特許とジェネリック医薬品:イノベーションへの影響

株式会社IPリッチのライセンス担当です。

本記事では、医薬品の特許が切れてジェネリック医薬品が市場に登場するとどのような変化が起きるのか、そしてそれが製薬企業の研究開発(R&D)や医薬品イノベーションにどんな影響を及ぼすのかを、国内外の事例を交えて客観的に考察します。

目次

特許切れとジェネリック医薬品の概要

特許切れとは、新薬開発企業が取得した医薬品特許(有効成分の物質特許など)の存続期間が満了することを指します。医薬品の特許権は通常、出願から20年で切れますが、新薬の承認取得までに長い年月(平均9~17年)がかかるため、市場で特許による独占的利益を享受できる期間(実質特許期間)はしばしばそれより短くなります[1]。特許期間中、先発医薬品メーカー(新薬メーカー)は莫大な研究開発費を投じた新薬の販売独占によって投資回収を図ります。一方、ジェネリック医薬品(後発医薬品)は先発薬の特許が切れた後に販売可能となる、同じ有効成分・効果を持つ薬です。ジェネリックメーカーは先発品と生物学的に同等であることを試験で示すことで承認を得るため、開発コストが桁違いに低く(先発薬が数百億円規模なのに対しジェネリックは数千万円程度[1])、低価格で提供できるのが特徴です。

ジェネリック医薬品の登場による社会的メリットは大きく、患者や医療保険者にとって薬剤費の負担軽減につながります。実際、ジェネリックの普及は医療費削減に寄与し各国政府も推進しています。日本では長らくジェネリック普及率が低い状態でしたが、近年は政策的後押しによって大きく改善しました。例えば厚生労働省は「後発医薬品使用促進ロードマップ」(2013年)で「2018年までに数量シェア60%以上」という目標を掲げ、さらに2015年の方針で「2020年9月までに80%」という高い目標を設定しました[2]。この結果、国内ジェネリック使用率(数量ベース)は2011年時点の39.9%から2013年に46.9%へと上昇し[2]、その後目標通り2020年前後には80%前後に達しています。諸外国ではジェネリック使用が更に進んでおり、米国では数量ベースで90%以上、ドイツでも80%以上という水準が報告されています[2]。つまり、新薬の特許が切れれば世界中で当たり前のようにジェネリックが登場する時代となっています。

特許切れ・ジェネリック医薬品参入が市場に与える影響

新薬の特許切れによってジェネリック医薬品が参入すると、医薬品市場の競争環境は劇的に変化します。まず価格面では、先発医薬品の薬価に対しジェネリックは大幅に低い価格設定となります。ある米国の報告では、特許切れ後に登場するジェネリック医薬品の価格は先発品の平均で約30%程度だとされています[3]。複数のジェネリックが競合すれば価格はさらに下がり、医療現場では安価な後発品への切り替えが急速に進みます。その結果、先発品メーカーの売上は短期間で大幅に減少します。実際、米国では特許保護が切れた新薬は数年以内に販売額の80~90%をジェネリックに奪われるともいわれています[3]。

市場シェアの変動も著しく、業界ではこれを「パテントクリフ(特許の崖)」と呼びます[4]。一例として、日本で開発された高脂血症治療薬メバロチン(プラバスタチン)は2002年に国内特許が切れた後、わずか数か月で23社ものジェネリックが参入し翌年から発売が始まりました[5]。その結果、メバロチンの売上は日本国内だけでなく海外市場でも急減し、特許満了から数年で全世界売上が当初の数割程度にまで落ち込んでいます[5]。また、エーザイのアルツハイマー治療薬アリセプト(ドネペジル)は2010年前後に特許切れを迎え、米国市場でジェネリック参入が始まると3年間で累計1,050億円もの売上減少に直面したと報じられました[6]。海外では米ファイザー社の抗コレステロール薬リピトール(アトルバスタチン)が2011年末に特許満了し、年間約5兆円規模の売上を誇ったブロックバスター薬がジェネリックに席巻されました[3]。特許切れによるこうした市場変化は、一社だけでなく業界全体にも波及します。2010年前後には世界的なパテントクリフの波が訪れ、2011年にはリピトールを含む大型薬の特許満了が相次ぎ、2012年だけで年間3兆円以上の先発薬売上が市場開放されたとも言われます[3]。このように特許満了による売上急減は製薬企業の収益構造を直撃するため、各社は事前に対策を講じます。特許切れが見えてきた段階で、後継の新薬開発を加速したり、自社でジェネリック(いわゆるオーソライズド・ジェネリック)を発売して一定のシェアを維持しようとするライフサイクルマネジメント戦略も取られます[1]。

