M&A後の知財問題を防ぐ、事前対策のススメ

株式会社IPリッチのライセンス担当です。
本記事では、M&A後に発覚する知財問題を未然に防ぐための事前対策について、経営者・個人事業主・起業家の方に向けて解説します。M&A(企業買収・統合)の場面では、買収後になって相手企業の知的財産(特許・商標・著作権など)に関する思わぬ問題が見つかり、トラブルに発展するケースがあります。そのような事態を避け、安心してM&Aを成功させるために、事前の知財デューデリジェンス(調査)や契約面での対策が不可欠です。本記事を通じて、典型的な知財トラブルのパターンやM&Aにおけるリスクと、その効果的な事前対策について理解を深めていただき、自社の知的財産を守りつつ最大限に活用するヒントにしていただければ幸いです。
知財とM&Aの事前対策が不可欠な理由
知的財産(知財)は企業の競争力の源泉であり、その評価を見誤ると予期せぬリスクを招いたり突然競争力を失うおそれがあります(2)。実際、M&A後に発覚する知財問題にはいくつかの典型的パターンが存在します。それらの例とリスクを以下に紹介します。
- 第三者特許の侵害による訴訟リスク: 買収対象会社(ターゲット)が他社の特許権を侵害していると、買収後に第三者から損害賠償請求や製品・サービスの差止め請求を受ける可能性があります。対象会社が知財係争を抱えている場合、M&A自体を見送りせざるを得なかったり、事業価値が大きく毀損されることにもなりかねません(3)。たとえ紛争が表面化していなくても、見過ごされた特許侵害問題が後から地雷のように発覚するリスクがあります。
- ライセンス契約の解除リスク(チェンジ・オブ・コントロール条項): 対象会社が第三者から技術やコンテンツのライセンス供与を受けて事業展開している場合、そのライセンス契約に「会社支配権の変更(Change of Control)があった場合は契約解除できる」という条項が含まれていることがあります(1)。この場合、買収後に肝心の技術やコンテンツの利用権を失い、事業が立ち行かなくなる深刻なリスクとなります。
- グループ内ライセンスから外れるリスク: 親会社が包括的なクロスライセンス契約を結んでおり、その傘の下で対象会社が他社特許を利用できていた場合でも、対象会社をグループから切り離して買収するとそのライセンスの傘から外れてしまうことがあります(1)。すると買収後に突然必要な技術が使えなくなり、事業継続に支障を来す恐れがあります。
- 知財の権利帰属の不備(職務発明の未整理など): 従業員や元社員の発明について適切な契約(職務発明規定による権利譲渡や報酬支払い)がなされていなければ、その発明による特許権は従業員個人に帰属し、会社が自由に利用・譲渡できない可能性があります(4)。過去には職務発明の対価として数百億円の支払いを命じられた例もあり、極めて重大な問題です(8)。
- 商標・ブランドに関するトラブル: 対象会社のサービス名称やブランドが、他社の商標権と衝突しているケースもあります。買収後に自社ブランドとして展開しようとしたところ、実は類似商標が他社に既に登録されており、名称変更を余儀なくされたり損害賠償を請求される可能性があります。また、主要国で商標登録が未取得だった場合、海外展開時に大きな支障となります。
- ソフトウェアのライセンス・OSS利用リスク: ソフトウェアやIT系企業のM&Aでは、対象会社が利用しているオープンソースソフトウェア(OSS)の扱いも重要なチェックポイントです。ライセンス条件違反や無許諾利用があれば、買収後に法的リスクが顕在化します(3)。
以上のように、M&A後に発覚する知財トラブルは事業価値の毀損や予期せぬ追加コストをもたらし、最悪の場合にはM&Aそのものの失敗につながりかねません(3)。したがって、これらのリスクを事前に洗い出し対策することが極めて重要です。
M&Aと知財の事前対策:デューデリジェンスの要点
M&Aを成功させるには、買収前に徹底した知財デューデリジェンス(知財DD)を行い、潜在的なリスクを洗い出しておくことが肝要です。知財DDとは、法務デューデリジェンスの一環として対象会社の知的財産に関する権利状況やリスクを調査・評価するプロセスを指します(2)。その目的は、他のDDと同様にリスクの抽出と価値の算定にあります(7)。
▼ 知財DDで確認すべき主なポイント(チェックリスト)(4)
- 他社の知的財産権を侵害していないか?(競合他社の特許クリアランス調査や商標の類似調査など)
- 保有している知的財産権は何か?(特許・実用新案、商標、意匠、著作物、ノウハウ等のリストアップ)
- 知財の管理体制は整備されているか?(社内規程や台帳、秘密情報の管理方法、職務発明の取り扱いルール)
- ライセンス契約の内容は適切か?(Change of Control条項やロイヤリティ条件の有無など)(1)
- 特許権の権利範囲・有効性は十分か?(技術的・法律的観点から無効リスクを評価)
- 職務発明規定は整備され適切に運用されているか?(4)
- 共同研究・委託開発成果の権利配分は明確か?
- 商標やドメインは漏れなく確保されているか?
- OSS利用ポリシーは適法か?
