特許の価値、正しく評価できていますか?収益化を成功に導く価値評価の全手法を専門家が徹底解説

目次

はじめに

株式会社IPリッチのライセンス担当です。多くの企業が時間とコストをかけて取得したにもかかわらず、活用されていない「休眠特許」を抱えています。これらの特許は、維持費だけがかかるコストセンターになりがちです。本記事では、そうした休眠特許を収益源に変えるための絶対的な第一歩である「特許の価値評価」について、その必要性から具体的な評価手法、費用感までを網羅的に、そして平易に解説します。

なぜ「特許価値評価」が収益化の絶対的な出発点なのか

日本国内では毎年約17万件の特許が登録されていますが、その半数近くが事業に直接結びついていないと言われています 。これらの活用されていない「休眠特許」は、毎年発生する特許年金の支払いにより、企業にとっては単なるコスト負担でしかありません。しかし、適切なプロセスを経ることで、これらの特許は「未開封の資産」として企業の価値を大きく高める可能性を秘めています 。その鍵を握るのが、特許価値評価です。  

価値評価は、特許を単なるコストから利益を生むプロフィットセンターへと転換させるための羅針盤です。ライセンス契約のロイヤルティ料率、特許売却時の譲渡価格、あるいは共同開発における提携条件など、あらゆる収益化交渉の場面において、客観的なデータに基づいた評価額は最も強力な交渉材料となります 。  

さらに、価値評価のプロセスは、自社の知的財産ポートフォリオを戦略的に見直す絶好の機会を提供します。評価を通じて、収益化に注力すべき価値の高い特許と、維持コスト削減のために放棄を検討すべき特許が明確になります。これは、単に金額を算出する以上の、経営戦略そのものに資する重要な活動なのです。知財金融による資金調達やM&Aにおけるデューデリジェンスなど、その活用範囲は直接的な収益化にとどまりません 。  

価値評価の土台:定性的評価で探る特許の「真の実力」

特許の価値を金額として算出する前に、その特許が持つ本質的な「実力」を把握する必要があります。これが「定性的評価」または「質的アプローチ」と呼ばれるもので、主に「法的評価」と「技術的評価」の二つの側面から分析します 。  

法的評価:権利の強さと安定性の評価

法的評価では、特許権そのものがどれだけ強固で、安定的かつ行使しやすいかを多角的に検証します。具体的には、以下の点が重要な評価項目となります 。  

  • 権利の法的安定性:特許に新規性や進歩性の欠如といった無効理由が存在しないか、過去に無効審判などの争いを経て権利の有効性が確認されているかなどを評価します。安定性が高いほど、安心して権利を行使できます。
  • 権利行使・侵害発見の容易性:「特許請求の範囲」の記載が明確で、第三者の製品が侵害しているかどうかを容易に判断できるかどうかが問われます。侵害を発見しやすければ、権利の価値は高まります。
  • 権利範囲の広狭:特許請求の範囲が広く設定されているほど、競合他社がその特許を回避して類似技術を開発することが困難になります。これは、特許の価値を大きく左右する要素です。
  • 権利の残存期間:特許権の存続期間は出願から20年です 。技術や製品のライフサイクルに対して、残存期間が十分に長いかどうかが評価されます。  
  • 権利制約要因の有無:特許が共有名義になっていないか、他社に専用実施権が設定されていないか、また、その特許技術を実施するために他者の特許を利用する必要がないか(利用・抵触関係)などを確認します。
  • 外国出願状況:製品を製造・販売する主要な海外市場でも特許権が取得されている場合、その価値は飛躍的に高まります 。  

