弁理士の役割再考:AI時代の特許戦略

株式会社IPリッチのライセンス担当です。

本記事では「AI時代における特許戦略とビジネス価値創出」をテーマに、AI技術の発展が各産業にもたらす変化と特許取得・活用の重要性、そしてその中で弁理士が果たすべき役割の再定義について考察します。製造業・IT・医療など業界を問わず、知的財産戦略をどうビジネス価値に結びつけるかを検討していきます。

目次

AI時代の特許競争とビジネス価値

AI(人工知能)は製造業のスマート工場からITサービス、医療の診断支援や創薬まで、幅広い業界で革新をもたらしています。それに伴い、各分野でAI関連発明の特許取得競争が世界的に激化しています。WIPO(世界知的所有権機関)の調査によれば、2014年から2023年にかけて「生成AI」に関する特許出願件数は累計で約5.4万件に達し、特に直近では1年間で全体の25%以上が出願されるほど急増しています【1】。この生成AI特許は従来のAI特許全体の約6%に過ぎず、裏を返せばAI技術全体で見ればさらに膨大な数の特許出願が世界中で行われていることになります。分野も多岐にわたり、生成AI関連の特許はライフサイエンス(医療)、製造業、輸送、セキュリティ、通信など様々な産業領域に跨って増加しています【1】。まさにAI技術が汎用目的技術として各産業の競争力を左右しつつあり、それを反映して特許戦略がビジネス戦略の鍵となっていると言えるでしょう。

世界的な特許競争の中で、とりわけ中国の台頭は著しく注目されています。WIPOの特許分析では、この10年で出願された生成AI関連特許の約70%(3万8210件)が中国に由来し、2位の米国(6276件)に6倍以上の差を付けています【1】。日本や欧州諸国も含め各国企業・研究者がAI発明の権利化にしのぎを削っていますが、政府主導の支援も厚い中国が特許件数で圧倒している状況です。こうした国際競争の中、日本企業も自社のAI技術を守りビジネス優位を確保するため、戦略的な特許取得が不可欠です。実際、特許庁のデータによればAIセキュリティ技術分野の特許出願件数は2012年には37件に過ぎなかったものが、年平均51%という驚異的な伸び率で増加し、2021年には1492件と約40倍に急増しました【2】。このような統計からも、AI時代における革新的な発明の創出とその権利化が加速度的に進んでいることが分かります。

企業にとって、こうしたAI関連の特許を確保することは競合に対する防衛策であるだけでなく、新規ビジネス領域でリーダーシップを握るための攻めの戦略でもあります。特許による独占的な技術優位は、製品・サービス市場での差別化や収益機会の独占につながります。例えば自動車業界ではAIを用いた自動運転技術や生産ラインの最適化に関する発明が続々と出願されており、これらの特許群が将来のモビリティ産業における競争地図を左右する可能性があります。また医療分野でもAIを活用した診断アルゴリズムや新薬候補探索手法などの特許取得が進んでおり、ヘルスケア企業は知財によって技術的優位性と市場参入障壁を構築しようとしています。このように、AI時代の特許戦略は各業界のビジネス戦略と不可分となっており、知財を制する者が新産業を制すると言っても過言ではありません

特許活用によるビジネス価値創出

企業が持つ知的財産、とりわけ特許は、ビジネス価値を生み出す重要な資産です。昨今では企業価値に占める無形資産の割合が極めて大きく、特許や技術ノウハウ、ブランドといった知的財産が企業競争力の中核となっています。実際、WIPOの報告によれば米国上位企業の企業価値の約90%は特許などの無形資産によって占められているといいます【3】。例えばAI技術を牽引するエヌビディア(NVIDIA)社の近年の躍進も、自社開発の独自半導体アーキテクチャ(GPU)がAIブームを支える基盤技術となったことが大きな要因であり、まさに知財が企業価値を押し上げたケースです【3】。このように、優れた特許ポートフォリオを構築することは企業の市場価値や株主価値の向上にも直結します

