パテントトロールとは何か?中小企業にも関係する知財トラブルの実態

株式会社IPリッチのライセンス担当です。

「パテントトロール」と呼ばれる特許を悪用する存在が、最近話題になっています。本記事では、中小企業の経営者の皆様に向けて、NPE(非実施主体)やPAE(特許主張主体)との違いや、その対策も含めて分かりやすく解説します。パテントトロールに自社が狙われたらどんな影響があるのか、どのように備えるべきかについても触れていきます。

目次

パテントトロールとは?身近に起こり得る脅威

ある日、あなたの会社に見慣れない企業から一通の手紙が届いたとします。開封してみると「御社の製品は当社保有の特許を侵害している。訴訟を避けたければ高額のライセンス料を支払え」という内容です。相手の会社名を調べても、自社と直接の取引も競合関係もなく、製品も持たないような謎の存在…。実はこれこそがパテントトロールと呼ばれる典型的な手口なのです。

「パテントトロール」とは、自らは製品やサービスを提供せずにもっぱら特許権の行使をビジネスにする者に対する蔑称です。明確な法的定義はありませんが、一般には特許権を濫用して他社から過大なライセンス料や賠償金を巻き上げ、イノベーションを阻害する企業や個人を指すと考えられています〖2〗。この呼び名は1990年代後半に米国Intel社のピーター・デットキン氏(当時同社法律顧問)が、製品を持たず特許訴訟で他社を訴えるような企業を揶揄して使ったのが始まりとされています〖1〗。「橋の下に棲む怪物」に例えたこの言葉が示す通り、パテントトロールは特許制度を悪用する厄介者という否定的な意味合いで用いられます。

パテントトロールと呼ばれる企業の多くは自社では研究開発や製造販売を行わず、他社から取得した特許を武器に製品メーカーなど実業の企業を相手取って特許侵害訴訟を起こします。その狙いは、高額な訴訟コストや差止めリスクを背景に和解金を脅し取るビジネスモデルにあり、その活動は産業界に余計な負担と停滞をもたらすものとして問題視されています。このような訴訟による権利行使ビジネスは、特許本来の趣旨である技術革新の促進とは相容れない側面が強いため、多くの企業にとって他人事ではない脅威なのです。

NPE(非実施主体)とパテントトロールの違い

パテントトロールの話題ではしばしば**NPE(Non-Practicing Entity、非実施主体)**という言葉も登場します。NPEとはその名の通り「自らは特許発明を実施しない主体」の総称で、大学・公的研究機関、個人発明家、特許管理専門会社、防衛的な特許ファンドなど多様なタイプが含まれます【1】。彼らNPEは自社で製品やサービスを作る代わりに、特許ライセンス収入や特許売却益によって収益を得ています。その目的や活動姿勢は様々で、例えば大学や公的機関であれば特許活用による収入を研究資金に再投資し新たな技術開発につなげていますし、特許管理会社の中には発明者から特許を預かって適切にライセンスすることで発明者に利益を還元するビジネスモデルを掲げる企業も存在します。

このようにNPEというカテゴリには多種多様な主体が含まれており、そのすべてが悪質とは限りません。単に「自社で特許発明を実施していない」というだけで一律にトロール呼ばわりするのは適切ではないとの指摘もあります【1】。実際、特許を正当に管理・活用して技術の普及に寄与しているNPEも数多く存在し、製品を作っていないこと自体は直ちに非難されるべき行為ではありません。パテントトロールという呼称は本来、こうしたNPEの中でも特許権の不当な行使によって他社から利益を巻き上げる悪質な例に限定して用いるべきだと考えられています【1】。つまり、すべてのNPEがトロールと非難されるべきではなく、あくまで一部の行き過ぎた権利行使が問題なのです。

PAE(特許主張主体)とパテントトロールの違い

もう一つ、パテントトロールと関連して知っておきたい用語にPAE(Patent Assertion Entity、特許主張主体)があります。これは特許権の行使(アサーション)を収益モデルの中核に据えた企業を指す言葉です。簡単に言えば、自ら発明した特許を実施(製品化)するのではなく特許を他者から取得し、被疑侵害者に対して権利主張(ライセンス要求や訴訟提起)することで収益を得るビジネスモデルの企業です【3】。自社で技術開発して製品を売る代わりに、「特許を武器に稼ぐ」ことを専門にしている業者とも表現でき、その実態はパテントトロールと大きく重なる部分を持ちます。

