紛争では数千万円規模に及ぶこともあります。日本の裁判では、勝訴しても原則として弁護士費用は自己負担(自分で負担)となります[2]。例外的に、相手の不法行為に基づく損害賠償請求訴訟では判決で弁護士費用相当額の一部(一般には損害額の1割程度)を賠償に上乗せして認めてもらえる場合があります。特許侵害訴訟も不法行為に基づく請求に当たるため、勝訴すれば判決で一定割合の弁護士費用が損害賠償額に含まれることがあります。しかし、それでも実費全額が補填されるわけではないため、仮に勝っても弁護士費用の大部分は回収できない点を織り込んでおく必要があります[2]。
- その他の費用: 上記の他にも、特許技術に詳しい弁理士や技術コンサルタントへの依頼費用、証拠収集のための調査費用、裁判所に提出する証拠の翻訳費用(国際訴訟の場合)などが発生することがあります。自社社員が専門家として技術説明をサポートする場合でも、その人件費や時間的コストがかかります。また、訴訟中は経営陣や担当者が打合せや証拠対応に時間を取られるため、経機会費用(本来他の業務に充てられたはずの時間やリソースの損失)も見逃せません。さらに、第一審で敗訴し控訴審まで争う場合は、追加の弁護士費用や印紙代が発生し、紛争が長引くほど費用負担は増大します。
以上のように、特許訴訟には多岐にわたる費用が伴います。訴訟提起前に費用対効果を冷静に検討し、見積もりを立てておくことが大切です。
特許侵害訴訟の手順及び費用に関する戦略的な考慮点
経営者・起業家の方は、特許訴訟の手順と費用を踏まえて戦略的な意思決定を行う必要があります。ここでは、特許侵害紛争に臨むにあたって考慮すべきポイントや代替策を解説します。
- 訴訟のメリット・デメリット評価: 特許訴訟を起こす最大のメリットは、違反者に製品・サービスの提供停止を強制でき(差止)、損害賠償を得られる可能性があることです。自社の独自技術を守り、市場シェアやブランド価値を維持する上で必要な場合、法的措置は有力な選択肢となります。しかしデメリットとして、費用負担が大きいことや、時間がかかること、そして何より特許権自体の有効性が争われるリスクがあります。もし裁判で特許無効の判断が確定してしまうと、その特許権は最初から無かったことになり、自社の重要な知的財産を失う結果となります。したがって、訴訟に踏み切る前に特許の安定性(無効理由の有無)について専門家に十分検討してもらうことが重要です[1]。場合によっては訴訟より前に特許のクレーム範囲を見直す(分割出願や権利調整)ことや、改良特許の出願など防御策を講じることも検討されます。
- 被告(相手方)になった場合の対応: 万一、自社が他社から「特許侵害だ」と警告を受けたり訴えられたりした場合の対応も重要です。まずは落ち着いて、自社製品・サービスと相手の特許の内容を突き合わせ、本当に侵害に該当するかを専門家とともに検証します。他社特許の権利範囲から逸脱できる設計変更の可能性がないか検討することも有効です。また、防御策として特許無効審判の請求も視野に入れます。特許無効審判とは、特許庁に対して当該特許を無効にするよう求める手続で、訴訟とは別ルートで特許の有効性を争える制度です。被告の立場では、裁判所で無効の抗弁を主張すると同時に、特許庁に無効審判を仕掛けることで二方面から特許を攻撃し、相手の権利行使を封じる戦略が取られることがあります。実際、侵害訴訟係属中に特許庁で特許が無効と判断されれば、訴訟は原告敗訴(請求棄却)となります。したがって他社から訴えられた場合でも、慌てずに特許の無効化や非侵害を主張できる材料を収集し、適切に反論していくことが大切です。必要に応じて和解交渉も検討しましょう。訴訟外でのライセンス契約締結や和解金の支払いにより、早期に紛争を終結させた方が費用・リスク面で有利なケースも多いためです。
- 和解・ライセンスによる解決: 特許紛争は何も最後まで戦い抜いて白黒つけることだけが解決ではありません。上記のように和解は一般的な解決手段であり、訴訟コストやリスクを抑えることができます。和解条件としては、相手による実施継続を許諾してライセンス契約を結びロイヤルティを受け取る、侵害期間に対する一定の和解金を支払わせる、あるいは今後の取引関係に関する合意を結ぶなど、柔軟な解決策が考えられます。ビジネス上のパートナーになり得る相手であれば、訴訟ではなく交渉によってWin-Winの関係を築く方が望ましい場合もあるでしょう。特に中小企業・スタートアップの場合、巨額の訴訟費用をかけて得られるリターンが見合わないこともあります。知財保険への加入や公的支援策の活用も選択肢です。例えば、中小企業向けに弁護士費用を補償する知財保険商品が提供されており、予期せぬ特許訴訟のリスクに備えることができます(海外での知財訴訟費用を補助する政府支援策なども存在します)。訴訟リスクを保険でカバーすることで、万一の紛争時にも費用面の不安を軽減できます。
