【徹底解説】レゴ(LEGO)ブロックの形状商標とミニフィグ訴訟:中国における知財保護の最前線

株式会社IPリッチのライセンス担当です。

本記事では、世界的玩具メーカーであるレゴ社(LEGO)が中国で展開した、二つの対照的な知的財産権訴訟について詳細に解説します。一つは、悪質な模倣品業者に対する著作権および不正競争防止法違反での歴史的勝訴であり、もう一つは、同社の象徴である「ミニフィグ(人形)」の立体商標登録を巡る行政訴訟での敗訴です。この二つの事例は、中国における知的財産保護の実務、特に「実用品の形状」を商標として保護することの難易度と、複数の権利(特許、意匠、商標、著作権)を組み合わせる「知財ミックス」戦略の重要性を鮮明に浮き彫りにしています。中国市場でのブランド保護や模倣品対策を検討する実務家にとって、極めて示唆に富むケーススタディとなります。

目次

知財の収益化と戦略的な人材採用の重要性

現代の企業経営において、知的財産は単なる「守りの盾」ではなく、事業収益を最大化するための「攻めの武器」へと変貌を遂げています。レゴ社の事例が示すように、強力な知財ポートフォリオは、模倣品による逸失利益を防ぐだけでなく、ライセンス収入や高額な損害賠償請求を通じて直接的な収益をもたらす源泉となります。「知財の収益化」は、特許や商標を権利化する段階から、将来的なキャッシュフローを設計する高度な戦略性が求められる領域です。このような複雑な知財戦略を立案・実行できる人材の価値は、かつてないほど高まっています。もし、あなたが知財の専門知識を活かし、より経営に近い位置で企業の収益化に貢献したいと考えているなら、あるいはそのような優秀な知財人材を採用したいと考えている事業者の方は、ぜひ「PatentRevenue」をご活用ください。知財人材を採用したい事業者の方は、「PatentRevenue」で求人情報を無料で登録することをお勧めします。

URL: https://patent-revenue.iprich.jp/recruite/

広東省高級人民法院での歴史的勝訴:模倣品「LEPIN」への鉄槌

賠償額10倍増額の衝撃と司法判断の厳格化

2021年、中国の広東省高級人民法院(高裁に相当)は、レゴ社の知財戦略において記念碑的となる判決を下しました。レゴ社は、同社の製品を模倣した「LEPIN(楽拼)」ブランドを展開していたMeizhi社(広東美致智教科技)らを相手取り、著作権侵害および不正競争防止法違反で訴えていました。この訴訟は、中国における知財侵害に対する司法の姿勢が厳罰化へと大きく舵を切ったことを示す象徴的な事例となりました。

一審の広州知的財産法院は、被告に対して300万元(約5,000万円)の損害賠償を命じましたが、レゴ社側はこの金額を不服として控訴しました。二審である広東省高級人民法院は、被告側の侵害行為が長期間にわたり、大規模かつ組織的であり、極めて悪質であると認定しました。その結果、一審判決の賠償額を10倍に引き上げ、3,000万元(約5億円)の支払いを命じる判決を言い渡しました 。

著作権と「一定の影響力を有する商品」による多層的保護

この勝訴の鍵となったのは、レゴ社が「商標権」のみに依存せず、「著作権」と「不正競争防止法」を巧みに組み合わせた点にあります。裁判所は、レゴのブロックセットやミニフィグ(人形)のデザインが、中国著作権法における「美術の著作物」として保護されると認定しました。特に、「NINJAGO(ニンジャゴー)」などのシリーズにおけるキャラクターやパッケージデザイン(トレードドレス)が、中国国内で「一定の影響力を有する商品」として認められ、不正競争防止法による保護対象となりました 。

この判決は、中国の裁判所が、悪意のある模倣行為に対して懲罰的とも言える高額な賠償を認める傾向にあることを示しており、外国企業にとっても強力な追い風となる事例でした。しかし、これほど強力な保護を勝ち取ったレゴ社でさえ、別の法廷では苦戦を強いられていました。それが、次項で解説する「ミニフィグの立体商標」を巡る争いです。

北京知的財産法院における敗訴:ミニフィグ立体商標の拒絶

第34022807号立体商標の登録拒絶と行政訴訟

レゴ社は、ミニフィグ(人形)の形状そのものを「立体商標」として中国国家知識産権局(CNIPA)に出願しました(商標出願番号:34022807、指定商品:第28類「おもちゃ」等)。しかし、CNIPAはこの出願を「識別力がない」として拒絶しました。レゴ社はこれを不服として北京知的財産法院に行政訴訟を提起しましたが、裁判所はCNIPAの決定を支持し、レゴ社の請求を棄却しました 。

