【徹底解説】どこに付けるかで権利が生まれる「位置商標」 – セイコーマート、サンディスク、ドクターマーチンの事例から学ぶ知財戦略

株式会社IPリッチのライセンス担当です。本記事では、2015年の商標法改正により新たに導入された「位置商標」について、その定義から具体的な登録事例、さらには登録が認められなかった裁判例までを詳細に解説します。商品や建物の「決まった位置」に付されたデザインがどのようにブランド価値を形成し、法的に保護されるのか。セイコーマートやサンディスク、ドクターマーチンといった具体的な企業の戦略を紐解きながら、皆様の知財活動に役立つ情報を提供いたします。

近年、企業の経営戦略において「知財の収益化」は喫緊の課題となっています。保有する知的財産権を単なる防衛ツールとして眠らせておくのではなく、積極的にライセンスアウトを行ったり、ブランド価値の向上を通じて製品単価に転嫁したりすることで、事業収益に直結させる視点が不可欠です。位置商標のような新しい類型の商標権を取得することも、他社製品との明確な差別化を図り、ライセンス交渉における優位性を確保するための強力な武器となり得ます。こうした知財活用や、キャリアアップを目指す知財人材の方々には、知財専門の求人・案件情報サイト「PatentRevenue」への登録をお勧めします。高単価な副業案件やハイクラス求人が豊富に掲載されており、無料で登録が可能です。ぜひ以下のURLから、新たなキャリアの可能性を探ってみてください。 https://patent-revenue.iprich.jp/recruite/

目次

位置商標の定義とビジネスにおける重要性

「位置商標」とは、図形や文字などの標章を、商品等の「特定の位置」に付すことによって構成される商標を指します。従来、商標といえばロゴマークやネーミングそのものを保護するものでしたが、2015年(平成27年)4月1日の改正商標法施行により、日本でもこの位置商標が登録可能となりました。これは、色彩のみからなる商標や音商標などと共に導入された「新しいタイプの商標」の一つです。

特許庁の審査基準において、位置商標は「文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合からなる商標であって、その商標を商品又は役務の提供の用に供する物等に付する位置によって特定されるもの」と定義されています 。出願の際には、願書に「位置商標」であることを記載し、商標登録を受けようとする商標を実線で描き、その他の商品の形状などを破線で描くことで、標章自体とその付される位置関係を明確にする必要があります。

位置商標が保護される背景には、消費者が商品を選択する際、ロゴそのものの形状だけでなく、「そのロゴがどこに付いているか」という配置そのものをブランドの識別標識として認識している実態があります。例えば、スポーツシューズの側面に入ったラインや、ジーンズのポケットに施されたステッチなどは、その形状だけでなく「配置場所」が決まっているからこそ、遠目に見てもどこのブランドか認識できるのです。

しかし、位置商標の登録は容易ではありません。単にデザインを配置しただけでは、「商品の装飾」や「機能的な構成」とみなされやすく、自他商品を識別する機能(識別力)がないと判断されるケースが多いからです。そのため、登録を受けるには、その位置に付された標章が長年の使用によって需要者に広く認識されていること(使用による識別力の獲得、商標法第3条第2項)を証明する必要がある場合が少なくありません。

地域に根付いたセイコーマートの看板と位置商標

北海道を中心に展開するコンビニエンスストア「セイコーマート」は、位置商標の概念を理解する上で非常に示唆に富む事例の一つです。株式会社セコマは、店舗の看板デザインやロゴの配置に関して強力なブランド戦略を展開しています。

一般的に、コンビニエンスストアのようなチェーン展開するビジネスにおいて、店舗の外観(トレードドレス)は極めて重要なブランド資産です。消費者は遠くから店舗を見た際、看板の色やロゴの配置パターンを見て、瞬時に「あそこにセイコーマートがある」と認識します。セイコーマートの場合、オレンジ色を基調としたカラーリングや、フェニックス(不死鳥)のシンボルマークが店舗ファサードの特定の位置に掲げられることが多く、これが強力な顧客誘引力を発揮しています。

位置商標制度が導入される以前は、こうした店舗外観の特徴を保護するためには、看板そのものの平面的な商標登録や、不正競争防止法による保護に頼らざるを得ませんでした。しかし、位置商標の導入により、「建物の特定の位置(例えば軒先部分の中央など)に、特定の標章を配置する」という構成自体を商標として保護する道が開かれました。

