他者が逃れられない特許、逃れられる特許の違い

株式会社IPリッチのライセンス担当です。

今回は、「他者が逃れられない特許、逃れられる特許の違いとは?」というテーマで、特許の取り方を考える上で非常に大事な考え方について解説します。競合に回避されにくい強い特許の取得戦略と知財収益化のポイントを押さえることで、経営者・起業家の皆様が効果的な知財戦略を立てる一助になれば幸いです。

目次

強い特許(逃れられない特許)と弱い特許の違い

まず、「他者が逃れられない特許」とはどのような特許でしょうか。平たく言えば、競合他社にとって設計回避(デザインアラウンド)が極めて難しい特許のことです。競合がその特許発明と同じ「目的・機能・効果」を達成しようとしたとき、別の手段が簡単に見つからないものが強い特許になります。例えば、「その特許を避けて代替手段を取ろうとすると製品が成り立たなくなる」ような発明は回避が困難な特許=強い特許だと言えます【1】。要するに、強い特許とは競合が本当に嫌がる特許であり、競合が特許回避のために非常に複雑・高コストな迂回策を取らないと同じ性能を実現できないようなものです【1】。

一方、「他者が逃れられる特許」は言い換えれば弱い特許です。競合他社が少し工夫すれば簡単に迂回できてしまう特許では、せっかく権利を取っても防御力・独占力が弱いと言えます。例えば、その発明と同等の効果を達成する別の方法がすぐに思いついてしまう場合や、特許請求の範囲(クレーム)が限定的すぎて少し仕様を変えるだけで非侵害を主張できてしまう場合です。こうした特許は競合にとって脅威にならず、「避けて通れる特許」になってしまいます。強い特許か弱い特許かを判断する際には、「この特許の網をかいくぐって競合が代替技術で同じことを実現できないか?」という視点が重要です。言い換えれば、他社が特許を侵害しない範囲で発明のコンセプトだけ真似できてしまうようでは、その特許は弱いと言えます。実際、発明に対応する製品に合わせすぎたクレームを書くと、他社は巧みに回避策を講じて特許権侵害にならないようにしつつ発明の美味しい部分だけを真似できてしまうと指摘されています【3】。強い特許を目指すなら、競合が安易に代替できない独自性を確保することが肝心です。

強い特許の取り方:他者に回避されない権利化の戦略

では、競合に回避されにくい「強い特許」の取り方とは具体的にどんな戦略になるでしょうか。ポイントの一つは、発明の本質(コア技術)を的確に捉え、クレームを可能な限り広く確保することです。特に、競合にとって代替手段がない重要な構成要素や、製造工程上欠かせないステップを発見できれば、それを特許として権利化することで画期的な大発明でなくとも強い特許に仕立てることが可能です【2】。その際、明細書・クレーム作成上のコツとしては、発明の核心となる必要不可欠な要件だけで主クレームを構成し、細部には踏み込まないことが挙げられます【2】。余計な限定を付けず本質的要素だけをクレームすることで、権利の範囲を広く保てます。また、用語の選定も重要です。例えば発明の説明で「ボルト・ナット」と具体的に書くのではなく、より上位の概念である「固定具」などと言い換えて包括的に表現することで、同じ機能を果たす異なる手段もカバーできるようにします【2】。このようにクレームを広く取る技術は、競合による設計変更を許しにくくする効果があります。

反対に、弱い特許になってしまう典型的な原因はクレームの狭さにあります。発明を特定するあまり、実施形態そのままの限定事項(材質や具体的数値、手段など)を入れすぎると、特許取得後に競合がその限定を外したり置き換えたりして容易に回避してしまいます。例えば、レーザーで材料を切断する装置の発明で、クレームを「レーザー照射により切断する手段」とだけ記載して特許を取ったとしましょう。この場合、競合がレーザーの代わりにウォータージェットや機械的なカッターで切断する装置を作れば、同じ切断という機能・効果を実現しながらレーザーという限定を外すことで特許侵害を回避できてしまいます。実際に特許実務でも、「製品に引きずられて請求項を記載してしまうと、他社に発明のコンセプトだけ真似されて特許権侵害にならないよう回避されてしまう」という失敗がよくあるとされています【3】。したがって、強い特許を取るには競合が考えうるバリエーションまで目配りしておくことが大切です。必要に応じて周辺発明も含めて複数の特許出願を行い、網を張る戦略(特許網の構築)も有効でしょう。

