エコシステムとしての特許収益化:産学官連携の可能性

株式会社IPリッチのライセンス担当です。

本記事では、特許の収益化を単なる権利行使や売買に留まらず、産業界・学術界・行政が連携して価値を創出する「エコシステム」として捉え、その現状と可能性について専門家向けに解説します。

目次

特許収益化エコシステムと産学官連携の重要性

特許は発明者や企業に独占権を与えますが、その多くが十分に活用されていない現状があります。日本国内の特許件数は約160万件に上る一方、その約半数は大企業で未利用のまま保有されている「休眠特許」と指摘されています。特許庁の調査でも、企業が保有する特許のうち実際に活用されているものは3割程度にとどまり、残り約7割が未利用であることが判明しています。また、その未利用特許の約64%については企業が他社へのライセンス提供に前向きであるとされ、未利用特許の潜在件数は40万件にも及ぶと推定されています【1】。多くの特許が眠ったままでは、特許保有者にとって維持費の負担となるばかりか、潜在的な収益機会を逃すことにもつながります。一方で、適切な企業とのマッチングが実現すれば、新たな事業創出につながる大きな可能性を秘めています。

このような背景から、産業界・大学・行政が協力して特許の利活用を促進する取り組みが重要です。オープンイノベーションの潮流の中、社外の技術シーズや知的財産を積極的に取り入れる動きが活発化しており、特許を必要とする企業と有望な特許技術をつなぐエコシステム構築が求められています。実際、各地で大企業や大学などが保有する未利用特許を公開し、技術ニーズを持つ中小・ベンチャー企業とのマッチングを図るイベントやデータベース整備が進められており、マッチング成功事例も数多く報告されています【2】。産業界・学術界・行政が一体となったこのようなプラットフォームを通じ、眠れる特許資産に光を当てて新たな価値創造を促すことが期待されています。

多様な特許収益化手法と連携による価値創出

特許収益化の手法には実に多様なものがあります。特許庁委託調査報告書でも、特許のマネタイズ手段として代表的なものに「有償ライセンス供与」「特許権の売却」「特許訴訟による権利行使」が挙げられています【3】。それぞれ収益化のタイミングやリスク・利益構造が異なり、どの手段を選ぶかは自社の事業戦略や相手方の状況次第でケースバイケースとされています【3】。以下、主な手法について概観します。

