休眠特許オークションの可能性:企業内資産を市場で活かす方法

株式会社IPリッチのライセンス担当です。
今回は「休眠特許オークションの可能性」というテーマで、企業内に眠る知的財産(特許)を市場で活かし、収益化する方法についてお話しします。自社では使われていない「眠れる特許」をどのように有効活用し、新たな価値や利益を生み出せるか、一緒に考えてみましょう。
休眠特許とは?眠る知財資産の現状
まず「休眠特許」とは、特許権を取得したものの事業などで活用されず眠っている特許を指します。実は日本で存続している特許権の約半数近くは、このような休眠特許だともいわれています【1】。特に大企業では、自社で保有する特許のうち使用されているものは3割程度にとどまり、残りは使われずに眠っているという調査結果もあります【2】。つまり、多くの企業で特許の大部分が活用されていないのが現状なのです。
休眠特許が多い背景には、事業戦略の転換や市場ニーズの変化など様々な要因があります。新技術の特許を取得しても、市場環境が合わず事業化できなかったり、自社では使わなくなった技術の特許を継続保有していたりするケースは珍しくありません。中小企業では目先の事業に直結した特許出願が多いため休眠化する例は少ないようですが、大企業では将来のための幅広い特許取得が行われる分、結果的に眠ってしまう特許も増えがちです【2】。
しかし問題なのは、使われない特許にも維持費用がかかることです。特許権を維持するためには、毎年特許庁に特許料(年金)を支払い続ける必要があります。たとえその特許が収益を生まなくてもコストだけは発生しますから、活用しなければ企業にとって「隠れた負債」となりかねません【1】【4】。ある上場企業では約1万件の特許を維持しており、その年間維持費だけで推計4億円にも上ったという報告もあります【4】。自社で使わない特許に毎年莫大な維持費を払い続けるのは、非常にもったいないことです。こうした休眠特許は企業のバランスシート上、気づかれにくいコスト負担になっている可能性があります。
休眠特許が生む課題と知財の収益化の可能性
休眠特許を抱えることは、単にコスト面で不利というだけでなく、せっかくの発明から得られるはずだったリターンを逃していることにもなります。研究開発には多大な時間と費用がかかっていますから、使われない特許が社内に眠ったままでは投資回収の機会を逸してしまいます。また、使わないからといって放置していると、権利の有効期限が過ぎて権利切れになり、誰でも自由に使える状態になってしまう恐れもあります。さらに極端な場合、社内で価値がないと判断した特許をまとめて安価に海外企業へ譲渡すると、自社の知らないところで技術が流出し将来の競合を生むリスクも指摘されています。こうした課題に対処するためにも、知財の収益化すなわち特許から収益を上げる道を検討する意義は大きいでしょう。
幸い、休眠特許であっても他社から見れば喉から手が出る「お宝特許」の可能性があります。他社が必要としている技術を、自社では不要になった特許がカバーしていることも十分あり得ます【3】。まるで自分にとって不要な品物をフリマアプリで出品すると、欲しい人が見つかるようなものです【3】。したがって、自社で使わないのであればライセンス契約(使用許諾)や譲渡(売却)によって他社に使ってもらうことで、休眠特許を収益源に変えることができます【4】。特許権は法律上「財産権」ですので、契約によって自由に貸し出したり売却したりすることが可能です。その際の対価(ライセンス料や売却額)は当事者間の交渉で決まります【4】。例えば、自社では事業化しない技術で特許を持っている場合、その技術を必要とする企業にライセンスを提供すればロイヤリティ収入を得られますし、特許自体を売却して一時金を得ることもできます。特許の価値や相手先の事情によっては、社会実装を優先して無償提供するケースもありますが、基本的には休眠特許を他社に活用してもらうことで経済的リターンを得る道が開けるのです【4】。
実際、業界によっては使わない特許を他社に活用してもらう動きが定着している例もあります。例えば製薬業界では、自社の重視する治療分野(疾患領域)から外れる有望な化合物の特許は、積極的に他社(その分野に注力する企業)にライセンス供与するといわれます【5】。そうすることでライセンス収入(ロイヤリティ)を得つつ、自社は経営資源を本来の重点領域に集中できます【5】。このように、自社で使わない特許を手放すことは「競合他社に塩を送る」どころか、自社の収益につなげ事業効率も高める合理的な戦略になり得ます。特許というものは本来、一企業だけですべてを活用し尽くすのは困難であり【5】、視点を変えれば自社の遊休特許も他社にとっての有用資産となり得るのです。
