売れるパッケージを長期保護!意匠権と立体商標の使い分けによる最強の知財戦略

はじめに:パッケージデザインの保護戦略と本記事の結論
こんにちは、株式会社IPリッチのライセンス担当です。
製品の顔とも言える「パッケージ形状」や「ボトルデザイン」は、消費者が商品を手に取る決定的な要素であり、企業にとって極めて重要な無形資産です。しかし、ヒット商品が生まれると必ずと言ってよいほど模倣品が出現し、市場を浸食します。これを防ぐためには、法的な保護が不可欠ですが、その中心となる「意匠権」と「立体商標」は、それぞれ保護の要件や期間、目的が大きく異なります。
本記事の結論を申し上げますと、製品のライフサイクルに合わせてこの二つの権利を戦略的に使い分ける「知財リレー戦略」こそが、最も効果的な保護手法です。具体的には、製品発売当初は「新規性」を武器に登録しやすい「意匠権」で最大25年間の独占権を確保し、その間に販売実績を積み重ねてブランドを浸透させます。そして、意匠権の存続期間が終了する前に、使用実績によって獲得した信用(識別力)を根拠に「立体商標」を取得し、半永久的な権利へとバトンタッチするのです。この戦略を実行することで、デザインという資産を長期的に守り抜き、ライセンス等による収益化の基盤を盤石にすることが可能となります。
特許・意匠の収益化と権利維持の重要性
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製品ライフサイクルにおける「意匠権」の強力な保護効力と新規性
新製品を市場に投入する際、最初に検討すべきは「意匠権」による保護です。意匠権は、物品の形状や模様、色彩などのデザイン(意匠)を保護する権利であり、その最大の特徴は「新規性」と「創作非容易性」があれば登録が可能であるという点です。つまり、まだ世の中に知られていない新しいデザインであれば、実績ゼロの状態でも権利を取得できるのです。これは、登録に「使用による実績(周知性)」が求められる立体商標と比較して、発売前の新製品にとって圧倒的なメリットとなります。
2020年(令和2年)4月1日に施行された改正意匠法により、意匠権の存続期間は従来の「登録日から20年」から「出願日から25年」へと伸長されました 。この5年間の延長は、製品寿命の長いロングセラー商品や、ブランドの象徴となるパッケージデザインにとって非常に大きな意味を持ちます。25年という期間は、一つの製品が市場に定着し、ブランドとしての地位を確立するのに十分な長さと言えるでしょう。この期間中、権利者はそのデザインを独占的に実施する権利を有し、他社が類似したデザインを使用した場合には、差止請求や損害賠償請求を行うことができます。
また、近年の法改正では、保護対象の拡充も行われています。従来は「物品」に限定されていましたが、画像デザインや建築物の外観、内装デザインなども意匠権の保護対象となりました 。これにより、店舗の外観やアプリのUIとパッケージデザインを統一したブランドの世界観全体を保護することが可能になっています。パッケージデザインにおいては、容器の形状そのものを独占排他的に使用できるため、他社によるデッドコピー(完全模倣)を即座に排除できる強力な法的根拠となります。
しかし、意匠権には「25年」という明確な終わりがあります。期間満了後は権利が消滅し、そのデザインは誰でも自由に使用できる「パブリックドメイン」となります。ここで問題となるのが、25年を超えて愛され続けるロングセラー商品の保護です。意匠権が切れた直後に、ライバル企業が全く同じ形状の商品を販売し始めたとしても、意匠権だけではそれを止める術がありません。そこで重要となってくるのが、次項で解説する「立体商標」への切り替えです。
半永久的なブランド資産を守る「立体商標」の登録要件とハードル
立体商標とは、その名の通り、立体的形状からなる商標のことです。ペコちゃん人形やカーネル・サンダース像のようなキャラクターはもちろん、特徴的な形状をした商品容器なども対象となります。立体商標の最大のメリットは、10年ごとの更新手続きを行えば、半永久的に権利を維持できる点にあります。意匠権のような期限切れの心配がなく、ブランドが続く限り永続的に形状を独占できるため、超長期のブランド戦略において極めて強力な武器となります。