  • ライセンス供与(特許実施許諾): 自社では製品化・サービス化せず、他社に特許技術を使わせてロイヤリティ収入を得る方法です。特許収益化の王道とも言える手段で、製造販売の設備投資が不要な点が魅力です。特許権者(ライセンサー)と実施企業(ライセンシー)との契約により、実施料(ランニングロイヤルティ)や一時金を受け取ります。ライセンス料率は一般に製品売上高の数%程度とされますが、技術の独自性や市場規模によって決まります。ライセンス供与は知財を他社に活用してもらう協調的なビジネスモデルでもあり、ライセンシーの開発力・販売網といった強みを活かすことで自社特許の価値を最大化できます。企業によっては、特許を手放してしまう「売却」よりも、自社に権利を残し継続収入を得られるライセンス供与を好む傾向も見られます【3】。
  • 特許の売却: 特許権そのものを第三者に譲渡し、一括の対価を得る方法です。法律上、特許権は財産権として売買が可能であり、不要特許を売却してしまうことで将来の年金(維持費)負担を削減し即時に資金化できるメリットがあります【3】。ライセンスのような継続収入はありませんが、事業戦略上すぐに資金が必要な場合や、譲渡先で特許がより有効活用される場合には有力な選択肢です。売却後は権利が完全に移転するため、自社による特許のコントロールは失われますが、その分高額の売却益を見込めるケースもあります。特許売買の専門ブローカーやプラットフォームを介した取引も近年増加しており、自社では用途のない特許を必要とする企業に橋渡しする市場が形成されつつあります。
  • 特許権行使(訴訟・係争): 自社の特許を無断使用している他社に対し、差止請求や損害賠償請求を行うことで収益を得る手法です。警告によるライセンス契約締結の提案や、合意に至らなければ侵害訴訟を提起して和解金や賠償金を得るという積極的権利行使の戦略になります。特許権は独占排他権であると同時に、侵害発生時に司法救済を求める権利でもありますので、正当な権利行使として当然の手段です。ただし、訴訟には時間(年単位)と費用がかかり、敗訴リスクもあるためハイリスク・ハイリターンの側面があります。また権利を過度に行使すれば取引先との関係悪化や企業イメージ低下を招く恐れもあるため、ビジネス戦略上慎重な判断が必要です。その一方で、世の中には自ら製造販売は行わず特許権の行使だけで収益を上げる専業業者も存在します。いわゆる「パテントトロール(特許トロール)」と呼ばれる団体は、市場で使われていない他社の休眠特許を安価に買い集め、当該技術を使用している企業に対して和解金やライセンス料を要求するといったビジネスモデルをとっています【3】。訴訟費用やリスクを嫌う企業は、提訴される前に一定額を支払って和解する場合も少なくありません【3】。このような特許訴訟ビジネスの是非は議論がありますが、適切に行えば自社で活用できない特許から利益を生み出す手段にもなり得ます。
  • スピンオフ・事業化: 特許を核に新規事業や会社を興す「スピンオフ」も収益化の一形態です。社内の一部門や技術人材・特許群を切り出して独立ベンチャー化したり、特許発明者が自らスタートアップ企業を起業したりするケースが該当します。大企業の場合、自社で活用しきれない技術をスピンオフベンチャーに移管し、親会社とは別会社として展開することで、機動的な事業展開や資金調達を図ることができます。近年米国では、企業が知財部門を子会社的にスピンオフし、その別会社に特許を実行(行使)させる方策も見られます【3】。この方法では、親会社は特許紛争で収益化を図る際に自社の評判に直接の悪影響が及ぶことを避けるとともに、競合他社からの報復訴訟も一定程度回避できるとされています【3】。スピンオフした企業が特許権を行使(訴訟提起など)し、親会社はライセンス収入や和解金の分配を受けるという仕組みです。日本においても、大企業が有望技術を社内起業・カーブアウトの形でベンチャー化する例や、研究開発子会社に特許を集約して戦略活用する動きが見られます。スピンオフによる特許収益化は、単に権利行使に留まらず新規ビジネス創出と直結する点で大きな意義があります。
  • 共同開発・アライアンス: 特許を起点に他社と提携して事業化する手法も重要です。自社単独ではリソースや市場チャネルが不足する場合でも、他企業との共同研究・開発や技術提携によって、お互いの強みを出し合い新製品・新サービスを生み出すことが可能になります。例えば、自社が特許技術を提供し、相手企業が生産設備や販売網を提供するといった役割分担で協業すれば、単独では難しい事業を実現できます。その成果や利益は契約に応じて分配されます。特許を介した企業間アライアンスは、単にライセンス料収入を得るだけでなく、新たな市場を共創する点で価値があります。企業同士のみならず、大学や公的研究機関との共同研究契約を通じて特許を事業化するケースも増えており、産学連携によるイノベーション創出モデルとして注目されています。
  • 標準化・パテントプール: 業界標準規格への特許活用も収益化の間接的手法です。自社の特許技術を国際標準や業界標準に組み込んでもらえれば、標準必須特許として関連製品を製造する多数の企業からライセンス料を得るチャンスが生まれます。また同分野の複数企業が特許を持ち寄り一括でライセンスするパテントプールに参加すれば、個別交渉の手間なく広範な実施許諾先から収入を得る仕組みを構築できます。標準化戦略は自社技術の優位性が高い場合に有効ですが、一方でFRAND条件(公平合理的非差別的条件)でのライセンス提供義務が課されるなど、権利行使に一定の制約も伴います。いずれにせよ、標準化・プール参加によって自社単独では到達し得ない大市場へのアクセスと収益源確保が可能となり、エコシステム全体での技術普及と利益享受に繋がります。
  • 知財金融・M&A: 特許を企業価値向上や資金調達に結びつける方法もあります。特許を担保に金融機関から融資を受けるIP担保融資は、中小ベンチャー企業を中心に近年注目され始めています。また、強力な特許ポートフォリオを有することは買収時に高く評価されるため、自社の知財力をアピールしてM&Aでプレミアムを得る戦略も取られます。実際、米国企業のクアルコムは自社製品と並行して特許ライセンス収入で巨額の利益を計上しており、ある年度には約78億ドル(1兆円超)のライセンス収益を上げた例もあります。知財は攻めと守りの両面で企業価値に貢献しうるため、収益化の手段としてだけでなく企業戦略資産として捉える発想が重要です。

このように特許収益化の手段は多岐にわたり、それぞれに連携の形があります。ライセンス供与や共同開発ではパートナー企業とのWin-Winが前提となり、売却でも買い手企業とのマッチングが必要です。訴訟による収益化でさえ、専門の訴訟ファンドや代理人との協働が重要になるでしょう。特許収益化は単独プレイヤーで完結するものではなく、他者との協働・交渉を通じて初めて大きな価値が生まれるエコシステム的活動と言えます。

