グリーン特許の経済的価値と取引:SDGs時代の知財戦略

株式会社IPリッチのライセンス担当です。
今回は「グリーン特許の価値と取引:SDGs時代の知財戦略」というテーマでお話しします。本記事では、持続可能な社会を目指す上で注目されるグリーン特許について、その定義から経済的価値、市場での取引動向、大学や企業での活用事例、関連する法制度、さらにはカーボンクレジットやESG投資との関係まで包括的に解説します。SDGs(持続可能な開発目標)時代における知的財産戦略のヒントとしてご覧ください。
グリーン特許の定義とSDGsとの関係
まずグリーン特許とは何かを定義します。一般にグリーン特許とは、環境負荷の低減に資する技術に関する特許のことです。例えば「省エネ」「CO2削減」「省資源」などの効果を持つ環境に優しい発明はグリーン発明と呼ばれ、それを対象とする特許出願がグリーン特許に該当します【1】。日本の特許庁では2009年から、このようなグリーン関連発明の特許出願を「グリーン関連出願」として位置づけています【1】。したがって、再生可能エネルギー、クリーン技術、排出削減技術、生物多様性保全技術など、環境や持続可能性に貢献する幅広い分野の特許がグリーン特許に含まれます。
このグリーン特許は、国連が提唱するSDGs(持続可能な開発目標)とも深く関わっています。SDGsは17の目標がありますが、そのうち「エネルギーをみんなにクリーンに」(目標7)、「産業と技術革新の基盤を作ろう」(目標9)、「住み続けられるまちづくりを」(目標11)、「つくる責任つかう責任」(目標12)、「気候変動に具体的な対策を」(目標13)などは、まさに技術革新やクリーン技術の普及が鍵となる目標です。実際、特許とSDGsの関連性について世界知的所有権機関(WIPO)の調査では、世界の特許の約3分の1が何らかの形でSDGsに関連しており、17目標中13の目標で特許技術が貢献していることが明らかになりました【2】。つまりグリーン特許は、持続可能な社会の共通目標に向けて技術革新がどの領域で起きているかを示す指標でもあり、SDGs達成に向けた重要なツールといえます。
グリーン特許のSDGs時代における経済的価値
グリーン特許は企業や研究機関にとってどれほどの経済的価値を持つのでしょうか。特許の価値評価には、特許が将来生み出す収益にもとづく「インカムアプローチ」や、類似技術の取引事例から推計する「マーケットアプローチ」、開発コストから算出する「コストアプローチ」のほか、特許引用件数や権利範囲などの指標を用いた評価手法などがあります。特許そのものは無形資産ですが、独占的権利によって競争優位やライセンス収入をもたらす可能性があるため、適切に評価され管理されれば大きな価値を生みます。
中でもグリーン特許は近年、その重要性から平均的価値が高まっているとする分析があります。経済産業研究所(RIETI)の分析によれば、日本の株式市場データを用いた試算でグリーン特許の価値は非グリーン特許より平均して高いとの結果が得られました【3】。気候変動リスクへの耐性を持つ技術として市場から高く評価されていることが示唆されます【3】。さらに2000年代以降の動向を見ると、グリーン特許の価値総量は短期間で急速に増大しており、2004年から2021年の間に約3.5倍に拡大しました【3】。これは同期間に非グリーン特許の価値総量が約2倍の伸びであったことと比較すると、グリーン技術への技術開発投資とその市場評価がいかに急速に高まっているかを示すものです。
また、特許の質的な側面から見てもグリーン特許は注目に値します。ある研究では、エネルギー産業などで生み出されたグリーン特許は他の特許より引用頻度が高く、「質の高い」特許となっていることが報告されています【4】。引用が多い特許は関連分野への影響力が大きい「ブロックバスター特許」である可能性が高く、技術的価値も高いと考えられます【4】。このように、グリーン分野のイノベーションは質・量ともに重要度を増しており、それらの特許は将来的な市場や社会へのインパクトから見ても価値が高いと言えるでしょう。