この事例は、中国において「商品の形状」そのものを商標として登録することのハードルがいかに高いかを示しています。特に玩具のような実用品において、その形状が機能や美観と不可分である場合、商標としての「自他商品識別機能」を認めさせることは至難の業です。

「玩具の一部」か「出所表示」か:識別力判断の壁

北京知的財産法院が登録を認めなかった主な理由は、以下の4点に集約されます。

  1. 商品の一部としての認識:裁判所は、ミニフィグの形状(円筒形の頭部、台形の胴体、半円形の手、曲がった直方体の脚)は、指定商品である「おもちゃ」の構成要素や付属品として認識されやすく、商品の出所を表示する商標としての機能(自他商品識別力)を果たしていないと判断しました 。消費者はこれを「レゴブランドの表示」としてではなく、「遊ぶための人形そのもの」として認識するという判断です。
  2. 使用実態との不一致:出願された商標は、顔の表情や服の模様がない「のっぺらぼう」の基本形状でした。しかし、市場で流通している実際のレゴ・ミニフィグは、多様な表情、色彩、衣装が施されており、シーンによって見た目が大きく異なります。裁判所は、実際の使用形態が出願された基本形状と視覚的に大きく異なるため、使用による識別力の獲得(使用による周知性)を証明できていないと認定しました 。
  3. 形状の普遍性と機能性:ミニフィグの基本構造(頭、胴体、手足)は、人型の人形(パペット)として一般的な形状であり、消費者がこの形状を見ただけで特定の企業(レゴ社)を想起することは困難であるとされました。また、これらの形状は玩具としての機能(可動性やブロックとの結合)に由来する部分が多く、特定の者に独占させるべきではないという「公益的観点」も背景にあると考えられます 。
  4. 使用証拠の不足:レゴ社は大量の販売実績や広告宣伝の証拠を提出しましたが、それらは「装飾されたミニフィグ」の証拠であり、「装飾のない基本形状」が商標として認知されていることを証明するには不十分とされました 。

日欧中の比較:機能的形状と立体商標の国際的な相違

レゴブロックやミニフィグの形状保護は、国によって判断が分かれる非常に興味深い法的論点を含んでいます。グローバルに展開する企業にとって、各国の法制度の違いを理解することは必須です。

欧州(EU)における判断:非機能的要素の重視

EUでは、レゴのミニフィグ形状は立体商標として登録が認められています。EUの裁判所は、ミニフィグの形状には「技術的効果を得るために不可欠な形状」以外の要素(装飾的・想像的な要素)が含まれているとして、商標としての適格性を認めました。具体的には、頭部の円筒形や胴体の台形などは、必ずしも技術的機能のみによって決定されたものではなく、デザイン的な選択の余地があるという判断です 。

一方で、レゴの「基本ブロック(2×4のレンガ型)」については、その形状が技術的機能(結合機能)にのみ由来するとして、EUでも商標登録が無効とされた経緯があります 。つまり、EUでは「機能美」と「純粋な機能」を厳格に区別し、前者には商標保護の道を開いています。

日本における判断:審査と裁判の揺らぎ

日本においても、レゴブロックの凸起を含む基本形状の商標登録は紆余曲折を経ています。かつては特許権の存続期間が満了した後に、その技術的形状を商標権で永続的に独占することへの警戒感から、登録が認められない傾向にありました。しかし、近年の知財高裁判決では、長年の独占的な使用実績により「使用による識別力(商標法3条2項)」を獲得したと認められるケースも出てきています。ただし、別の裁判例では「識別力がない」とされることもあり、機能的形状の保護ハードルは依然として高いと言えます。

中国における判断の特徴:厳格な識別力要件

今回の中国の判決は、EUの判断とは対照的です。中国の裁判所は、ミニフィグの形状が「人型玩具の一般的な形状」の域を出ないとし、識別力の有無を極めて厳格に判断しました。これは、中国が製造大国として、特定の基本的形状が特定企業に独占されることによる市場への影響(競合他社の排除)を懸念している可能性を示唆しています。また、使用証拠の評価において、商品そのものの形状と商標としての形状の「同一性」を厳しく求めた点も特徴的です 。