では特許は具体的にどのようにビジネス価値を創出するのでしょうか。第一に、特許権は一定期間にわたる独占権を付与するため、自社の発明を守り競争優位を確立できます。他社が同じ技術を製品化できないようにすることで、市場シェアや利益率を確保できるのです。第二に、特許はライセンス供与による収益源となり得ます。自社で実施しない特許であっても、他社に使用許諾してライセンス料収入を得るビジネスモデルが考えられます。IT業界ではプラットフォーマー企業が特許をクロスライセンスし合うことで互いに技術利用を円滑化しつつ収益を得る例もありますし、製薬業界では特許技術のライセンスアウトによって莫大なロイヤリティ収入を得るケースも珍しくありません。また特許は企業提携や資金調達における交渉カードにもなります。技術系スタートアップが優良な特許を保有していれば、ベンチャーキャピタルからの出資や大企業との提携交渉で有利に働き、結果的に事業価値を高めることにつながります。さらに、特許出願公開を通じて技術力を対外的にアピールしたり、自社の技術領域への参入抑止効果を狙ったりと、特許を戦略的に活用することで様々な形のビジネス価値創出が可能になります

しかし一方で、多くの特許が十分に活用されず「眠った資産」となっている現状も指摘されています。米国の例では「現在有効な約210万件の特許のうち実に95%がライセンスされることも商業化されることもない」との驚くべきデータがあります【4】。この数字は、多くの企業や研究機関がせっかく取得した特許を事業展開や収益化に結び付けられていない実態を示しています。裏を返せば、特許資産の眠れる価値を掘り起こす余地がそれだけ大きいとも言えます。特に大学など公的研究機関で生まれた発明も数多く特許化されていますが、それらが企業に移転され実用化・事業化される割合は必ずしも高くありません。実際、米国では大学で生まれた高品質な特許発明5万件以上が未活用のまま眠っているとも報告されています【4】。研究開発投資に巨額の資金を投じても、特許という形で権利化した後に活かされなければ社会的・経済的リターンは得られません。

この現状を改善し知財の持つポテンシャルをビジネス価値に転換することが今後の大きな課題です。例えば、自社で使い道のない特許であっても他社には価値があるかもしれず、適切なマッチングによりライセンス・売却することで収益化が図れます。また、社内に眠る特許技術を再評価し、新規事業に転用したり他社との共同開発に提供したりすることで、新たな価値創出に結びつけることも可能です。特許は保有しているだけでは維持費がかかる「コストセンター」になりかねませんが、発想を転換して戦略的に運用すれば「プロフィットセンター」として機能し得るのです。現に近年では、大企業が使わなくなった特許をスピンオフ企業に移して事業化したり、特許流通市場で他社の有望な特許を取得して自社の製品ラインナップを強化したりする動きも見られます。知財取引を活性化し特許の価値を引き出すことは、イノベーションの促進にも繋がる重要な取り組みです。

AI時代に求められる弁理士と特許戦略

以上のように、AI時代において特許の取得・活用はビジネス価値創出の要となっていますが、その推進役として弁理士(特許の専門家)の役割も再定義されつつあります。従来、弁理士の主な業務は特許出願に必要な明細書の作成や特許庁への手続代理といった法律技術サービスでした。しかしAI技術の進展により、これらルーチン業務の一部は自動化・効率化が進むと見込まれます。実際、近年登場した生成AI(大規模言語モデル)を活用して、発明の要旨を入力すると短時間で特許明細書のドラフトを自動生成するようなツールも研究されています。将来的には、発明者がアイデアをAIに入力し、AIが一次的な特許出願書類を作成、それを弁理士が精査・補完して完成させるという協働も現実になるかもしれません。特許調査の分野でも、AIが膨大な文献から関連技術を高速に検索・分析し、先行技術調査(Prior Art Search)の効率を飛躍的に高めています。こうしたテクノロジーは弁理士の業務スタイルに変革をもたらし、定型的な作業負担を減らす一方で、弁理士本来の付加価値提供にリソースを振り向ける好機とも言えます。

ではAI時代における弁理士の付加価値とは何でしょうか。端的に言えば、「AIにはできない領域」でクライアントに貢献することです。例えば、特許取得の可否判断や権利範囲の戦略的な設計、競合他社の特許網を踏まえたポートフォリオ構築などは、高度な専門知識と経験に基づく人間の判断が求められます。また、取得した特許をいかに事業戦略に組み込み活用するかといったコンサルティング業務も弁理士の新たな重要任務です。実際、特許庁は弁理士に対し「出願手続のみならず、ビジネス戦略や標準化戦略に絡めた知財の取得・活用を助言するコンサルタント業務」や「スタートアップの資金調達やM&Aにおける知財の価値評価に係る専門家」としての役割を期待していると述べています【5】。つまり、弁理士は技術と法律の専門家であると同時に、企業のイノベーション戦略を支えるビジネスパートナーとしての役割が求められているのです。