グリーン特許の保有は企業にとって様々なメリットをもたらします。直接的には、自社の環境関連技術を独占・優位に活用できることで新規市場を切り拓いたり、競合他社に対する交渉力を高めたりできます。また、ライセンス供与による収入創出も大きな利点です。特に自社で事業化しない技術であっても、グリーン特許として保持していれば他社にライセンスしてロイヤリティ収入を得ることができます。これは企業の新たな収益源となり得ますし、技術を社会に広める役割も果たします。さらに近年では、企業の知的財産戦略がESG評価(環境・社会・ガバナンスの観点での企業評価)にも影響を与えるようになってきました。自社の事業とSDGsの関係性が重視される風潮の中で、経営資源としての知財の意義が「自社事業の保護」だけでなく「SDGsへの貢献」の観点でも注目される例が増えています【5】。環境問題解決に資する特許をどれだけ持ち、それをどのように活用しているかは、企業の持続可能性への取り組み姿勢として投資家から評価されるポイントにもなっています。実際、世界最大級の機関投資家である年金基金なども企業の知的財産情報を分析し、気候変動対応技術への投資状況を重視する動きがあります。グリーン特許のポートフォリオを充実させることは、そうしたESG投資の観点からも企業価値向上に資する可能性があります。
グリーン特許の市場動向と取引事例
次に、グリーン特許の市場動向と具体的な取引例について見ていきましょう。グリーン技術分野では世界的に特許出願件数が増加傾向にあります。特に再生可能エネルギー、電気自動車、蓄電池、水素技術、カーボンリサイクルなどの分野で顕著で、各国の企業が競って特許を出願しています。特許庁の分析によれば、グリーン技術関連の国際特許出願件数で日本企業が依然として大きな存在感を示す一方、中国企業の台頭も著しく、米欧日の水準に追いつく勢いがあります。例えば太陽光発電や蓄電技術では日本が高被引用特許を多く創出していますが、中国も出願件数で急伸しています。グローバルに見てグリーン特許は技術革新と市場ニーズの交点にあり、その市場価値が今後ますます重要になることは疑いありません。
こうした背景から、特許のライセンスや売買市場でもグリーン特許が注目されています。環境技術の国際的な移転を促進するために、WIPOは2013年に「WIPO GREEN」というプラットフォームを立ち上げました【5】。WIPO GREENは環境技術の提供者(企業・大学など)と、技術を必要とする企業・団体を結びつけるオンライン市場であり、世界中から登録された環境技術の情報とニーズ情報をデータベース化しています【5】。2023年現在、WIPO GREENのデータベースには100か国以上から3,100件を超える環境技術やニーズが登録され、6,000以上の個人・組織がネットワークに参加しています【5】。日本企業・大学の参加も多く、積極的に活用されています。このようなプラットフォームでは、特許のライセンス契約や技術提携がマッチングによって生まれ、環境ソリューションの普及が加速しています。実際、日本国内でもWIPO GREENを介した知財マッチングの成功例が出てきています。例えば富士通株式会社は、自社が保有する環境技術特許をWIPO GREENに200件以上登録し、国内初の試みとして2018年に九州大学および琉球大学と環境技術の知財ライセンス契約を締結しました【6】。これは富士通が持つ「地域特性の見える化技術」や「生物種同定・生息適性予測技術」といった環境分野の特許を大学側に提供し、地方創生や生物多様性保全に役立ててもらう取り組みです【6】。このケースでは、企業の特許を他機関へライセンスすることで技術の社会実装を促進し、SDGs(目標11や15など)への貢献を目指すという新しい形の取引となりました【6】。従来は企業から大学への技術移転は珍しい形でしたが、社会課題解決のために知財を共有する「仲間作り」の戦略として注目されています【5】。
また、海外に目を向けるとグリーン特許の大型ライセンス契約も増えています。最近の例では、イギリスの太陽光ベンチャーであるOxford PV社が開発したペロブスカイト型太陽電池技術について、2025年に中国の大手太陽電池メーカーTrinasolar社と独占的な特許ライセンス契約を締結しました【7】。この契約により、Trinasolar社はOxford PVの持つ最先端の太陽電池特許を活用して中国国内で次世代太陽電池製品を製造・販売する権利を得ています【7】。中国の太陽光市場は年額5兆円規模とも言われ、2030年には倍増が見込まれる巨大市場です【7】。そうした市場で先端特許をライセンス供与するこの取引は、次世代クリーン技術の普及を加速する大きな一歩と評価されています。Oxford PV社のCEOは「この合意はペロブスカイト太陽電池を主流にするミッションの画期的な節目であり、今日と未来の太陽光発電における特許の極めて重要な役割を示すものです」と述べています【7】。まさに特許ライセンス契約がイノベーションの橋渡しとなり、大企業による量産体制とスタートアップの技術力を結びつけて持続可能エネルギーの実装を加速させた事例と言えるでしょう。
