AI関連特許の急増と技術動向(直近5年間)

AI関連特許の急増と技術動向

こんにちは。株式会社IPリッチのライセンス担当です。今回は、近年急増しているAI(人工知能)関連特許の出願動向と、その背後にある技術トレンドについてわかりやすく解説します。AI技術の進歩に伴って特許出願が世界的に増加しており、各国や企業の競争も激化しています。本記事では、その現状と背景を整理し、知財の視点から今後の展望も考えてみます。

目次

AI関連特許出願の急増

AI分野の特許出願は、第三次AIブームとも呼ばれる2010年代後半から世界的に急増しています。例えば日本国内では、2014年を境にAI関連発明の出願件数が大きく伸び始め、2022年には年間約10,300件に達しました【1】。これは2010年代前半までの水準から飛躍的な増加であり、AI技術の実用化が特許出願として本格化したことを示しています。また、このうちAIコア技術(機械学習アルゴリズムなど)に分類される出願は同年で約3,000件と高水準で推移しています【1】。

米国でも同様にAI特許の出願が増えており、米国特許商標庁(USPTO)によれば2018年以降に33%増加しました【3】。さらに2023年には全技術分野の60%にAI関連の発明が含まれていたとのデータもあり【3】、AI技術が様々な産業領域に広がっていることがわかります。世界全体で見てもAI特許の出願は過去数年で空前の伸びを示しています。ある調査では2023年単年で世界のAI関連特許出願が前年度比6割以上も増加したとの報告もあります【2】。このようにAI特許は近年、量・質ともにかつてない勢いで拡大しているのです。

技術分野別に見るAI特許の動向

AI関連特許の増加を牽引しているのは、技術面ではやはり機械学習(とりわけディープラーニング)の進展です。現在の出願急増は、1950-60年代の第一次AIブームや1980年代の第二次AIブームとは異なり、大量のデータから学習するディープラーニング技術が実用段階に入ったことが背景にあります。実際、特許分類上でも第三次AIブーム以降はG06N20(機械学習)に関する特許が大幅に増加し、逆に従来の知識ベース型AI(G06N5)に関する出願は割合を減らしています【1】。これは、人間がルールを与える従来型から、AI自らデータから特徴を学習する方式へのシフトを反映しています。

特に2010年代後半からは、ディープラーニングの主要手法に関する特許が次々と出されています。例えば画像認識で用いられる畳み込みニューラルネットワーク(CNN)関連の出願件数は2014年以降急増を続けています【1】。一方で、自動運転などに応用される強化学習は近年横ばい傾向という報告もあり、新旧技術で増加の勢いに差が見られます【1】。2020年代に入ると、Transformerに代表される新しい深層学習モデルの登場で生成AIブームが起こり、これが特許動向にも表れています。

生成AI(ジェネレーティブAI)関連の特許出願数は爆発的な伸びを示しており、世界知的所有権機関(WIPO)の調査では過去10年間(2014~2023年)に5.4万件もの生成AI発明が公開され、そのうち4分の1以上(1.4万件超)が2023年の1年間に集中しています【2】。ChatGPTの登場した2022年末以降、画像・文章生成モデルなどへの関心が一気に高まったことが特許データにも現れていると言えるでしょう。生成AI分野では特に生成対向ネットワーク(GAN)や大規模言語モデル(LLM)などのコア技術に関する特許が多く、データ種別では画像・映像、テキスト、音声など幅広いデータを対象とした発明が目立ちます【2】。また応用分野も多岐にわたり、医療・ライフサイエンス、製造業、輸送・自動車、セキュリティ、通信など様々な産業で生成AI関連発明が出願されています【2】。これはAI技術が単なる研究段階を超えて、実産業の具体的課題を解決するフェーズに入ってきたことを示しています。

さらに、AIの適用範囲拡大は従来別個だった技術分野にも変化をもたらしています。特許分類別の動向を見ると、医用診断(A61B)や画像処理・認識(G06T・G06V)交通制御(G08G)といった分野でAI技術を取り入れた発明の出願が近年特に急増しており、2010年比で数倍以上の伸び率を示しています【1】。例えば医療画像診断へのディープラーニング活用や、自動運転車両の制御アルゴリズムなどが典型で、AIの応用範囲が静止画から動画、単純作業から高度判断領域へと拡大していることがうかがえます。一方で、一部の分野では出願増加がやや鈍化しているという指摘もあり【1】、AI技術の成熟度によって特許出願の勢いに差が出てきている可能性があります。

世界のAI特許競争:国別・企業別の状況

AI関連特許の急増は各国の技術競争力の指標ともなっており、世界規模で見ると中国と米国が突出した存在です。特許ファミリー件数で比較すると、2015年以降のAIコア技術分野では中国が約44万件と群を抜いており、米国(約5.2万件)の8倍以上、日本(約1万件)の実に40倍超という桁違いの差があります【4】。米国は日本の5倍強、そして中国は米国の8.5倍にも達しており【4】、AI特許出願において中国が圧倒的な量を示していることがわかります。事実、世界全体のAI関連特許のシェアでは中国が約6~7割を占めており【5】、米国(約2割弱)や日本・欧州などを大きく引き離しています【5】。中国政府によるAI産業推進策や豊富な人材・資金投入も背景にあり、AI特許の量的拡大で中国が主導的立場に立っている状況です。一方、米国は特許件数こそ中国に次ぐものの、引用件数など質の面で依然優位との分析もあります【5】。これは米国企業が基盤技術や重要発明の特許を重視しているためと考えられ、量の中国に対し質の米国という構図もうかがえます。