ジェネリック医薬品の普及とイノベーションの関係

ジェネリック医薬品参入の拡大は、新薬の研究開発(R&D)や医薬品イノベーションの動向にも少なからぬ影響を与えます。特許制度は元々、企業が巨額の投資を要する創薬に取り組むインセンティブを与える仕組みです。新薬1品目を開発するには失敗も含め平均で数百億円以上の投資が必要とされ、成功確率も低いため、製薬企業は特許で保護された独占期間中にそれを回収し次の研究資金を確保します[7]。しかし特許切れにより収益源をジェネリックに奪われると、先発企業の売上減少は研究開発投資に影を落としかねません[7]。公正取引委員会の調査報告でも、近年後発品シェアが拡大する一方で医薬品イノベーションの低下が指摘されています[7]。

一方で、ジェネリックの存在が必ずしもイノベーションの阻害要因になるとは限らないとの見方もあります。特許期間が有限であることは初めから織り込み済みであり、企業は新たな画期的治療法や高付加価値の医薬品(例:バイオ医薬品など)に継続的に投資を行う動機づけになります。ジェネリックによって既存製品から得られる収益が逓減する分、企業はその穴を埋めるべく新薬創出に挑戦し続けなければなりません。結果として、特許切れとジェネリック競争は「革新的新薬を生み続けなければ生き残れない」という競争圧となり、業界全体の技術革新を促す側面も持ち合わせています。

国内事例: 特許切れ医薬品とイノベーション

日本では2000年代後半からジェネリック医薬品が本格的に普及し始めました。第一三共の高脂血症治療薬メバロチンは2002年に物質特許が切れ、直後に後発品が参入したことで日本市場における売上が半減以下となりました[5]。エーザイのアリセプトも2010年前後の特許切れで米国売上が3年間で1,050億円減少する見通しとなり、新規パイプライン強化にかじを切りました[6]。武田薬品の高血圧治療薬ブロプレスや中外製薬の抗癌剤グリベックなど、2010年代に特許切れを迎えた大型薬も、後継新薬投入や適応拡大で対応しています。国内企業はジェネリック参入後に売上が減少する一方、改良新薬や新規モダリティへの研究開発シフトという形でイノベーションを維持しています。

海外事例: ジェネリック普及とイノベーション戦略

米国ではハッチ・ワックスマン法以来、ジェネリック承認が促進され処方の9割近くがジェネリックとなっています[2]。Pfizer 社のリピトール、Sanofi のプラビックスなどブロックバスター薬が特許満了を迎えるたびに、数千億円規模の売上が短期間で後発品に移行しました[3]。各社はバイオ医薬品や希少疾病用医薬品などジェネリック競合が起きにくい領域へ研究開発投資をシフトし、M&A やオープンイノベーションでパイプラインを補強する戦略を進めています。EU でも競争当局が「ペイ・フォー・ディレイ」行為を規制する一方、新薬のデータ保護期間を設けるなど、ジェネリック普及とイノベーションの両立を図っています[7]。

特許切れ後の知財:「 PatentRevenue」 活用の提案

特許切れは企業の収益構造を揺るがす一方、特許権者にとっては知財の戦略的活用を見直す契機でもあります。自社で活用しきれない特許を第三者にライセンスしたり、売却して資金を研究開発に再投資する動きが活発化しています。特許売買・ライセンスプラットフォーム「PatentRevenue」(https://patent-revenue.iprich.jp)は、こうした知財のマネタイズを支援します。収益化したい特許を無料で登録し、多様なパートナーとマッチングすることで、特許の新たな可能性を探ってみてはいかがでしょうか。

(この記事はAIを用いて作成しています。)


参考文献

  1. Public Citizen, “Prescription Drug Prices: The Cost to American Patients,” 2016. https://www.citizen.org/sites/default/files/rx-report.pdf
  2. 厚生労働省「後発医薬品使用促進のロードマップ」(2013) https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000053651.html
  3. Jack DeRuiter & Pamela L. Holston, “Drug Patent Expirations and the ‘Patent Cliff’,” U.S. Pharmacist 37(6) Generic Suppl:12-20 (2012). https://www.uspharmacist.com/article/drug-patent-expirations-and-the-patent-cliff
  4. IMS Health, “The Global Use of Medicines: Outlook to 2016,” 2012. https://www.iqvia.com/
  5. 第一三共株式会社「メバロチン特許満了に伴う影響と対応」(2004). https://www.daiichisankyo.co.jp/
  6. 日刊薬業「エーザイ・内藤社長 アリセプト特許切れ、3年で1050億円減」(2010年3月4日). https://nk.jiho.jp/article/p-1226552541562
  7. 公正取引委員会競争政策研究センター「医薬品市場における競争と研究開発インセンティブ」(2015). https://www.jftc.go.jp/cprc/reports/index_files/cr-0115.pdf
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