特許戦略と特許紛争の舞台裏:アップルとサムスン

株式会社IPリッチのライセンス担当です。

本記事では、世界的な大企業アップルとサムスンが取ってきた特許戦略と、そこで繰り広げられた特許紛争の舞台裏について、経営者や起業家の方々にもわかりやすく包括的に解説します。また、スマートフォン業界を揺るがした7年以上にわたる法廷闘争を振り返り、特許を巡る大企業同士の攻防から得られる知見を探り、中小企業にも役立つ知財戦略のヒントを考察します。

目次

アップルの特許戦略と特許紛争への取り組み

アップル(Apple)は、その革新的な製品デザインやユーザー体験を守るために特許を重要な戦略資産と位置付けてきました。実際、同社の共同創業者であるスティーブ・ジョブズ氏は、競合他社による模倣に対し激しい怒りを示し、「Androidは盗品だ。これは間違いを正すための戦いだ。アップルが銀行に蓄えた400億ドル全てを費やしてでも叩き潰す」とまで語ったと伝えられています【1】。この発言からもわかるように、アップルは自社技術の独自性を守るためには手段を惜しまない姿勢でした。

こうした強硬な特許戦略の下、アップルは自社の特許を侵害するとみなした企業に対して積極的に訴訟を提起しています。その象徴的な例が2011年に始まったサムスンに対する特許訴訟で、アップルはスマートフォンのデザインや操作機能に関する複数の特許侵害を主張しました。2012年の米国陪審審理では、サムスンがアップルの特許6件を侵害したとの評決が下され、アップル側の主張が大筋で認められます【2】。陪審団は、マルチタッチ操作や画面上のアイコン配置、端末前面の意匠に至るまでiPhoneの革新性を支える重要技術がアップルの独占的権利であることを確認し、サムスンによる模倣を認定しました【2】。この勝利により、アップルは自社の革新領域に特許という「防護幕」を張り巡らせて競合他社を寄せ付けない戦略が有効であることを実証したと言えます。

もっとも、アップルは特許を攻撃の武器とするだけでなく、ビジネス上の必要に応じて柔軟な対応も行っています。例えば、台湾のHTCとの特許紛争は2012年に和解し、相互に特許を利用できるクロスライセンス契約を結んだことが知られています【1】。このようにアップルは、自社の独自性を追求しつつも、訴訟に固執して市場機会を逃すことのないよう、現実的な妥協策を図る面も持ち合わせています。アップルの特許戦略は、「自社のイノベーションは自社だけのもの」とする排他性の徹底と、必要に応じたライセンスによる解決策の両面で成り立っていると言えるでしょう。

サムスンの特許戦略と特許紛争での戦術

一方、韓国のサムスン電子(Samsung)は、特許を防御と交渉の要とする戦略で知られます。同社は世界でも有数の特許保有企業であり、毎年数千件規模の特許を取得しています。サムスン経営陣によれば、自社の技術が他社に使用されていても直ちに訴訟に訴えることは少ないものの、ひとたび自社が特許侵害で訴えられれば防衛策として直ちに対抗訴訟に踏み切る方針だといいます【3】。実際、サムスンは自社の豊富な特許ポートフォリオ(特に通信技術などの基本特許)を背景に、特許紛争では「攻められれば必ずやり返す」姿勢を鮮明にしています。

アップルから提訴を受けた際の対応も、その戦略を如実に示しました。2011年にアップルが米国で訴訟を起こした直後、サムスンは即座に韓国や日本、ドイツなどでも逆にアップルを特許侵害で提訴し、世界各地で報復合戦が繰り広げられました【5】。両社の紛争はピーク時には10か国以上で係争状態に陥る大規模なものとなり【4】、サムスンは自社が標準必須特許(スマートフォンの通信規格に不可欠な技術特許)として保有する無線通信技術を駆使して各国でアップル製品の販売差し止めを求める攻勢に出ました。しかし、この戦術は一部で規制当局の目を引くことになり、欧州委員会(EU)はサムスンによる標準必須特許の権利行使が競争法違反に当たる可能性があるとして調査に乗り出しています【4】。サムスンは訴追を避けるため欧州での差し止め請求を取り下げざるを得なくなり、特許の攻撃的行使には限界があることも浮き彫りとなりました。

