リソースの限られた中小企業のための特許戦略策定

株式会社IPリッチのライセンス担当です。

本記事では、中小企業の経営者や個人事業主、起業家の皆様に向けて、限られたリソースで特許を効果的に活用する知財戦略の策定方法について解説します。特許の 収益化 も視野に入れながら、中小企業でも実践できる具体的な知財戦略やコスト意識、特許権の行使、ライセンス収入・売却可能性まで包括的に紹介します。

目次

中小企業における特許戦略の重要性

企業が革新的な技術やアイデアを特許として保護することには、大きな意味と価値があります。特許権を取得すれば一定期間(通常20年)、その発明を独占できるため、競合他社による模倣を防ぎ自社の市場シェアを守る強力な経営資源となります。また、特許などの知的財産は重要な無形資産であり、保有することで企業評価が高まることも知られています。実際、知的財産権を保有する中小企業は、保有しない企業と比べて売上や利益が向上する傾向が高いとの分析結果があります【1】。欧州連合知的財産庁(EUIPO)の調査によれば、少なくとも1件の特許・商標・意匠など何らかの知的財産権を保有する中小企業は、無権利の企業に比べその後成長期を迎える可能性が21%高いと報告されています【2】。このように、特許を取得・活用することは中小企業の業績や成長力の向上に直結し得るのです。

さらに特許は将来の資金調達やM&A(企業買収)においてもプラスに働きます。ベンチャー投資家はスタートアップ企業への出資判断の際、その企業がどのような知的財産を保有しているかを重視します。独自の特許技術を持っていれば「他社には真似できない競争優位性」の裏付けとなり、競争が激化しても特許権によって自社市場を守れる可能性が高いため、投資判断の安心材料となるからです。実際、経験豊富な投資家ほどデューデリジェンス(事前調査)で特許ポートフォリオを入念に確認し、強力な特許を有するスタートアップにはより高い企業価値を認める傾向があります【4】。将来、事業売却(M&A)や株式上場を目指す際にも、保有特許の有無や質が買い手による企業評価額に大きく影響します。特許取得は単なる技術保護に留まらず、事業戦略上重要な意味を持つと言えるでしょう。

限られたリソースで実践する知財戦略のポイント

一方で、特許取得や維持には相応のコストと時間がかかる点も考慮しなければなりません。特許出願から登録までには、特許庁への出願料や審査請求料、特許事務所への依頼費用など累計で数十万~数百万円規模の費用が発生することが一般的です。さらに権利維持のため毎年特許料を支払う必要があり、複数国で権利を取る場合は国ごとに費用が増大します。資金や人材に限りのある中小企業にとって、こうした負担は決して軽くありません。また市場の変化が速い業界では、出願から権利化するまで数年のタイムラグで技術が陳腐化してしまい、せっかく取得した特許が事業に活かされないリスクもあります。「宝の持ち腐れ」にならないよう、限られたリソースの中で効果的な知財戦略を練ることが重要です。

中小企業が知財戦略を効率的に進めるために、以下のポイントに留意すると良いでしょう。

  • 特許化すべきコア技術の選別: 自社の強みとなる発明を見極め、優先度の高いものから特許出願することが重要です。闇雲にあらゆるアイデアを出願するのではなく、事前に既存の類似技術を調査して(J-PlatPat等のデータベースを活用)、新規性・競争優位性の高い有望な発明にリソースを集中させます。限られた予算・時間だからこそ出願対象の取捨選択が必要です。
  • 「特許化」か「秘匿化」かの判断: 技術内容によっては、特許にせず社内ノウハウとして秘密に保持するほうが得策な場合もあります。特許制度は発明内容を公開する代償に独占権を与える仕組みのため、公開したくない技術まで無理に特許出願する必要はありません。例えば製品化すればすぐ模倣されそうな構造や機能は特許で保護すべきですが、外部からは容易に分からない製造プロセスやレシピなどはあえて出願せず営業秘密として非公開のまま独占する戦略も考えられます。特許権の存続期間(出願から最長20年)以上に長く秘匿できる技術なら、特許にしない方が長期的独占につながるケースもあります。自社技術ごとに「特許にすべきか、それとも秘匿すべきか」を検討し、必要に応じて専門家の助言を仰ぐことも有益です【6】。
  • 特許関連コストの低減策: 限られた予算で知財活動を行うには、各種コスト軽減措置を活用しましょう。例えば、一定の条件を満たす中小企業であれば特許庁に支払う審査請求料や特許料が減額される減免制度があります【6】。また自治体によっては、中小企業の特許出願費用や外国出願費用を補助する助成金・支援制度を設けている場合もあります。さらに特許取得後の年次維持費についても、権利を必要な期間だけ維持する工夫が大切です。事業戦略上不要になった特許は早めに放棄して維持費負担を減らし、本当に有用な特許に予算を振り向けるメリハリも必要です。常に費用対効果を意識してポートフォリオを管理しましょう。
  • 外部支援の活用と戦略相談: 自社内に専門の知財部門がなくても、外部の力を借りることで効果的な戦略を立てられます。各都道府県に設置されている知財総合支援窓口では、知財戦略の立案や権利化手続きに関する相談を無料で受け付けています【6】。こうした公的支援策や専門家(弁理士・弁護士、知財コンサルタント)との相談を積極的に活用しましょう。早い段階で専門家と戦略を練れば、権利化すべき発明の優先順位づけや他社権利との衝突リスク回避策が明確になり、無駄な出願を避けて効率的に自社の知財網を構築できます。社外の知見もうまく取り入れて、小さな組織でも賢い知財経営を目指すことが大切です。

