スタートアップと特許 – 起業家は特許を取るべきか?

株式会社IPリッチのライセンス担当です。

スタートアップ企業にとって、自社の革新的な技術やアイデアを保護する特許戦略が事業成功や企業価値向上にどう影響するかは重要な論点です。本記事では「スタートアップと特許 – 起業家は特許を取るべきか?」をテーマに、特許取得のメリット・デメリット、資金調達への影響、特許戦略(防衛的特許やクロスライセンス)、特許を取らない場合のリスク、特許取得コストと他の知財との比較、判断の指針、実例、そして専門家活用まで包括的に解説します。

目次

スタートアップが特許取得する意義

スタートアップの成功は多くの場合、独自のアイデアや技術に支えられています。その技術を特許として適切に保護することには大きな意義があります。まず特許を取得する意義として、競合他社による模倣の防止競争優位性の確保が挙げられます。特許権は一定期間(通常出願から20年)にわたり発明の独占権を与えるため、これにより競合が同じアイデアや技術を無断で利用することを防ぎ、市場での独占的な地位を築きやすくなります[1]。実際、知的財産は企業にとって重要な無形資産であり、これを保有することでスタートアップの企業評価が高まり、将来の買収(M&A)やIPOで有利に働く可能性が高まると指摘されています[1]。

また、特許を取得している事実そのものが社内外へのアピール材料にもなります。自社の技術の独自性や優位性を証明できますし、特許を絡めたプレスリリースは話題になりやすいとの指摘もあります[2]。このように、特許は単なる法的権利に留まらず、スタートアップの長期的な成長基盤になり得る重要な要素です[3]。

一方で、特許取得にはリスクや負担も伴います。最大のハードルはやはりコストとリソースです。特許出願から権利化までには出願料・登録料や代理人費用など多額の費用がかかり、日本国内だけでも取得までに数百万円規模の費用を要するケースもあります[1]。さらに特許を維持する年次費用や、海外で同様の権利を取る場合の費用まで考えると、資金や人材が限られるスタートアップには大きな負担となります[1]。また特許出願・登録には時間もかかり、出願から権利化まで数年を要することも珍しくありません。市場の変化が早い分野では、権利化する頃に技術が陳腐化してしまうリスクもあります。

事業の方向転換(ピボット)によっては、苦労と費用をかけて取った特許が事業に活かされない可能性もあります。このように特許取得のメリットとデメリットを十分に理解し、自社の状況に照らして判断することが重要です。

スタートアップの資金調達と特許の関係

特許などの知的財産は、スタートアップの資金調達や企業価値向上にも大きく影響します。投資家はスタートアップに出資する際、その企業がどのような知的財産を保有しているかを重視します。特許を持っていることで「このスタートアップは他社には真似できない独自技術を持っている」と示すことができ、競合との差別化要因として評価されます[3]。特許による独占権があれば、将来競争が激化しても自社の市場シェアを守れる見込みが高いため、ベンチャーキャピタル(VC)にとっても投資の安心材料となります[4][1]。

ある調査では、新興企業では企業価値の最大90%近くが特許などの無形資産に由来するというデータもあります[4]。このように知財ポートフォリオをしっかり築いているスタートアップは、出資審査の段階で有利に働き、結果としてより高い企業価値での資金調達や大型の資金調達を実現しやすくなる傾向があります[1]。

また、特許はエグジット(EXIT)戦略にも関係します。大企業との提携やM&Aを目指す際にも、特許は交渉カードとして機能します。知財に注目している大企業は、自社で新事業を検討する際に他社の特許が障壁にならないか調査するのが通常です。その過程でスタートアップが取得済みの特許に行き当たれば、「この技術領域は既にスタートアップが押さえている」と認識することになります[5]。

その結果、「特許ごと会社を買収してしまった方が早い」という判断を引き出し、実際にライセンス提案や買収交渉につながるケースもあります[5]。逆に言えば、特許がない場合には大企業側が「特に買収しなくても、自前で類似サービスを開発すればよい」と判断し得るため、せっかくの連携・買収の機会を逃す恐れがあります[5]。