知財市場の現状:特許オークションと取引の課題
では、休眠特許を他社に提供しようと考えたとき、実際にその相手(買い手やライセンシー)をどう見つけるかが課題になります。従来、特許の売買やライセンスの取引は、限られた業界人脈の中で個別交渉により行われることが多く、オープンな市場が発達しているとは言い難い状況でした【3】。特許価値の高いアメリカでさえ、「気軽に特許を現金化できるマーケット」が存在しなかったと言われるほどです【3】。その理由の一つとして挙げられるのが、これまで特許購入の主なプレイヤーが訴訟目的で特許を買い集めるNPE(Non-Practicing Entity、いわゆるパテント・トロール)であったことです【3】。企業から見れば、自社の特許をNPEに売却した結果、その特許が他社への訴訟に使われ巨額の和解金・賠償金を生むような事態になれば、業界内でのイメージ悪化は避けられません【3】。そのため、たとえ買い手がいても「特許を売ったせいでトラブルの火種を提供するくらいなら…」と売却マーケット自体を敬遠する企業が多かったのです【3】。
また、特許売買を取り扱うブローカー(仲介業者)は存在するものの、彼らは大口ポートフォリオの売買仲介で得られる手数料の方が収益性が高いため、小規模な特許1件ずつの売買仲介には消極的といわれます【3】。その結果、「メルカリのように気軽に特許を売買できるプラットフォーム」がなかなか形成されにくいという指摘もあります【3】。こうした事情から、休眠特許を現金化したいと願っても、従来は売り手と買い手がお互いに見つけづらい構造的なハードルが存在しました。
しかし近年、この状況にも少しずつ変化の兆しが見えています。そもそも特許とは「技術の先行投資」として取得されるものなので、市場やニーズのミスマッチによって「使えない特許」が生まれてしまうのはある意味必然です【3】。そして前述のように、使えないのはあくまで「自社にとって」であって、特許そのものの客観的価値が失われたわけではありません【3】。現に、日本でも地方自治体が仲介役となり、大企業の休眠特許を中小企業に橋渡しして製品化につなげた成功例があります【3】(※川崎市による「川崎モデル」と呼ばれる取り組みなど)。需要もあり、成功例も出始めているということは、次なるビジネスチャンスとして「便利な特許取引のための市場」を確立する余地が十分にあることを示唆しています【3】。実際、「特許売買はビジネスとして成り立つか?」という問いに対し、今や多くの専門家がポジティブな見解を示し始めています。休眠特許の流通市場はまだ発展途上ではあるものの、今後大きく活性化する可能性が高まっていると言えるでしょう。
特許オークションの可能性と利点
こうした中で注目される手法の一つが「特許オークション」です。特許オークションとは、その名の通り特許権を競売形式で売買する仕組みです。売り手側(特許権者)はオークションに特許を出品し、買い手候補はその特許に対して入札(ビッド)します。最も高い価格を提示した入札者が特許を落札し、適切な手続きを経て権利移転やライセンス契約を結ぶという流れです。
オークション形式のメリットは、なんと言っても市場原理による適正価格の発見と取引成立のスピードです。売り手にとっては、社内で眠っていた特許を広く公開することで、自分では思いもよらなかった業界や国の企業から入札が入る可能性があります。複数の企業が欲しがる特許であれば競り上がっていき、高値で売却できるチャンスもあります。個別に一社ずつ交渉相手を探す手間に比べ、オークションに出せば興味を持つ相手が向こうから集まってくる点も大きな利点です。買い手にとっても、公開された場で公平に取引できるため、透明性の高いプロセスで必要な技術を獲得できます。他の入札者の存在が適正な価格判断の材料にもなりますし、交渉に比べて短期間で権利を入手できる可能性があります。
実際、特許オークションは海外で成果を上げた例があります。米国では2000年代中頃から特許オークションが試みられ、2006年にシカゴの企業が世界初となる大規模な公開特許オークションを開催して話題を呼びました【6】。翌2007年4月に開催されたライブ特許オークションでは、合計で約1,100万ドル(日本円にして約12億円)もの落札総額に達しています【6】。IBMをはじめ多数の大手企業が出品・落札に参加し、知財の新たな流通モデルとして大きな注目を集めました。これらの事例は、優良な特許であればオークションを通じて数億円規模の価値を引き出せることを実証したと言えるでしょう。オークションという仕組みによって、従来は眠ったままだった技術が新たな持ち主の下で事業に活かされ、かつ元の権利者には対価がもたらされる――これは売り手・買い手双方にメリットのあるWin-Winの関係を築ける魅力的な手段です。