産業界における特許収益化戦略と産学官連携

まず産業界(民間企業)の視点から、特許収益化と他セクターとの連携について考えます。日本企業は古くから優れた技術力を有していますが、知的財産の活用はどちらかと言えば自社製品の参入障壁や他社特許への防御といった目的が重視され、積極的に収益源とする取り組みは限定的でした【3】。実際、特許のライセンス供与や売却を検討する際に交渉相手となるのは、自社と同業の競合他社である場合が多く、ビジネス上の利害対立が障壁となりやすいという課題があります【3】。また、自社では使い道がない特許であっても、NPE(特許非実施主体)への売却やマネタイズ特化の活動には消極的で、「知財はあくまで自社事業に貢献するもの」との考え方が根強いとも指摘されています【3】。このような保守的傾向から、他社に特許をライセンスアウトして収益化する文化が日本企業では十分育ってこなかった側面があります。

しかし近年、オープンイノベーションの重要性が増す中で、企業も発想を転換しつつあります。社外の技術や知財を取り込むだけでなく、自社が保有する未活用特許を外部に提供して新たなビジネスに繋げる動きが徐々に広がっています。例えば一部の大企業では、自社の眠れる特許群を社外に公開しライセンス提案を受け付けたり、特許を起点とした新規事業提携を模索したりするケースが出てきました。政府も**「開放特許情報データベース」**を整備し、企業や大学等が自社の保有特許情報を登録しておけば中小企業・スタートアップとのマッチング機会が得られる仕組みを提供しています【4】。大企業が自社で活用しきれない技術シーズをオープンにすることで、中小企業側は開放特許を用いた新製品開発を加速でき、ライセンス収入という形で大企業にもメリットが生まれます。このように企業発の知財を軸とした産業界内外の連携モデルは、双方にとってプラスとなる可能性を秘めています。

また、企業の知財戦略において収益化とリスク管理のバランスも課題です。積極的に他社に特許を実施許諾すれば収入になりますが、競合他社に技術を渡す不安も伴います。近年は専門の知財仲介会社やライセンスプラットフォームが台頭し、企業のこうした不安を低減しつつ相手探しを支援しています。企業同士の直接交渉では難しかった異業種企業とのマッチングも、第三者機関の仲介で実現する例が増えています。企業側も自社の評判リスクに配慮しながら収益化を図る工夫を凝らしており、前述のように子会社を使って知財ビジネスを展開するケースはその一例です【3】。

産学官連携の観点では、企業は大学との協働にも積極的になる必要があります。企業による大学との共同研究から生まれた特許は共同出願となるため、大学側がその技術を他社やスタートアップにライセンスする際には企業の同意が必要です。自社で事業化しない共同特許については、大学による活用を妨げないよう配慮することが、エコシステム全体では利益になります。例えば東京大学では、共同研究で得た特許を企業が所定期間実施しない場合、大学がスタートアップ等にライセンスできる契約条項を盛り込む取り組みを始めています【5】。企業としても、自社で使わない特許があれば大学発ベンチャーによる事業化を後押しするくらいの懐の深さが、結果的に産業全体の発展につながるでしょう。

さらに、企業は自社発のスタートアップやベンチャー企業との連携にも注力しています。大企業が社内の新規事業をスピンオフさせて子会社ではなく独立ベンチャーとして育て、将来的に出資や買収でリターンを得る「コーポレートベンチャー」的な動きも活発化しています。また、大企業が大学発スタートアップと資本業務提携して成長を支援する例も増えています【5】。企業にとって、有望な大学発ベンチャーに早期から関与し支援することは、新市場創出や将来の事業提携先の確保につながります。このように産業界では、単独で特許を抱え込むのではなく、社外の多様なプレイヤーと知財を媒介に協力し合うエコシステム型戦略が重要になってきています。

