プロレスラー・アントニオ猪木の「1・2・3・ダァーッ」も?意外な登録商標とビジネスリスクが示唆する知財戦略

目次

はじめに

株式会社IPリッチのライセンス担当です。

本記事では、昭和から平成、そして令和にかけて多くの人々に愛され、元気を届けてきたプロレスラー、故・アントニオ猪木氏の代名詞とも言える掛け声「1・2・3・ダァーッ」に焦点を当て、その意外な商標登録の事実と、そこから見えてくるビジネス上のリスク、そしてチャンスについて深掘りします。

日常的に使われるキャッチフレーズや流行語が、実は法的に強力な権利で守られているケースは少なくありません。もし、知らずに自社の商品名や広告に使用してしまった場合、どのような法的責任を問われる可能性があるのでしょうか。また、逆にこれらを「知財」として戦略的に活用することで、どのような収益化の道が開けるのでしょうか。本稿では、商標法の基礎知識から、「商標的使用」という重要な判断基準、さらにはキャラクタービジネスやブランドライセンスといった知財収益化の仕組みまでを網羅的に解説します。単なる法律の解説にとどまらず、企業が現代のビジネス環境で生き残るための「攻めの知財戦略」へのヒントを提供することを目的としています。

知財の収益化と専門人材の重要性

現代のビジネスシーンにおいて、知的財産(知財)の役割は劇的に変化しています。かつての知財部門は、自社の技術やブランドを模倣から守る「防衛」の役割が主でした。しかし現在では、保有する特許や商標、著作権を積極的に活用し、ライセンスアウトによるロイヤリティ収入を得たり、他社とのコラボレーションを通じてブランド価値を最大化したりする「知財の収益化」が経営の重要課題となっています。例えば、強力なブランド力を持つ商標やキャラクターは、それ自体が収益を生む資産となります。自社で製造設備を持たなくとも、権利を貸与することで利益率の高いビジネスモデルを構築することが可能だからです。このように、知財を「コストセンター」から「プロフィットセンター」へと転換させる視点が、これからの企業経営には不可欠です。

しかし、このような高度な知財戦略を立案し、実行に移すためには、専門的な知識と経験を持った人材が欠かせません。知財の権利化業務だけでなく、契約交渉、ライセンス管理、市場分析など、多岐にわたるスキルが求められます。そこで、知財戦略を強化したい、優秀な知財人材を採用したいとお考えの事業者様に、知財専門の求人プラットフォーム「PatentRevenue」をご紹介します。「PatentRevenue」では、求人情報を無料で登録することができ、即戦力となる知財専門家とのマッチングを支援しています。知財の収益化を加速させるためのパートナー探しに、ぜひご活用ください。詳細はこちらのURL( https://patent-revenue.iprich.jp/recruite/ )からご確認いただけます。

アントニオ猪木氏の「1・2・3・ダァーッ」における商標登録の真実

国民的な知名度を誇るアントニオ猪木氏。彼のパフォーマンスのクライマックスで叫ばれる「1・2・3・ダァーッ」というフレーズは、世代を超えて広く認知されています。実はこのフレーズ、単なる流行語やギャグの枠を超え、法的に保護された「登録商標」であることをご存知でしょうか。

公開されている特許庁の商標情報によると、「1・2・3・ダァーッ」は文字列として明確に商標登録されています 。この権利を保有しているのは、猪木氏の生前、専属マネジメント会社として活動していた「コーラルゼット株式会社」です 。特筆すべきは、この登録が単一の商品区分にとどまらず、多岐にわたる分野で行われている点です。具体的には、「スポーツ関連のイベントの企画・開催」といったプロレスラーとしての活動に直結する分野はもちろんのこと、「お酒」「清涼飲料」「コーヒー」「お菓子」「肉製品」など、全6件の区分(指定商品・役務)で権利が取得されています 。