以上のポイントを踏まえて計画・実行すれば、リソースが限られていても知財戦略を自社の規模に合わせて最適化し、特許を「費用」ではなく将来への投資として活かすことが可能です。

特許の収益化戦略:ライセンスと売却による活用

特許は自社製品・サービスを独占する防御的な手段であるだけでなく、上手に活用すれば直接的な収益源にもなり得ます。中小企業の場合、自社では特許技術を活かしきれないケースも多いですが、そうした「眠れる特許」でも他社に価値を提供できるならライセンスや売却によって収入を得る道があります。

ライセンス(特許実施許諾)による収益化は代表的な方法です。自社で特許発明を製品化できない場合でも、その技術を必要とする企業にライセンスすれば、継続的なロイヤルティ収入を得られます。特許ライセンス契約では、一時金や売上高に応じた実施料率など柔軟な条件設定が可能であり、技術分野によっては年間数千万円~数億円規模のライセンス料収入が発生することもあります【4】。実際の事例として、米イーストマン・コダック社は2003年から2011年にかけて保有特許のライセンスによって約30億ドルもの収益を上げ、そのうち2件のデジタル画像関連特許をLG社やサムスン社にライセンスしただけで約10億ドルを得たと報告されています【4】。また歴史的に見ても、米国の発明家ジェローム・レメルソンは基本技術に関する多数の特許を駆使して企業から多額のライセンス料を徴収し、結果的に何兆円にも上る資産を築いたことで知られます【3】。日本においても、主婦が考案した洗濯機用の小発明が大手メーカーに採用され、契約一時金と実施料の合計で約3億円ものライセンス収入を生んだ例があります【3】。このように、特許は自社で事業化しなくても他社に使わせることで富を生む可能性を秘めているのです。

特許の売却も収益化の有力な選択肢です。特許権そのものを必要とする企業や投資ファンドに売り渡し、対価としてまとまった資金を得る方法です。特許は財産権ですから、売買の対象として市場で取引できます。実際に世界の知財取引市場では、1件の特許が数十万ドル(数千万円)以上で売買されるケースも多く報告されています【4】。著名な例では、2011年にカナダのノーテル社が保有する約6000件の特許が一括売却され、その価格は総額45億ドル(特許1件あたり約75万ドル=約8000万円)に達しました【4】。また2014年にはグーグル社がモトローラ社の事業買収を通じて約1万7千件の特許を手に入れ、その評価額は55億ドル(1件あたり約32万ドル)と見積もられました【4】。もちろん一般の中小企業が抱える特許がこれほどの高値で取引されるわけではありませんが、単体の特許であっても数百万円~数千万円規模の売却益をもたらす可能性は十分にあります【4】。近年では、このような特許売買やライセンス契約のマッチングを専門に手掛けるプラットフォームや仲介業者も登場し、自社では活用しきれない特許を現金化しやすい環境が整いつつあります。自社事業には直接貢献していない眠っている特許も、「他社にとっては喉から手が出るほど欲しい技術」ということもあります。そうした特許を積極的に市場に出してみることで、思わぬ高値がつくかもしれません。

特許侵害への対応と価値:権利行使の戦略

特許の価値を語る上で見逃せない視点として、「価値があるのは、現在進行形で侵害されている特許」というものがあります【5】。一見皮肉に聞こえるかもしれませんが、実際に他社に無断使用(侵害)されている特許こそが、大きな収益機会を秘めた特許と言えます。その理由は明快です。もし自社の特許技術を他社が使って製品化しているなら、まさにその特許には市場ニーズがあることを意味しますし、特許権者である自社は侵害者に対して差止請求や損害賠償請求といった法的措置を取ることができるからです。特に米国では、特許侵害による損害賠償額を過去6年間に遡って算定できるルールがあり、侵害が発生している特許は客観的な価値評価が行いやすいとも指摘されています【5】。そのため投資ファンドなどが特許を評価する際も、「実際に使用され訴訟の対象となっている特許」や「すぐにライセンス供与できる特許」に高い値段を付ける傾向があります【5】。