大学における特許収益化と産学官連携の取り組み

次に学術界(大学)の視点から、特許の収益化と産学官連携について見てみます。大学で生み出された研究成果は、本来社会に還元され新産業を生むことが期待されています。米国では1980年のバイ・ドール法(Bayh-Dole法)制定により、大学などが政府資金で得られた発明の特許権を自ら保有し企業へのライセンス活動を行えるよう道が開かれました。これを受けて米国の大学は技術移転オフィス(TTO)を整備し、研究成果の事業化に本格的に乗り出しています。その結果、米国の大学は莫大なライセンス収入を得るようになり、大学の研究成果が産業競争力強化や有力スタートアップ創出に直結した成功例も多く生まれました。例えば、スタンフォード大学は大学院生だった発明者によるウェブ検索アルゴリズムの特許をグーグル社に独占ライセンスし、対価として受け取ったグーグル株180万株を売却することで約3億3600万ドル(約400億円)もの収益を得ています【8】。大学の知財収入で巨額の利益を上げた代表例として知られ、大学発技術が世界的企業の礎となったケースです。

日本でも、米国にならって1990年代末から産学連携を促進する法整備が進みました。1998年には「大学等技術移転促進法(TLO法)」が制定され、大学が技術移転機関(TLO)を設立して特許の出願・ライセンス活動を行いやすくなりました。さらに翌1999年には産業活力再生特別措置法の改正により、日本版バイ・ドール制度が導入され、国の委託研究の成果特許を大学や企業が保有できるよう制度変更が行われています【5】。こうした政策によって、大学の研究成果を知的財産権として確保し民間で活用する流れが本格化しました。実際、この20年あまりで各大学は知財部門やTLOを整備し、自ら特許出願やライセンス契約の交渉を行っています。

その成果の一端として、大学の特許が収益を生む例も徐々に増えてきました。例えば、日本の大学で保有特許件数が最も多いのは東京大学(約4,200件)で、京都大学や大阪大学など主要大学がそれに続きます。また大学の特許実施料収入(ライセンス収入)を見ると、直近データで京都大学が年間約8億9千万円と国内トップ、東京大学も約5億5千万円を計上しています【6】。大学が知財ライセンスで億単位の収入を得るケースが出てきたことは注目に値します。しかし裏を返せば、依然として多くの大学特許が十分には事業化されていないことも示唆しています。実際、内閣府の知財委員会によれば東京大学・京都大学でさえ保有特許の3割程度、他の大学では2割前後しか実用化に結びついていないとの報告があります【5】。さらに大学の特許の約6割は企業との共同出願ですが、その場合大学がスタートアップに特許をライセンスするには共同出願先企業の同意が必要です。このため企業から同意が得られずに大学発の技術を起業に活かせない例も指摘されています【5】。前述のように東京大学ではこの課題に対応すべく「企業が一定期間内に特許を実施しない場合、大学がスタートアップ等にライセンスできる」契約条項を共同研究契約に盛り込む取り組みを始めています【5】。大学と企業が知財活用のゴールを共有し、権利の柔軟な扱いに合意しておくことが、今後さらに重要になるでしょう。

大学発の特許や研究シーズを直接ビジネスにつなげるには、大学発スタートアップも欠かせません。大学が持つ最新技術を核に研究者や学生自ら起業して事業化を図るスタートアップは、大学発知財の社会実装における重要な担い手です。日本では2000年代初頭に「大学発ベンチャー1000社計画」が打ち出され大学からの起業が奨励されましたが、その後しばらく伸び悩んだ時期がありました。しかし近年は再び大学発スタートアップ数が増加傾向にあり、直近の調査では過去最高を更新しています。経済産業省の調査によると、2022年度に存在が確認された大学発ベンチャーは3,782社で、前年(2021年度)から477社増加しました。さらに2023年10月時点では4,288社と初めて4,000社を超え、企業数・増加数ともに過去最高を記録しています【7】。大学別では東京大学発のスタートアップが約420社と最多で、慶應義塾大学(291社)、京都大学(273社)、大阪大学(252社)と続き、近年は私立大学からも多数の起業家が輩出されています【5】。また大学発スタートアップ全体の約2%が既に株式公開(上場)を果たし、約0.1%は企業価値1,000億円以上のユニコーン企業に成長したとの報告もあります【5】。このように成功例が現れたことで、大学関係者や学生の間でも起業への関心が高まり、知財を活用した起業の好循環が生まれつつあります。

大学側もスタートアップ支援に本腰を入れています。多くの大学でインキュベーション施設(起業家養成拠点)や教育プログラムを設け、技術系人材がビジネススキルを身につける支援を強化しています。さらに大学自らベンチャーキャピタル(VC)ファンドを設立し、大学発企業に出資して成長を後押しする動きも顕著です【5】。例えば東京大学は産学協創プラットフォーム開発株式会社(東大IPC)という100%子会社を通じて大学発ベンチャーへの投資育成を行っており、京都大学や東北大学なども独自のVCファンドを組成しています。大学が中心となって学内発の技術シーズから事業を起こしやすいエコシステムを構築する努力が進んでいるのです。

