特許庁ビッグデータ活用:ビジネスを変える最前線

株式会社IPリッチのライセンス担当です。

近年、特許庁が提供するさまざまな知財データを活用し、ビジネスに新たな価値を生み出す動きが活発化しています。本記事では、特許庁から入手できる知財データの種類とその内容を紹介し、それらのデータを企業がどのように活用できるか、具体例や先進事例を交えて解説します。AI(人工知能)やビジネスインテリジェンスとの関連にも触れながら、知財ビッグデータがもたらすビジネス変革の最前線をご紹介します。

目次

知財データの種類と提供源

まず、特許庁が提供している知財関連データにはどのようなものがあるかを整理します。特許庁および関連機関(INPITなど)は、知的財産に関する以下のような知財データを公開・提供しています。

  • 出願情報:特許や実用新案の出願に関する基本情報です。出願番号、出願日、発明の名称、出願人・発明者名、公報テキストなどが含まれます。例えば、特許庁の「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」では、日本を含む世界各国の特許・実用新案・意匠・商標の公開公報情報を検索でき、手続状況や審査経過といった法的状態も無料で閲覧できます【1】。これにより、公開された特許出願の詳細な内容を誰でも確認できます。
  • 審査履歴(経過情報):各特許出願がどのような審査過程を経ているかという履歴データです。審査官からの通知(拒絶理由通知など)や中間応答、特許査定・拒絶査定の結果、審判請求やその結果といった知財データが時系列で記録されています。J-PlatPatでは各文献の詳細画面から「経過情報」を確認でき、審査や審判のやり取りを追跡できます【1】。審査履歴を把握することで、ある技術分野で他社が直面した課題や特許化の成否など貴重な情報を得ることができます。
  • 登録情報(権利情報):特許査定や意匠・商標登録がなされた後の登録公報情報や権利の法律状態に関するデータです。具体的には、特許権や商標権の発行日、登録番号、存続期間、年金(維持料)納付状況、権利の移転・消滅・変更履歴などが該当します【2】。これらの情報から、競合他社の保有する知的財産権ポートフォリオを把握したり、自社の権利の維持管理に役立てたりできます。
  • 統計情報:産業財産権全体の出願・審査・登録動向を集計したデータも公開されています。特許庁は毎年「特許行政年次報告書<資料・統計編>」を作成しており、基本的な知財統計データを公表しています【3】。ここには特許・実用新案・意匠・商標それぞれについて年度別の出願件数や登録件数、審査請求件数、審判(異議・無効審判等)件数などがまとめられています【3】。たとえば、日本国内の特許出願件数は年間約30万件、世界全体では年間約300万件に上り、累積では1億件規模とも言われる膨大なデータが蓄積されています【4】。こうした知財データの集計結果から、年々の技術分野別の出願動向や各国の知財活動の傾向を読み取ることができます。特許庁は近年、月次の速報値も公表するようになり【3】、よりタイムリーに統計情報を把握できるようになっています。

なお、上記のようなデータはウェブ上で検索・閲覧できるだけでなく、一括ダウンロードによる提供も行われています。特許庁の「特許情報標準データ」は、特許庁が保有する特許・実用新案・意匠・商標の書誌情報や経過情報を日次更新の単位でまとめたバルクデータで、企業や研究機関は自前の特許データベース構築等に活用できます【5】。このように、知財データは幅広い形式で提供されており、目的に応じて使い分けることができます。

知財データ活用がもたらすビジネスメリット

膨大な知財データには、企業の競争力強化に直結する貴重な情報が詰まっています。特許公報には出願人が解決しようとした課題や開発した技術の詳細が記載されており、フォーマットも統一され時系列で追えるため、分析に適したデータ群と言えます【6】。では、企業は具体的にどのように知財データを活用できるのでしょうか。主なメリットと活用事例をいくつか挙げます。

