共同研究がもたらすオープンイノベーションと特許収益化

株式会社IPリッチのライセンス担当です。

近年、オープンイノベーションの潮流の中で、自社外との共同研究や技術提携が活発化しており、特許など知財の収益化にも新たなチャンスが生まれています。経営者や個人事業主などに向けて、オープンイノベーションによる特許収益化のメリットや事例を解説します。特に「価値が高いのは現在侵害されている特許である」という視点にも触れ、多様な連携形態(企業間・大学との共同研究)から生まれる利益機会を探ります。

目次

オープンイノベーション時代における特許戦略

オープンイノベーションとは、企業が自社の枠を越えて外部の技術やアイデアを取り入れ、共創によってイノベーションを加速する考え方です。従来の「自前主義」と異なり、他社や大学・研究機関との連携によって新技術を開発する際、特許戦略はより重要になっています。自社で使い切れていない特許を他者に活用してもらうことで、新たな事業価値を引き出す動きが活発化しています。

現状、日本国内には約160万件もの特許が存在しますが、その大半は十分に活用されていません。特許庁の調査によれば、企業が保有する特許のうち実際に事業に利用されているのは3割程度に過ぎず、残り約7割は「休眠特許」として未活用のまま眠っていることが報告されています【1】。しかし企業側もこうした眠れる特許資産の活用には前向きであり、未利用特許の約64%については第三者へのライセンス提供に応じてもよいとしています【1】。これは約40万件もの特許が、新たなビジネスに供される潜在的チャンスを秘めていることを意味します。使われずに放置されている特許は、維持費の負担となるだけでなく、本来得られるはずだった収益機会を逃すことにもつながります。他社とのマッチングによって初めて価値が顕在化する特許も多く、オープンイノベーションの文脈でこうしたマッチングを促進することが重要です。

実際、官民を挙げた取り組みも進んでいます。経済産業省や地方経済産業局では、大企業や大学が保有する未利用特許の情報を公開し、技術を必要とする中小企業・スタートアップとの仲介を行う知財マッチング事業を展開しています【2】。各地で開催されるマッチングイベントやオンラインデータベースを通じて、「眠れる特許」を掘り起こし、新たな提携や事業創出につなげる動きが活発化しています【2】。オープンイノベーション時代においては、自社内に閉じた特許よりも、外部との連携によって活かされる特許こそが真に価値を生むと言えるでしょう。

共同研究が生む知財収益化のメリット

企業同士あるいは産学連携の共同研究から生まれた技術も、適切な知財戦略次第で大きな利益をもたらします。政府も「知的財産推進計画2022」でスタートアップ・大学の知財エコシステム強化を最重要項目に掲げ、大学発の研究成果を社会実装(事業化)につなげる方針を打ち出しました【3】。しかし実際には、大学などの研究機関で生まれた発明が十分収益化されていないケースも多いのが現状です。例えば大学の保有特許の利用率を見ると、東京大学や京都大学でさえ3割程度、それ以外の多くの大学では2割前後に留まると指摘されています【3】。この背景には、共同研究で生まれた特許を大学と企業が共有する場合の権利処理の難しさがあります。現行の特許法では、共有特許を第三者にライセンスするには共有相手の同意が必要なため、企業側が自社で実施する予定のない特許であっても他社(例えば大学発ベンチャーなど)に使わせないケースがあるのです。その結果、有望な技術が事業化されず死蔵されてしまい、大学からの起業や社会実装の機会が失われるという問題が生じています【3】。

こうした事態を打開するため、近年では契約面での工夫も始まっています。例えば東京大学では、共同研究の成果として生まれた特許について、企業側が所定期間内に正当な理由なく実用化しない場合、大学がその特許をスタートアップ等第三者にライセンスできるという条項を契約に盛り込む取り組みを始めました【3】。このように大学と企業の間で予め権利の柔軟な活用条件を定めておくことで、せっかくの発明が塩漬けにならずに済み、他の企業による製品化やサービス化につなげる道が開かれます。共同研究による知財をオープンイノベーション型で広く展開できれば、発明者(大学・研究者)にとってはライセンス収入が得られ、企業側にとっても自社だけでは生み出せなかった新事業の創出や技術導入が実現するという双方メリットがあります。

