特許マーケットの現状と収益化ビジネスモデルの展望

株式会社IPリッチのライセンス担当です。
本稿では、特許マーケットの現状と特許収益化ビジネスモデルの展望について、グローバルおよび日本の動向を踏まえ、主要な収益化スキームの特徴・課題を網羅的に解説します。特許の価値最大化に関心のある知財専門家の皆様に向け、最新の事例や統計データも交えつつポイントを整理します。
特許マーケットの現状と収益化の重要性
世界的に企業が保有する特許資産の多くが十分に活用されていない現状があります。例えば、日本国内に約160万件ある特許のうち、およそ半数は大企業で未活用のまま眠っている「休眠特許」とされています【1】。特許庁の調査でも、企業保有特許の実利用率は3割程度にとどまり、残り約7割が未利用であることが明らかになりました【1】。これは維持費だけが発生し収益を生まない資産が多数存在することを意味し、企業にとって大きな機会損失と言えます。
一方で、近年は経営層も知的財産を「眠れる資産」から収益源へと転換することに注目しています。多額の研究開発投資を経て取得した特許を有効活用することで、ライセンス収入や特許売却益によってコア事業以外から収益を得る道が開けます。事実、社内弁護士の約70%が「自社は10年前より特許収益化に前向きになった」と回答し、過去10年で特許収益が増加したとする声も7割を超えています【2】。特許を単なる防御的権利ではなくビジネス資産と捉え直し、収益創出や資金循環に活かすことが企業価値向上のカギとなりつつあるのです。特許をライセンス提供すれば特許維持費や機会損失を補填でき、得た収益を新たなイノベーション投資に充てる好循環も期待できます。
グローバル特許マーケットの動向と事例
グローバルでは特許取引・ライセンスの市場規模が着実に拡大しています。ある市場調査によれば、世界の特許ライセンス市場規模は2024年に約24億ドルと推計され、2032年には約44億ドルに達する見通しとされています【3】。年平均成長率は7%台と高く、技術分野の拡大や知財ビジネスの成熟に伴い特許の売買・ライセンスが今後ますます活発化すると予想されています。
また、自社特許の収益化に踏み切る企業も増えています。米IBM社は長年にわたり自社の特許ポートフォリオを他社に実施許諾しており、1996年以降の特許ライセンス収入は累計で270億ドル以上、近年でも年間約10億ドル規模の収益を上げています【4】。米クアルコムのように、自社ビジネスモデルの中核を特許ライセンス収入が占める企業も存在します。特許ライセンスは一企業にとって重要な収益源となり得ることを、こうした事例は示しています。
他方で、特許収益化の一形態である訴訟による権利行使ビジネスも台頭しました。米国では2010年代前半に、製品を持たず特許権行使で収入を得る特許訴訟専門業者(いわゆるPAE/NPE)の活動が活発化し、2011年頃には全特許訴訟の3割弱だったNPEによる提訴件数が数年で6割超にまで急増したとの報告もあります【7】。こうしたパテントトロール的な動きへの反発から、米国では訴訟濫用を抑制する法改正や判例整備が進みました。しかし近年、訴訟資金を専門に提供するファイナンス企業が登場し、特許訴訟による収益化を後押しする動きも見られます【2】(資金提供者が訴訟費用を負担し、勝訴時に得られる賠償金や和解金を分配)。グローバル特許マーケットはこのように多様な収益化手法が併存しつつ、各国の制度や市場環境に応じて進化している状況です。
日本の特許マーケットと収益化ビジネスモデルの動向
日本においても、特許の収益化に対する関心と取組みが近年高まっています。従来、日本企業は特許を自社製品の独占や他社牽制の手段と位置付け、積極的なライセンス提供や売却には消極的とされてきました。しかし、イノベーションの加速や経営効率化の観点から「休眠特許の掘り起こし」が重要課題となり、産官学で動きが出ています。
実際、事業構造の変化に伴い大手メーカーが不要となった特許を海外企業に売却し、それが海外競合の技術力強化につながったケースも指摘されています。例えば、韓国サムスン社の有機ELテレビには、元々日本のNEC社が保有していた特許技術が活用されています【6】。こうした知財の国外流出への危機感から、2013年には官民ファンドによる特許買取スキームが設立されました【6】。政府系ファンド(現・株式会社IPブリッジ)が大手企業等の未活用特許を買い取り、国内企業への再ライセンスや事業支援に活用する取り組みで、特許の流通を促進しつつ日本企業の競争力低下防止を図ったものです。
さらに、日本企業自らも特許の積極的な流通に乗り出し始めています。近年の特許ブローカー市場分析によれば、2016年にはNECやパナソニックが仲介業者を通じて繰り返し特許を売却した例が報告されています。一方で楽天など日本企業が仲介経由で特許を購入する動きもみられ、アジア全体で特許の二次市場が活発化しています【5】。大手電機メーカーの中には、自社の知財専門子会社を通じて他社特許の売買仲介サービスを提供し、自社保有特許の現金化のみならず他社からの特許調達にも取り組む例も出てきました。
公的機関による支援策も整備されつつあります。特許庁は自社の特許を他社にライセンス提供してもよい「開放特許」の情報を一括公開する場として、INPIT(工業所有権情報・研修館)が運営する「開放特許情報データベース」を開設しました【1】。企業や大学などが自社の技術を他社による活用に供する意思がある場合にその特許情報を登録でき、ライセンス可能な特許を誰でも無料検索・閲覧できる公的サービスです【1】。2022年には特許庁が「特許のライセンス促進策」を打ち出し、眠れる特許の見える化やマッチング支援事業を推進しています【1】。このように、日本でも産業競争力強化やオープンイノベーション推進の観点から、特許の有効活用・収益化に向けた土壌が整いつつあります。