  • 技術動向の分析とR&D戦略立案:産業や技術分野ごとに特許出願情報を分析することで、技術のトレンドや各企業の開発動向が見えてきます。特許群を俯瞰的に分析すれば、その業界内で注目すべき技術トレンドや競合各社のポジショニングを把握でき、自社の研究開発や製品開発の戦略に有用な示唆が得られます【6】。例えば、特定の技術の出願件数の推移を追えばその技術の成長や成熟度合いがわかり、主要プレイヤーの出願動向を比較すれば各社の注力度や方向性の違いが浮かび上がります。また、特許情報は世界中で公開されているため、海外に目を向ければ新興国も含めグローバルな技術潮流を掴むことができます【4】。こうした分析結果は、自社のR&D投資の重点領域を決める際や、新規事業の種を探索する際の重要な判断材料となります。
  • 競合調査・市場分析:特許出願は企業の技術戦略を映す鏡です。他社がどのような技術課題に取り組み、どの領域で特許を押さえているかを知財データから分析すれば、競合の戦略や市場動向を推測できます。特許情報と市場データ、ニュース等のビジネス情報を組み合わせて分析することで、より立体的な市場分析・競合分析が可能になります。実際、特許や非特許文献、市場・産業に関するインサイトデータを統合できるビッグデータツールを活用することで、その業界で大きな影響力を持つ関連技術やイノベーションの動向を把握することが重要だと指摘されています【7】。特許データを活用した分析により、特定技術の成長・衰退の兆候、競合他社や協業先の研究開発の注力分野、近い将来市場に登場しそうな新製品情報などをいち早く把握できるでしょう【7】。さらに、公開特許の内容から既存技術の課題点や未解決ニーズを洗い出すことで、「ホワイトスペース」と呼ばれる未開拓の市場ニーズを発見し、新たな技術開発や特許出願につなげることも可能です【7】。このように知財データの分析は、ビジネスインテリジェンスの観点からも有力な武器となります。
  • 特許リスクの管理(FTO調査):自社が開発した製品・サービスを市場投入する際に、他社の特許を侵害しないか事前に確認すること(Freedom to Operate調査)は欠かせません。従来は専門家による調査に時間がかかりましたが、近年では特許ビッグデータを活用して効率的に実施することも可能になっています。関連する特許情報を世界中から瞬時に集めて分析すれば、第三者の知的財産権を侵害することなく、より大きな視点で市場や類似製品・ブランドを俯瞰し、市場参入の可否を見極めることができます【8】。グローバルな特許検索ツールを使えば、各国の公開特許を横断的にチェックできるため、海外展開時の知財リスク低減にも役立ちます。知財データを駆使したFTO調査は、訴訟リスクの回避だけでなく、安全にビジネスを拡大する上で重要なステップです。
  • 知財戦略・オープンイノベーション:自社の保有技術を他社との共同研究やライセンシングで活用したり、他社の持つ技術と組み合わせて新事業を創出したりするオープンイノベーションにも、知財データは大きな力を発揮します。特許情報を詳細に分析すれば、自社の技術と補完関係にある技術を持つ企業や研究機関を発見でき、連携候補のリストアップに繋がります【6】。実際、特許庁では保有特許情報をもとに中小企業・大学等の技術とシナジーのある事業会社をショートリスト化する「マッチングレポート」を作成し、100社以上に提供する実証事業を行いました【6】。このレポートでは、特許情報に裏付けられた連携有望度の高いパートナー候補を提示し、実際に大企業との提携成立例も生まれています【6】。また、相手企業の特許情報を分析すれば、その企業が直面する技術課題や開発の傾向を把握できるため、そうしたデータを踏まえて提案内容を練ることで、相手のニーズに的確に応える魅力的なコラボレーション提案を行うことができます【6】。このように知財データは、企業間連携やオープンイノベーションのマッチング精度を高め、産業の新たな価値共創を促進するツールともなり得るのです。
  • 権利侵害の監視とブランド防衛:商品やサービスを提供する企業にとって、自社の特許権や商標権が侵害されていないかを監視することも重要です。特に近年はインターネット上で模倣品や権利侵害が発生しやすく、NFTやメタバース空間でのブランド悪用など新たな課題も顕在化しています。他社による権利侵害の兆候を早期に発見するには、公開されている特許・意匠・商標データベースを定期的にチェックしたり、新規公開公報をウォッチしたりする必要があります。幸いなことに、現代の多くの企業にとって有形資産より無形資産(特許やブランド)の方が価値が高まっていることから、ビッグデータを活用したオンライン監視の重要性も増しています【9】。例えば、競合他社が自社と類似する技術の特許出願を行っていないか、あるいは自社ブランドに似た商標を出願していないか、といった情報は特許庁やWIPOのデータベースから取得できます。これらを継続的にモニタリングすることで、権利侵害の未然防止策を講じ、知的財産価値の毀損リスクを低減できます。

以上のように、知財データの活用範囲は多岐にわたり、事業戦略からリスク管理まで様々な側面でビジネスに貢献します。ポイントは、膨大かつ詳細な知財データを上手に分析し、自社の意思決定に役立つ「知見」に昇華させることです。そのためには専門知識を持つ人材の起用はもちろん、近年ではAI(人工知能)など先端技術の力を借りることも有効となっています。

AI・ビジネスインテリジェンスと知財データ活用の最前線

現在、知財ビッグデータの価値に注目し、これを効果的に分析・活用するための技術開発も進んでいます。中でもAI(人工知能)の活用は大きなトレンドです。世界の特許庁では、審査業務へのAI導入だけでなく、民間企業からも特許調査・分析を支援する様々なAIツールが登場しています。日本でも近年、特許の専門家が行ってきた作業を支援・自動化するAIシステムが次々とリリースされています。例えば、特許性の判定を支援するAIシステム「AI Samurai」(エーアイ・サムライ)や、特許公報の自動分類を行うサービス「Patent Noise Filter」、商標調査を効率化する「Toreru商標検索」などが挙げられます【10】。これらのツールは膨大な特許テキストデータを機械学習によって解析し、先行技術調査の高速化や、関連技術の自動分類・類似特許検索といった機能を提供しています。AIを活用することで、人では見落としがちな関連性の発見や分析スピードの飛躍的向上が期待でき、知財データの利活用がより一層促進されています。

