特許とエクイティ取引:知財出資によるスタートアップ支援

株式会社IPリッチのライセンス担当です。
本記事では、スタートアップ企業への支援策として特許をエクイティ(株式)と交換する「知財出資」に注目し、その仕組みやメリット、課題、そして知的財産の収益化につながる可能性について解説します。
特許を活用したスタートアップへの出資とは?
「特許を活用したスタートアップへの出資」とは、特許権などの知的財産をスタートアップ企業に提供し、その対価として当該スタートアップの株式(エクイティ)を受け取る仕組みです。これは現金の代わりに知的財産権を現物出資する形で行われ、「知財出資」とも呼ばれます。例えば、ある発明の特許権を持つ個人や企業が、その技術を必要とするスタートアップに特許権を譲渡または独占利用させる代わりに、スタートアップの株式を取得するケースです。従来、スタートアップが必要な技術特許を外部から導入するにはライセンス契約や買収が一般的でした。しかし知財出資では、スタートアップ側は手元資金を大きく減らすことなく重要な特許を確保でき、特許提供者側は将来の企業成長によるリターンを株主として享受できます。
このような特許×エクイティ取引は、近年日本でも注目されています。実は現行の会社法でも知的財産を株式と交換する現物出資の制度自体は存在しますが、様々な制約により実務上利用しづらい面がありました。そのため2024年には法務省が「特許権など知的財産権をスタートアップに自社株と交換しやすくする」ための規制緩和を検討し始めています【1】。手元資金が乏しいスタートアップでも有望な特許技術を取得し事業展開しやすくすることが目的です【1】。つまり、知財出資はスタートアップ支援策として国も後押しし始めた新たな資金調達・出資手法と言えます。
スタートアップと特許出資のメリット
スタートアップ側のメリット: 特許を株式と交換して得られる最大のメリットは、資金不足を補いつつ重要な技術や発明を自社のものにできる点です。現金調達と異なり返済義務がないため、財務負担を増やさずにコア技術を獲得できます。また特許を自社で保有することは競争力強化に直結します。特許はライバルによる模倣を防ぎ、自社サービスや製品の独自性を守る武器です。さらに、特許を有しているスタートアップは投資家からの評価も高まりやすいとされています。実際、ベンチャーキャピタル(VC)は知的財産を重視する企業に投資する傾向が強いとの調査結果があります【2】。特許出願・登録されていること自体が「アイデアに価値がある」証明となり、売上の乏しい創業間もない企業でも技術的優位性を示せます【2】。特許権は万一スタートアップが倒産しても資産として残り、売却やライセンス供与が可能なので、投資家にとっての下支え資産にもなります【2】。つまり、重要な特許を持つことはスタートアップが市場で際立ち、資金調達を有利に進める切り札となるのです【2】。
特許提供者側のメリット: 一方、特許権など知的財産の提供者(発明者本人や企業、大学等)にとっても知財出資は知財の収益化につながる有望な手段です。眠っている特許を単にライセンス料や一時金で処分するより、将来有望なスタートアップの成長に乗じて大きなリターンを得られる可能性があります。特許を現物出資して受け取った株式の価値は、スタートアップの事業成功とともに上昇します。極端な例を挙げれば、大学が保有する画期的な特許をスタートアップに提供して株式を受け取り、その企業が大きく成長・上場すれば、初期の少額出資でも莫大な含み益を得られます。実際に、スタンフォード大学はGoogle創業時に検索アルゴリズム「PageRank」の特許ライセンスと引き換えに株式を取得し、後に約3億3600万ドルで売却した例があります【4】。このように特許出資は、発明者・特許保有者にとってもハイリスク・ハイリターンな投資機会となり得ます。さらに、自らの特許が実用化され社会に普及することで技術的成果が世の中に貢献するという意義も得られるでしょう。
特許出資の課題と制度の動き
メリットの多い知財出資ですが、実現にあたってはいくつかの課題やハードルも存在します。まず特許の価値評価です。スタートアップが発行する株式数と引き換える以上、その特許権の客観的な評価額を算定する必要があります。特許の価値は技術分野や市場性によって大きく異なり、適正な評価は専門的な知見を要します。また、株式と交換することで暗黙的にスタートアップ企業の評価額(バリュエーション)が算出されてしまう点にも注意が必要です【1】。スタートアップ側としては将来の成長を見越した株価を期待する一方、特許提供者側としては自身の知財の価値を適切に反映してもらいたいという利害があります。この評価交渉がまとまらなければ知財出資の合意は難しくなります。