行政による特許収益化支援と連携エコシステムの推進

最後に行政(政府・公的機関)の視点から、特許収益化を促進するための支援策と産学官連携の取り組みを見てみます。行政は法律・制度の整備や資金的支援、マッチング機会の創出などを通じて、特許収益化エコシステムの醸成を図っています。

まず制度面では、先述の大学に関連するTLO法や日本版バイ・ドール制度の導入など、知的財産を産業活用につなげる法整備を継続的に進めてきました。また特許法や関連制度の運用改善も図られており、例えば企業や大学が保有特許を外部にライセンスしやすくするための契約指針の作成や、特許情報データベースの充実などが挙げられます。

政策面では、近年「スタートアップ育成5か年計画」が国家戦略として掲げられました。これは2022年末に政府が決定したもので、官民のスタートアップ支援投資額を現在の8,000億円規模から2027年度には10兆円規模に拡大する目標を掲げています【5】。その中で大学発スタートアップはイノベーションの担い手として重視され、各研究大学で「1大学につき50社の起業、そのうち1社のエグジット(株式公開等)達成」を目指す「1大学1エグジット運動」を展開する方針も示されました【5】。これは大学ごとに起業促進目標を設定し、大学発ベンチャー創出を全国的に底上げしようという試みです。

さらに政府は具体的な資金支援にも乗り出しています。2022年度第2次補正予算では約988億円が大学発スタートアップの創出や大学間連携によるオープンイノベーション拠点整備等のために計上されました【5】。この資金は、大学内の研究成果の事業化に向けたシード資金供与や、複数大学が連携して起業支援を行うハブ拠点の整備などに充てられています。また、科学技術振興機構(JST)が運営する「大学発新産業創出プログラム(START)」では、大学の研究者とビジネス人材をマッチングし、事業化に必要な資金提供・メンタリングを行っています。同様に、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)も技術シーズの事業化支援やスタートアップ向けの助成金プログラム(NEDOピッチ等)を通じて、大学発技術の企業育成に力を入れています。知的財産の事業化には、研究開発段階から事業化段階への「死の谷」を越える支援が不可欠であり、政府はこの部分を厚く下支えしようとしているのです。

官民連携によるアクセラレータープログラムも各地で実施されています。経済産業省や自治体、大企業、ベンチャーキャピタル等が協働でスタートアップ育成のアクセラレーション(集中支援)プログラムを開催し、大学の研究者や起業家が事業計画のブラッシュアップや経営ノウハウの指導、大企業・投資家とのネットワーキング機会を得られるようになっています【5】。例えば、大企業がメンターとなって大学発チームを指導する取り組みや、地方自治体が主導して産学官のネットワーク拠点を作りスタートアップと地元企業を結びつけるプロジェクトもあります。国や自治体自らが産学官連携のハブとなり、大学発イノベーションが地域産業を牽引するエコシステムモデルの構築を目指しているのです。

また、中小企業や個人発明家に対する特許収益化支援策も行政は講じています。独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)や各経済産業局では、特許流通デスクや知財コンサルティング窓口を設置し、企業間・産学間の特許マッチング相談に応じています。特許の評価書作成支援、ライセンス契約書のひな型提供、知財マッチングイベントの開催など、現場で役立つ施策を展開しています。特許庁も産業構造審議会などを通じて、使われていない特許の有効活用策やライセンス促進策について企業や大学からヒアリングを重ね、政策立案に反映させています【5】。

総じて、行政の役割は特許収益化のための環境整備と言えます。規制緩和や資金支援で土台を作り、産業界と学術界の橋渡し役を務め、新しい知財ビジネスの芽を育てることが行政の使命です。知的財産立国を標榜する日本において、政府のイニシアチブは欠かせない要素であり、産学官の連携エコシステムを国家戦略として位置づける姿勢が鮮明になっています。

特許収益化エコシステムの未来と産学官連携の展望

ここまで見てきたように、特許収益化はもはや一企業・一大学だけで完結するものではなく、エコシステム全体で価値を高め合う時代に入っています。産業界は自社の枠を越えて大学やベンチャーとの協業に活路を見出し、大学は自らの知的財産を社会実装するため企業や投資家との連携を求め、行政はその橋渡しを政策的に後押ししています。それぞれの立場は異なっても、「眠れる知財を掘り起こして新たな価値を創造する」という目的は共有されています。産・学・官の連携によってこそ、日本全体で膨大な知的資産を活かし切ることが可能となるでしょう。