実際、大学の特許を外部展開して収益化した例も増えています。例えば京都大学は大学保有特許のライセンス収入で年間約8.9億円という国内トップの実績を上げており、第二位の東京大学(約5.6億円)を大きく上回っています【4】。大学が自ら取得した特許を企業にライセンスしたり、大学発ベンチャーを通じて事業化することで、多額の収入が大学にもたらされているのです【4】。この資金はさらに研究活動や人材育成に再投資され、イノベーションの好循環を生みます。オープンイノベーションを前提に知財の収益化を図ることは、大学・企業双方にとってWin-Winの効果をもたらすと言えるでしょう。

現在侵害されている特許の価値と収益機会

特許の価値を評価する上で、ぜひ押さえておきたい視点があります。それは「価値が高いのは、現在進行形で侵害されている特許」だという考え方です【5】。一見すると皮肉に聞こえますが、第三者が無断で実施しているような特許こそ市場での需要が大きく、権利行使によって得られる見込み利益も大きいという意味です。実際、ある発明が広く市場で使われているのであれば、それを保護する特許権には相応の価値があると考えられます。他社が自社の特許を侵害している場合、差止請求や損害賠償請求により過去に遡ってライセンス料相当額を回収できる可能性もあります【5】。例えばアメリカでは特許侵害による損害賠償を6年前まで遡って算定できる規定があり、ライセンス交渉や訴訟の際にそうした潜在的収益を根拠として主張できるため、投資ファンド等にとっても「侵害されている特許」は魅力的な資産と見なされます【5】。つまり「誰かに侵されている特許=お金になる特許」であり、需要の裏付けがある分だけ特許の評価額も高くなるということです。

この視点は、自社で保有する特許の棚卸しやポートフォリオ評価を行う上でも有用です。もし自社の特許技術が競合他社の製品・サービスで使われていないか調査してみると、思いもよらない収益チャンスが見つかるかもしれません。実際に中小企業が大企業に対して特許侵害訴訟を起こすのはハードルが高いケースもありますが、侵害されるほど有用な特許を持っていること自体がその企業の隠れた価値と言えます。必要に応じて専門家の力を借りつつ、市場で使われていそうな自社特許を洗い出し、ライセンス交渉や場合によっては法的措置も視野に入れておくことで、知財への投資リターンを最大化できる可能性があります。

特許収益化の主要手法と戦略

では、具体的に特許収益化を図る手段にはどのようなものがあるでしょうか。特許庁の調査報告書でも指摘されているように、代表的な手法として「ライセンス供与」「特許の売却」「特許権行使(訴訟)」の三つが挙げられます【5】。それぞれ収益を得るタイミングやリスク・リターンの構造が異なり、自社の状況に応じて使い分けることが重要です。主な手法とその特徴を以下にまとめます。