セイコーマートのような小売業にとって、位置商標を活用する最大のメリットは、模倣店舗への対策強化です。もし競合他社が、ロゴのデザイン自体は微妙に変えていても、配置場所や配色バランスを酷似させた店舗を出店した場合、消費者は混同を起こす可能性があります。位置商標として「配置」そのものを権利化しておくことで、ロゴの非類似性だけを盾に取られることなく、「配置の類似性」も含めた多角的な権利行使が可能となり、ブランドの景観を守ることができるのです。

サンディスクに見るデジタル製品と位置商標の戦略

デジタル機器や記録メディアの分野でも、位置商標の活用は見られます。フラッシュメモリー製品で世界的なシェアを持つサンディスク(現在はウエスタンデジタル傘下)の事例を見てみましょう。

メモリカード(SDカードやコンパクトフラッシュなど)のような小型の工業製品は、国際的な規格によってサイズや形状が厳密に決まっているため、製品自体の形状で他社と差別化することは困難です。しかし、サンディスクは製品ラベルのデザインにおいて、特定の位置に配置された赤色の帯やロゴのレイアウトなどを通じて、強力なブランドアイデンティティを確立してきました。

特許庁の資料等で紹介される一般的な位置商標の出願例として、「包丁の柄の部分」や「ゴルフクラブのベルト部分」などが挙げられますが、電子部品においても同様の考え方が適用されます 。サンディスクのメモリカードに見られるように、「カードの下部に赤いラインが入っている」といった視覚的特徴は、消費者に対して「これはサンディスクの製品である」という安心感や信頼感を想起させる機能を果たします。

位置商標の出願においては、願書の「商標の詳細な説明」欄の記載が重要となります。例えば「商標登録を受けようとする商標は、標章を付する位置が特定された位置商標であり、〇〇の〇〇部分に付された色彩及び図形からなる」といった形で、どの部分が権利範囲であるかを厳密に定義します 。この際、製品の形状(メモリカードの長方形など)は破線で描かれ、権利範囲には含まれませんが、その形状の「どの位置」に「どのようなデザイン」があるかという組み合わせが保護対象となります。

デジタル製品は模倣品が出回りやすい市場ですが、位置商標を取得しておくことで、ロゴを微妙に変えただけの模倣品や、パッケージや製品ラベルの雰囲気を似せたコピー商品に対して、デザインの配置という観点から権利主張できる可能性があります。これは、技術特許だけではカバーしきれない「見た目の誤認混同」を防ぐための重要な防衛策となります。

ドクターマーチンの黄色ステッチに見る識別力の壁と司法判断

位置商標の登録がいかに難しいか、そのハードルの高さを学ぶ上で、最も示唆に富むのが「ドクターマーチン(Dr. Martens)」の事例です。イギリスの著名な靴ブランドであるドクターマーチンは、その象徴である「ブーツのウェルト(底と甲を縫い合わせる部分)に施された黄色のステッチ」について、日本で位置商標の登録を目指しました。

ドクターマーチン・インターナショナル・トレーディング・リミテッドは、指定商品を「第25類 革靴、ブーツ」とし、商品の外周縁に沿って施された黄色の縫い目(ステッチ)を位置商標として出願しました。しかし、特許庁はこれを拒絶。不服とした同社は知財高裁に訴え出ましたが、令和5年(2023年)に出された判決でも、特許庁の判断を支持し、登録は認められませんでした 。

この判決の最大の争点は、商標法第3条第2項における「使用による識別力(特別顕著性)」の有無でした。通常、商品の形状や模様の一部は、機能的な補強や単なる装飾と見なされ、識別力がないと判断されます(同法第3条第1項)。例外的に登録が認められるには、長期間の使用や宣伝広告により、需要者が「この黄色いステッチを見ればドクターマーチンだと分かる」という状態に至っていることを証明しなければなりません。

ドクターマーチン側は、長年の販売実績や、黄色いステッチがブランドのアイコンとして認知されていることを示すアンケート調査の結果を証拠として提出しました。しかし、裁判所は以下の理由から識別力の獲得を否定しました。

