M&Aによる事業拡大のポイント:タイミングを探る

株式会社IPリッチのライセンス担当です。
企業がさらなる成長や変革を目指す際、M&A(合併・買収)は重要な戦略の一つです。本記事では、経営者や起業家、個人事業主の皆様に向けて、「M&Aを検討すべきタイミング」について解説します。中小企業の事業承継から大企業のスピンオフ、新興スタートアップの拡大まで、様々な規模・目的で活用されるM&Aを包括的に取り上げ、事業拡大の判断ポイントを整理します。M&Aの適切なタイミングを見極め、知財も活かした戦略で企業価値を最大化するヒントにしていただければ幸いです。
M&Aで事業拡大を図るメリットと目的
M&A(Mergers and Acquisitions)は、自社と他社を統合したり他社の株式・事業を買収したりすることで、迅速に事業規模や競争力を高める手法です[1]。その目的は多岐にわたり、市場シェアの拡大、新規市場への参入、規模拡大によるコスト削減、特許技術やノウハウの獲得、事業ポートフォリオの多角化などが挙げられます[1]。自社に不足するリソースを補い、社内開発では得られないスピードで成長機会をつかめる点が大きなメリットです。
近年では特に知的財産(IP)の重要性が高まっており、企業価値に占める無形資産の割合は年々上昇しています。米国の大型企業では企業価値の約90%が特許や商標などの無形資産だと指摘されており[2]、M&Aの実務では知財資産の評価が交渉を左右します。しかし、デューデリジェンス(資産評価)で知財が過小評価されたり無視されたりするケースも少なくありません[2]。このギャップを防ぐには、知財が将来どれほど収益に貢献するかを事前に数値化し、買い手に説明できるよう準備することが有効です。
中小企業の事業承継とM&A
日本の中小企業では、経営者の高齢化に伴う後継者不足が深刻です。経済産業省の調査によれば、2025年までに70歳以上となる中小企業経営者は約245万人に達し、そのうち約127万社(日本企業全体の1/3)が後継者未定という状況にあります[3]。こうした中で事業を存続・発展させる有力な手段として注目されているのがM&Aによる事業承継です[3]。
オーナー社長にとって会社を第三者に譲渡する決断は容易ではありません。しかし、事業を廃業させ従業員の雇用や取引先に影響を与えるより、適切な買い手にバトンを渡すことで企業の命脈を保つことができます。業績が好調なうちに譲渡すれば企業価値も高く評価されやすいため、後継者がいない場合は早めにM&Aを検討するのが望ましいとされています[1]。また、経営者本人がまだ元気なうちに検討を始めることも重要です。健康上の問題が出てからでは交渉に支障をきたす恐れがあり、元気なうちに引退準備をすることでM&Aプロセスを円滑に進められます。
国や自治体も中小企業の事業承継M&Aを支援しており、専門家によるマッチングや補助金制度が整いつつあります。後継者不在という課題に直面する経営者にとって、M&Aは会社の歴史や技術、従業員の雇用を次世代につなぐ「第二の創業」とも言える選択肢です。特に自社に独自の技術や特許がある場合、それを求める企業に引き継いでもらうことで、その知財が死蔵されず収益を生む可能性も高まります。売り手側は自社の知財資産を丁寧に棚卸しし、その価値を可視化して提示することで、買い手から適正な評価を引き出せます[2]。
大企業の戦略的M&A:スピンオフから技術獲得まで
大企業においてもM&Aは重要な経営戦略です。自社グループを再編し事業の選択と集中を進めるために、事業の切り離し(スピンオフ)やカーブアウト型のM&Aが活用されます。スピンオフとは、企業が特定の事業部門や子会社を親会社から独立させ、新会社として分離する手法です[4]。多角化して肥大化した事業ポートフォリオを整理し、それぞれの収益性や成長性を向上させる目的で用いられるケースが多く、経営資源を中核事業に集中させるメリットがあります[4]。近年では経営の効率化や新規事業の成長促進を狙って国内外でスピンオフ事例が増えており、親会社はコア事業に専念しつつ、分離した新会社は独自の経営判断で迅速な成長を目指せます。
また大企業は、自社にはない革新的技術やサービスを獲得するためにスタートアップ企業の買収にも積極的です。日本でも大企業がベンチャー企業を買収して新規事業を取り込む動きが活発化しています[5]。大企業側の狙いは、外部の新技術やデジタル分野のノウハウを迅速に自社に取り入れることで、変化の激しい市場での競争力を維持・強化することにあります。買収後は、大企業の持つ営業ネットワーク・技術・人材・資金といった豊富なリソースをスタートアップに提供し、その成長を加速させることが可能です[5]。