特許収益化ビジネスモデルの種類と特徴
以上の動向を踏まえ、特許を収益につなげる代表的なビジネスモデルにはどのようなものがあるでしょうか。以下に主要な収益化スキームを網羅し、それぞれの特徴と課題を整理します。
- 直接ライセンス(自社実施以外への許諾): 特許権者が製品メーカーやサービス提供企業に対し、自社の特許を実施許諾してロイヤリティ収入を得る手法です。自社では活用しきれない技術を他社に用いてもらうことで継続的な収益源となり得ます。IBMやクアルコムのように、自社の特許ポートフォリオを積極的に他社へライセンスし多額の収入を上げている企業もあります。課題: 契約相手を見つけて交渉をまとめるには高度な知財交渉力と時間を要し、相手方がライセンスに消極的な場合は侵害の立証や訴訟も辞さない交渉姿勢が求められます。また、ライセンス条件の設定次第では将来的な収益が制限されるため、慎重な契約設計が必要です。
- 特許売却(譲渡): 特許権そのものを第三者に売却し、一時金を得る手法です。将来的な実施料ではなく即時にまとまった収入を得られる点や、特許維持費用の負担から解放される点がメリットです。課題: 一度売却すると特許権は相手方に完全に移転するため、以後その技術から生じる利益はすべて買い手側のものとなります。将来の成長価値を手放すことにもなりかねず、売却金額の妥当性が大きな問題です。また、自社が撤退した事業分野の特許を売却した結果、それが競合他社に渡り自社の競争劣位につながるリスクもあります【6】。実際に日本企業が手放した特許が海外企業の主力製品に活用されてしまった例もあり【6】、戦略的でない安易な売却は注意を要します。
- 仲介(ブローカー利用): 特許の売り手と買い手、ライセンサーとライセンシーを結ぶ仲介事業者(ブローカー)やオンラインプラットフォームを活用する手法です。自社だけでは接点のない幅広い業界の企業に対して、ブローカーのネットワークを通じて特許の売買・ライセンスの機会を探ることができます。特徴: 仲介業者は特許の技術分野や市場価値を評価した上で、適切な取引相手を紹介してくれるため、効率的なマッチングが期待できます。特許流通市場の拡大に伴い、海外では専門ブローカーが多数登場し、近年は日本企業でも仲介を介した特許売買が増加傾向にあります【5】。課題: 仲介サービスには成功報酬や手数料が発生するため、自社が得る正味の収益は手数料分だけ目減りします。また、自社の特許情報を開示して売りに出すことで技術情報が外部に知られるリスクや、買い手が見つかる保証がない中で時間を要する可能性もあります。信頼できる仲介業者選びと、必要に応じて秘密保持契約の締結などの対応が求められます。
- 訴訟資金提供型(NPEモデル等): 特許を巡る訴訟や差止請求により収益化を図るモデルです。特許権者が自ら訴訟を起こす場合もありますが、近年は訴訟ファイナンスと呼ばれる仕組みで、専門の投資家が訴訟費用を肩代わりし勝訴時に得られる賠償金の一部を受け取る契約も増えています【2】。あるいは特許権者から特許を買い取ったNPE(非実施主体)が代理で侵害訴訟を提起し、獲得した賠償金や和解金から収益を上げるケースも典型例です。特徴: 裁判で勝利すれば多額の損害賠償や和解金を得られる可能性があり、一攫千金型のビジネスモデルとも言えます。特に米国のように高額賠償が認められる法域では、大手企業からライセンス料名目で和解金を引き出すビジネスが一時期隆盛しました【7】。資金提供者の存在により、資金力に乏しい中小企業や大学でも訴訟を起こしやすくなっている点も特徴です。課題: 訴訟そのものの不確実性が高く、敗訴すれば費用倒れになるリスクがあります。長期間にわたり法的争訟にエネルギーを割く必要もあり、本業への悪影響も無視できません。また、このモデルが行き過ぎると「パテントトロール」と批判されるように、イノベーションを阻害するとの世論や法規制の対象となり得ます。実際に米国ではNPEによる特許訴訟乱発への規制が強まり、権利行使が制限される判例も増えています。日本では賠償額が相対的に低く訴訟費用倒れの懸念からNPEの活動は限定的でしたが、近年は損害賠償算定方法の見直し(逸失利益の充実等)で訴訟による収益化の魅力も増しつつあり、動向に注意が必要です。
- 特許ファンド: 特許を投資対象とするファンドを組成し、他社の特許をまとめて取得・管理して収益化を図るモデルです。官民連携で設立されたファンドでは、大企業等から未活用特許を買い取り中小企業へのライセンス提供や事業譲渡を仲介することで、特許の社会実装と収益化を両立する狙いがあります【6】。一方、民間の特許ファンドやパテント・ブローカー集団(例:米Intellectual Ventures社など)は、有望な特許を世界中から買い集めて大規模なポートフォリオを構築し、広範なライセンス供与や違反企業への法的措置によって収益を得ようとします。特徴: 特許ファンドは専門家チームが特許の目利きを行い、個別企業では活用しきれない知財を集約して価値を引き出す点に強みがあります。オープンイノベーションの受け皿として機能し、特許権者にとってはファンドへの売却により即時収益化と維持費負担軽減が得られるメリットもあります。課題: ファンド運営には多額の資金と高度な特許評価能力が必要であり、採算ラインに乗せるまで時間がかかる場合があります。また、ファンドが権利行使を積極的に行えばNPEと同様に訴訟リスクを高めるため、ライセンス先企業との関係構築や社会的信用の維持にも配慮が求められます。日本発の官民ファンドであるIPブリッジも、収益性と産業振興のバランスを取りながら運用が続けられています【6】。