また、官民問わず知財データを戦略立案に直接役立てる取り組みも増えています。例えば韓国では、特許庁が世界約5億8千万件にも及ぶ特許ビッグデータを分析し、AIや量子技術、先端半導体など国家戦略分野の技術動向をまとめた報告書を公表しました【11】。この報告書では国別の技術力比較や主要企業・研究機関の技術開発状況、将来有望な技術の予測などが示されており、得られた知見を国家R&Dの戦略策定に活用しています【11】。「新たなコア技術分野では、研究開発の企画段階から特許ビッグデータという技術情報の集積体を分析し活用することが重要」とも述べられており【11】、膨大な知財データを意思決定に生かす姿勢が鮮明です。これは企業にとっても示唆に富むものでしょう。大規模な知財データ分析にAIや高性能コンピューティングを組み合わせれば、自社の技術開発や事業戦略において、今後どの分野に注力すべきか、どの企業・大学と連携すべきか、といった問いに対するエビデンスベースの答えを得ることが可能になります。

さらに、知財データの活用は社内外のビジネスインテリジェンスの強化にも直結します。知財部門だけでなく経営企画やマーケティング部門が特許・商標データを分析に取り入れることで、技術戦略と市場戦略を融合させた意思決定ができます。例えば、新製品開発時に市場ニーズと特許動向を同時に分析すれば、競合他社が参入していないニッチ分野を見極めたり、特許出願によって参入障壁を構築できる領域を特定したりできます。特許情報はいわば技術分野の公開された知見の集合体ですから、これをビジネスインテリジェンスのデータセットに組み込むことは、企業の知的資産を最大限に活用することにつながります。

まとめ

このように知財データの活用最前線では、AI技術の導入や他分野データとの連携によって、より高度な分析と戦略策定が可能になっています。企業規模の大小を問わず、自社に適した形で知財データを利活用することが、イノベーション創出と競争力強化の鍵と言えるでしょう。ぜひこの機会に、特許庁の提供するデータベースやツールに触れ、知財ビッグデータ活用の一歩を踏み出してみてください。

なお、特許をお持ちの方は、特許の無料登録が可能なPatentRevenue(https://patent-revenue.iprich.jp)もぜひご活用ください。

(この記事はAIを用いて作成しています。)


参考文献

  1. INPIT「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)概要ページ」(2015年) – 独立行政法人 工業所有権情報・研修館 (INPIT)【引用元: INPITウェブサイト】<br>
    URL: https://www.inpit.go.jp/j-platpat_info/index.html
  2. 特許庁「特許情報標準データ(書誌・経過情報に関するデータ)の概要」(2025年3月更新) – 経済産業省 特許庁【引用元: 特許庁ウェブサイト】<br>
    URL: https://www.jpo.go.jp/system/laws/sesaku/data/keikajoho/index.html
  3. 特許庁「特許出願等統計速報」(令和7年4月公表) – 経済産業省 特許庁【引用元: 特許庁ウェブサイト】<br>
    URL: https://www.jpo.go.jp/resources/statistics/syutugan_toukei_sokuho/index.html
  4. 特許庁「中小企業等知財分析レポートを用いたマッチング支援事業に関するページ」(2019年8月) – 経済産業省 特許庁【引用元: 特許庁ウェブサイト】<br>
    URL: https://www.jpo.go.jp/resources/report/chiiki-chusho/matching-tool.html
  5. Intellectual Design Group「ビジネスの競争力を高めるための特許ビッグデータ活用事例」(2022年3月25日) – IDG Japan【引用元: note(ノート)記事】<br>
    URL: https://note.com/idgjapan/n/nc618fd4cf235
  6. JETRO知的財産ニュース「韓国特許庁、国家R&D効率化に向けた特許ビッグデータ分析の報告書を公表」(2024年2月19日) – 日本貿易振興機構(JETRO)【引用元: JETROウェブサイト】<br>
    URL: https://www.jetro.go.jp/world/asia/kr/ip/ipnews/2024/240219b.html
  7. Japio YEAR BOOK 2019 特集記事「知財情報調査・分析を取り巻く人工知能とその周辺動向」(野崎 篤志)(2019年) – 一般財団法人 日本特許情報機構(Japio)【引用元: Japio年報PDF】<br>
    URL: https://japio.or.jp/00yearbook/files/2019book/19_a_08.pdf
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次