  1. ライセンス供与(実施許諾) – 自社では事業化しない特許技術を、他社に使わせてロイヤリティ収入を得る方法です。他社の製品・サービスに自社の特許を組み込んでもらい、その売上に応じた実施料(例えば売上高の数%)を継続的に受け取ります。製造や販売のコストを負担せずに収益化できるため、最も典型的で協調的な収益化モデルと言えます。他社の開発力や市場網を活用でき、自社では活かせなかった技術が世に出るメリットもあります。契約によっては一時金(ランプサム)を受け取ることもあり、条件次第でまとまった収入源となります。
  2. 特許の売却 – 特許権そのものを第三者に譲渡し、一括の対価を得る方法です。不要な特許を売り切ってしまうことで、将来の年金(維持年費)負担を削減しつつ即座に資金化できるメリットがあります【5】。売却後は特許権が相手方に完全移転するため、自社はその技術を独占できなくなりますが、その分高額の売却益が期待できる場合もあります。また近年では特許売買の仲介会社やオンライン市場も登場しており、眠っている特許を必要とする企業に橋渡しするマーケットが形成されつつあります。実際、技術分野によっては1件あたり数百万円規模で取引される例もあるようです。事業戦略上すぐに資金が必要な場合や、自社で活用できない特許を他社に託した方が社会的に有意義な場合に、有力な選択肢となるでしょう。
  3. 特許権行使(訴訟・係争) – 自社特許を無断使用している他社に対し、法的措置によりライセンス契約や損害賠償を勝ち取る方法です。警告から交渉による和解(ライセンス供与)に至るケースもあれば、交渉が決裂して裁判に発展するケースもあります。他社による侵害を放置せず権利行使することは、適切な対価を得るだけでなく、自社の特許の独占的地位を守る上でも重要です。ただし訴訟には時間とコストがかかり、勝訴のリスクも伴います。また大企業相手に中小企業が訴訟を戦うのは負担が大きいため、実際には弁護士や専門会社(NPE: 特許管理専門業者)と提携して進めることもあります。それでも、明確な侵害の事実と強い特許権を持っていれば、裁判上の和解金やライセンス料として莫大なリターンを得られる可能性があります。

なお、大企業同士の場合はお互いの特許を多数保有しているため、クロスライセンス(相互実施許諾)によって権利行使を差し控える協定を結ぶことも一般的です。これは直接収入を得る手段ではありませんが、自社が特許侵害で訴えられた際に相手も侵害している自社特許を差し出して和解するといった形で、訴訟コストを抑えつつ互いの自由な事業活動を確保する戦略です。オープンイノベーションの下では競合企業とも部分的に協調する局面がありますが、自社に有利な条件で提携するためにも、交渉カードとなる特許をしっかり保有・管理しておくことが求められます。

オープンイノベーション成功事例と特許収益化の効果

オープンイノベーションによる特許収益化は、既に数多くの成功事例が報告されています。日本でもその一端を示す例があり、大企業による高度な研究開発だけでなく、身近な生活発明から特許収益を上げたケースも注目に値します。例えば、とある主婦発明家のKさんは洗濯機の「糸くず取りフィルター」を考案し、大手家電メーカーとライセンス契約を結んだ結果、累計3億円ものライセンス料収入を得ることに成功しました【6】。また別の主婦Oさんは衣服に貼る「汗取りパット」を発明し、製品1個あたり売上の3%をロイヤリティとして受け取る契約をメーカーと締結、ピーク時には毎月1,300万円ものライセンス収入を得ていたと報じられています【6】。これらは日用品のアイデアから生まれた発明が大企業との提携によって商品化され、発明者にも多大な収益をもたらした例です。

一方、米国スタンフォード大学では大学保有の画期的な検索アルゴリズム特許をベンチャー企業のグーグルに独占実施許諾する代わりに同社の株式を受け取りました。その後、スタンフォード大学は保有していたグーグル株1百数十万株を売却し、約3億3,600万ドル(約336億円)もの巨額の収益を得ています【7】。これは大学が特許ライセンスを通じて得た史上例のないリターンとして知られ、まさに優れた発明が適切な形で事業化されれば発明者側にも莫大な利益をもたらす好例と言えます。

さらに日本企業同士のオープンイノベーション事例としては、ある大手メーカーが自社で使いきれないAI関連特許群をオープンに公開し、中小IT企業とのライセンス契約を複数結んで新規事業を創出したケースなどがあります(※具体社名は非公開事例)。また、経済産業省の支援するプログラムを通じて、大企業からスピンオフしたスタートアップが親会社の休眠特許を活用して新製品を開発・市場投入し、親会社にはライセンス料収入と製品の間接的利益が入るというWin-Winの成果を上げた例もあります。こうした成功の背景には、技術の独創性や市場ニーズの高さはもちろん、適切なパートナー選定と粘り強い交渉によって互恵的な契約条件を引き出したことが共通しています。オープンイノベーションに積極的な企業文化と、知財を戦略的に活用しようという経営の姿勢があってこそ、特許収益化は大きな事業インパクトを生むのです。