しかし、立体商標の登録には「意匠権」とは比べ物にならないほど高いハードルが存在します。それは「識別力(Distinctiveness)」の有無です。商標法において、商品の形状そのものは、原則として「商品の機能を確保するために必要な形状」や「美観を向上させるための形状」にすぎないと見なされ、誰の商品かを区別する目印(識別標識)としての機能はないと判断されます。これは、特定の形状を特定の企業に独占させると、産業全体の自由な競争を阻害する恐れがあるためです 。
具体的には、単なるボトルや箱の形状は、商標法第3条1項3号の「商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」に該当し、原則として登録が拒絶されます 。この原則を覆し、例外的に登録(商標法第3条2項の適用)を受けるためには、「使用による識別力の獲得」を証明しなければなりません。つまり、「この形を見れば、文字がなくてもどこのメーカーの商品か誰もが分かる」というレベルまで、長期間の使用と宣伝広告によって周知されている必要があるのです。
この「使用による識別力」の立証は非常に厳格です。特許庁や裁判所は、以下の要素を総合的に判断します。
- 使用期間: 長期間(数十年単位)にわたり、形状を変更せずに使用しているか。
- 販売実績: 全国的に大量に販売され、高い市場シェアを持っているか。
- 広告宣伝: テレビCMや新聞広告などで、形状そのものを強調した宣伝を行っているか。
- アンケート調査: 消費者がその形状を見ただけで、特定のブランドを想起するか。
単に「売れている」だけでは不十分であり、全国的な知名度と、消費者が形状とブランドを明確に結び付けているという事実が不可欠です。例えば、ペットボトルのお茶飲料のように、各社が似たような形状を採用している分野では、特定の形状に識別力を認めることは極めて困難です 。
著名な成功事例と失敗事例から学ぶ「識別力」の判断基準
立体商標の難しさと可能性を理解するために、いくつかの著名な判例を詳細に見てみましょう。成功した事例と失敗した事例を比較することで、どのような要素が明暗を分けるのかが見えてきます。
1. コカ・コーラのコンツアーボトル(成功事例)
2008年、知財高裁はコカ・コーラの瓶の形状について立体商標登録を認める画期的な判決を下しました 。当初、特許庁は「文字商標(Coca-Cola)が強力な識別力を持っており、瓶の形状自体は単なる容器としての機能や美観に過ぎない」として登録を拒絶しました。しかし、知財高裁はこれを覆しました。判決では、形状自体に特段の独自性はない(需要者が予測可能な範囲内)としつつも、長年にわたる圧倒的な販売実績と、瓶の形状を強調した多額の広告宣伝活動により、文字がなくてもそのくびれた形状を見ただけで消費者が「コカ・コーラ」であると認識できる(識別力を獲得している)と認定されました 。これは、形状自体が平凡であっても、後発的な使用実績によって登録が可能であることを示した重要な判例です。
2. ヤクルトのプラスチック容器(成功事例)
ヤクルト本社もまた、あの独特な容器の形状について立体商標を取得しています。1968年の導入以来、基本的な形状を変えずに販売され続け、毎日数百万本が消費されるという圧倒的な実績が背景にあります。しかし、ここでも特許庁は当初登録を認めず、長期間の法廷闘争が必要となりました。最終的に2010年、知財高裁は「(文字がなくても)容器の形状のみでヤクルトの商品であると認識できる」として登録を認めました 。この判決において、アンケート調査の結果(高い認知度)が重要な証拠として採用されました。
3. キッコーマンの卓上醤油瓶(成功事例)