- オープンイノベーション連携: 特許を厳格に囲い込まず他組織とのコラボレーションに活用することで間接的な利益を生み出すモデルです。具体的には、特許を無償または低廉な条件で公開して業界標準の形成や市場拡大を促したり、他社とのクロスライセンス契約で相互に技術利用を認め合うことなどが含まれます。特徴: 自社の特許を開放することで他社の技術と組み合わせた新製品開発や市場全体の成長を促進し、結果的に自社にもリターンをもたらす戦略です。著名な例として、米テスラ社は2014年に電気自動車関連の保有特許をすべて無償開放すると宣言し業界を驚かせました【8】。自社技術の独占による利益よりも市場全体の拡大による利益を優先した発想で、自社のEV市場が拡大すれば最終的に自社にも恩恵が返ってくるという狙いでした【8】。また、企業間で特許を相互供与するクロスライセンスは、訴訟コストを削減し安心して技術活用し合える環境を作る効果があります。課題: オープン戦略では短期的な直接収益は得られないため、投資回収の仕組みを別途考える必要があります。他社に技術を開示するリスクと、自社競争力とのバランスも難しい点です。どの特許を開放しどの部分をコア資産として守るか、経営戦略に沿った線引きが求められます。また、クロスライセンスの場合は提携先との交渉や契約関係の維持管理に手間がかかります。それでも、自社では生み出せない革新的な技術を外部から取り入れられるメリットや、新市場創出による将来的リターンを考えると、有力なビジネスモデルの一つと言えるでしょう。
まとめ
以上、特許マーケットにおける代表的な収益化スキームの特徴と課題を概観しました。
グローバル競争が激しさを増す中、自社の知的財産を眠らせず最適な形で収益化する戦略は、企業経営においてますます重要となっています。日本企業も含め各組織が創意工夫を凝らし、自社の技術シーズに合ったビジネスモデルを模索する動きが今後さらに広がるでしょう。
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(この記事はAIを用いて作成しています。)
参考文献
- PatentRevenue記事「マッチングで広がる知財活用:特許を必要とする企業との出会い方」(2025年5月10日)– https://patent-revenue.iprich.jp/一般向け/1353/
- Burford Capitalプレスリリース「New Burford Capital Research Reveals Significant Opportunities for Businesses through Patent Monetization」(2024年4月16日)– https://www.burfordcapital.com/insights-news-events/news-press-releases/new-burford-capital-research-reveals-significant-opportunities-for-businesses-through-patent-monetization/
- BusinessResearchInsights「Patent Licensing Market Size, Trends 2024−20322024−2032」(2025年4月28日更新)– https://www.businessresearchinsights.com/market-reports/patent-licensing-market-118586
- TechTarget「IBM drops from top spot in patents, surpassed by Samsung」(2023年2月16日)– https://www.techtarget.com/searchdatacenter/news/365531318/IBM-drops-from-top-spot-in-patents-surpassed-by-Samsung
- IAM(Japanese)「アジアの特許ブローカーの活動ペースが加速」(2017年11月28日)– https://www.iam-media.com/regionindustry-guide/iam-japanese/5/article/ashianotexufurokanohuodonghesukajiasu
- 西村特許事務所ブログ「特許買い取り官民出資ファンド設立へ 国外流出を防止」(2013年8月7日)– https://www.nishimura-patent.com/blog/454.html
- PatentRevenue記事「意外と違う?NPE、PAE、パテントトロールの意味を解説」(2025年4月14日)– https://patent-revenue.iprich.jp/専門家向け/925/
- IT Leaders「Tesla Motorsが特許をオープンソースに、特許や著作権のボーダーレス化が進む」(2014年7月9日)– https://it.impress.co.jp/articles/-/11531