さらに、大企業同士の業界再編もM&Aの重要な局面です。市場環境の変化に対応し生き残りを図るための統合や、ライバル企業同士の経営統合によるシナジー創出など、大型M&Aが行われることもあります。法規制の変更や市場縮小、技術革新などを契機に業界全体の再編機運が高まると、複数の買い手・売り手が現れてM&Aのニュースが飛び交います。景気が好調な局面では買収資金に余裕のある企業が増えるため、有望な買収ターゲットを巡って競争入札となり、結果的に売り手に非常に有利な条件が提示されることもあります。逆に景気が急速に悪化すると買い手が引いて売り手過多となり、希望する条件での売却が困難になるため、経済動向や業界トレンドを見極めたタイミング判断が重要です。
スタートアップの成長とM&A
スタートアップ企業にとって、M&Aは事業拡大と資金確保の手段であると同時に、創業者や投資家にとってのエグジット(投資回収)戦略でもあります。近年、日本のスタートアップ・エコシステムでも「大企業への事業売却によるバイアウト」が一つの成功モデルとして定着しつつあります[6]。特に自社でIPO(株式上場)するには規模や収益面でハードルが高い場合でも、事業シナジーのある大企業に買収してもらえば、短期間での成長加速と資金確保が可能になります。買収されたスタートアップは、大企業グループの一員となることで信用力が増し、顧客基盤や販路の提供、研究開発リソースの投入など様々な支援を受けられます。その結果、単独では達成し得なかった飛躍的成長を遂げるケースもあります。
実際の事例として、IoTプラットフォームを提供していたスタートアップのソラコムは、KDDI傘下に入った後も契約回線数を順調に伸ばし、買収額約200億円規模と言われた取引から数年で東証グロース市場へ新規上場を果たしました[6]。このように、スタートアップ側にとってM&Aは「大企業の力を借りて自社事業をスケールさせる」機会となり、買い手側にとっても将来有望な企業をグループ内に取り込むことで新たな収益源を育てることにつながります。
もっとも、スタートアップM&Aには売り手・買い手双方に注意点もあります。売り手側は、自社の独自性や文化が大企業の中で埋没しないか、買収後も一定の裁量が認められるか、といった点を確認する必要があります。また、買収金額が期待に見合わない水準になりやすいという指摘もあり[6]、創業者は自社の将来価値と提示額を冷静に比較検討しなければなりません。一方、買い手側は急成長企業の組織統合に伴う人材流出リスクや、技術・製品が本当に自社とシナジーを発揮するかを慎重に評価する必要があります。デューデリジェンス(資産・リスク精査)においてスタートアップ側の知財権や契約関係の確認を徹底することは言うまでもありません。
M&Aを検討するタイミング:判断ポイントまとめ
以上のように、M&Aは企業の置かれた状況や目的によって様々な形で活用されますが、「いつそれを実行に移すべきか」のタイミング判断が成功可否を大きく左右します。最後に、事業拡大や承継を目的にM&Aを検討すべき主なタイミングと判断ポイントをまとめます。
- 業績が好調なとき:会社の売却を検討する場合、自社の業績がピークに近い好調時こそ最適なタイミングです。業績好調で将来性もある企業は買い手から高く評価されます[1]。逆に業績が悪化してからでは企業価値が目減りし、買い手が見つからない恐れもあります。
- 経営者の引退時期が近づいたとき:年齢や健康上の理由で事業継続が難しくなる前に後継者問題の解決策としてM&Aを検討します。社長が健在なうちに交渉を進める方が買い手も安心でき、スムーズに承継が実現します[3]。
- 好景気・資金調達環境が良いとき:景気が良く市場に資金が潤沢な時期は買い手企業の数も増え競争入札になりやすいため、売り手に有利なタイミングです[1]。
- 業界再編の波が来ているとき:統合・淘汰の動きが見られる場合、防衛的・攻勢的いずれの観点からもM&Aを検討すべき時です。
- 自社だけでは得られない資源が必要なとき:技術革新や市場ニーズの変化により、自社にない新技術や製品、専門人材が必要になる場面では、該当リソースを持つ企業を買収することで一気に不足を補えます。