実例として、特許のクレームの書き方一つで競合に逃げ道を与えてしまったケースに「切り餅特許訴訟」があります。越後製菓が取得した切り餅の特許では、発明の要点を「餅の側面に切り込みを入れる」ことに置いて権利化しましたが、そのクレームには「上面または下面ではなく側面に切り込み部を設け…」と記載されていました【4】。被告のサトウ食品側はこの「上面または下面ではなく」という文言に着目し、自社の商品で餅の上下面にも切れ目を入れることで「側面“だけ”ではないから自社製品は特許の範囲外だ」と主張しようとしたのです。事実、この裁判では一審と二審で特許の技術的範囲の解釈が分かれ、侵害の成否が真っ向から争われました【4】。最終的に特許権侵害が認められ約8億円の賠償命令が下りましたが【4】、この例からも分かるようにクレームの表現次第で他社に逃げ道を与えてしまうリスクがあります。強い特許にするには、「自社の特許発明を他社がどうすれば避けられるか?」を常に考え、その逃げ道を潰す形で権利範囲を定めることが重要です。

特許侵害の立証が容易なケースと困難なケース(ドローン vs インク)

特許を取得した後、いざ競合他社を特許侵害で訴えようとしても、相手が本当に特許を侵害しているかを立証できなければ意味がありません。実は特許の種類や内容によって、この特許侵害の立証のしやすさ(侵害の発見のしやすさ)には大きな差があります【2】。ここではドローンとインクを例に、侵害立証の容易なケースと困難なケースを比較してみましょう。

まず、ドローン(無人航空機)に関する発明を例にします。例えば、ドローンの機体構造に関する画期的な特許を持っている場合を考えてみましょう。その特許がドローンのある部品やメカニズムに関するものであれば、他社が販売するドローンを入手して分解・観察することで、自社特許と同じ構造が使われているか比較的容易に確認できます。ドローンは完成品として市場に出回る製品ですから、競合品を購入してその構造や動作を分析すれば、特許発明との一致を直接確認できるわけです。特許請求の範囲に該当する構成要件が目視や計測で把握できる場合、証拠を揃えやすく侵害の立証も容易です。また、ドローンのような製品特許であれば、その特許侵害の責任を問う相手(被疑侵害者)も特定しやすいでしょう。製品を製造・販売している企業がそのまま侵害主体になりますので、差し止めや損害賠償を請求しやすい利点があります。

次にインク(例えばプリンター用インクや化学製品のインク)の特許を例に考えてみます。インクに関する特許は、たとえばインクの化学組成製造方法に関するものかもしれません。競合他社が自社の特許を侵害している疑いがあっても、ドローンのように外形からそれと分かるわけではありません。インクの成分や製法はブラックボックスになりがちで、特許侵害の有無を確認するには専門的な分析や情報開示が必要になる場合があります。たとえば、こちらが特許で「成分Xを含むインク組成」を権利化していても、競合品が成分Xを使っているかどうかは製品を入手して化学分析しなければ分かりません。また、仮に競合が成分Xを使用していなくても似た効果を出せる代替成分Yを使っていれば、我々の特許を巧みに回避している可能性もあります。このように、物質特許や製法特許は表からは見えない部分が多いため、侵害の発見・立証が難しいケースが少なくありません

一般的に、製品(物・装置)の特許は、製造方法や工程の特許に比べて侵害を発見しやすい(解析が容易)とされています【2】。できれば発明の権利化は最終製品や装置という形で取得する方が、後々の権利行使がしやすいのです【2】。上記の例で言えば、インクの製法特許よりもインクそのものの組成特許として権利化したほうが、市場から競合のインク製品を入手して分析できる分、侵害の証拠を掴みやすくなります。また、「誰に対して権利行使するか(誰が侵害者になるか)」も念頭に置く必要があります【2】。ドローンの部品発明であれば、その部品メーカーに対して権利行使する手もありますし、その部品を組み込んだ完成ドローンメーカーを狙う手もあります。どこを権利範囲に含めるかで立証の難易度も変わってきますので、特許出願時から侵害立証まで見据えてクレームを検討する視点が重要です。

弁理士任せでは不十分!経営者が押さえるべき特許戦略の視点

特許の専門家である弁理士に依頼すれば、出願や権利化の手続きを任せることができます。しかし、弁理士任せにするだけでは十分ではない点に注意が必要です。特許は最終的に自社の事業を守り、収益に貢献してもらわねばなりません。そのためには経営者自らが特許戦略の大枠を理解し、主導していく視点が欠かせません。実際、「知財は専門家に全部任せて自分はノータッチで良いのか?」という問いに対して、多くの専門家がNOと答えています。弁理士など知財担当者に任せきりにせず、経営層や技術部門もある程度「こうあるべき」という方針を持って関与することで、他社に対して強い特許権・知財権の構築につながるとされています【1】。日本弁理士会の資料でも、「経営者または知財担当者と弁理士(特許事務所)が連携して関与する体制の構築が不可欠である」と指摘されています【5】。これは裏を返せば、経営者が自社の事業戦略に沿った知財戦略の方向性を示し、弁理士と二人三脚で進めていくことが重要ということです。