もっとも、中小企業が自力で特許訴訟を提起し大企業から賠償金を勝ち取るのは容易ではありません。特許訴訟は専門性が高く長期化しやすいうえ、裁判費用も巨額になりがちです。米国では弁護士費用を含め訴訟コストが数百万ドル(数億円)に及ぶことも珍しくなく、多くのスタートアップにとって現実的に負担できないとの指摘もあります【4】。そのため「権利行使できる=価値がある」とはいえ、実際に訴訟で戦うハードルは高いのが現状です。しかし侵害を泣き寝入りしていては特許の宝の持ち腐れになってしまいます。他社に現在使われている特許があるなら、まずはライセンス交渉による和解や使用許諾契約の締結を検討すべきでしょう。訴訟に持ち込まずとも、侵害している企業に対してライセンス提供を持ちかけ、合理的なロイヤルティ設定で合意できれば、自社に収益をもたらすチャンスになります。もし相手がライセンスに応じない場合でも、特許を第三者に売却してしまう手もあります。自社では法的措置を取れなくても、特許を買い取った相手(例えば訴訟専門のライセンス会社など)が代わりに侵害者と交渉・法的対応を行ってくれるケースもあります。いずれにせよ、「侵害されている特許」は放置せず何らかの形で対価を引き出すアクションを検討すべきです。

また、特許を複数保有していること自体が防衛手段ともなります。万一自社が他社から「特許侵害だ」と訴えられた場合でも、お互いに有効な特許を持っていればクロスライセンス(特許の相互実施許諾)による和解が可能です。つまり、自社も特許を持っていれば「お互い様」という状況を作り出し、訴訟ではなく交渉で解決しやすくなります。大企業との力関係に不安がある中小企業ほど、自社の事業分野で一定の特許ポートフォリオを築いておくことがいざというときの交渉カードになるのです。普段から特許を「守りの盾」であり「攻めの武器」として意識し、権利侵害の排除だけでなく収益創出や交渉力強化にも繋げていく視点が重要と言えるでしょう。

知財戦略を経営に活かすために

知的財産戦略は一度立てて終わりではなく、事業環境の変化や成長段階に応じて進化させ続けるものです。定期的に自社の知財ポートフォリオを見直し、強みを伸ばせる分野には積極投資し、不要な特許は整理してコストを削減するなど、常に経営戦略と知財戦略をすり合わせていくことが大切です。中小企業であっても、本記事で述べたような視点と工夫次第で効果的な知財戦略を実践できます。自社のビジネス目標と照らし合わせながら、「限られたリソースを知財で最大限活かす」戦略プランを是非策定してみてください。知財を制する者は中小企業といえども市場で大きなアドバンテージを得る時代です。知的財産を味方につけ、貴社の事業成長に役立てましょう。

なお、特許の収益化に興味がある方は、特許売買・ライセンスプラットフォーム「PatentRevenue」にご自身の特許を無料で登録できます(https://patent-revenue.iprich.jp)。眠らせている特許をお持ちの方は、ぜひ一度活用を検討してみてはいかがでしょうか。

(この記事はAIを用いて作成しています。)

参考文献

  1. 特許庁「中小企業者の知的財産活動の実態に関する分析結果」(平成29年度調査)[PDF] – https://www.jpo.go.jp/resources/report/chiiki-chusho/document/report_chusho_chizai/honpen_3-3.pdf
  2. Julian Crump, “IP protection: building value and growth for small businesses” (WIPO Magazine, 2021) – https://www.wipo.int/en/web/wipo-magazine/articles/ip-protection-building-value-and-growth-for-small-businesses-41855
  3. 日本弁理士会(社長の知財)「特許で巨万の富を築く人物も!みんなが気になるライセンス収入事情とは」 – https://www.jpaa.or.jp/shacho-chizai/episode/%E7%89%B9%E8%A8%B1%E3%81%A7%E5%B7%A8%E4%B8%87%E3%81%AE%E5%AF%8C%E3%82%92%E7%AF%89%E3%81%8F%E4%BA%BA%E7%89%A9%E3%82%82%EF%BC%81-%E3%81%BF%E3%82%93%E3%81%AA%E3%81%8C%E6%B0%97%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%82%8B/
  4. Scott Weston (Cooley LLP), “Should You Invest in Patent Protection?” (Cooley GO, 2024) – https://www.cooleygo.com/should-you-invest-in-patent-protection/
  5. 野村資本市場研究所「米国でファンドの投資対象となる知的財産権と日本への示唆」(2016年)[PDF] – https://www.nicmr.com/nicmr/report/repo/2016/2016spr10.pdf
  6. 特許庁「知的財産権を事業に活かそう」(中小企業向け支援策紹介ページ) – https://www.jpo.go.jp/support/chusho/index.html
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