- 知的財産を巡る動きがあったとき:自社の保有特許が第三者に無断使用(侵害)されていることが判明した場合、「侵害されている特許」は実は非常に価値が高い可能性を秘めています[8]。侵害の証拠がある特許は需要の高さを裏付けるため、ライセンス収入や高値売却のチャンスになります。
最後に、「早めの準備」がどのケースでも共通の鍵となります。M&Aは事が起きてから慌てて動いても思うような成果は得にくいものです。経営者として、自社の成長戦略や将来の承継問題を見据え、平時から選択肢の一つとしてM&Aを研究・準備しておくことが重要です。専門家への相談や自社資産(特に知的財産)の棚卸し・価値評価を定期的に行い、いざというとき「いつでも動ける」状態にしておきましょう。
知財の収益化とM&A戦略
知財は単に守るべきリスク要因ではなく、攻めの価値創造資産です。M&Aの交渉においても、売り手企業が自社の特許や技術の価値を証明できれば、買い手から提示される条件は大きく向上します[7]。そのために有効なのが知財の収益化実績を示すことです。例えば、自社で使い切れていない特許があれば第三者にライセンス供与して収益を上げておくことで、「この特許は実際に収益を生む」という実績を示せます。また、現在侵害されている特許は需要が裏付けられているため、市場価値が高いと判断されます[8]。知財の棚卸しと強化は、適切なタイミングでM&Aを成功させるための下準備として欠かせません。
まとめ
M&Aを検討すべきタイミングは企業ごとに異なりますが、事業拡大のチャンスを逃さず掴むためには、経営環境の変化や自社のライフステージを的確に把握し、早め早めに打ち手を講じることが肝要です。特に知財を保有する企業の経営者の方は、その知財が持つ本当の価値を見落とさないでください。知財は交渉次第で事業価値を数段高める武器になります。
なお、特許をお持ちで「自社で活用しきれていない」「収益化したい」とお考えの方は、当社が運営する特許の売買・ライセンスマッチングプラットフォーム「PatentRevenue」(https://patent-revenue.iprich.jp)に是非無料登録をご検討ください。知財の専門家によるマッチング支援を通じて、皆様の特許を収益に繋げるお手伝いをいたします。大切な知的財産を眠らせず、ぜひ有効活用をご検討ください。
(この記事はAIを用いて作成しています。)
参考文献
- 信金キャピタル株式会社「M&Aの最適なタイミングはいつ?」https://www.shinkin-vc.co.jp/ma/basic/timing/
- M&A Works「〖保存版〗M&Aで気を付けるべきリスク18選 対策チェックリスト一覧」https://maworks.co.jp/risk-in-ma
- 経済産業省 中小企業庁「中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題」https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/hikitugigl/2019/191107hikitugigl03_1.pdf
- M&Aキャピタルパートナーズ「スピンオフとは?意味や手法、メリット・デメリットなどについて解説」https://www.ma-cp.com/about-ma/spin-off/
- Beyond Global Engineers「大企業の成長戦略に変革をもたらす『スタートアップM&A』を通じた新規事業創出とは」https://www.beyondge.com/column/startup-ma
- LegalOn Startup JAM「スタートアップのM&Aとは?最新M&A事例10選やメリット、成功のコツも解説」https://www.legalon-cloud.com/startup-jam/startup-ma
- 株式会社IPリッチ「知財を軽視して後悔? M&Aで売り手が陥りがちなミスと対策」https://patent-revenue.iprich.jp/一般向け/1742/
- GreyB “Power of Patent Infringement Analysis to get Higher Value for your IP-Assets” https://www.greyb.com/blog/power-of-patent-infringement-analysis/