技術的評価:発明の優位性と市場性の評価

技術的評価では、特許発明そのものが持つ技術的なアドバンテージと、それがビジネスとして成功する可能性を評価します。主な評価項目は以下の通りです 。  

  • 技術的優位性:その発明が業界の基本となるような「基本特許」か、既存技術の改良である「周辺特許」かを評価します。また、競合他社が設計変更などで容易に回避できる技術かどうかも重要です。
  • 事業化の容易性:その技術を用いて製品を市場に投入するまでに、どれくらいの時間と資金が必要か、製造上の課題はないかなどを評価します 。  
  • 市場規模と成長性:その技術がターゲットとする市場の規模(TAM, SAM, SOM)はどの程度か、またその市場は今後成長が見込めるのかを分析します 。  
  • 代替技術の存在:同じ課題を解決できる、特許を侵害しない他の技術が存在するかどうかを評価します。代替技術が少ないほど、その特許の価値は高まります 。  

これらの定性的評価項目をまとめたのが、以下のチェックリストです。自社の特許が持つ「真の実力」を診断するためにご活用ください。

評価カテゴリ評価項目確認すべき主要な質問
法的評価権利の安定性無効にされるリスクは低いか?過去の審判や訴訟で有効性が確認されているか?
権利行使の容易性競合製品の侵害を容易に発見・立証できるか?
権利範囲の広狭競合他社が容易に回避(デザインアラウンド)できない、広い権利範囲か?
権利の残存期間製品のライフサイクルをカバーするのに十分な期間が残っているか?
権利の制約要因共有権利者がいるか?他社へのライセンス供与など、権利行使を妨げる契約はないか?
技術的評価技術的優位性基本特許か、周辺特許か?他技術に対する優位性は明確か?
事業化の容易性製品化までの時間やコストは現実的か?製造上の障壁はないか?
市場規模と成長性ターゲット市場は十分に大きく、将来性があるか?
代替技術の存在競合する非侵害技術は存在するか?その脅威はどの程度か?

価値を金額に換算する:3つの定量的評価アプローチ

定性的評価で特許の「実力」を把握した後は、その価値を具体的な金額に換算する「定量的評価」に進みます。一般的に、資産の経済的価値を評価する手法として「コストアプローチ」「マーケットアプローチ」「インカムアプローチ」の3つが知られており、これは特許の価値評価においても同様に用いられます 。実務では、より評価の精度を高めるために、これらのアプローチを複数組み合わせて評価することもあります 。  

コストアプローチ:費やした費用を基準にする評価方法

コストアプローチは、評価対象の特許を取得・開発するために要した費用、あるいは同等の技術を再度開発するとした場合にかかる費用を基準に価値を算出する方法です 。  

  • 歴史的原価法:その発明を完成させるまでに実際に投下された研究開発費や特許出願費用などを積算する方法です 。計算が簡潔で客観的というメリットがありますが、開発の失敗コストまで含まれてしまう、将来の収益性を反映しないといった欠点があります 。  
  • 再構築法(再調達原価法):評価時点において、同じ機能を持つ技術をゼロから開発した場合に必要となるであろう費用を推定する方法です 。非効率なコストが排除されるため、より合理的な評価が可能ですが、費用の見積もりに主観が入りやすいという側面もあります 。  

マーケットアプローチ:類似取引事例を基準にする評価方法

マーケットアプローチは、評価対象の特許と類似した特許が、過去にどのような価格で売買されたか、あるいはどのような料率でライセンスされたかといった市場の取引事例を参考にして価値を算出する方法です 。  

  • 売買取引比較法:類似の無形資産の実際の売買取引に基づいて価値を評価します 。もし適切な取引事例が見つかれば、市場の実勢を反映した信頼性の高い評価が可能となります 。しかし、特許の取引情報は公開されることが少なく、比較可能な事例を見つけること自体が非常に困難であるという大きな課題があります 。実務上は、J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)や開放特許情報データベース、知的財産権取引業者データベースなどを活用して、類似技術の動向や市場のプレイヤーを把握することが、このアプローチの第一歩となります 。  

インカムアプローチ:将来の収益を基準にする評価方法

インカムアプローチは、その特許を活用することによって将来得られると予測される収益(キャッシュフロー)を基準に価値を算出する方法です 。3つのアプローチの中で最も経済合理性が高く、M&Aや事業評価の世界で広く用いられています 。  