さらに、特許係争対応や知財紛争の予防策立案も弁理士が提供できる高付加価値サービスです。特許訴訟はリスクも大きく複雑で、AIに任せられるものではありません。こうした法的戦略の立案、特許ポートフォリオの評価によるクロスライセンス交渉支援、標準必須特許(SEP)への対応戦略など、ビジネスの全体像を踏まえた総合的な知財戦略コンサルティングが弁理士には期待されています。AIツールは的確に使いこなしつつも、最終的な判断や創造的な戦略提案は人間の弁理士が担うことで、クライアントに最適な知財ソリューションを提供できるでしょう。実際、大手特許事務所の見解でも「弁理士はAIをツールとして活用し、複雑な技術や法的問題に対処し、クライアントに最適な戦略を提供する役割」を果たすべきであり、AIの進化によって業務が変化しても弁理士の専門性と人間の判断はなお重要であると指摘されています【6】。このように、AI時代において弁理士は単なる特許取得代行者ではなく、知財とビジネスを繋ぐ戦略的パートナーとしてその役割を再定義していく必要があるのです。

AI時代の到来は企業にとって大きな挑戦であると同時に、新たな価値創造のチャンスでもあります。特許という知的財産を巧みに取得し活用することが、イノベーションからビジネス価値を引き出すカギとなります。そして、そのプロセスを支える弁理士の専門知識と戦略的視点はこれまで以上に重要性を増しています。特許戦略と事業戦略を一体化させ、他社に先駆けてAI関連の知財ポートフォリオを構築・活用できる企業は、将来の市場で大きなリードを握ることでしょう。本記事で述べたように、特許とビジネス価値創出の関係を深く理解し、適切な専門家の助言を得ながら知財戦略を実行することが、AI時代を勝ち抜く鍵となります

最後に、特許の収益化をお考えの特許保有者の方は、特許の売買・ライセンスプラットフォーム「PatentRevenue」(https://patent-revenue.iprich.jp)への無料登録をぜひご検討ください。眠っている特許資産に新たな価値を見出し、ビジネスチャンスへと繋げる有効な手段の一つとなるでしょう。

(この記事はAIを用いて作成しています。)


参考文献

  1. WIPO (2024) 「China-Based Inventors Filing Most GenAI Patents, WIPO Data Shows」プレスリリース (WIPO Patent Landscape Report on Generative AI)
  2. ジェトロ (2024) 「世界のAIセキュリティ技術関連特許出願件数が10年間約40倍増」 (日本貿易振興機構 知的財産ニュース) https://www.jetro.go.jp/world/asia/kr/ip/ipnews/2024/241125c.html
  3. WIPO (2025) “The Value of Intangible Assets of Corporations Worldwide Rebounds to All-Time High of USD 80 Trillion in 2024” (Global Innovation Index Blog) https://www.wipo.int/en/web/global-innovation-index/w/blogs/2025/the-value-of-intangible-assets-of-corporations
  4. Walker, Jay (2014) 「The Real Patent Crisis Is Stifling Innovation」(Forbes寄稿記事) https://www.forbes.com/sites/danielfisher/2014/06/18/13633/
  5. 特許庁 (2024) 「弁理士制度の現状と今後の課題」産業構造審議会 資料2(令和6年1月) https://www.jpo.go.jp/resources/shingikai/sangyo-kouzou/shousai/benrishi_shoi/document/20-shiryou/02.pdf
  6. 創英特許法律事務所 (2023) 「AI(人工知能)は弁理士の仕事を奪うか否か」 (創英Cornerstone Newsletter Vol.23) https://www.soei.com/wp/wp-content/uploads/2023/07/AI%EF%BC%88-%E4%BA%BA%E5%B7%A5%E7%9F%A5%E8%83%BD%EF%BC%89%E3%81%AF%E5%BC%81%E7%90%86%E5%A3%AB%E3%81%AE%E4%BB%95%E4%BA%8B%E3%82%92%E5%A5%AA%E3%81%86%E3%81%8B%E5%90%A6%E3%81%8B.pdf
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