あるVC投資家兼弁護士は、「スタートアップに特許権がある方が、投資家や買収検討企業に対して市場独占や競争優位を説明しやすい」と述べています[2]。したがって資金調達の場面でも、将来のM&A戦略の面でも、特許はスタートアップの価値を高めリスクを下げる重要な役割を果たすのです。

スタートアップの特許戦略:防衛的特許とクロスライセンス

限られた資源の中で最大限に特許を活用するには、戦略的な知財マネジメントが欠かせません。スタートアップの特許戦略として代表的なのが防衛的特許の取得とクロスライセンスの活用です。

防衛的特許戦略とは

防衛的特許とは、自社の発明を他社に特許取得されてしまうのを防ぐため、あるいは将来他社から特許侵害で訴えられた際の**盾(防御手段)として取得する特許のことです。スタートアップは往々にして大企業に比べ後発で市場に参入しますが、その際に「自社のコア技術については特許で守りを固めておく」**ことが重要です。他社が類似技術の特許を先に取ってしまうと、自社の製品開発が妨げられたり追加コストが発生したりするリスクがありますし、最悪の場合自社が特許侵害で訴えられる恐れもあります。

防衛的特許を取得しておけば、自社の技術領域に他社が簡単に参入できない参入障壁を築けます。また万一特許侵害で訴訟を起こされた場合でも、こちらにも特許権があれば交渉材料になり、クロスライセンスや和解によって解決を図る余地が生まれます。特許を「攻めの武器」としてだけでなく「守りの防具」として位置付ける発想は、知財戦略における基本的な考え方です[6]。

クロスライセンスの活用

クロスライセンスとは、双方の特許をお互いに利用できるよう許諾し合う契約のことです[7]。スタートアップが既存市場に乗り込む場合、どうしても避けられない他社特許が存在することがあります。その際、自社も有力な特許を持っていれば「お互いの特許を自由に使えるようにしませんか」という形で交渉し、訴訟を避けつつ双方の技術利用を可能にできます[7]。

例えば、スタートアップが新製品に必要な技術について大手企業の特許を侵害してしまう恐れがあるとき、自社の特許と引き換えに相手から実施許諾を得る(またはその逆)という交渉が可能です。特許をバーター交換するようなイメージで、大企業が持つ多数の特許群の一部と、自社の少数でも価値の高い特許とを交換し合えることもあります[8]。

特に自社の市場規模が小さいうちは、相手に与える実害も小さいため、1件の特許でも大企業からすれば重要度が高く、有利な条件を引き出せる可能性があります[8]。ただしクロスライセンス交渉を成立させるには、相応に質の高い特許を持っている必要があります[7]。自社の特許力が弱い場合は対等な交換にはならず、不足分をライセンス料で補うといった形になるでしょう。

このように、防衛的特許やクロスライセンスを駆使することで、スタートアップは知財面でのリスクを低減しつつ他社との協業や技術利用の道を拓くことができます。

さらに昨今では、自社の特許をオープンイノベーションの文脈で積極的に活用する動きも見られます。他社と技術ライセンスを共有したり共同開発を行ったりすることで、市場全体で自社技術をデファクトスタンダードに育て上げ、自社の知財価値を結果的に最大化するといった戦略も有効です[9]。

特許は独占のためだけでなく、使い方次第で事業提携のパスポートにもなる点を押さえておきましょう。

スタートアップが特許を取得しない場合のリスク

ここまで特許を取得する意義を述べてきましたが、あえて特許を取らない選択をした場合にはどんなリスクがあるでしょうか。まず真っ先に考えられるのが模倣リスクです。特許で保護していないアイデアや技術は基本的に公開された情報となり得るため、優れたビジネスモデルやプロダクトであればあるほど競合他社に真似される危険があります。

実際、多くのスタートアップは製品開発や市場拡大に注力するあまり知財の保護が後回しになりがちで、その結果として後発企業に模倣されたり予期せぬ訴訟に巻き込まれたりするケースもあります[1]。

一度模倣品が出回ってしまうと、小さな企業にはそれを排除する有効な手段がなく、市場シェアを奪われてしまう恐れがあります。特許を出願していれば侵害として差し止め請求等が可能ですが、出願していない場合は法的に独占権が主張できないためです。