なぜ、これほど幅広い分野で登録されているのでしょうか。これには、猪木氏のブランド力を最大限に活用した商品展開、いわゆる「マーチャンダイジング」の戦略が見て取れます。例えば、ファンに向けた「闘魂コーヒー」や、居酒屋チェーンとのコラボレーションによる「猪木酒」などの商品化を想定した場合、第三者が勝手に「1・2・3・ダァーッ」という名称を冠した類似商品を販売すれば、消費者はそれが猪木氏公認の商品であると誤認してしまうでしょう。こうした「ただ乗り(フリーライド)」を防ぎ、純正なブランド価値を守るために、あらかじめ関連しそうな商品区分を押さえておくことは、著名人やキャラクタービジネスにおける定石と言えます。

コーラルゼット株式会社は、このフレーズ以外にも「闘魂」「燃える闘魂」「イノキイズム」「アントニオ イノキ」「ボンバイエ」といった、猪木氏を象徴する数々のキーワードについても商標権を保有しています 。これにより、猪木氏に関するあらゆるブランドイメージを包括的に保護する体制が築かれているのです。一方で、猪木氏が好んで朗読した「この道を行けばどうなるものか…」で始まる詩「道」については、元ネタが宗教家・哲学者の清沢哲夫氏の詩であるとされており、商標とは別の著作権的な文脈での議論が必要となりますが 、独自のパフォーマンスとして確立された「1・2・3・ダァーッ」については、商業的な識別標識としての地位が法的に確立されているのです。

日常生活での使用と商標権侵害の法的境界線

「1・2・3・ダァーッ」が商標登録されているという事実を知ると、「宴会の余興で叫んだら訴えられるのか?」「SNSに投稿したら権利侵害になるのか?」といった不安を感じる方もいるかもしれません。しかし、商標法は言葉そのものを独占させる法律ではありません。結論から言えば、一般的な日常生活の文脈でこのフレーズを口にしたり、SNSに書き込んだりする行為は、原則として商標権侵害には当たりません 。

ここで重要となるのが、「商標的使用(商標としての使用)」という法的概念です。商標権の効力が及ぶのは、あくまでその標章が「自他商品識別機能(自分の商品と他人の商品を見分ける機能)」や「出所表示機能(誰が提供しているかを示す機能)」を発揮する態様で使用された場合に限られます 。

具体例を挙げて解説しましょう。もし、ある飲料メーカーが、コーラルゼット社の許可なく、自社の販売する日本酒のボトルラベルに大きく「1・2・3・ダァーッ」と記載し、商品名として販売したとします。この場合、指定商品である「お酒」の区分において、消費者はそのラベルを見て「これは猪木氏に関連する公式のお酒だ」と誤認する可能性が高くなります。このような使い方は、商品の出所を表示する機能(商標的使用)に該当するため、明確な商標権侵害となります 。

一方で、テレビ番組のバラエティコーナーで芸人がモノマネをして「1・2・3・ダァーッ!」と叫ぶ場合や、結婚式のスピーチの締めで新郎新婦を祝って叫ぶ場合などはどうでしょうか。これらの行為は、何か特定の商品を販売するために行われるものではなく、あくまでその場の演出や感情表現として行われるものです。視聴者や参加者も、その叫び声を聞いて「これは特定の商品ブランドだ」とは認識しません。したがって、自他商品識別機能を発揮していないため、商標権侵害には当たらないと解釈されます 。

過去の裁判例においても、キャッチフレーズの使用が商標権侵害に当たるかどうかが争われたケースがあります。有名な「ALWAYS事件」(東京地判平成10年7月22日)では、コカ・コーラの缶に「ALWAYS」と表示した行為が、既存の登録商標「オールウェイズ」を侵害するかが争われました。裁判所は、その表示のデザインや配置から見て、消費者の目を引くキャッチコピー(装飾的説明)として使われているに過ぎず、商品の出所を示す商標として使われているわけではない(商標的使用ではない)として、侵害を否定しました 。

このように、商標法は「ビジネス上の信用の保護」と「表現の自由」のバランスの上に成り立っています。登録商標であっても、それが商業的な識別標識として機能しない場面であれば、過度に萎縮する必要はないのです。

