特許収益化とライフサイクル管理: 知財部の新しい役割

株式会社IPリッチのライセンス担当です。
本記事では、「特許ライフサイクル管理と収益化戦略:知財部の新しい役割」について、士業、企業知財部、大学関係者などの専門家向けに解説します。特許の出願から審査・登録、維持管理、権利活用、収益化、放棄までのライフサイクルを通じ、知財部が知的財産をビジネス資産として活用するための戦略を考察します。また、「現在侵害されている特許がもっとも価値が高い」という視点も交えながら、特許価値の最大化策を探っていきます。

目次

知財部の新しい役割と特許ライフサイクル管理

企業の知財部はこれまで、発明の特許出願や権利維持といった特許管理の裏方的役割が中心でした。しかし近年では、知的財産を単なるコストではなく収益を生み出すビジネス資産として捉え、能動的に活用することが求められています。実際、日本国内に約160万件ある特許のうち企業が保有するものの7割近くが未活用だとする調査結果もあります【1】。つまり多くの特許は社内で眠ったままになっており、維持費用だけがかかっているのが現状です。一方で米国の統計では「全特許の約97%は取得コストすら回収できていない」とも報告されており【2】、裏を返せば収益を生んでいる特許はわずか3%程度にすぎません【2】。こうした事実は、従来の受動的な特許管理だけでは知的財産から十分なリターンを得られていないことを示しています。

しかし、わずかながら収益を上げている特許は企業にも大きな利益をもたらします。例えばIBM社は特許ライセンスなど知財の活用によって、2009年に11億ドル超(約1100億円)の収入を特許部門で計上しました【3】。また国内でも、自社技術を特許で独占することが売上や企業価値の向上に直結した事例が報告されています。つまり知財部は、防御的に権利を確保するだけでなく、攻めの知財戦略で自社の特許ポートフォリオから価値を引き出す「収益創出の担い手」という新たな役割を担い始めているのです。知財部門が経営戦略に深く関与し、研究開発から特許取得、その後の活用プランまでライフサイクル全体を見据えてプランニングすることが、現代企業ではますます重要になっています。

特許の出願・審査と権利化のプロセス

特許ライフサイクルの第一歩は特許出願です。研究開発部門などから発明の情報が上がってきたら、知財部はその発明内容を精査し、特許取得する価値があるかを判断します。競合他社に先んじて権利を確保すべき重要なコア技術であれば、特許出願の準備を進めます。特許明細書の作成では発明の新規性・進歩性が十分主張できるように専門家(弁理士)と協力し、権利範囲(クレーム)の検討を行います。出願書類を特許庁に提出した後、所定の期間内に審査請求を行うことで審査が開始されます。

審査段階では、特許庁の審査官が先行技術文献との比較により発明の特許性を判断します。不備があれば拒絶理由通知が届きますが、知財部や担当弁理士は意見書や補正を提出してクリアを図ります。こうしたやり取りを経て発明が特許要件を満たすと判断されれば特許査定となり、出願から数年を経て特許権の設定登録がなされます。登録時には特許料(設定登録料)を納付し、これで晴れて特許権の発生です。特許権の存続期間は出願日から20年(原則)で、以後は毎年所定の年金(維持費用)を納めることで権利を維持できます。権利化までには出願準備や審査対応に労力と費用がかかりますが、特許を取得すれば一定期間独占排他できる強力な権利を得られるため、企業にとって重要な投資と言えます。

特許の維持管理とポートフォリオ戦略

特許権を取得した後は、その権利を適切に維持管理していく必要があります。特許権維持の基本は毎年の年金支払いで、期限までに年金を納付しないと権利が失効してしまいます。特に特許権の存続期間が長期に及ぶ場合、後半になるほど年金額も高額になる仕組みのため、保有特許が増えるほど維持費の負担は無視できません。例えば特許を10件維持しようとすると、出願・権利化に要した費用に加えて10年間で合計約2,000万円もの維持費がかかるとの試算もあります【4】。このように大量の特許を抱える企業では、毎年支払う維持費用だけでも大きなコスト要因となります。