次に、競合他社による特許の先取りもリスクです。自社が特許を出願せずに放置した技術領域で、第三者が先に特許を取得してしまうと、後から自社がその技術を使い続けることが難しくなる可能性があります。他社特許を侵害しないよう迂回設計(デザインアラウンド)を強いられたり、ライセンス料の支払いを求められたりするリスクが生じます。

また「自社が開発した技術だから大丈夫」と安心していても、公表済みの技術には新規性がないため特許は取れないという特許制度上のルールを忘れてはいけません。日本を含む多くの国では、一度でも公にした発明は原則として特許出願できなくなります(※日本や米国などには例外的に一定期間内なら許容されるグレースピリオド制度があります[10])。

そのため、自社サービスのリリース後に「やはり特許化しよう」と思っても時すでに遅し、という事態も起こり得ます[10]。

さらに見落とせないのが、提携や買収の機会損失です。自社で特許を持っていない場合、大企業から見るとそのスタートアップの技術を「法律上独占されていない=自社で再現可能」と判断されてしまいがちです[5]。

前述の通り、大企業がスタートアップとの提携やM&Aを検討する際、肝心の技術が特許出願もされずに「担当者の頭の中にあるだけ」の状態だと、デューデリジェンス(事前調査)で評価が困難になり、将来の法的リスクも読み切れないために企業価値を低く見積もられたり、最悪の場合取引自体が見送りになったりします[5]。

このように、特許を取得しない選択には見えにくいリスクが数多く潜んでいることを認識しなければなりません。

スタートアップと特許取得コスト:費用対効果と回収方法

特許の取得・維持にはどうしても費用がかかります。スタートアップにとって、この特許取得コストをどう捉え、回収するかは大きな課題です。国内特許を1件取得するだけでも出願から登録まで合計で数十万〜数百万円の費用負担となることがあります[1]。

これに国際出願や外国出願(米国や欧州など主要市場への権利取得)を加えると、翻訳料や現地代理人費用も含めてさらにコストが跳ね上がります。限られたシード資金や自己資金を運転資金や人件費に充てたい創業初期には、特許への投資はどうしても後手に回りがちです。

しかし、特許取得にかかるコストは将来への投資と見ることもできます。特許によって事業独占が可能になれば、競合が現れにくくなり中長期的な収益を確保しやすくなるため、その意味では特許費用を上回る利益を生む可能性があります[1]。

たとえばある製品分野で自社だけが特許を持っていれば、競合他社が参入して価格競争になる事態を避けられ、高い利益率を維持できるでしょう。また特許そのものを収益源に変える方法もあります。自社では使いきれない特許を必要とする企業にライセンスしてロイヤリティ収入を得たり、特許を売却して資金化したりすることです。

大企業ではないスタートアップでも、特許ポートフォリオを事業売却とは別に売り立てて資金を調達した例もあります。

特許権は形の見えない資産ですが、使わなければ単なるコスト使えば収益を生む資産になり得るものです。

政府や自治体も中小・スタートアップ企業の知財取得を支援する補助金制度や減免措置を用意しています。日本特許庁では、小規模事業者向けに特許の特許料や審査請求料の減額制度があり、活用すれば費用負担を減らせます。また都道府県によっては、海外出願費用の一部を補助してくれる場合もあります。

こうした支援策も活用しつつ、将来の利益と現在のコストのバランスを見極めて賢く特許に投資することが大切です。

スタートアップにおける特許と他の知財(商標・意匠等)の比較

知的財産には特許以外にも商標権意匠権著作権営業秘密(ノウハウ)など様々な種類があります。スタートアップの知財戦略を考える際には、特許だけでなく他の知財も含めた総合的な観点で検討することが重要です。

それぞれの特徴とメリットを簡単に比較してみましょう。

  • 特許権: 発明や技術的アイデアを保護します。権利化まで時間と費用がかかりますが、成立すれば強力な独占権(原則20年間)を得られます。技術優位性の確保には有効ですが、公開義務があるため秘密にしておきたいノウハウには不向きです。
  • 商標権: 商品名やロゴ、サービス名などブランドを保護します。登録にかかる費用も比較的低く、手続き期間も短めです。権利は更新し続ければ半永久的に存続します。
  • 意匠権: 製品のデザイン(形状や模様)を保護します。例えばハードウェア製品やアプリのUIデザインなど、見た目の工夫に独自性がある場合は意匠登録が有効です。
  • 著作権: プログラムコードや文章、画像など創作的表現を保護します。創作した時点で自動的に権利が発生し、登録手続きや費用は不要です。ただしアイデアそのものは保護対象外です。
  • 営業秘密(ノウハウ): 特許を取得せず秘密裏にノウハウを管理する方法です。不正競争防止法に基づき、秘密管理され有用な非公知情報であれば保護されます[8]。