さらに特許オークションの効果として、知的財産を企業の資産として「見える化」し、その市場価値を社内外にアピールできる点も挙げられます。オークションに出すとなれば、自社の特許の技術内容や強みを説明資料として整理する必要がありますが、これは社内の知財棚卸しや価値再認識にもつながります。また、オークションの結果として具体的な金額が提示されれば、知的財産の価値が社内の経営層にも伝わりやすくなり、知財戦略に対する意識向上にも寄与するでしょう。特許を売却可能な資産(売れる知財)と捉える文化が醸成されれば、今後の知財投資や取得戦略にもポジティブな循環が生まれると期待されます。
日本における知財オークション市場の展望
日本でも、休眠特許を市場で活用する機運が高まりつつあります。政府も「知的財産立国」の方針のもと、企業の知財活用促進やオープンイノベーション推進を掲げており、特許の流通市場整備は重要な課題と位置づけられています。実際、独立行政法人などによる特許流通データベースの構築や、産業競争力強化法に基づく特許の信託・流通の仕組み作りなど、国レベルでも休眠特許の有効活用策が模索されてきました。そうした流れを受け、民間でも特許取引のための新しいサービスが登場しています。
最近の例として、2024年には商標や特許権など知的財産権を対象としたオンラインオークションサイト「トレマー」が開設されました【5】。このプラットフォームは、日本全国に数多く存在する未使用の知財権利(特許・商標等)に着目し、それらを必要とする人々に橋渡しすることを目的としています【5】。運営会社の発表によれば、使われていない知財資産を眠らせず市場に流通させることで、日本の知的財産の保護と活性化につなげたいという意図があります【5】。まさに休眠特許や未利用商標をオークション形式でマッチングさせる試みであり、国内初の本格的な知財オークションサービスとして注目されています。
このように、日本においても特許の売買・ライセンス仲介をオンラインで行う知財市場が徐々に整備され始めました。従来は企業同士の直接交渉に委ねられていた休眠特許の移転も、今後はプラットフォーム上で効率的に行える可能性があります。売り手側にとっては、「本当に買ってくれる相手などいるのだろうか?」という不安があるかもしれません。しかし国内外の動向を見る限り、技術ニーズを持つ企業や、新規事業のタネを探すスタートアップ、さらには知財投資ファンドなど、特許を積極的に取得・活用したい主体は確実に存在しているのです。重要なのは、そうした潜在的な買い手と出会う場を用意することですが、オークションやオンライン市場の登場はまさにその受け皿となるでしょう。
では、休眠特許を持つ企業が実際にそれを市場に出して収益化するには、どのように進めれば良いのでしょうか。最後に、基本的なステップを確認しておきます。
休眠特許を収益化するためのステップ
休眠特許の活用を検討する際は、以下の手順で進めるとスムーズです。
- 社内特許の棚卸し – まず自社が保有する特許を洗い出し、現在事業で使っている特許と休眠状態の特許を分類します。事業計画に照らして今後も使う予定がない特許がないか確認しましょう。
- 価値評価と戦略検討 – 休眠特許と特許技術の内容を分析し、その技術が他社で利用価値がありそうか評価します。技術分野の市場動向や競合状況を調査し、その特許の技術ニーズがどこにあり得るかを考えます。また、その特許を売却するかライセンス提供するか戦略方針を決めます。一括で権利を譲渡すれば即時にまとまった収益が得られますし、ライセンス契約であれば継続的なロイヤリティ収入を期待できます(自社が将来その技術分野に再参入する可能性があるならライセンスの方が望ましい、といった判断材料もあるでしょう)。
- 情報整備と公開 – 特許の権利状況(存続期間、権利範囲など)や技術内容、利用分野などの情報を分かりやすくまとめます。買い手にとって魅力が伝わるよう、自社で開発した背景や技術の強み、想定される活用例なども整理すると良いでしょう。準備ができたら、特許流通プラットフォームやオークションサービスに登録し、その特許を公開します。必要に応じてNDA(秘密保持契約)を結んだ上で詳細情報を開示することも検討します。