そこで求められるのが、特許ポートフォリオの戦略的な棚卸し(見直し)です。企業が保有する多数の特許一件一件について、定期的に価値評価を行い、保有し続けるべきか、他社に活用してもらうべきか、あるいは権利を手放すべきかを判断します。事実、特許庁の調査によれば企業保有特許のうち実際に事業などに活用されているものは約3割にとどまり、残り7割は未利用だとされています【1】。闇雲に特許を維持し続ければ、陳腐化した技術の特許に毎年費用を払い続けることになりかねません。「とりあえず出願しておこう」と取得した特許が塩漬けになっているケースは少なくなく、それが未利用特許の多さに直結しているとも指摘されています【1】。

この状況に対し、近年は「戦略的特許放棄」の考え方も浸透しつつあります。自社の事業に直接貢献しない特許や、将来にわたって活用見込みの低い特許については、思い切って権利維持をやめてしまう判断です。特許を放棄(権利抹消)すれば将来の年金支出を削減できますし、別の企業にその技術を使ってもらう道(後述のライセンスや譲渡)も開けます。ただし「特許を手放した途端に競合他社に使われてしまうのではないか」という不安から、不要特許を漫然と抱え続けてしまう傾向も企業にはあります【4】。知財部の重要な役割として、このような惰性的な特許維持を避け、定期的なポートフォリオ評価と取捨選択(棚卸し)を徹底することが挙げられます【4】。限られたリソースで本当に価値ある特許に経営資源を集中させるためにも、知財部は経営陣と協議しながら保有特許群の最適化を図らねばなりません。

特許の価値評価と収益化の視点

特許を維持するか手放すか判断する上でも、その価値評価は欠かせません。特許の価値は一概に測りにくいものですが、収益化の文脈でしばしば語られるのが「現在侵害されている特許こそ最も価値が高い」という一見逆説的な格言です【5】。他社に無断で使われている(=侵害されている)ということは、その技術に市場ニーズがあり有用である証拠とも言えます。裏を返せば、誰にも使われていない特許は市場価値が顕在化していない可能性が高いということです。実際、特許権者から見ると、自社特許を他社に無断使用されている場合には差止め請求や損害賠償請求によってライセンス料収入や和解金を得られる可能性が生まれます【5】。米国では特許侵害による損害賠償について過去6年分まで遡って請求できる制度があり、継続中の侵害が発見された特許はまさに「眠れる金脈」となり得るのです【5】。

もっとも、実際に侵害が発生していても、それを放置していては価値はゼロのままです。知財部は社内外の技術動向や競合製品を常にモニタリングし、自社特許が侵害されていないかアンテナを張る必要があります。そしてもし侵害の兆候があれば、まずは警告や交渉によるライセンス契約の提案を検討します。それでも合意に至らなければ訴訟という手段で権利行使し、侵害差止めや損害賠償の獲得を目指すことになります。訴訟には時間と費用がかかりリスクも伴いますが、それでも勝訴すれば多額の賠償金やロイヤルティ収入を得られる可能性があります。事実、世の中には自社では製造販売を行わず特許の権利行使だけで収益を上げる専業業者も存在します。いわゆる「パテントトロール」と呼ばれる企業群で、他社の休眠特許を安価に買い集めてはその技術を使用している企業にライセンス料や和解金を要求するといったビジネスモデルです【5】。近年では大手企業が自社の知財部門を子会社としてスピンアウトし、そこで自社特許を行使させることで本体は直接訴訟に関与しないようにするケースも出てきました【5】。このように特許の価値は活用して初めて顕在化するものであり、侵害への対処も含めた戦略的な権利行使こそが知財収益化のカギを握るといえます。

特許の収益化戦略: ライセンスからスピンアウトまで

特許を収益化する手法には実に多様なものがあります。知財部は自社の事業戦略や保有特許の特徴に応じて、最適な収益化プランを選択する必要があります。代表的な特許収益化の手法として、以下のようなものが挙げられます。