企業別に見ると、直近5年間(2020~2024年)では中国系企業・機関がAI特許の上位を独占しています。WIPOの生成AIレポートでも特許保有件数トップ10のうちTencent、Ping An、Baiduなど中国企業・大学が多数を占めたと報告されています【2】。実際、日本特許庁の分析によれば、2015~2019年はIBMやMicrosoft, Googleといった米企業がAI分野の特許件数で上位でしたが、2020年以降はTencentや中国国家電網(State Grid)といった中国勢がトップに立ち、かつて上位だった日本企業(NEC、富士通など)は姿を消しています【4】。またSamsung(韓国)など一部韓国企業も上位に食い込んでいますが、全体として中国企業・大学の台頭が顕著です【4】。このようにAI特許は国際的な競争の様相を呈し、中国・米国を中心に、韓国・日本・欧州などが追随する構図になっています。各国政府も重要技術と位置付けて支援やルール整備を進めており、「AI特許戦争」とも言える状況になりつつあります。

AI特許急増の背景と課題

ここまで見てきたように、AI関連特許の出願ラッシュは技術革新と各国の競争戦略が絡み合った結果と言えます。背景には、計算資源の発達とビッグデータの蓄積によりディープラーニングが実用化したこと、そして企業が知的財産によって技術優位を確保しようとする動きがあります。AI技術は汎用性が高く様々な応用が可能なため、自社の業界でいち早く特許を押さえておきたいという企業心理が働き、結果として出願件数が増大しています。また、中国を筆頭に各国政府がAI研究開発を国家戦略として支援し、大学・研究機関と企業が連携して発明創出→特許出願という流れが加速したことも寄与しています【2】。その一方で、出願急増に伴い特許審査や制度面の課題も浮上しています。例えばAIが創作に関与した発明の発明者認定や、アルゴリズム自体の特許適格性など、法律・運用上の新たな論点も出てきています【3】。各国の特許庁はガイダンス策定や審査基準の見直しを進めており、AI時代に即した知財制度の整備が求められています。

AI特許と知財の収益化

AI関連特許が増大する中、それら知的財産をどう収益につなげるかも重要なテーマです。特許権は一定期間、発明の独占的実施を認める代わりにライセンス料等で利益を得ることが可能な権利です。AI技術の場合、自社で活用するだけでなく、他社にライセンス供与して収益化するモデルも有効でしょう。また、技術の進歩が早いAI分野では、自社で使わなくなった特許を売却したりポートフォリオを整理して資金化する動きも考えられます。近年ではスタートアップが特許を防衛的に確保しつつ、オープンソース戦略やパテントプールを活用して柔軟に収益を得るケースも出てきています【2】。特に生成AI分野では革新のサイクルが速いため、特許戦略とビジネス戦略を連携させ、ライセンス交渉や提携によって知財の価値を最大化することが企業経営上ますます重要になってきています。

AI関連特許の隆盛は、単に技術競争のみならず、知財の収益化という観点でも新たなチャンスを生み出しています。特許は研究開発投資の成果を保護するだけでなく、ライセンス料収入や事業提携の交渉力の源泉にもなります。多くの企業が自社のAI特許を活用したライセンシングビジネスやクロスライセンスによるコラボレーションを模索しており、知財を「攻め」の収益源として位置付ける動きが広がっています。今後もAI分野の発展とともに、知財を通じた収益創出の可能性は拡大するでしょう。

本記事で取り上げたように、AI関連特許の急増と技術動向には世界的な広がりと変化が見られます。技術開発の最先端を反映するAI特許は、各国・企業の競争戦略や協業関係にも影響を与えつつあります。知財の収益化という観点でも、増え続けるAI特許群をどう活用するかが問われています。もし自社で保有する特許を活用して収益を得たいとお考えでしたら、特許売買・ライセンスプラットフォーム「PatentRevenue」(https://patent-revenue.iprich.jp)に無料登録してみてはいかがでしょうか。知的財産を戦略的に活用し、AI時代のビジネスチャンスを是非つかんでください。


参考文献一覧

  1. 特許庁「AI関連発明の出願状況調査 報告書」(2024年)〔https://www.jpo.go.jp/system/patent/gaiyo/sesaku/ai/document/ai_shutsugan_chosa/hokoku.pdf〕
  2. WIPO Press Release, “China-Based Inventors Filing Most GenAI Patents, WIPO Data Shows” (2024年7月3日)〔https://www.wipo.int/pressroom/en/articles/2024/article_0009.html〕
  3. USPTO, “Artificial Intelligence Strategy” (2025年1月)〔https://www.uspto.gov/sites/default/files/documents/uspto-ai-strategy.pdf〕
  4. 特許庁「AI関連発明の出願動向調査(国際編)」(2025年6月)〔https://www.jpo.go.jp/resources/report/gidou-houkoku/tokkyo/document/index/2025_report_ai.pdf〕
  5. PatentPC, “AI Patent Boom: The Latest Stats on Global AI Patent Filings” (2025年8月9日)〔https://patentpc.com/blog/ai-patent-boom-the-latest-stats-on-global-ai-patent-filings〕
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