他にも、欧米では大手企業同士が環境技術でクロスライセンス(相互実施許諾)を結んだり、特許ポートフォリオごと売買する動きも見られます。かつてIBMやソニーなどが参加した「エコ・パテント・コモンズ」のように、環境貢献のため特許を無償開放する企業連合の試みもありました。これは直接的な収益を求めない形でしたが、現在ではむしろ適正な対価で特許を流通させるマーケットメカニズムの整備が重視されています。特許売買・ライセンスのオンライン市場やオークションも登場しつつあり、グリーン特許もそうした場で取引されるケースが増えています。日本でも近年、特許の流通市場を活性化させる動きがあり、特許売買・ライセンス仲介を専門とするプラットフォームがサービスを開始しています(※最後にご紹介します)。総じて、グリーン特許はもはや環境技術分野だけの話ではなく、知財の新たな流通マーケットを形作る重要な柱となりつつあります。
グリーン特許によるSDGs推進:大学・企業の活用事例
次に、大学や企業におけるグリーン技術知財の戦略的活用の具体的な事例を見てみましょう。近年、産学官連携やオープンイノベーションの文脈で、環境技術に関する知財を従来とは異なる形で活用する動きが活発化しています。
大学の例では、大学が保有するグリーン特許を企業にライセンスしてスタートアップ創出や社会実装を進めるケースが増えています。例えば、ある大学が開発した革新的な蓄電材料の特許をベンチャー企業に実施許諾し、その企業が製品化に成功するといった事例があります。大学側はライセンス収入を得るとともに、自らの研究成果が環境課題の解決に役立つ形で世に出るメリットがあります。日本でも大学の技術移転機関(TLO)がWIPO GREENに環境関連特許を掲載して企業とのマッチングを図ったり【6】、大学発のクリーンテック・ベンチャーが大学特許を基に資金調達を行ったりする動きがあります。
一方、企業側の戦略的活用事例としては、自社のグリーン特許を囲い込まずに敢えて開放・共有する戦略が注目されています。先ほど触れた富士通の例はその一つですが、他にもトヨタ自動車が代表的です。トヨタは2015年に燃料電池車関連の特許5680件を無償開放すると発表し大きな話題となりました。その後2019年には、ハイブリッド車や電気自動車を含む車両電動化技術に関する約24,000件の特許を2030年までロイヤリティフリーで提供すると発表しています【8】。具体的には、モーターやパワーコントロールユニット(PCU)、電池制御など電動車の基幹技術特許を対象に、他社が希望すれば原則無償で実施許諾するという内容です【8】。併せてトヨタはそれら技術を利用する他メーカーに技術支援サービス(有償)も提供するとしています【8】。この大胆な戦略の背景には、「ハイブリッド車など電動車技術を業界全体で普及させることで、結果的に気候変動対策に寄与し自社にもプラスになる」という判断がありました。「環境対応車が今後10年で大幅に増え業界標準になっていくことを期待し、そのプロセスを支援したい」という経営メッセージが出されています【8】。自社の特許を公開することで一見競争力を手放すようにも思えますが、実は標準の形成や市場拡大を主導できる利点があります。トヨタのケースでは、自社技術を他社に使ってもらうことでインフラやサプライチェーン全体が整い、最終的に自社の事業機会も拡大するという戦略的判断があったわけです。このように、グリーン特許を「囲い込む」から「活用してもらう」へシフトする動きはSDGs時代の知財戦略の新潮流と言えるでしょう【5】。特許を独占するのではなく、効果的なライセンス提供や時に無償開放によって持続可能な社会をともに目指す企業同士の「仲間作り」戦略が活性化しているのです【5】。
他の企業事例としては、海外ではテスラ社が電気自動車関連特許の非行使宣言(事実上の開放)を行ったり、大手化学メーカーがCO2削減技術の特許プールを検討する動きも報じられています。これらはいずれも、自社だけでなく業界全体・社会全体で環境技術を広めることが最終的に自社の利益にも繋がるという発想に基づいています。もっとも、全ての特許を開放するのが良いわけではなく、コア事業に直結する技術や競争優位の源泉はしっかり守りつつ、副次的な技術や広く普及すべき技術はオープンにする、といったバランス感覚が求められます。この点、知財部門は経営戦略とSDGsの両面を睨んだ知財ポートフォリオの分類・方針策定が重要になっています。
