特許取引で失敗しないためのアドバイス10選

株式会社IPリッチのライセンス担当です。

経営者や起業家にとって、特許の売買やライセンス取引は自社の技術を活用して事業を発展させる有効な手段です。しかし、その過程では思わぬ失敗やトラブルが生じることもあります。本記事では、特許取引のプロの視点から、過去の失敗事例とその教訓を踏まえ、失敗を防ぐためのポイントを10項目にまとめ、具体例とともに分かりやすく解説します。

目次

特許取引で失敗しないためのポイント1:秘密情報はNDAで確実に保護

特許の売買やライセンス交渉に入る前に、必ず秘密保持契約(NDA)を締結し、機密情報の管理を徹底しましょう。契約を結んだだけで安心してしまい、情報提供時の注意を怠ると重大なトラブルにつながります。実際、製品サンプルに「秘密」と明示しないまま提供してしまったために、相手企業に解析・流用され取引が白紙になったケースもあります【1】。NDAでは「第三者に情報を漏らさない」義務だけでなく、「定められた目的以外に情報を使わない」義務(目的外使用禁止)も規定するのが一般的です【1】。契約で決めた手順(例:資料に秘密である旨の表示)を守り、重要な情報は提供日時や相手先を台帳に記録するなど証拠も残すようにしましょう【1】。

特許取引で失敗しないためのポイント2:取引相手の信用と意図を見極める

特許取引では、相手先の信頼性や意図を見抜くことも重要です。どんなに魅力的な提案でも、相手企業が信用できなかったり契約履行能力に欠けていたりすれば、約束違反や情報漏えいなどのリスクがあります。提携先を選ぶ際は、過去の実績や財務状況、知的財産の取り扱いに問題がなかったかを下調べしましょう。契約前の打ち合わせ段階で、相手の情報管理体制やコンプライアンス意識をそれとなく確認し、開示する情報の範囲を見極めることも有効です【1】。また、自社の重要な特許をライバル企業に譲渡・実施許諾する場合、その企業が特許を実際に活用するのか、それとも競合排除のために眠らせてしまうのかも考慮する必要があります。共同研究の成果特許について共同出願や共有を求められた場合も、安易に応じると自社単独での権利行使が難しくなるため注意が必要です。相手の要求に違和感があるときや交渉力に自信がないときは、後述する専門家の助言を仰ぎましょう。

特許取引で失敗しないためのポイント3:特許の権利状況を徹底的に確認

取引の対象となる特許の内容や権利状況を事前に調査せずに契約すると、「思っていたものと違う」「使えない特許だった」といった致命的な失敗につながりかねません。契約締結前に以下の点を必ず確認しましょう【2】。

  • 権利の有効性:特許が正式に登録され有効か(存続期間満了や年金未納による権利消滅がないか)。特許公報や特許原簿で現在の権利者も確認します。
  • 権利の範囲:特許請求の範囲(クレーム)の内容を把握し、自社の事業に関連する技術を適切にカバーしているか。必要に応じて弁理士に分析を依頼します。
  • 紛争の有無:その特許に対して異議申立てや無効審判、訴訟など争いが起きていないか。過去に争われた経緯がある場合、その結果と影響を確認します。
  • 既存の権利関係:特許が共有名義になっていないか、譲渡禁止の担保権が設定されていないか【2】。また、すでに他社に実施許諾(ライセンス)されている場合、その内容(独占的か否か、地域や期間)を把握します【2】。