それでも、サムスンは訴訟の過程で容易に譲歩することはなく、徹底抗戦の構えを崩しませんでした。同社は裁判で徹底的に争い、判決に不服があれば直ちに控訴し、可能な限り争いを長引かせる戦術を取ったと指摘されています【3】。ある米国の法廷闘争では、サムスンが敗訴の危機に瀕した段階になってようやく和解に応じた例も報告されており【3】、こうした「提訴されたら徹底抗戦し、土壇場で妥協する」というパターンはサムスンの常套手段との批評もあります【3】。実際、アップルとの係争中にもサムスンは次々と新製品を投入して市場での地位を拡大し続け、訴訟によるビジネスへの打撃を最小限に抑えることに成功しました【3】。このようにサムスンの特許戦略は、巨額の特許資産を背景にした防御的態勢と、競合から攻撃を受けた際にはあらゆる手段で応酬する攻撃的戦術とが表裏一体となっています。その一方で、長期化する紛争が事業上の妨げになると判断すれば、状況打開のための和解にも踏み切る柔軟さも持ち合わせており、その点は次の節で見ていく通りです。

アップル対サムスン: 特許紛争の経緯と舞台裏

アップルとサムスンの特許紛争は、スマートフォン時代の始まりとともに勃発しました。その発端は2010年にさかのぼります。アップルが初代iPhoneで築いた革新的なユーザーインターフェースやデザインに酷似した製品をサムスンが投入したことから、両社の緊張が高まりました。2010年夏、アップルの幹部らは韓国ソウルのサムスン本社を訪れ、サムスン側に対して「GalaxyはiPhoneの模倣である」と直接抗議しました。しかしサムスンは「自社には自社の特許があり、むしろアップルこそそれらを侵害している可能性がある」と反論し、歩み寄りは実現しませんでした【3】。この水面下の対立により、両社はまもなく法廷で争う道を辿ることになります。

2011年4月、アップルはサムスンを特許侵害で提訴し、スマートフォンのデザインや操作に関する幅広い知的財産権侵害を主張しました。サムスンも直後に世界各国で対抗措置を取り、両社の紛争はグローバルな広がりを見せます【5】。そして2012年8月、米カリフォルニアで行われた最初の大きな裁判では、陪審団がサムスンによる特許侵害を認定し、約10億ドルもの巨額賠償をアップルに命じる評決を下しました【3】。これはスマートフォン業界に衝撃を与える勝訴判決で、アップル側はこの結果を「我々のデザインの価値が認められた」と歓迎しました。しかし、サムスン側もすぐには引き下がらず、判決を不服として控訴を重ねます。その過程で、2016年には米国最高裁判所がデザイン特許の損害賠償算定に関する争点でサムスンの主張を支持する判断を示し【6】、下級審の賠償額算定が見直される事態となりました。法廷闘争は長期化し、最終的に2018年5月になって再審理の末にサンノゼの陪審は改めて5億3,900万ドルの賠償をアップルに認める評決を下しています【6】。

一方、法廷闘争が世界中で繰り広げられる中、舞台裏では経営的な打算と関係修復の模索も進んでいました。2014年8月、両社は米国以外で係争中の全ての訴訟を取り下げることで合意し、長引く国際的な争いに一区切りつけました【5】。この背景には、双方が巨額の訴訟費用を費やす中で、中国の新興メーカー(例:小米<シャオミ>)など第三の競合台頭への危機感が高まったことがあると指摘されています【5】。ただしこの時点でも米国での訴訟は継続されており、両社間で包括的な特許ライセンス契約が結ばれたわけではありません【5】。興味深いことに、争いの最中でもアップルはサムスンからスマートフォン向けの部品供給(半導体チップやディスプレイ)を受け続けており、法廷では敵対しつつビジネスでは相互依存関係が続くという特殊な状況でした【5】。2014年には米国で両社のトップが極秘に会談し和解を模索したとも報じられていますが、当初は決裂し【5】、「この訴訟をこれ以上続けても得るものはない」という認識に至るまでには時間を要しました【5】。