グリーン特許と法制度・政策:環境技術促進策との連動
グリーン特許の活用を語る上で、関連する法制度や政策の動きにも触れておきます。各国の知的財産制度は、環境技術の促進に向けた様々なインセンティブや仕組みを整備しつつあります。
代表的なのが特許出願審査の加速措置(グリーン早期審査制度)です。環境関連技術の特許出願については、通常より迅速に特許権を付与するための優先審査制度を導入する国が増えています。世界で初めてグリーン特許の早期審査制度を導入したのは英国で、2009年5月に開始されました【9】。続いて同年中に日本(特許庁)、米国、オーストラリア、イスラエル、韓国などが相次いで同様のプログラムを開始し、さらに2011年にカナダ、2012年には中国やブラジルも導入するなど、2010年代前半までに主要国の特許庁がこぞって環境関連発明の審査促進策を打ち出しました【9】。これらの制度を利用すると、通常は出願から特許権取得まで数年かかるところを、数か月〜1年程度に短縮できる場合があります【9】。日本でも「グリーン関連出願」は早期審査の対象とされ、所定の書類提出によって迅速な審査が受けられる仕組みです【1】。審査を早く進めることで環境技術の実用化・普及を後押しする狙いがあり、企業にとっても技術の権利化を急いで投資回収しやすくなるメリットがあります。昨今ではタイや東南アジア諸国など新興国でも同様のグリーン特許加速審査が導入されるなど、世界的な潮流となっています。
さらに各国政府は、環境イノベーションを促すための政策的支援策も講じています。日本ではグリーンイノベーション基金による研究開発補助や、カーボンニュートラル技術に関する特許取得費用の支援策などが用意されています。欧州連合(EU)ではグリーン技術開発を目的とした補助金や低利融資に加え、重要な気候変動対策技術に関する知財プール形成の検討も行われています。また、国際的には気候変動枠組条約の下で技術メカニズムが整備され、発展途上国へのクリーン技術移転を促進する動きがあります。こうした場合に特許が障壁にならないよう調整する議論もあります。例えば「必要に応じてグリーン特許の強制実施権(コンパルソリライセンス)を発動すべきだ」といった主張も一部にはあります【10】。一方で、知的財産権そのものが環境技術への投資インセンティブになっている面も大きく、慎重なバランスが求められます【10】。
国際機関の取り組みとしては、WIPO GREENのような知財マッチングだけでなく、標準必須特許の分野でも環境対応技術に関連するものが増えてきています。例えばEV充電インフラやスマートグリッド、エネルギーマネジメントシステムなどは国際標準化が進むにつれ、その標準を実施するために必要な特許(標準必須特許)が重要資産となります。各国政府も標準化活動を通じて自国企業の特許を有利に活用しつつ、技術普及を図る戦略をとっています。
また、日本では知財と環境政策の連携として、2020年に特許庁がWIPO GREENのパートナー機関となり国内外のマッチングイベントを開催したり、グリーン技術分野の特許分類表(GXTI)を策定して技術動向分析を行うなどの施策が取られています【3】【9】。GXTI(グリーン・トランスフォーメーション技術区分表)は企業が自社の環境特許ポートフォリオを分析したり、投資家に技術優位性を説明する際のエビデンスとしても活用可能です【3】。このように政策側でも、企業の知財戦略と環境・エネルギー政策を結びつける取り組みが進みつつあります。
法制度面では他にも、排出規制や再生可能エネルギー比率目標などの環境規制が間接的に特許戦略に影響を与えます。例えば自動車の排ガス規制強化は自動車メーカーにクリーンエンジンや電動化の特許競争を促し、その特許が市場で重要になります。同様に再エネ比率目標は蓄電や電力制御技術の特許価値を高める要因となります。知財専門家にとっては、環境関連の法規制動向や政府の技術戦略を注視し、自社保有特許の優先度や活用方針を機動的に見直すことが求められています。
グリーン特許の今後と課題(カーボンクレジット・ESG投資との連動)
最後に、グリーン特許を取り巻く今後の展望と課題について考えてみます。特にカーボンクレジットやESG投資との関係が今後重要になると予想されます。