こうしたデューデリジェンス(権利の精査)を徹底することで、取引対象の特許に潜むリスクを事前に洗い出し、契約書に適切な条項を盛り込むことができます【2】。

特許取引で失敗しないためのポイント4:特許の価値と事業への貢献度を見極める

特許の取引額やロイヤリティを決める際には、その特許が生み出す価値を客観的に評価することが欠かせません。適正な評価を怠ると、買い手側は高額な対価に見合う利益を得られず損をしたり、売り手側は本当はもっと価値のある特許を安値で手放して後悔したりする恐れがあります。そうならないために、特許の技術的優位性や市場ニーズ、自社製品への寄与度を慎重に見定めましょう。例えば、その特許によって実現できる製品やサービスの市場規模、競合技術の存在、有効期間中に見込める収益などを総合的に検討します。必要に応じて知的財産の評価に詳しい専門家に相談し、適切な見積もりを取得することも有効です。特許の価値は事業戦略との相性によって大きく変わります。自社で活用しきれない特許であれば思い切って売却・ライセンスして資金化し、逆に競争上重要な特許であれば多少コストがかかっても確保する、といった判断を経営戦略の中で位置付けることが重要です。

特許取引で失敗しないためのポイント5:契約範囲・権利範囲を明確に定める

契約書では、特許の権利範囲および契約上の利用範囲を明確に定義しておきましょう。曖昧なままでは、後になって「ここまでは許可したつもりではなかった」「この地域も対象だと思っていた」といった食い違いから紛争に発展しかねません。実施許諾(ライセンス)契約であれば、許諾する特許の番号と名称許諾範囲(地域・用途・期間)独占的か非独占的か(専用実施権か通常実施権か)をきちんと定めます。例えば「日本国内の〇〇用途に限り、期間〇〇年で独占的に実施許諾する」といった具合です。また、サブライセンス権(再許諾権)の扱いや、契約の有効期間・更新条件、契約終了後の取り決め(在庫品の処分猶予期間など)も忘れずに盛り込みます。こうした条件を明確にしないまま契約してしまうと、知らぬ間に海外で権利範囲外の実施をされてしまったり、契約終了後に特許の利用停止を巡って揉めたりする可能性があります。実際に、ライセンス契約の効力開始日が過去に遡る形で定められていたのに条文を精査せず署名してしまい、想定外の過去期間についてまでロイヤルティ支払い義務を負ってしまったケースや【4】、契約した特許の内容をよく把握しないまま契約を結んでしまう企業も報告されています【4】。契約範囲の取り決めは専門的で難しい部分も多いため、曖昧さを残さず、必要に応じて専門家のチェックを受けるようにしましょう。

特許取引で失敗しないためのポイント6:適切な対価設定と支払い条件の取り決め

特許取引における金銭面の取り決めも、非常に重要なポイントです。とりわけライセンス契約では、ロイヤルティ(金銭的対価)の金額や料率だけでなく、算定方法支払い条件を明確に定義することが不可欠です。売上高に対する〇%という設定であれば、売上の定義(税抜価格か、返品や値引きを除くか等)を合意し、支払期限や頻度(四半期ごとなど)、支払い通貨や方法も定めます。必要であれば監査権を契約に盛り込み、ライセンシー(実施者)が正しく報告しているか検証できるようにします。一方、特許の譲渡(売買)の場合は、一括払いか分割払いか、支払いのタイミングと同時に権利移転の手続きが完了するよう条件を設定しましょう。代金の一部をエスクロー(第三者預託)にするなど、安全に支払・権利移転が行える工夫も検討します。金銭条件を疎かにすると、後から「計算方法が違う」「支払いが遅れた」などでもめて、せっかくの契約が台無しになりかねません。実際、ある調査ではライセンス契約全体の約6.8%で紛争が発生しており、その主な原因としてロイヤルティ算定基準や実施料の支払い方法を巡るトラブルが多数を占めました【3】。契約段階で将来のトラブルの芽を摘み、双方が納得できる明確な条件を定めておきましょう。