  • ライセンス供与(特許実施許諾): 自社ではその特許発明を製品化せず、他社に利用を許可してロイヤリティ収入を得る方法です。最もオーソドックスな特許収益化手段であり、自社で製造・販売する場合と比べて初期投資が不要な点が魅力です。他社に技術使用を許す代わりに、売上高の数%といった形で継続的に実施料を受け取ります。ライセンス契約によって自社に安定収入が入るだけでなく、ライセンシー(実施企業)の持つ市場展開力や生産能力を活かせるため、自社特許の価値を最大化する協調的ビジネスモデルでもあります。自社に権利を残したまま収益を上げられるため、特許を手放してしまう売却よりもライセンス供与を好む企業も多い傾向です。
  • 特許の売却(譲渡): 特許権そのものを第三者に売却し、一時金の収入を得る方法です。法律上、特許権は財産権として売買可能であり、不用な特許を売却することで即座に資金化できるメリットがあります【5】。将来にわたる年金負担もゼロになるため、大量の休眠特許を抱える企業にとって魅力的な選択肢です。一方で、一度売却すれば特許権は完全に相手方に移転してしまうため、自社でその技術を独占・コントロールすることはできなくなります。その代わり、ライセンスの場合のような継続収入は得られませんが、一括で高額の売却益が期待できるケースもあります。近年では特許専門のブローカーやオンラインプラットフォームを介した売買マーケットも整備されつつあり、自社では活用しきれない特許を必要とする企業に橋渡しする機会が増えています。
  • 特許権の行使(訴訟・係争): 自社特許を侵害している他社に対し、法的措置によってライセンス料や損害賠償を得る方法です。まずは差止め請求や警告を通じてライセンス契約の締結を促し、応じなければ訴訟を提起して権利を強制的に守ります。特許は独占権であると同時に、侵害発生時に司法救済を求める権利でもありますので、正当な権利行使として当然の手段と言えます。成功すれば多額の和解金や賠償金を得られる可能性がありますが、訴訟には時間と費用がかかるハイリスク・ハイリターンな側面があります。また権利行使を積極的に行い過ぎると、取引先との関係悪化や企業イメージの低下を招く恐れもあり、ビジネス戦略上慎重な判断が必要です。もっとも、自社では権利行使しにくい場合でも、前述の専門業者(NPE)に特許を譲渡して代わりに訴訟してもらい、得られた収益の分配を受けるといった間接的な手法も存在します【5】。いずれにせよ、知財部としては自社特許が侵害された際に泣き寝入りせず、適切な法的対応も選択肢に入れることで、眠れる特許資産から収益を引き出すことが可能となります。
  • スピンアウト(事業化): 特許を核として新規事業や新会社を立ち上げる手法です。企業内の有望技術や特許群を社内ベンチャー的に切り出して別会社として独立させることで、機動的に事業化を図れます。大企業では、自社で活用しきれない技術を子会社やスタートアップとしてスピンアウトさせ、親会社とは別組織で資金調達や提携を進める例も出てきました。これにより、親会社は新事業から間接的にリターンを得られる一方、万一特許係争が発生しても本体の評判や法的リスクへ直接波及しにくい利点があります【5】。実際、米国では知財部門自体を子会社化し、そこで特許権行使(訴訟)を専門に行わせるケースも報告されています【5】。また、発明者本人が特許を武器に起業する形もスピンアウトの一種です。大学や企業の研究者が、自身の特許シーズをもとにスタートアップを興し、大企業と提携しながら事業化を進める例も増えてきています。スピンアウトは特許の収益化と新事業の創出を両立できる手段として注目されます。
  • 共同研究・開発(アライアンス): 自社の特許技術を起点に、他社や大学などと協業して事業化する手法です。自社単独では製品化や市場開拓が難しい場合でも、他社と手を組むことでお互いの強みを活かした新商品・サービス創出が可能になります。例えば「自社は特許技術を提供し、相手企業は生産設備や販売網を提供する」といった役割分担で共同開発を行えば、単独では実現困難だったビジネスを形にできます。その成果や利益は契約に応じて配分されます。特許を軸とした企業間アライアンスは単にライセンス料を得るだけでなく、新たな市場を共創できる点で価値が高い手法です。近年では大学や公的研究機関との共同研究契約を通じて、大学側の特許を企業が事業化する産学連携モデルも活発化しています。知財部はこうした外部との連携交渉において契約面を取り仕切り、自社の権利を守りつつWIN-WINの枠組みを構築する役割を担います。
  • 標準化・パテントプール参画: 業界標準規格への特許活用も間接的な収益化につながります。自社の特許技術が国際標準や業界標準規格に採用されれば、その特許は標準必須特許(Standard Essential Patent)となり、市場の多数の企業からライセンス料を得るチャンスが生まれます。標準化により自社技術が事実上の業界共通インフラとなれば、特許ライセンス収入の裾野は飛躍的に広がるでしょう。また、複数企業が持つ特許をひとまとめにしてライセンス供与するパテントプールに参加する方法もあります。プールを通じて多数の実施希望者に包括的にライセンスすれば、個別交渉の手間なく広範な利用者から収入を得られます。もっとも、標準必須特許になると公平かつ合理的・非差別的(FRAND)条件でのライセンス提供義務が課されるなど、権利行使に一定の制約も伴います。それでも自社単独ではアクセスできない巨大市場への参入や技術普及によるメリットは大きく、標準化・パテントプールは特許収益化の一環として検討に値する戦略です。