知財実務への示唆:ポートフォリオ戦略の再考

レゴ社の中国における「勝訴」と「敗訴」のコントラストは、中国市場に進出する日本企業に対して、以下の重要な戦略的示唆を与えています。

1. 「商標」一本足打法の危険性と意匠の活用

実用品の形状や商品の外観(トレードドレス)を保護する場合、立体商標の登録は最も強力な手段ですが、そのハードルは極めて高いのが現実です。特に中国では、形状が機能に由来する場合や、業界で一般的な形状とみなされる場合、登録は困難を極めます。したがって、商標登録のみに依存せず、意匠権(中国では専利法の一部である「外観設計専利」)での保護を併用することが不可欠です。意匠権は存続期間に限度がありますが、商標のような厳しい識別力要件がないため、権利化しやすいメリットがあります。

2. 著作権と不正競争防止法の活用

広東省高級人民法院の判決が示したように、商標登録が難しい場合でも、模倣品の形態がデッドコピーに近い場合は、著作権侵害や不正競争防止法違反(特に「一定の影響力を有する商品」の装飾侵害)での対抗が極めて有効です 。レゴ社は、ミニフィグの形状そのものの商標権は認められませんでしたが、ミニフィグに施されたデザインやパッケージ全体のアートワークを著作権で保護することで、実質的な模倣品排除に成功しました。

3. 知財ミックス(IP Mix)による「面」での保護

単一の権利ではなく、特許、意匠、商標、著作権、不正競争防止法を重層的に組み合わせる「知財ミックス」戦略が、収益の最大化とリスク回避には必須です。

  • 技術的機能 → 特許・実用新案
  • 美的外観(新規) → 意匠権
  • ブランド・ロゴ・定着した形状 → 商標権
  • 創作的表現・パッケージ → 著作権
  • 周知の商品形態 → 不正競争防止法

これらの権利をパズルのように組み合わせることで、模倣業者に対する包囲網を構築することが可能になります。特に中国では、不正競争防止法が「一定の影響力」を持つ商品に対して強力な保護を与える傾向にあるため、市場での知名度を上げることがそのまま法的保護の強化につながります。

4. 証拠保全の重要性と使用の継続性

「使用による識別力」を主張するためには、中国国内での長期間にわたる広範な使用実績、広告宣伝費、メディア掲載、受賞歴などの証拠を、体系的に保存・管理しておく必要があります。特に、商標出願した形状と実際の使用形状が一致していることを示す証拠の確保が重要です。北京知的財産法院の判決でも指摘されたように、商品形状が頻繁に変更されたり、装飾によって基本形状が見えにくくなっていたりすると、証拠としての価値が否定される可能性があります 。

結論:収益を生み出す知財戦略へ

レゴ社の事例は、知財活動が決して法務部門だけの業務ではなく、企業の収益に直結する経営課題であることを証明しています。3,000万元(約5億円)という賠償金は、強力な知財ポートフォリオがあって初めて実現した「収益」です。一方で、立体商標の拒絶は、知財制度の限界と、それに適応するための戦略的柔軟性の必要性を教えてくれます。

日本企業がグローバル市場、特に中国市場で成功を収めるためには、自社の知財を単なる「権利」としてではなく、「収益を生み出す資産」として捉え直し、攻めと守りの両面から緻密な戦略を構築できる体制と人材が不可欠です。

(この記事はAIを用いて作成しています。)

参考文献

Harvesting Law Firm, “LEGO minifigure 3D trademark China lawsuit Guangdong High People’s Court”

China IP Law Update, “Lego Awarded 35 Million RMB in Chinese Trademark Infringement Case”

AWA, “Lego’s compensation increased tenfold by appeal court”

LEGO Group, “The LEGO Group wins final decisions in major intellectual property lawsuits against Lepin manufacturer in China”

Buren Legal, “LEGO wins major Intellectual Property lawsuit in China”

GE CHENG & CO., “Lego minifig 3D trademark case China functional shape rejection”

WilmerHale, “Protecting the Brick: Lego’s Global IP Enforcement Efforts”

HGF, “Iconic designs defended: Lego’s mini-figure stays strong”

JETRO, “レゴのブロック部品をめぐるEU司法裁判所の判決、見た目がカギに”

Arochi & Lindner, “EU General Court annuls LEGO design and expands on the concept of ‘overall impression'”

JM Bricklayer, “The History of Trademark Dispute Over LEGO Minifigures”

EUIPO, “Lego’s EUTM representing a toy figure remains valid”

Dorsey & Whitney LLP, “Lego Trade Mark Application Hits a Brick Wall”

GE CHENG & CO., “Beijing IP Court (2020) Jing 73 Xing Chu No. 12971 LEGO minifigure 3D trademark rejection reasoning”

BOEHMERT & BOEHMERT, “General Court confirms the validity of a Lego figure as 3D trade mark”

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次