キッコーマンの卓上醤油瓶も、発売から長期間を経て、2018年に「文字なし」の純粋な立体商標として登録されました 。ヤクルトの判決以降、高い識別力が証明されれば容器の形状でも登録が可能であるという流れが定着しつつありますが、それでも「他との識別性がある形状」であることを証明するハードルは依然として高いままです。特に醤油瓶のような液体調味料容器は、機能的な制約から形状が似通いやすく、その中で独自性を主張し続けるには、形状を変えずに長年使い続けるという企業努力が不可欠でした。
4. ゴルチエの香水瓶(失敗事例)
一方で、登録が認められなかった事例も存在します。ファッションブランド「ジャンポール・ゴルチエ」の女性のトルソー(胴体)を模した香水瓶は、非常に特徴的なデザインであるにもかかわらず、立体商標の登録が拒絶されました 。裁判所は、香水業界においては多種多様な形状のボトルが採用されており、トルソー型のボトルも「美観を資する目的」の範囲内であると判断しました。また、使用期間や広告宣伝の量と比較して、形状のみで特定の出所を表示するほどの識別力を獲得しているとは言えないとされました。このように、競合他社も凝ったデザインを採用する業界では、形状による差別化(自他商品識別機能)が働きにくく、登録の難易度はさらに上がります。
5. エルメスのバーキン(成功事例・侵害訴訟)
容器ではありませんが、バッグの「バーキン」の形状も立体商標として登録されています。この事例では、他社が類似した形状のバッグを販売したことに対し、商標権侵害および不正競争防止法違反で訴訟が提起されました 。裁判所は、バーキンの形状が極めて著名であり、形状そのものがエルメスの商品であることを示す表示(周知著名商品等表示)となっていると認め、模倣品の販売を差し止めました。これは、立体商標が模倣品対策において強力な法的武器となることを如実に示しています。
意匠権から立体商標へつなぐ「知財ミックス・リレー戦略」の実践
ここまで見てきたように、意匠権と立体商標にはそれぞれ明確な特徴があります。意匠権は「新規性」があれば登録できるが期間制限がある。立体商標は「永続性」があるが登録には長年の実績が必要である。この二つの性質を理解した上で、時系列で組み合わせる「リレー戦略(知財ミックス)」こそが、実務における最適解です 。
フェーズ1:発売前~発売直後(意匠権の確保)
新製品のデザインが完成したら、まずは発売前に意匠出願を行います。この段階ではまだ販売実績がないため、立体商標の登録は不可能です。しかし、意匠権であれば「新規性」を要件として登録でき、発売直後から25年間の独占期間を確保できます。この期間は、他社の模倣を排除しながら市場シェアを拡大し、ブランドを育成するための「守られた期間」となります。
費用面に関しても、意匠登録は比較的安価に済む場合が多く、特許庁への手数料は出願料16,000円、登録料は初年度から3年目まで毎年8,500円と設定されています 。このコストで独占権を得られるのは、初期投資として非常に合理的です。
フェーズ2:成長期~成熟期(実績の蓄積と形状の固定)
意匠権で守られている25年間の間に、将来の立体商標登録を見据えた戦略的なアクションが必要です。最も重要なのは「パッケージの形状を変えないこと」です。立体商標の審査では、長期間にわたり「同一の形状」が使用されていることが重視されます 。リニューアルと称して頻繁に形状を変更してしまうと、識別力の蓄積がリセットされてしまい、立体商標への移行が困難になります。
また、この期間に行う広告宣伝においても、単に商品名を連呼するだけでなく、パッケージのシルエットや特徴的な形状を強調するようなビジュアル戦略を展開することで、消費者の記憶に「形=ブランド」という図式を刷り込んでいくことが有効です。
フェーズ3:意匠権満了前(立体商標への出願)
意匠権の存続期間が終了する数年前から、立体商標の出願準備を始めます。この時点で、過去20年以上の販売実績、広告費、メディア掲載実績などの証拠資料を収集します。もし識別力の立証に不安がある場合は、消費者アンケートを実施し、認知度を客観的な数値として提示する準備も行います。