特許取引で失敗しないためのポイント7:特許の保証範囲と既存の権利関係を明確に

契約において特許の権利保証をどこまで行うかも、重要な検討事項です。売り手・ライセンサーの立場からは、提供する特許に関して自らが正当な権利者であることや、契約履行に支障となる制限がないことを示す必要があります。一方、買い手・ライセンシーの立場では、その特許を安心して使えるよう、できる限り広範な保証や情報開示を求めるべきです。具体的には、特許権者が契約締結の権限を有していること特許が有効に存続していること契約で明示したもの以外にその特許に既存のライセンスが存在しないことなどを、契約書上で表明保証してもらうのが望ましいでしょう【2】。特に既存のライセンスに関しては、後から予期せぬ使用権者が現れて権利行使に支障が出る事態を避けるため、売り手に対し契約時点で第三者への許諾を行っていないことの保証を求めることが重要です【2】。また、特許に瑕疵がないか(無効理由となり得る既知の先行技術がないか、権利範囲に不備がないか)、他社権利を侵害していないか、といった点についても可能な限り確認・保証範囲の取り決めを行います。ただし実際には、特許権者が特許の有効性や他社非侵害について無制限の保証責任を負うことは少なく、契約上「本件特許権が第三者の権利を侵害していないことについてライセンサーは保証しない」といった条項が置かれるのが一般的です。そのため、ライセンシー側としては、万一特許が無効化された場合や第三者から権利主張された場合の対応(契約解除や損害賠償請求の可否など)について契約で取り決めておくか、自社で他社特許の調査(フリーダム・トゥ・オペレート調査)を行ってリスクヘッジする必要があります。なお、特許庁の調査によれば、ライセンス契約に起因する紛争原因の中で**「特許の保証」に関連するものが最も多かった**と報告されています【3】。契約時には、特許の権利状態や問題点について双方で十分に情報共有し、認識齟齬のないようにしましょう。

特許取引で失敗しないためのポイント8:改良発明・特許紛争リスクへの備え

契約時には、取引後の技術的な変化や特許紛争のリスクに備えておくことも大切です。ライセンス契約では、改良発明(改良技術)の取扱いを事前に取り決めておきましょう。ライセンシーが特許発明を改良して新たな特許を取得した場合、その特許(改良発明)の権利帰属や利用権について決めておかないと、後に権利関係でもめる恐れがあります。例えば「改良発明の権利は改良した側に帰属するが、ライセンサーにも無償実施権を許諾する」「改良発明も本契約のライセンス範囲に含める」等、双方の貢献度や事業上の利害に応じて取り決めます。また、契約中および契約終了後の特許に関する紛争対応についても備えが必要です。特許実施中に第三者から侵害クレームを受けた場合の対応や、第三者による無断実施を発見した場合の措置(誰が差止請求や訴訟を行うか)などをあらかじめ決めておくと安心です。さらに、ライセンス契約では不争義務(契約期間中はライセンサーの特許を無効主張しない約束)を求められることがありますが、安易に合意すると仮に特許が無効理由のあるケースでも対抗できなくなります。実際、ライセンス契約における不争義務違反や改良発明の権利帰属を巡る紛争も発生しており【3】、条項の意味を正しく理解した上で交渉に臨むことが重要です。以上のような将来起こり得る事態を想定し、契約書に必要な条項を盛り込んでおけば、予期せぬトラブルを未然に防ぐことができます。

特許取引で失敗しないためのポイント9:契約後の手続と権利管理を怠らない

契約締結後は、速やかに必要な手続きを完了し、その後も権利の管理を適切に行いましょう。特許の譲渡契約の場合、特許庁への移転登録申請を忘れずに行います。日本の特許法では、譲渡の登録をしなければ第三者に対抗できず権利移転の効力が生じません(特許法第98条)【2】。契約書の締結と代金の支払いだけで満足せず、必ず権利者変更の登録まで完了させてください。これは共有特許の場合や事業承継の場合でも同様で、必要な手続きを怠ると後々の紛争の火種となります【2】。ライセンス契約の場合でも、専用実施権を設定した際は特許庁への登録が推奨されます。いずれの場合も、契約後に取り決めた権利移転や実施許諾の内容が公的記録に反映されていることを確認しましょう。