このように、それぞれの知財には保護対象や期間、コストが異なる特性があります。スタートアップは自社のビジネスモデルに照らし合わせて、「どの知財をどう組み合わせて守るか」を戦略的に検討することが重要です。

「起業家は特許を取得すべきか」判断基準

結局のところ、「起業家は特許を取るべきか?」の答えは状況によります。判断するための基準・フレームワークをいくつか示してみます。

  1. 技術の核心度と模倣容易性
  2. 技術ライフサイクルと市場動向
  3. 資金状況と優先順位
  4. 業界特性と他社の知財動向
  5. 将来の出口戦略

これらを総合的に勘案して、「この発明は守るべきか」を判断しましょう。もし迷う場合は、知財専門家(弁理士など)に相談するのも有効です。

スタートアップと特許:成功と失敗

スタートアップにおける特許活用の代表的な成功例として、米国Sonos社が挙げられます。同社は独自技術を多数特許化し、Googleとの訴訟で勝訴しています[9]。

一方、特許を取得したものの、それを事業に活かせず失敗した例もあります。特許取得がゴールではなく、事業に活かすことが不可欠だという教訓です。

スタートアップは特許専門家の活用を検討すべき

知財の世界は専門性が高く、スタートアップだけで最適な判断を下すのは難しい場面も多々あります。弁理士や知財弁護士など特許専門家の力を借りることを強くお勧めします。

専門家を活用することで、適切な出願、他社特許とのバランス、コスト抑制などにおいて大きなメリットが得られます。公的支援制度(IP BASEなど)も積極的に活用しましょう[7]。

まとめ

スタートアップにとって、特許取得は単なる法的手続きではなく、事業戦略の一環です。取るべきかどうかの判断は難しいものですが、本記事で示した基準や事例を参考に、最適な選択をしていただければ幸いです。

また、自社の特許の収益化(売却・ライセンス)をお考えの方は、特許売買・ライセンスプラットフォーム「PatentRevenue」(https://patent-revenue.iprich.jp)への登録をぜひご検討ください。専門家によるサポートを通じて、保有特許を必要とする企業とのマッチングを実現します。

(この記事はAIを用いて作成しています。)

参考文献

  1. マネーフォワード ビジネス:「スタートアップの知財戦略の重要性は?競争力強化と成長のポイントを解説」 https://biz.moneyforward.com/ipo/basic/11604/
  2. Coral Capital Insights:「シード期の『肝となる技術』は特許化すべきか、それとも秘匿化すべきか」 https://coralcap.co/2022/11/ip-strategies-for-startups-3/
  3. 日本弁理士会(パテント誌):「スタートアップのための特許戦略と落とし穴」 https://jpaa-patent.info/patent/viewPdf/3006
  4. MBHB Snippets:「Intellectual Property and the Venture-Funded Startup」 https://www.mbhb.com/intelligence/snippets/intellectual-property-and-the-venture-funded-startup/
  5. TechnoProducer:「特許は『弱者』ほど意味がある」 https://www.techno-producer.com/column1min/patents-are-important-for-the-weak/
  6. 特許庁 IP BASE:「クロスライセンスとは」 https://ipbase.go.jp/learn/keyword/page03.php
  7. 特許庁 IP BASE:「IP BASEとは」 https://ipbase.go.jp/
  8. 経済産業省:「営業秘密の保護に関するガイドライン」 https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/2015guideline.pdf
  9. WIRED:「SonosがGoogleとの特許訴訟で勝訴」 https://wired.jp/2022/01/09/sonos-google-patents/
  10. 特許庁:「特許出願の基礎知識」 https://www.jpo.go.jp/system/patent/shutugan/shutugan/shutugan_b.htm
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