  • DCF(Discounted Cash Flow)法:特許を活用した事業が将来生み出すキャッシュフローを予測し、それを現在価値に割り引いて合計することで価値を算出します 。  
  • ロイヤルティ免除法:DCF法の一種で、「もし自社がその特許を保有していなかったら、他社に支払わなければならなかったであろうロイヤルティ」を仮想的なキャッシュフローとみなし、その現在価値を特許の価値とする方法です 。  

インカムアプローチは、特許がもたらす収益に直接着目するため、ライセンス交渉や売買の当事者双方が納得しやすい評価結果を得やすいというメリットがあります 。一方で、その計算の基礎となる将来の事業計画や収益予測が主観的になりがちであるという点に留意が必要です 。  

アプローチ評価の根拠主な長所主な短所
コストアプローチ開発・取得にかかった費用算定基準が明確で、客観的な計算が比較的容易である 将来の収益性を一切考慮しないため、特許の真の価値を反映しにくい
マーケットアプローチ類似資産の市場取引価格市場の実勢価格を反映するため、適切な事例があれば信頼性が非常に高い 比較可能で公開されている特許の取引事例が極めて少ない
インカムアプローチ将来生み出すと予測される収益資産の収益力に着目しており、経済合理性に富み、交渉相手の納得を得やすい 将来の収益予測や割引率の設定に主観が入りやすく、恣意的な評価になるリスクがある

DCF法による特許価値評価の具体的な計算手順

インカムアプローチの中でも、特にDCF法は特許の経済的価値を評価する上で中心的な役割を果たします。その計算は複雑に見えますが、「将来得られるお金は、現在の価値に換算すると目減りする」という基本的な考え方に基づいています 。ここでは、その手順を3つのステップに分けて解説します。  

ステップ1:将来のフリーキャッシュフロー(FCF)を予測する

最初のステップは、その特許を利用した製品やサービスが、将来(通常3~5年程度)にわたってどれくらいの現金を稼ぎ出すかを予測することです 。この現金のことを「フリーキャッシュフロー(FCF)」と呼びます。FCFは、会計上の利益とは異なり、実際に事業活動から生み出され、自由に使える現金の流れを指します 。  

簡単な計算式で表すと、以下のようになります 。  

FCF≈(税引後営業利益+減価償却費)−(設備投資+運転資本増加額)

この予測の精度が、DCF法による評価結果の信頼性を大きく左右するため、市場動向や競合との競争環境などを踏まえた、実現可能性の高い事業計画の策定が不可欠です 。  

ステップ2:割引率を決定する

次のステップは、「割引率」を決定することです。割引率は、将来予測されるキャッシュフローの不確実性(リスク)を反映する数値です 。事業のリスクが高ければ高い割引率が適用され、その結果、将来のキャッシュフローの現在価値は低く評価されます。  

ここで重要になるのが、前段で解説した「定性的評価」の結果です。例えば、法的評価において「権利の安定性が低い(無効にされるリスクがある)」、あるいは技術的評価において「代替技術が多く、優位性が低い」と判断された場合、予測したキャッシュフローが計画通りに得られないリスクは高まります。このリスクを定量的に反映させるのが割引率の役割です。つまり、定性的評価で明らかになった弱点は、より高い割引率として計算に組み込まれ、最終的な特許価値を直接的に引き下げる要因となります。このように、定性的評価と定量的評価は密接に連携しているのです。専門的には加重平均資本コスト(WACC)という指標が用いられますが、概念的には「その事業のリスクに見合った、投資家が期待するリターン率」と考えると分かりやすいでしょう 。  

ステップ3:現在価値(PV)を算出し、特許価値を計算する

最後のステップでは、ステップ1で予測した各年度のFCFを、ステップ2で決定した割引率を使って現在の価値に割り引きます。これを「現在価値(Present Value, PV)」と呼びます。