オープンイノベーションを支える特許収益化プラットフォーム

最後に、特許収益化を実現する上で役立つプラットフォームや支援策について触れておきます。自社だけでライセンス先や特許の買い手を探すのが難しい場合、専門のオンラインプラットフォームを活用する方法があります。近年、特許の売買やライセンス契約の仲介を行うサービスが登場しており、まさにオープンイノベーションの基盤として機能しています。たとえば弊社IPリッチが運営する「PatentRevenue」(https://patent-revenue.iprich.jp )は、企業や個人が自分の特許情報を登録することで、関心を持つ他企業とのマッチングを図り、ライセンス契約や特許売買につなげるためのプラットフォームです。自社では繋がりのない異業種の企業にもアプローチでき、眠っていた特許に光を当てる場として活用できます。登録は無料で始められるため、まずはお手持ちの特許を掲載してみることで、思いがけない引き合いや提携話が持ち上がるかもしれません。

オープンイノベーションの成功には、「技術を必要とする人」と「技術シーズを持つ人」を結びつけることが不可欠です。その意味で、特許流通プラットフォームの存在は知財版のマッチング市場とも言え、今後ますます重要性を増すでしょう。社内に眠る特許資産を的確に評価し、積極的に外部へ開放していく企業が、これからの時代に新たな価値創造と収益機会を手にすると言っても過言ではありません。ぜひ自社の知財ポートフォリオを見直し、オープンイノベーションを通じた特許の収益化にチャレンジしてみてください。

(この記事はAIを用いて作成しています。)


参考文献

  1. 特許庁総務部企画調査課「特許情報を活用したビジネスマッチングレポートの開発・提供」(特許庁 報告書, 2019年) – https://www.jpo.go.jp/resources/report/chiiki-chusho/matching-tool.html
  2. 中部経済産業局「知財ビジネスマッチング事業」(公式サイト) – https://www.chubu.meti.go.jp/b36tokkyo/seisaku/chizai_businessmatching/matching_toppage.html
  3. 経団連タイムス「スタートアップ・大学を中心とする知財エコシステムの強化」(2023年1月12日号) – https://www.keidanren.or.jp/journal/times/2023/0112_05.html
  4. J-CAST会社ウォッチ(鷲尾香一)「大学での研究成果はどれくらい『収入』に結びつくのか? 特許件数、特許権収入、知的財産権収入が多い大学ランキング」(2023年5月7日) – https://www.j-cast.com/kaisha/2023/05/07459964.html
  5. 日本貿易振興機構ニューヨーク事務所『米国における知財の活用状況に関する調査報告書』(2025年3月) – https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Ipnews/us/2025/202503.pdf
  6. 日本弁理士会(社長の知財)「特許で巨万の富を築く人物も!みんなが気になるライセンス収入事情とは」(2018年3月) – https://www.jpaa.or.jp/shacho-chizai/episode/%E7%89%B9%E8%A8%B1%E3%81%A7%E5%B7%A8%E4%B8%87%E3%81%AE%E5%AF%8C%E3%82%92%E7%AF%89%E3%81%8F%E4%BA%BA%E7%89%A9%E3%82%82%EF%BC%81-%E3%81%BF%E3%82%93%E3%81%AA%E3%81%8C%E6%B0%97%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%82%8B/
  7. Los Angeles Times “Stanford Reaps Windfall From Google Stock Sale” (2005年12月2日) – https://www.latimes.com/archives/la-xpm-2005-dec-02-fi-calbriefs2.3-story.html
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