契約後の権利管理では、まず特許年金(維持年費)の支払いを継続することが基本です。譲受人(買い手)になった場合は自社で支払いを引き継ぎ、ライセンス契約では契約で定めた負担区分に従い、漏れなく維持費用を納付します。年金未納で特許が失効すれば権利そのものが消滅し、事業計画が崩壊しかねません。また、契約遵守のモニタリングも欠かせません。ライセンサーであればライセンシーが契約範囲外の用途・地域で特許を実施していないか、ライセンシーであればライセンサーが契約上許されない二重ライセンスを行っていないか、といった点に注意します。定期的な報告や必要に応じた監査を通じて、合意事項が守られていることを確認しましょう。さらに、第三者による特許侵害の発見時の対応も含め、権利行使について契約当事者間で協力体制を築いておくことが望ましいです。契約後もこのように権利を適切に管理し、契約内容を履行し続けることで、初めて特許取引を安全かつ有意義に活用することができます。

特許取引で失敗しないためのポイント10:知財の専門家の知見を積極的に活用

最後に、特許取引の各局面で知的財産の専門家を積極的に活用することを強くおすすめします。特許の売買・ライセンス契約には法律や技術の高度な知識が要求され、一見問題なく思える契約条件にも思わぬ落とし穴が潜んでいることがあります。実際、契約条項のわずかな不備が巨額の訴訟トラブルに発展しかねないと指摘されており、交渉力や経験で劣る中小企業は特に慎重な対応が必要だとされています【4】。特許取引のプロである弁護士・弁理士に依頼すれば、契約書のレビューや修正はもちろん、事前の特許調査や価値評価、クロージング手続きまで幅広くサポートを受けることができます。実際に契約を交わす際には、専門家の意見を仰ぎながら進めるだけでもリスクは大幅に低減します【1】。知財の専門家やコンサルタントに相談することは決して大袈裟ではなく、将来の高い授業料(失敗コスト)を払わないための賢明な投資と言えるでしょう。また、公的機関や各都道府県の窓口でも、中小企業向けに知財取引の無料相談や契約書チェック支援を行っています。例えば日本貿易振興機構(ジェトロ)では中小企業のライセンス契約における交渉戦略や紛争対応の相談事業を実施しています【4】。自社だけで悩まず、外部の知見も取り入れて進めることで、特許取引の成功確率は格段に高まります。

まとめ

特許の売買やライセンスといった特許取引は、自社の知的財産を事業に役立てる絶好の機会ですが、その一方で多くの落とし穴も存在します。本記事では特許取引のプロの視点から、失敗しないための10のポイントをご紹介しました。事前準備から契約締結、契約後のフォローまで、一連のプロセスで注意すべき点を網羅しています。これらの教訓を活かし、慎重かつ計画的に特許取引に臨むことで、思わぬ損失やトラブルを未然に防ぎ、貴重な特許を最大限に活用できるでしょう。特許取引を円滑に進めて、ぜひ自社のイノベーションと事業成長に役立ててください。

なお、特許売買・ライセンスプラットフォーム「PatentRevenue」(https://patent-revenue.iprich.jp)では、特許を無料で登録することが可能です。自社で活用しきれていない特許をお持ちの方は、ぜひPatentRevenueを活用して、新たなビジネスチャンスに繋げてみてください。

(この記事はAIを用いて作成しています。)

参考文献

  1. 日本貿易振興機構(ジェトロ)『サムスンも避けて通れなかった「ライセンス紛争」…中小企業は存亡の危機に』 – https://www.jetro.go.jp/world/asia/kr/ip/ipnews/2014/63bacbcbbae6bd49.html

2. 特許庁『知財を使った企業連携4つのポイント』(経済産業省) – https://www.meti.go.jp/publication/pdf/pamph_kigyorenkei.pdf

3. Business Lawyers『特許権の譲渡に関する留意点(特許権譲渡契約)』2018年4月17日 – https://www.businesslawyers.jp/practices/831

4. 日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所『知的財産紛争の現況についての調査研究(韓国国内特許ライセンス実態調査)』2017年12月 – https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/kr/ip/gov/movement/201810-1.pdf

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