次に法律・制度上の制約です。日本の会社法では、現物出資による増資を行う場合、原則として裁判所選任の検査役による財産評価の吟味が必要とされています【1】。現行法では例外規定として「発行済み株式総数の1/10超を発行しない場合」や「現物出資の評価額が500万円以下の場合」など一定条件下で検査役省略が認められていますが、特許権は評価額が高額になりがちでこれら条件を超えるケースが多く、実際には検査役手続きを要することがほとんどでした【1】。この手続きは時間と費用がかかるため、迅速な資金調達を求めるスタートアップにとって負担となり、知財出資のハードルとなってきました。こうした現状を踏まえ、冒頭で述べたように法務省は知財と株式の交換を円滑にするため検査役不要となる要件の緩和拡充を検討中です【1】。具体的には適用除外となる評価額上限の引き上げ等が議論されており、制度改正により知財出資がより実務で使いやすくなることが期待されています。
さらに権利移転や契約上の留意点もあります。特許権を譲渡してしまう場合、提供者はその特許に対する権利を失います。万一スタートアップが事業に失敗すると、特許提供者は株式価値を失うだけでなく特許も手放したままになるリスクがあります。このため、場合によっては「一定期間内に事業が軌道に乗らなかった場合には特許権を提供者に返還する」といった条項を盛り込むことや、初めから特許譲渡ではなく独占ライセンス供与とすることでリスクヘッジを図ることも考えられます。いずれにせよ、知財出資の契約スキームを構築する際には法務・知財の専門家の関与が不可欠です。また、スタートアップ側も受け入れた特許を適切に活用し事業価値に結びつけなければ、せっかく株式を渡しても十分なリターンが得られない可能性があります。技術と事業戦略の整合性、知財戦略の策定も重要な課題と言えます。
知財収益化におけるスタートアップ出資の可能性
近年、企業価値の源泉が有形資産から無形資産へとシフトする中で、知的財産の収益化戦略が注目されています。特許をはじめとする知財は従来は社内活用かライセンス供与・売却が主な収益化手段でした。しかしスタートアップとのエクイティ取引という新たな手法が加わることで、眠っていた知財がイノベーション創出に生かされる機会が広がっています。例えば、日本でも国立研究開発法人のJST(科学技術振興機構)が**未利用特許の有効活用策として、自ら保有する特許をスタートアップに現物出資できる制度(SUCCESSプログラム)**を運用しています【3】。このような取り組みにより、大学や研究機関が持つ技術シーズがスタートアップ企業の成長を通じて社会実装・収益化されるケースも増えていくでしょう。知財出資は、技術・アイデアと資本をマッチングさせるオープンイノベーションの一形態とも言えます。
スタートアップ側から見ても、知財をテコに事業価値を高められれば、その後の追加資金調達や市場展開が有利になります。知財と事業を結びつけて企業価値を向上させる成功事例が蓄積されれば、知財出資はスタートアップエコシステムにおける一つの有力なファイナンス手段として定着していく可能性があります。特許を含む知的財産が株式という形で価値交換される時代が到来しつつあり、知財の持つ価値を最大化する新たな道が開けているのです。
最後に、もしお持ちの特許を収益化したいとお考えの方は、特許売買・ライセンスプラットフォーム「PatentRevenue」(https://patent-revenue.iprich.jp)に特許を無料登録し、ビジネスに役立ててみてはいかがでしょうか。
(この記事はAIを用いて作成しています。)
参考文献
- 法務省規制緩和:スタートアップ・ベンチャー支援策、知財の現物出資で自社株と交換容易に(GX行政書士法人かわら版, 2024年8月20日) – https://gxf-gogai.com/?p=467
- 知的財産を活用したイノベーションのための資金調達の機会(WIPO Magazine日本語版, 2021年6月25日) – https://www.wipo.int/ja/web/wipo-magazine/articles/opportunities-to-finance-innovation-with-ip-42076
- 事業概要|出資型新事業創出支援プログラム(SUCCESS)(国立研究開発法人科学技術振興機構) – https://www.jst.go.jp/entre/outline.html
- Mark Summerfield, “If the Patent Office is Correct, Google’s Seminal ‘PageRank’ Invention Would Be Unpatentable in Australia” (Patentology blog, 23 Oct 2016) – https://blog.patentology.com.au/2016/10/if-patent-office-is-correct-googles.html