ある年度nの現在価値は、以下の式で計算できます 。  

PV=(1+割引率)nFCFn​​

例えば、割引率が10%の場合、3年後に得られる1,000万円のFCFの現在価値は、1,000万円÷(1+0.1)3≈751万円 となります。

この計算を予測期間の各年度について行い、それらを合計したものが、その特許が生み出す事業価値となります。さらに、予測期間以降も事業が継続すると仮定した場合の価値(ターミナルバリュー)も算出して加算します 。こうして算出された金額が、DCF法による特許の評価額となります。  

専門家(弁理士)による価値評価:費用と期間の目安

ここまで価値評価の考え方や手法を解説してきましたが、第三者(取引先、金融機関、裁判所など)に対して客観的な証明力が求められる場面では、知的財産の専門家である弁理士に評価を依頼するのが一般的です 。  

弁理士に正式な価値評価報告書の作成を依頼する場合、その費用は評価対象となる特許の数や技術の複雑さによって変動しますが、特許1件あたり数十万円程度がひとつの目安となります 。より簡易な相談であれば、1時間あたり1万円程度の費用で対応している事務所もあります 。また、評価の前提となる侵害予防調査(相場10万円~)や無効資料調査(相場5万円~)などを別途依頼する場合は、追加の費用が発生します 。  

評価にかかる期間も、対象や目的に応じて異なりますが、1件の特許について詳細な調査・分析を経て報告書を作成する場合、依頼から納品までにおおよそ2ヶ月から4ヶ月程度を見込むのが一般的です 。  

価値評価から「知財の収益化」戦略へ

特許の価値評価は、金額を算出すること自体が目的ではありません。その評価結果を基に、最適な「知財の収益化」戦略を立案し、実行に移すことが最終的なゴールです。評価結果は、どの収益化モデルを選択すべきかを示す戦略的なコンパスの役割を果たします。

  • 高価値・高強度な特許の場合:定性的評価・定量的評価ともに高い評価を得た特許は、企業の競争力の源泉です。このような特許は、他社にライセンス契約を許諾し、継続的なロイヤルティ収入を得る長期的な戦略が適しています 。  
  • 中程度の価値・非中核事業の特許の場合:特許自体に価値はあるものの、自社のコア事業とは関連性が低い場合、権利を完全に**譲渡(売却)**することで、迅速なキャッシュの獲得と将来の維持コスト削減を両立できます 。  
  • 高い潜在価値を持つが自社での事業化が困難な特許の場合:特にスタートアップや中小企業において、革新的な技術ではあるものの、製品化に必要な資金や販路が不足しているケースが考えられます。この場合、価値評価報告書を客観的な根拠として、他社との共同開発や事業提携を模索するのが有効な選択肢となります 。  

このように、価値評価の結果と自社の経営戦略を照らし合わせることで、最も収益性の高いマネタイズ手法を選択することが可能になるのです。

結論

研究開発の成果である特許も、その価値が正しく評価されなければ、宝の持ち腐れとなりかねません。本記事で解説したように、法的・技術的な側面から特許の「実力」を測る定性的評価と、コスト・市場・収益の観点から金額を算出する定量的評価を組み合わせることで、特許は単なる技術文書から、具体的な価値を持つ戦略的ビジネス資産へと生まれ変わります。

特許の価値評価は、休眠特許を収益化するための第一歩であり、自社の技術力と市場におけるポテンシャルを客観的に見つめ直すための重要な投資です。このプロセスを通じて、イノベーションの価値を最大化し、企業の持続的な成長を実現することができるでしょう。

お手元の特許の収益化をご検討の皆様、まずはその価値を正しく把握することから始めてみてはいかがでしょうか。価値ある特許を保有されている方は、ぜひ当社の特許売買・ライセンスプラットフォーム「PatentRevenue」へ無料でご登録ください。貴社の革新的な技術を求める企業との出会いをサポートいたします。 https://patent-revenue.iprich.jp

(この記事はAIを用いて作成しています。)

参考文献

  1. 日本弁理士会. 「“それ”ってホントに価値がある? ~弁理士がやさしく教える特許の価値評価~」. https://www.jpaa.or.jp/cms/wp-content/uploads/2017/03/patent20150826.pdf
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