まずカーボンクレジットとの連動です。カーボンクレジット(炭素排出権取引)は、温室効果ガス排出量に価格をつけて取引する仕組みで、パリ協定の目標達成に向けて官民で市場拡大が図られています【10】。排出削減や吸収に貢献する技術にはクレジット創出のチャンスがあります。ここで特許は技術革新を促す経済的インセンティブとして重要な役割を果たしています【10】。新たな低炭素技術の開発・普及が進めば、その分だけ排出削減が可能となり、クレジット取引市場も活性化します。実際、「特許などの技術進歩がカーボン市場拡大の鍵であり、特許はクリーン技術への継続的な投資を促す」と指摘する声もあります【10】。今後、カーボンクレジット市場が成熟していけば、ある技術によって創出される排出削減量=クレジット量がその技術(および特許)の価値評価に織り込まれるようになるかもしれません。例えば、画期的なCO2回収装置の特許を持っている企業が、その装置を広く展開することで得られるクレジット収入まで視野に入れてライセンス戦略を立てる、といったことも考えられます。実際に2023年のCOP28では国連主導のグローバルな炭素取引市場構想が議論されました。国境を超えたクレジット取引が一般化すれば、特許によって押さえた技術がもたらす排出削減効果を国際的に売買するような新たなビジネスモデルも登場するでしょう。もっとも、その際には特許権者と実際に排出削減に取り組む現場との利益配分のあり方など、新たな課題も出てきます。知財契約と環境ファイナンスが交錯する領域であり、知財専門家としても今後フォローすべきテーマです。
次にESG投資との関係です。ESGを重視する投資マネーが世界的に増大する中、企業の環境対応力を測る指標として知的財産がもっと活用される可能性があります。現在のところ、ESG評価機関の指標には特許の質・量が明示的に反映されるケースは多くありません。しかし、先述のように環境関連特許はその企業の将来的な環境貢献ポテンシャルを示すものですから、投資家が注目して然るべき情報といえます。実際にはパラドックスも指摘されています。ある研究では、石油・ガス企業のようにESGスコアが低く投資対象から外されがちな企業が、実はグリーン特許の重要なイノベーターになっていることが示されています【4】。エネルギー業界の大企業は豊富な研究開発資金を背景に環境技術の特許を数多く生み出しており、質的にも高い水準にあります【4】。しかしESG投資では化石燃料産業という理由でこれら企業への資金が避けられる傾向にあります。これは「ESG評価とイノベーション評価のミスマッチ」とも言える状況で、今後の課題です【4】。投資家にとっては、単に現在の事業構成だけでなく将来の技術ポートフォリオまで踏み込んで企業価値を判断する視点が求められます。幸い、日本でも知財情報の開示を促す動きがあり、特許の価値や戦略を積極的に発信する企業が増えてきました。知財部門は自社のグリーン特許の意義を社内外に説明し、経営層や投資家にアピールする役割も担っていくでしょう。
最後に、グリーン特許分野の展望としては、「オープン&クローズ戦略」の高度化が挙げられます。各社が自社の特許をどこまでオープンにし、どこをクローズ(独占)にするか、その取捨選択がますます経営戦略と一体化していくでしょう。特許を単なる権利保護ではなく交渉・協業のツールとして使いこなすことが重要になります。グリーン特許は多くの場合、社会課題の解決手段でもあるため、利他的な観点も含めた戦略的活用が求められます。また、今後カーボンニュートラル達成に向けて必要とされるイノベーションは未だ数多く存在します。水素サプライチェーンの確立、負荷の小さい次世代電池、ネガティブエミッション技術(直接空気回収など)、食料・水問題への技術など、新たなグリーン特許が生まれる領域は広大です。知財専門家としては、新技術の芽を的確に見極めて権利化・活用し、研究開発から事業化まで一貫して支える役割が期待されています。
まとめ
グリーン特許をめぐる状況は今後もダイナミックに進化していくでしょう。SDGsの達成期限である2030年に向け、そしてそれ以降のカーボンニュートラル社会に向けて、知財戦略が果たすべき役割はますます大きくなります。企業・大学・政府・国際機関が連携し、知的財産を巧みに活用することで、技術イノベーションと持続可能な社会の実現を両立させていくことが求められています。