第一に、靴のウェルト部分にステッチを施すこと自体は、靴の製法として一般的であり、黄色以外のステッチを用いた他社製品も多数存在することから、ステッチ自体は装飾や機能の一部と認識されやすいとされました。

第二に、提出されたアンケート調査の手法に関する問題点です。原告が行ったアンケートでは、回答者に対して「黒い革靴に黄色いステッチ」が施された画像を見せていました。裁判所は、出願された商標が「色の限定(靴本体の色)」を含んでいない点に着目しました。出願内容では靴本体の色は破線で示されており、特定されていません。つまり、この位置商標が登録されれば、黒いブーツだけでなく、赤いブーツや白いブーツに黄色いステッチを施したものにも権利が及ぶことになります。

しかし、アンケート結果や市場の実態を見ると、消費者がドクターマーチンだと認識するのは主に「黒いブーツ+黄色いステッチ」の組み合わせの場合に限られていました。裁判所は、「黒いブーツに使用された場合の認知度をもって、あらゆる色のブーツに使用された場合の識別力を証明したとは言えない」と判断しました 。

この判決は、位置商標の権利範囲の広さと、立証すべき識別力の範囲のズレを浮き彫りにしました。もし、ドクターマーチンが「黒色のブーツのウェルト部分に施された黄色のステッチ」として、商品自体の色も限定して出願(あるいは色彩との結合商標として構成)していれば、結果は違った可能性もあります。しかし、より広い権利(どんな色の靴でも黄色ステッチなら権利行使できる状態)を求めた結果、その広さに見合うだけの識別力を立証できず、敗訴に至ったと言えます。

エドウィン、ルブタン、日清食品…明暗を分けた事例たち

ドクターマーチン以外にも、位置商標をめぐる興味深い事例は多数存在します。それぞれの事例から、登録の成否を分けるポイントが見えてきます。

エドウィンのジーンズポケット

ジーンズメーカーのエドウィンは、ズボンの後ろポケットに付される「ステッチ(飾り縫い)」や「タブ」に関して商標登録を試みてきました。ジーンズ業界では、リーバイスの「アーキュエイト・ステッチ(弓形のステッチ)」や「赤タブ」が有名ですが、これらは長らく商標権の係争の火種となってきました。 過去の審決では、後ろポケットが存在しない下着などの商品に関しては、そもそも「後ろポケットに付する」という位置商標の使用が想定できないとして、指定商品から除外されたり、登録が取り消されたりした事例もあります 。位置商標は「特定の位置」が前提であるため、その位置が存在しない商品には権利が及ばない、あるいは登録要件を満たさないという論理です。なお、エドウィンのようなアパレルブランドにとって、ポケットのステッチは単なる補強ではなく、ブランドの顔としての役割を果たしています。

クリスチャン・ルブタンのレッドソール

高級靴ブランド、クリスチャン・ルブタンの「レッドソール(赤い靴底)」も、世界中で商標紛争のテーマとなっています。ルブタンは、ハイヒールの靴底全体を赤く塗るデザインをトレードマークとしていますが、これを日本で「位置商標」または「色彩のみからなる商標」として登録しようとした際、大きな壁に直面しました。 知財高裁は、ルブタンのレッドソールについて、長年の使用実績は認めたものの、女性用ハイヒール市場において「赤い靴底」は他社も使用する一般的な装飾手法であり、一私人に独占させることは公益に反する(独占適応性がない)等の理由から、商標法3条2項による登録を認めない判断を下しました 。 一方で、欧州や米国、中国などでは、一定の条件下でルブタンのレッドソールの商標権が認められています。例えば欧州司法裁判所は、「形状」そのものではなく「位置」商標としての側面を重視し、登録を認める判断を示しています。このように、位置商標や色彩商標の判断は国によって分かれており、グローバル展開する企業にとっては、国ごとの法制度や審査基準の違いを熟知した上での出願戦略が不可欠です。

成功事例:日清食品とニコン

一方で、登録が認められた著名な事例もあります。日清食品の「カップヌードル」の容器デザインや、ニコンのカメラグリップ部の赤いデザインです。 日清食品のカップヌードルは、容器の上下にある金色の帯や「CUP NOODLE」のロゴ配置などが位置商標として登録されています(登録第6034112号)。これは、文字が読めなくても、その配色の帯の配置を見ただけで「カップヌードルだ」と認識できる強力な識別力が認められた好例です。 ニコンの事例(登録第6118238号)では、カメラのグリップ上部に施された逆三角形のような赤いアクセントが位置商標として登録されました 。これは「ニコン派はニヤリとする」と言われるほど、ファンにとって象徴的なデザイン要素であり、拒絶査定不服審判を経て、その識別力が認められました。