元々NPEという言葉は大学・研究機関や防衛的な特許保有主体まで含む幅広い概念でしたが、その中から特許の権利行使で収益を上げることに特化した企業カテゴリとしてPAEが提唱されました【1】。米国の政府機関や公的報告書でも、否定的な「トロール」という呼び名を避けてこのPAEという中立的な表現が用いられています。例えば米ホワイトハウス(米国政府)の2013年報告書では、2011年頃には米国の特許侵害訴訟の約3割弱だったPAE(いわゆるトロール)による提訴件数が、数年で6割超にまで急増したと指摘されています〖4〗。こうした状況を受けて米国ではPAEによる過剰な権利行使を抑制する特許法改正(※2011年の米国特許法改正による特許無効審理制度の創設など)や判例整備(※2017年の最高裁判決による訴訟管轄の制限、2006年のeBay事件判決による差止命令の乱用抑制など)が進められてきました。その結果、近年では米国におけるNPE関連の特許訴訟件数はピーク時より減少傾向にあるとのデータも報告されています。

もっとも、パテントトロールたちが大人しくなったわけではありません。彼らは形を変えて活動を続けています。例えば訴訟リスクの低い中小企業やスタートアップを狙って警告状(ライセンス要求書)を大量に送りつけたり、特許の管轄権が及ばない国や地域に拠点を置いて間接的に交渉を仕掛けるなど、訴訟以外の手段も駆使して巧妙化しているのです。また米国外に目を転じると、特許訴訟が活発なドイツではNPEによる特許訴訟の割合が非常に高いことが報告されており【2】、新興市場である中国でも同様の動きが指摘されています。パテントトロールの活動はグローバルに広がりを見せているといえるでしょう。

日本における特許トロール問題と今後の展望

では日本ではどうでしょうか。幸いなことに、現時点で日本国内でパテントトロールが絡む大きな訴訟事件はほとんど見られません。日本企業がトロールの標的となるのは主に米国など海外での訴訟ですが、国内でNPEが権利行使を行うケースは限定的とされています。その背景には、制度面・市場面で次のような要因があります【5】:

  • 日本では特許審査が厳格で権利範囲が明確な特許しか成立しにくく、曖昧な特許による訴訟が起こりにくいこと
  • 仮に訴訟を起こしても米国のような高額の損害賠償が認められにくいこと
  • 訴訟費用の当事者負担が小さい(いわゆる敗訴者負担が小さい)ことや訴訟手続が迅速で、濫訴に不向きなこと

こうした環境ゆえに、トロールにとって日本市場はあまり魅力的ではないと考えられます。とはいえ将来にわたり安心と言い切れるわけではなく、政府の知的財産戦略本部は2018年にパテントトロール対策の検討WG(ワーキンググループ)を立ち上げ、実態調査や制度上の対応策の検討を進めています【2】。引き続き国内外のNPE動向に注意を払い、適切に備えていくことが求められるでしょう。

グローバル競争が激しさを増す中、自社の知的財産を眠らせずに最適な形で収益化する戦略は企業経営においてますます重要になっています。日本でも近年は、休眠特許を掘り起こしてライセンス・売却し、新たな収益源やイノベーション資金に繋げようという動きが活発化しています。自社の特許を守りに使うだけでなく、攻めの資産として活用することで、特許維持費や機会損失を補填しつつ得た収益を次の研究開発投資に回す好循環も生まれます。もし特許を保有されている方で有効活用をお考えの場合は、特許売買・ライセンスプラットフォーム「PatentRevenue」(https://patent-revenue.iprich.jp)に無料登録し、知財の収益化による企業価値向上を検討してみてはいかがでしょうか。

(本記事はAIを用いて作成しています。)

参考文献

  1. 一色太郎「パテント・トロールとは何か──パテント・トロールと特許制度の関係およびトロール呼称の弊害──」(日本知的財産協会『知財管理』69巻5号, 2019年)– https://www.isshiki-law.com/wp-content/uploads/2024/08/chizaikanri20190510.pdf
  2. 内閣官房 知的財産戦略推進事務局「パテント・トロール対策等WG報告書(概要)」(2018年)– https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/kensho_hyoka_kikaku/2018/sangyou/dai4/siryou3-4.pdf
  3. Federal Trade Commission, “Patent Assertion Entity Activity: An FTC Study” (2016年) – https://www.ftc.gov/system/files/documents/reports/patent-assertion-entity-activity-an-ftc-study/p131203_patent_assertion_entity_activity_an_ftc_study_0.pdf
  4. Executive Office of the President of the United States, “Patent Assertion and U.S. Innovation” (2013年6月) – https://obamawhitehouse.archives.gov/sites/default/files/docs/patent_report.pdf
  5. 大熊靖夫・佐橋美雪・薛惠文「米国、日本、台湾、欧州におけるパテントトロール(要約)」(特技懇 No.244, 2007年) – http://www.tokugikon.jp/gikonshi/244kiko1j.pdf
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次