特許を収益化したい方へ: 眠っている特許資産を有効活用しませんか?株式会社IPリッチが運営する特許売買・ライセンスプラットフォーム「PatentRevenue」では、特許の無料登録とマッチングによって、特許の売却やライセンス機会を創出できます。環境技術を含めあらゆる分野の特許流通をサポートしておりますので、ぜひ無料会員登録(https://patent-revenue.iprich.jp)をご検討ください。知財のプロが貴社の特許を収益化につなげるお手伝いをいたします。
(この記事はAIを用いて作成しています。)
参考文献
- 特許庁「早期審査・早期審理(特許出願)についてのQ&A」(グリーン発明の定義)<br>https://www.jpo.go.jp/faq/yokuaru/patent/soukishinri_shinsa.html
- WIPO日本語版記事「発明の3件に1件がSDGsに関連ー特許データから明らかに」(2024年3月26日公開)<br>https://www.wipo.int/ja/web/wipo-magazine/articles/patent-data-show-one-third-of-inventions-relate-to-the-sdgs-62846
- 井上慶一郎「グリーン・トランスフォーメーション・イノベーション」(RIETIノンテクニカルサマリー, 2023年9月)<br>https://www.rieti.go.jp/jp/publications/nts/23e086.html
- Cohen, Gurun, Nguyen (Harvard Law School Forum) “The ESG-Innovation Disconnect: Evidence from Green Patenting” (2020)<br>https://corpgov.law.harvard.edu/2020/11/18/the-esg-innovation-disconnect-evidence-from-green-patenting/
- 特許庁 広報誌「とっきょ」Vol.58 特集記事「知財がつむぐSDGs」(2023年10月)<br>https://www.jpo.go.jp/news/koho/kohoshi/vol58/01_page1.html
- 富士通株式会社 プレスリリース「九州大学、琉球大学と環境関連技術の知財ライセンス契約を締結 — SDGsの実現に向け、国内初となる『WIPO GREEN』活動で知財ライセンス契約を締結 —」(2018年9月13日)<br>https://pr.fujitsu.com/jp/news/2018/09/13.html
- Renewable Energy Magazine “Oxford PV and Trinasolar announce a landmark Perovskite PV patent licensing agreement” (2025年4月16日)<br>https://www.renewableenergymagazine.com/pv_solar/oxford-pv-and-trinasolar-announce-a-landmark-20250416/
- トヨタ自動車 グローバルニュースリリース “Toyota Promotes Global Vehicle Electrification by Providing Nearly 24,000 Licenses Royalty-Free” (2019年4月3日)<br>https://global.toyota/en/newsroom/corporate/27512455.html
- WIPO Magazine “Fast-tracking green patent applications” (Antoine Dechezleprêtre, 2013年6月) <br>https://www.wipo.int/wipo_magazine/en/2013/03/article_0004.html
- Mondaq “Patent And Carbon Currency: Paving The Way For A Sustainable Future” (2023年10月, インド) <br>https://www.mondaq.com/india/climate-change/1545114/patent-and-carbon-currency-paving-the-way-for-a-sustainable-future