- 知的財産の有効活用とPatentRevenueの活用: 特許侵害訴訟は知的財産権を守る重要な手段ですが、攻めの戦略だけでなく守りや活用の戦略も考える必要があります。もし自社ではその特許を積極的に活用できていない場合や、訴訟に踏み切るリソースが不足している場合には、特許の売却やライセンス供与によって他社に活用してもらうことも一つの戦略です。自社で権利行使せずとも、信頼できる相手に特許をライセンスすればロイヤルティ収入を得られますし、特許を売却すれば一時金収入を得て訴訟リスクから離脱できます。近年では特許の流動性を高める取り組みも進んでおり、特許の売買・ライセンス仲介を専門に行うプラットフォームを活用する企業も増えています。例えば、特許売買・ライセンスプラットフォーム「PatentRevenue」(https://patent-revenue.iprich.jp)に自社の特許を登録することで、潜在的なライセンシー(実施権許諾先)や買い手となる企業を募ることができます。特許を必要とする企業とのマッチングが図れれば、訴訟で争うよりもスピーディーに対価を得ることが可能です。自社の特許を収益源に変えるこのような選択肢も視野に入れ、知財戦略を総合的に検討すると良いでしょう。訴訟による強行手段とライセンス交渉による友好的解決策のいずれにも対応できるよう準備しておくことが、経営上のリスクヘッジとなります。
まとめ
特許侵害訴訟の手順と費用について、経営者・起業家の視点から概観しました。ポイントを整理すると以下のとおりです。
- 特許侵害訴訟は東京・大阪の専門裁判所で扱われ、侵害の有無と損害賠償を中心に審理が進む(技術的争点が重要)。
- 訴訟を起こす前に警告や交渉による解決を試みることが一般的で、訴訟では侵害論→損害論の二段階で審理される。和解による早期解決も多い。
- 費用面では裁判所費用は敗訴側負担だが弁護士費用は原則自己負担となり、高額になり得るため事前に費用対効果を検討する必要がある。
- 特許が無効化されてしまうリスクや、訴訟に要する期間(1~2年程度)の事業影響も考慮し、訴訟を含む知財戦略全体を立案する。
- 交渉によるライセンスや和解、特許の売却など代替策も検討し、自社にとって最善の解決策を選択することが肝要である。
自社の大切な発明を守りつつ事業成長につなげるため、以上の点を踏まえて戦略を練ってください。特許侵害に直面した際は、信頼できる専門家の助言を仰ぎながら、法的手段とビジネス上の解決策の双方を駆使して最適な判断を下すことが求められます。最後に、自社で活用しきれていない特許については、特許売買・ライセンスプラットフォーム「PatentRevenue」への登録もぜひご検討ください。「PatentRevenue」(https://patent-revenue.iprich.jp)を活用することで、貴社の特許を必要とする企業とのマッチングが可能となり、ライセンスや売却による収益化を図ることができます。知的財産を最大限に活かし、貴社の事業発展に繋げていきましょう。
(この記事はAIを用いて作成しています。)
参考文献
- 髙﨑法律事務所『特許侵害訴訟|具体的な流れや必要な事前準備など』
https://itip-law.com/tokkyo/%E7%89%B9%E8%A8%B1%E4%BE%B5%E5%AE%B3%E8%A8%B4%E8%A8%9F%EF%BD%9C%E5%85%B7%E4%BD%93%E7%9A%84%E3%81%AA%E6%B5%81%E3%82%8C%E3%82%84%E5%BF%85%E8%A6%81%E3%81%AA%E4%BA%8B%E5%89%8D%E6%BA%96%E5%82%99%E3%81%AA/髙崎法律事務所 - ミスター弁護士保険『裁判費用や弁護士費用は相手に請求できる?→訴訟費用は請求できるが、弁護士費用は限定的』
https://mikata-ins.co.jp/lab/legal/063023 ミカタ保険 - 弁護士法人クラフトマン『特許侵害裁判~特許侵害訴訟の概要・流れ』
https://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/tokkyo/index/soshou_nagare/ ishioroshi.com