こうした紆余曲折を経て、アップルとサムスンは2018年6月になってようやく全ての法的係争を終結させることで合意しました【7】。7年に及んだ「スマートフォン特許戦争」はついに終戦を迎えたのです。和解の詳細な条件は非公表ですが、両社が米国で争っていた訴訟も取り下げられ、歴史的な特許紛争は幕を下ろしました【7】。

特許戦略と特許紛争から学ぶ教訓

アップルとサムスンの熾烈な特許紛争からは、いくつかの重要な示唆が得られます。第一に、特許は大企業間の競争において攻守双方の武器となり得るという点です。アップルは特許によって自社のイノベーションを守り抜こうとし、サムスンも豊富な特許網を駆使して反撃しました。特許ポートフォリオを強化し、自社の独自技術を権利で保護することは、競争市場で地位を守る上で極めて有効です。同時に、他社の特許を侵害すれば巨額の損害賠償や製品販売差し止めといった深刻なリスクを招くことも、本件は物語っています。中小企業やスタートアップであっても、自社技術を特許で適切に保護するとともに、競合他社の特許動向を把握して紛争を未然に防ぐことが肝要です。

第二に、大規模な特許紛争は当事者双方に莫大なコストと時間を強いるため、最終的には和解やクロスライセンスによって決着するケースが多いということです。アップル対サムスンの争いも、最終的には法廷外の合意で幕引きとなりました。判決を通じて一定の決着が付いた後、双方がビジネス上の合理性を優先し、継続する訴訟合戦に終止符を打ったのです【7】。特許紛争は「落としどころ」を探る長期交渉戦とも言え、適切な時期に妥協点を見出すことが重要だといえます。実際、歴史的にも業界を揺るがすような特許戦争は、当事者間のライセンス契約や業界での標準化合意によって収束し、その後も技術革新は止まらずに続いていく例が多く見られます。特許を巡る対立は一時的に激化しても、最終的には知的財産の共有や住み分けを通じて産業全体が発展する方向へと向かうのが常です【1】。今回のスマートフォン特許紛争も、訴訟を経て各社が特許の価値を再認識し、より慎重かつ戦略的に知財を活用する教訓を残したと言えるでしょう。

最後に、中小企業や起業家にとっては、大企業の特許戦略から学びつつ自社の知財戦略を構築することの重要性が改めて浮き彫りになりました。特許は単なる技術保護手段ではなく、事業交渉のカードであり競争力の源泉です。自社の核となる技術については積極的に特許を取得し、防衛線を張ることが必要です。また、他社との特許トラブルを避けるためにも、事前の権利調査や他社特許のライセンス活用を検討する姿勢が求められます。幸い、現在では特許の売買やライセンスを仲介する手段も整ってきています。特許の収益化に関心のある方は、特許売買・ライセンスプラットフォーム「PatentRevenue」に無料登録して、特許を必要とする企業とのマッチング機会を探ってみてはいかがでしょうか(https://patent-revenue.iprich.jp)。

(この記事はAIを用いて作成しています。)

参考文献

  1. WIPO Magazine – “The sky is not falling: Navigating the smartphone patent thicket” (2014) – https://www.wipo.int/wipo_magazine/en/2014/04/article_0007.html
  2. Reuters – “Apple triumphs over Samsung in landmark patent case” (2012) – https://www.reuters.com/article/us-apple-samsung-idUSBRE87N13V20120825
  3. Vanity Fair – “The Great Smartphone War” (2014) – https://www.vanityfair.com/news/business/2014/06/apple-samsung-smartphone-patent-war
  4. Reuters – “EU regulators tell Samsung to offer more to end antitrust case” (2013) – https://www.reuters.com/article/us-samsung-antitrust-idUSBRE9880N920130909
  5. Reuters – “Samsung Electronics, Apple call end to patents war outside U.S.” (2014) – https://www.reuters.com/article/us-samsung-apple-patent-idUSKBN0G604020140806
  6. Reuters – “U.S. jury awards Apple $539 million in Samsung patent retrial” (2018) – https://www.reuters.com/article/us-apple-samsung-patent-idUSKCN1IP3RP
  7. Reuters – “Apple, Samsung settle U.S. patent dispute” (2018) – https://www.reuters.com/article/us-apple-samsung-settlement-idUSKBN1JT12Z
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