まとめ

以上のように、特許の収益化手法は実に多岐にわたります。ライセンス供与や共同開発ではパートナー企業との協業が前提となり、売却においても相手先とのマッチングが不可欠です。訴訟による収益化でさえ、専門の訴訟ファンドや弁護士との連携が重要になるでしょう。特許の収益化は決して一社単独で完結するものではなく、知財部が中心となって社内外の関係者と交渉・協働しながら価値を創出していく活動だと言えます。まさに特許収益化は企業と企業、人と人とを結ぶエコシステムの中でこそ最大の成果が生まれるのです。

知財部には、以上のような多様な戦術を駆使して自社特許の眠れる価値を掘り起こし、収益や新事業につなげることが期待されています。特許は適切に管理・活用すれば、企業にもたらすリターンは計り知れません。本記事で述べたように、特許のライフサイクル全体を通じて戦略的に目を配り、守りから攻めまで一貫して知財マネジメントを行うことが、知財部の新しい使命と言えるでしょう。ぜひ手元の特許を眠らせず、ビジネスに役立てる一歩として、収益化したい特許の保有者の方は特許売買・ライセンスプラットフォーム「PatentRevenue」に特許を無料登録してみてくださいhttps://patent-revenue.iprich.jp)。

(この記事はAIを用いて作成しています。)

参考文献

  1. 特許庁総務部企画調査課「特許情報を活用したビジネスマッチングレポートの開発・提供」(特許庁 報告書, 2019年8月) — https://www.jpo.go.jp/resources/report/chiiki-chusho/matching-tool.html
  2. Stephen Key「In Today’s Market, Do Patents Even Matter?」(Forbes, 2017年11月13日) — https://www.forbes.com/sites/stephenkey/2017/11/13/in-todays-market-do-patents-even-matter/
  3. Brian P. Farr「特許の収益化」(パテントメディア 2010年5月号) — https://www.ondatechno.com/jp/report/patent/patet-report/p5941/
  4. 藤掛康伸「社内に眠る『お宝特許』をキャッシュ化する」(みずほ総合研究所, 2012年11月19日) — https://www.mizuho-rt.co.jp/archive/solution/marketing/pdf/business121119.pdf
  5. 日本貿易振興機構ニューヨーク事務所『米国における知財の活用状況に関する調査報告書』(2025年3月) — https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Ipnews/us/2025/202503.pdf
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