- マッチングと交渉 – 公開された特許に興味を示す企業や投資家が現れたら、具体的な条件交渉に入ります。オークションであれば入札結果がそのまま価格提示になりますし、プラットフォーム経由の問い合わせであれば希望条件を擦り合わせます。契約形態(独占的ライセンスか非独占か、譲渡か等)、実施許諾範囲、対価の金額・支払い方法、保証や責任範囲など、専門家の助言も得ながら合意をまとめます。
- 契約締結と実行 – 交渉がまとまったら正式に契約を結びます。特許を譲渡する場合は特許庁への名義変更手続き(登録簿の変更)が必要です。ライセンス契約の場合は契約書に基づきライセンス料の受け取りや定期報告などの管理を行います。契約締結後は、相手先でその特許技術が活用されるようサポートしたり、自社内で他の休眠特許も同様に活用検討を進めたりすると良いでしょう。得られた収益は新たな研究開発費や有望な特許の取得費用に充てるなど、知財マネジメントの好循環を生み出すことが大切です。
以上のような流れで、自社に眠る知財資産を市場で活かして収益化することができます。最初は手探りかもしれませんが、専門のプラットフォームや支援サービスを活用すれば、思いのほかスムーズに話が進むケースも増えてきています。
まとめ:休眠特許を市場で活かし収益化しよう
使われずに眠っている特許も、視点を変えれば大きなビジネスチャンスです。休眠特許をオークションなどの市場に出すことで、新たなパートナーやビジネス機会が生まれ、企業にとっては知財の収益化につながります。単にコストだった知的財産が収益源に変われば、経営にもプラスのインパクトを与えるでしょう。また、世の中に埋もれていた技術が必要とする人の手に渡れば、新製品・新サービスの創出や技術革新にも寄与します。まさに「眠れる知財資産に命を吹き込む」ことができるのです。
このように休眠特許オークションには大きな可能性があります。自社の特許ポートフォリオを見直し、眠っている特許があれば是非積極的に市場での活用を検討してみてください。もし収益化したい特許をお持ちでしたら、特許売買・ライセンスプラットフォーム「PatentRevenue」に特許を無料登録してみましょう。(https://patent-revenue.iprich.jp) 専門スタッフのサポートのもと、あなたの特許を必要とする企業との橋渡しをお手伝いいたします。眠らせておくには惜しい貴重な知的財産を、ぜひ市場で活かしてみてください。新たな収益とイノベーションの芽が生まれることを期待しています。
(この記事はAIを用いて作成しています。)
参考文献
- みずほ総合研究所 藤掛康伸「社内に眠る『お宝特許』をキャッシュ化する」(2012年) – https://www.mizuho-rt.co.jp/archive/solution/marketing/pdf/business121119.pdf
- 知財アシスト(大阪市)ブログ「その特許で大丈夫?」(2017年) – https://www.chizai-assist.com/%E3%81%9D%E3%81%AE%E7%89%B9%E8%A8%B1%E3%81%A7%E5%A4%A7%E4%B8%88%E5%A4%AB%EF%BC%9F/
- Open Legal Community「使わなくなった特許はどうしてますか?」(2018年10月10日) – https://openlegalcommunity.com/what-to-do-with-useless-patent/
- 弁理士法人インターブレイン コラム「休眠特許をどうすべきか」(2020年5月30日) – https://www.interbrain-ip.com/column/69
- PR TIMES プレスリリース「日本国内における『知財権利のオークションサービス』として商標登録や特許権利を売買できる知財権利オークションサイト『トレマー』が運用スタート!」(2024年7月29日) – https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000146987.html
- 知的財産戦略本部 資料「オープン・イノベーションと知的財産を巡る現状等について」(2008年2月5日) – https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/kyousou/dai4/siryou1.pdf