知財DDでは対象会社の知的財産に関するリスクと価値をあらゆる角度から調べることが重要です(7)。専門の弁理士・弁護士や技術に詳しい知財コンサルタントの協力を得て、技術的・法律的観点から綿密に評価することが不可欠です(7)。
また、知財DDの結果明らかになった懸念事項については、M&Aの交渉段階で対策を講じます。例えば、外部ライセンスに依存している技術についてはライセンサーから事前に承諾を得る、権利未移転の発明者がいる場合は買収前に権利譲渡契約を締結させるなど、リスク低減策を実行します。知財DDによって潜在的な問題を洗い出し早期に手当てしておくことで、買収後のトラブルを大幅に減らせます。
なお、知財DDは買主側だけでなく売主側(対象会社側)でも事前に自主的に実施しておくことが望ましいです(4)。いわゆる「セルサイドDD」を通じて、将来のM&Aや出資に備え、知財リスクによる評価ダウンを回避できます。
事前対策を反映したM&A契約の知財条項
事前のデューデリジェンスを行っても、リスクを完全に除去できるとは限りません。そこで、M&A契約(株式譲渡契約や事業譲渡契約など)において、知財リスクを最小化する条項を盛り込みます。
- 表明保証条項: 売主に「対象事業が第三者の知財権を侵害していない」などの事実を保証させる(5)。
- 補償(インデムニティ)条項: 表明保証違反があった場合に売主が損害を補償する仕組みを置く(5)。
- エスクローや価格調整: 知財リスクの程度に応じ、代金の一部留保や支払い時期の後ろ倒しでリスク分担を明確化。
- 具体的対応義務: デューデリジェンスで判明した課題の解決(特許譲渡登録の完了、商標出願の実施など)を契約条件化する(1)。
- 通知・協力義務: 知財紛争発生時の相互協力や情報共有を契約に明記する。
買主側でも事前調査で把握できたはずのリスクを見逃していた場合は、契約上の救済が制限される恐れがあるため、注意義務を果たすことが重要です(5)。
知財の収益化とM&Aシナジー
知財は防御資産であると同時に収益化可能な攻めの資産でもあります。近年、特許や商標を自社で活用するだけでなく、他社へのライセンス提供や売却を通じて収益化する動きが加速しています。米国では知財集約型産業がGDPの約4割を占めるとされ、日本でも眠れる特許資産を活かそうという機運が高まっています(7)。
M&Aの文脈でも、買収企業が持つ特許群のうち自社では使わない技術をライセンス提供してロイヤリティ収入を得たり、未活用の知財を売却して資金を確保することで、買収投資の回収を早められます。反対に、買収候補の企業を評価する際には、その知財ポートフォリオに収益化できそうな資産が潜在していないか検討することが、投資対効果を高める鍵となります。
こうした知財収益化を促進するため、当社IPリッチが提供する「PatentRevenue」(https://patent-revenue.iprich.jp)は、企業や大学などが保有する特許をライセンスや売却という形で流通させるプラットフォームです(6)。専門家が特許のマッチングを支援し、特許保有者は無料で登録できるため、自社で未活用の技術資産から収益を得るチャンスを拡大できます。知財を活用した資金確保やオープンイノベーション推進に、ぜひ活用をご検討ください。
まとめ
- 知財リスクはM&Aの成否を左右する重大要素
- デューデリジェンスで潜在的問題を事前に洗い出す
- 契約条項でリスク分担・対応義務を明確化する
- 知財収益化の視点でM&Aシナジーを最大化する
知財を適切に守り育て、さらには収益化へとつなげることで、M&Aの成果と企業価値を飛躍的に高めることができます。自社の知財を棚卸しし、リスクと可能性を見極めたうえで、攻めと守りの両面から知財戦略を構築してください。
(この記事はAIを用いて作成しています。)
参考文献
- 潮見坂綜合法律事務所 吉羽真一郎「M&Aにおける知的財産デューデリジェンスのエッセンス」https://businessandlaw.jp/articles/a20241105-1/
- マネーフォワード ビジネス編集部「知的財産デューデリジェンス(知財DD)とは?目的や手順などの全体像を解説」https://biz.moneyforward.com/ipo/basic/7061/
- 小野寺理沙「スタートアップに潜む知財紛争リスクにご用心、M&A前に調査検討すべき項目」https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/2212/26/news018.html
- 特許庁 IPBASE「知的財産デュー・デリジェンス/標準手順書 Seller’s DDのススメ」https://ipbase.go.jp/learn/content/due-diligence/page01/
- 弁護士法人M&A総合法律事務所 土屋勝裕「M&Aトラブル事例:M&Aで買収した会社が第三者の知的財産権を侵害していた場合!」https://xn--ma-rj4a7b0en.com/archives/mandatrouble_chitekizaisanken/
- 株式会社IPリッチ「特許売買・ライセンスプラットフォーム『PatentRevenue』の簡易版(LP)を公開 – 特許の流通を加速し、収益化を支援!」https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000129374.html
- Caldwell IP Law Group「知財の氷山:M&A取引における表面下の隠れた価値を探る」https://www.chiplawgroup.com/知財の氷山:ma取引における表面下の隠れた価値/?lang=ja
- Anderson Mori & Tomotsune「M&Aにおける知的財産権の取扱い」https://www.amt-law.com/asset/pdf/bulletins6_pdf/101806_2-1.pdf