今後、特許収益化のエコシステムをさらに発展させていくには、いくつかの課題にも取り組む必要があります。第一に、企業文化・大学文化の更なる変革です。企業は従来の守りの知財戦略に加えて「攻めの知財活用」を経営戦略に据える覚悟が求められます。また大学も、論文発表だけでなく特許を通じた社会貢献・収入確保に対するインセンティブを高め、研究者が起業やライセンス活動に挑戦しやすい環境作りを進める必要があります。第二に、マッチングの精度向上です。どれほど良い技術も、それを必要とする企業や市場と出会わなければ宝の持ち腐れです。AIによる特許マッチングの高度化やデータベースの充実、人材仲介を含めた包括的なマッチング支援体制を整備し、right tech, right partnerを的確につなぐ仕組みを強化することが重要です。第三に、知財金融・投資の促進です。特許を適切に評価し事業価値に結びつける金融メカニズム(融資・投資・保険など)を拡充することで、知財を持つ企業や大学がさらに資金調達しやすくなり、知財に基づく事業展開が加速するでしょう。

これらの課題に応えつつ産学官の垣根を越えたエコシステムを成熟させることで、日本発のイノベーション創出力は飛躍的に向上すると考えられます。幸いにも近年は産学官それぞれに変化の兆しが見えています。大企業もオープンイノベーション専門部署を設けたり、大学発ベンチャーへの出資を積極化したりしています。大学も産学協創本部を組織し学内の知財ポートフォリオを戦略的にマネジメントし始めました。政府も知財推進計画の中で知財の「創造・保護・活用」のバランスを見直し、特許の活用(収益化)に一層重きを置く方針を示しています。これらは日本の知財エコシステムが動的進化している証と言えるでしょう。

最後に、実際に特許をお持ちの企業や発明者の方への情報です。自社や自身で保有する特許を有効活用したいとお考えでしたら、特許売買・ライセンスの専門プラットフォームを利用するのも一つの方法です。例えば、弊社IPリッチが提供する特許売買・ライセンスプラットフォーム「PatentRevenue」では、ご自身の特許情報を無料で登録し、それを必要とする企業とのマッチング支援を受けることが可能です。眠っている特許に新たな活用機会を見出すため、ぜひ一度検討されてみてはいかがでしょうか。(https://patent-revenue.iprich.jp )

知的財産は適切に活かされて初めて社会に価値をもたらします。産業界・学術界・行政の垣根を超えたコラボレーションにより、特許収益化エコシステムをさらに発展させ、日本発のイノベーションが持続的に創出される未来に期待したいと思います。

(この記事はAIを用いて作成しています。)

参考文献

  1. 特許庁総務部企画調査課「特許情報を活用したビジネスマッチングレポートの開発・提供」(特許庁 報告書, 2019年8月) – https://www.jpo.go.jp/resources/report/chiiki-chusho/matching-tool.html
  2. 中部経済産業局「知財ビジネスマッチング事業」(公式サイト) – https://www.chubu.meti.go.jp/b36tokkyo/sesaku/chizai_businessmatching/matching_toppage.html
  3. 日本貿易振興機構ニューヨーク事務所『米国における知財の活用状況に関する調査報告書』(2025年3月) – https://www.jetro.go.jp/ext_images/\_Ipnews/us/2025/202503.pdf
  4. 特許庁「開放特許情報データベース」(知的財産戦略本部 第3回スタートアップWG 資料7, 2022年3月) – https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/startup/dai3/siryou7.pdf
  5. 経団連タイムス「スタートアップ・大学を中心とする知財エコシステムの強化」(2023年1月12日号) – https://www.keidanren.or.jp/journal/times/2023/0112\_05.html
  6. J-CAST会社ウォッチ「大学での研究成果はどれくらい『収入』に結びつくのか?特許件数、特許権収入、知的財産権収入が多い大学ランキング」(2023年5月7日) – https://www.j-cast.com/kaisha/2023/05/07459964.html
  7. 経済産業省「令和5年度大学発ベンチャー実態等調査の結果を取りまとめました(速報)」(2024年5月15日) – https://www.meti.go.jp/press/2024/05/20240515001/20240515001.html
  8. Los Angeles Times “Stanford Reaps Windfall From Google Stock Sale” (2005年12月2日) – https://www.latimes.com/archives/la-xpm-2005-dec-02-fi-calbriefs2.3-story.html
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次