無事に立体商標が登録されれば、意匠権が消滅した後も、更新手続き(10年ごと)を行うことで半永久的に権利を維持できます。商標登録料は区分数×32,900円、更新登録料は区分数×43,600円程度であり、ブランド価値を維持するためのコストとしては妥当な範囲です 。
収益化を見据えたパッケージデザインと知財ポートフォリオ
本記事では、パッケージデザインの保護について「守り」の側面から解説してきましたが、これらの知財権は「攻め」、すなわち収益化の源泉としても機能します。
意匠権や商標権は、自社で独占するためだけでなく、他社にライセンス供与することで収益を生み出すことができます。例えば、ある特定の機能的な容器形状について意匠権を取得し、それを他の食品メーカーや飲料メーカーにライセンスすれば、製品の製造販売以外からのロイヤリティ収入を得ることが可能です。実際に、独自の研磨機に関する意匠権を取得し、それを活用したライセンスビジネスモデルを構築して、製造リスクを負わずに収益を安定させた企業の事例もあります 。この企業は、意匠権を活用することで大手の卸業者と契約を結び、自社は開発と知財管理に専念するという経営スタイルを実現しました。
また、キャラクタービジネスの分野では、「ハローキティ」の事例が参考になります。サンリオは、キャラクターの顔だけでなく、「リボン単独」の形状についても商標登録を行っていると言われています。これにより、キャラクターそのものを描かなくても、リボンのモチーフだけでブランドを表現した大人向けの商品展開や、他社ブランドとのコラボレーションが容易になります。このように、デザイン要素をパーツごとに権利化(意匠や商標)することで、ライセンスの切り売りが可能になり、収益源を多角化できるのです。
さらに、万が一立体商標の登録が認められなかった場合でも、「不正競争防止法」がセーフティネットとして機能する場合があります 。同法第2条1項1号では、周知な商品等表示と混同を生じさせる行為を規制しており、第2条1項2号では著名な商品等表示の冒用を規制しています。意匠権や商標権といった登録された権利がない状態でも、長年の使用によって周知性が獲得されていれば、模倣品の排除が可能になるケースがあります。このように、意匠法、商標法、不正競争防止法を重層的に組み合わせることで、強固な知財ポートフォリオを構築し、企業の収益力と競争力を高めることができるのです。
参考文献リスト
特許庁. 令和元年特許法等改正に伴う意匠法改正の概要.
株式会社フォーラムエイト. 改正意匠法の概要.
Cotobox. 一般的な拒絶理由通知の内容及び対応策について.
日本知的財産協会. 商品の包装の形状に係る純立体商標が商標法3条2項の適用を受けた事例.
弁理士法人みなとみらい特許事務所. 「キッコーマンの醤油瓶」が立体商標に.
弁理士法人創英. コカ・コーラ瓶の立体商標登録を認める知財高裁判決.
特許庁. 産業財産権関係料金一覧(2024年4月1日時点).
特許庁. 令和元年特許法等改正に伴う意匠関係料金改正のお知らせ.
特許庁. 特許行政年次報告書2024年版 付録3.
INPIT 滋賀県知財総合支援窓口. 知財ミックス戦略.
知財ポータル. 意匠権を活用したライセンスビジネス.
日本知的財産協会. 判例研究 No.330 コカコーラボトル事件.
ヤクルト本社. ヤクルト容器の立体商標が認められる.
一般社団法人発明推進協会. 立体商標 判決速報.
Atelier Law. エルメス バーキン 立体商標 判決.
オムニ特許. 知財高裁が、ゴルチェの香水瓶は自他商品識別力を有するとして、立体商標の登録を認める判決(※注:原文タイトルママだが、内容は3条1項3号該当性に関する議論と拒絶経緯を含む).
知財弁護士.COM. 香水瓶の立体的形状について,商標登録を認めなかった事例.
城山タワー法律事務所. 「おーいお茶」が商標に(※注:ペットボトル形状の登録難易度に関する言及).
Samurai TZ. ポッキーが立体商標登録!.
(この記事はAIを用いて作成しています。)