では、経営者・事業責任者は具体的にどのような視点を持つべきでしょうか。まず、自社の競合環境やビジネス目標を踏まえて「どの技術分野でどんな特許を取るべきか」を考えることです。闇雲に特許出願件数を増やすのではなく、自社の強みやコア技術を見極め、事業に真に役立つ特許を選別して出願する必要があります。特許には出願・維持にコストがかかるため、経営判断として費用対効果を考える視点も重要です。また、弁理士に発明の技術内容を説明するときも、競合他社の動向や代替技術の可能性などビジネス側の視点を積極的に共有すべきです。発明者や技術者だけでは気づかない「この部分を広く押さえておかないと他社に抜け道を与える」というポイントを、経営的な視野から指摘できれば、弁理士もそれを織り込んだ明細書作成ができます。要するに、「特許は事業のためにある」という基本に立ち返り、経営戦略と知財戦略を統合的に考えることが経営者には求められます。専門家に丸投げせず、自社の特許ポートフォリオの方向付けや優先順位づけには経営陣がコミットしていきましょう。

特許取得と知財収益化の関係:強い特許がもたらすビジネス価値

最後に、特許取得が知的財産の収益化(マネタイズ)にどう関わるか触れておきます。特許権は独占権ですから、自社だけがその発明を実施できることで製品やサービスの市場競争力を高め、ひいては売上や利益に貢献します。そしてもう一つの重要な側面が、特許ライセンスによる収益化です。他社が自社特許を使いたい場合にライセンス契約を結べば、ロイヤリティ収入を得ることができます。また、自社では使わない特許でも他社に売却したり、事業提携の材料にしたりすることで資金化・事業化する道もあります。特許は会計上無形資産として会社の価値を高める効果もあり、スタートアップ企業などが投資を受ける際にも強い特許を持っていることが評価される場合があります。

重要なのは、こうした知財収益化の大きな果実は「強い特許」から生まれることが多いという点です。前述のように他社が容易に回避できるような弱い特許では、誰もライセンス料を払ってまで使おうとはしませんし、競合牽制にもなりません。それに対し、他社がどうにも避けられないコア技術の特許を押さえれば、それ自体が金銭を生む源泉になり得ます。例えばアメリカの発明家ジェローム・レメルソンは、生涯で600件以上もの特許を取得し、企業に対して多額のライセンス料を課すことで巨万の富を築いた人物として知られます【6】。彼の戦略は自分の発明した基本技術が社会に浸透し代替技術がなくなるまで権利化を遅らせるという特殊な手法でしたが(いわゆるサブマリン特許)、その結果代替技術を持たない多くの企業が特許ライセンス料を支払う事態となり莫大な収益を上げました【6】。ここまで極端でなくても、「競合が使いたい技術だけれど特許でブロックされている」という状況を作れれば、ライセンス交渉によって自社に収入が入る可能性があります。実際、日本企業でも自社が使っていない特許を他社にライセンスして副収入を得ている例は珍しくありません。

まとめ

このように強い特許の取得は知財の収益化に直結する武器になります。特許を事業で活用するだけでなくライセンス収入という形でマネタイズする発想を持つことも、経営者にとって重要な視点です。特許権のライセンシングは自社単独では難しい面もありますが、最近では特許流通やマッチングを支援するサービスも充実しています。例えば当社IPリッチでは、自社の特許を登録するとそれを活用したい企業とのマッチング機会を提供するPatentRevenueというプラットフォームを運営しています。自社特許の眠れる価値を収益につなげたい方は、ぜひPatentRevenue(https://patent-revenue.iprich.jp)に無料登録してみてください。きっと新たなビジネスチャンスを発見できるはずです。

強い特許を戦略的に取得し、それを守り活かすことは、中長期的に見て事業の大きな柱になります。他者に真似できない独自技術を守りつつ、それをテコに収益を上げる知財戦略をぜひ検討してみてください。

(この記事はAIを用いて作成しています。)

参考文献

  1. テクノプロデューサー社コラム「強い特許とは何か」回避策を考えながら判断してみる (2023年3月17日) – https://www.techno-producer.com/column1min/is-nagailebens-patent-strong/
  2. JFEテクノリサーチニュース 「特許明細書の書き方(第4回)強い特許明細書にするには」 – https://www.jfe-tec.co.jp/jfetec-news/13/6p.html
  3. ライトハウス国際特許事務所「請求項のよくある失敗」 – https://www.lhpat.com/software/patent/tp-claims.html
  4. 将星国際特許事務所 トピックス「『サトウの切り餅』、8億円の賠償判決」 – https://shousei.jp/topics/「サトウの切り餅」、8億円の賠償判決/
  5. 日本弁理士会 パテント誌「中小企業を支える弁理士の役割」(2016年) – https://www.jpaa.or.jp/old/activity/publication/patent/patent-library/patent-lib/201602/jpaapatent201602_028-032.pdf
  6. 日本弁理士会「社長の知財」記事『特許で巨万の富を築く人物も!みんなが気になるライセンス収入事情とは』 – https://www.jpaa.or.jp/shacho-chizai/episode/特許で巨万の富を築く人物も!-みんなが気になる/
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