位置商標を取得するための実務的ポイントと将来展望

位置商標は、ロゴマークのような「点」の保護ではなく、商品デザインにおける「配置」という「面」や「構造」に近い部分を保護する手段です。これを経営戦略に組み込むことで、以下のようなメリットが期待できます。

第一に、ブランドアイデンティティの多層的な保護です。ロゴ商標だけでは、ロゴを少し変えられた模倣品に対抗できませんが、位置商標を持っていれば、「ロゴは違うが、配置や全体的な印象が酷似している」商品に対して権利行使できる可能性が高まります。セイコーマートの看板戦略やサンディスクのラベルデザインは、まさにこの「見た目の印象」を守るための防壁となっています。

第二に、「ノンバーバル(非言語)」なブランディングの強化です。グローバル市場において、言語に依存しない「色」や「配置」による識別は極めて強力です。文字を読まなくても、遠くから見たシルエットや配色の配置だけで自社製品と認識させることは、マーケティングコストの削減や顧客ロイヤリティの向上に直結します。

第三に、模倣品対策の実効性向上です。特にアパレルやファッション小物、パッケージデザインにおいては、形状や配置こそが顧客誘引力の源泉です。意匠権(デザイン権)は新規性が要件となり、発売から時間が経過したロングセラー商品は保護できませんが、商標権は更新すれば永続的に保持できます。長年愛される定番商品こそ、そのデザイン配置を位置商標として権利化し、恒久的な資産として守り抜く戦略が有効です。

しかし、ドクターマーチンやルブタンの事例が示すように、登録のハードルは依然として高いのが現実です。成功の鍵は、発売初期からの「一貫したデザイン使用」と、それを裏付ける「客観的な証拠(売上、広告費、認知度調査)」の積み上げにあります。また、欲張って権利範囲を広げすぎず、実際に高い認知を得ている具体的構成(例えば「黒いブーツに黄色いステッチ」)に絞って権利化を目指すという、現実的な出願戦略も求められます。

位置商標は、企業が長い時間をかけて培ってきた「らしさ」という無形の資産を、法的な「権利」という有形の資産に変換する高度なツールです。その特性を正しく理解し、戦略的に活用することで、企業の競争力はより強固なものになるでしょう。

(この記事はAIを用いて作成しています。)

参考文献

特許庁, “位置商標 定義 特許庁 審査基準,” 平成26年9月. 特許庁, “商標審査便覧 56.01 位置商標の審査の運用,” 令和7年3月改訂. 特許庁, “商標の詳細な説明(願書(新しいタイプの商標)),” [Online]. マークス国際弁理士法人, “知財高裁:Dr. Martensの黄色のステッチ位置商標について、商標法3条2項の該当性を否定,” 2023年9月1日. 弁護士法人 長野第一法律事務所, “黄色いステッチは位置商標? ドクターマーチン事件,” [Online]. 藤田隆特許事務所, “位置商標 初の審決 ジーンズのタブ 後ろポケットを有しない下着等登録取消し,” 2017年4月28日. マークス国際弁理士法人, “知財高裁:赤色靴底(レッドソール)の単色商標について、ルブタンの営業表示とは認めず,” 2023年3月1日. イノベンティア, “女性用ハイヒールの靴底に赤色を付した商品に関する混同のおそれを否定した「ルブタン」事件知財高裁判決について,” 2023年5月. 骨董通り法律事務所, “ニッポンの『新しい商標』15選,” 2019年3月29日. Toreru, “セイコーマート 位置商標 権利範囲 詳細,” [Online]. Fashionsnap, “「クリスチャン ルブタン」の「レッドソール」商標登録、日本の特許庁が再び却下,” 2022年6月14日. 知的財産高等裁判所, “平成16年10月20日判決 商標法4条1項15号の適用,” [Online]. 商標登録ドットコム, “位置商標:登録商標の種類,” 2022年5月6日.

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