流行語を取り巻く商標トラブルと防衛的出願

「1・2・3・ダァーッ」のように、特定の人物に紐づく著名なフレーズが登録される一方で、世の中で自然発生的に流行した言葉を巡っては、商標登録を巡るトラブルも頻発しています。その代表例が、平昌オリンピックでカーリング女子日本代表(ロコ・ソラーレ)が試合中に発し、2018年の流行語大賞にもなった「そだねー」です。

この言葉が話題になった直後、北海道の製菓メーカーや大学の生協などから「そだねー」の商標出願が相次ぎました 。しかし、これらの出願の多くは特許庁によって拒絶されたと報じられています 。なぜなら、「そだねー」という言葉は、特定の企業の商品を識別するためのマークとしてではなく、世間一般で広く使われる流行語(記述的表示)として認識されており、特定の一社に独占権を与えることが公益に反する(識別力がない、公序良俗違反など)と判断される傾向にあるからです。

当時の関係者が商標出願に動いた背景には、必ずしも利益独占の意図だけではなく、全く無関係な第三者に権利を取得され、自分たちが自由に使えなくなる事態を防ぐための「防衛的出願」の側面があったとも推測されています 。もし、悪意ある第三者が「そだねー」の商標権を取得し、お菓子などの区分で権利行使をした場合、北海道の銘菓として「そだねー」という言葉を使った商品が出せなくなるリスクがあるからです。

さらに悪質なケースとして、「商標トロール」と呼ばれる問題も顕在化しています。これは、話題になった言葉や、将来流行しそうな言葉を先回りして大量に出願し、実際にその商標を使用する意思がないにもかかわらず、他社が使用する際に高額なライセンス料を請求したり、使用差し止めをちらつかせて金銭を要求したりする行為です 。近年では、AI(人工知能)ブームに便乗して、「AI○○」といった一般用語とAIを組み合わせた商標が大量に出願されるケースが報告されています。「AI記者」や「AIアナウンサー」といった、業界で一般的に使われるべき用語が特定企業に独占されてしまうと、メディアやIT企業がサービスを説明する際に著しい支障をきたす恐れがあります 。

このようなトラブルを避けるために、特許庁も審査基準を厳格化していますが、企業側としても、自社のネーミングが他社の商標を侵害していないか、あるいは自社の重要なキーワードが他社に狙われていないか、常に監視し、必要であれば早期に出願を行うなどの防衛策を講じることが重要です。

ビジネスにおける知財戦略とライセンスビジネスの可能性

ここまでは商標の「リスク」や「守り」の側面を見てきましたが、視点を変えて「攻め」の知財活用についても考えてみましょう。冒頭で触れた「知財の収益化」を具体現化する最強のツールの一つが、キャラクタービジネスやブランドライセンスです。

「1・2・3・ダァーッ」の事例でも見られるように、強力な顧客吸引力を持つフレーズやキャラクターの権利を保有することは、それ自体が巨大なビジネスの源泉となります。ライセンスビジネスの基本モデルは、権利者(ライセンサー)が他社(ライセンシー)に対して、自社の保有する商標や著作物の使用を許諾し、その対価としてライセンス料(ロイヤリティ)を受け取るというものです 。

このビジネスモデルには、権利者にとって非常に大きなメリットがあります。 第一に、高い利益率です。通常、商品の製造、在庫管理、流通、販売といった物理的なコストやリスクは、ライセンシー(製造・販売する企業)が負担します。ライセンサーは「使用権」という無形の資産を提供するだけなので、原価がほとんどかからず、売上の一定割合(例えば5%〜10%)がそのまま利益となります。これを「薄利多契約で巨大利益」を生むモデルと表現することもあります 。

第二に、ブランドの認知拡大です。自社単独ではリーチできない市場や顧客層に対しても、ライセンシーの販売網を通じてブランドを届けることができます。例えば、アニメ制作会社が菓子メーカーにキャラクターの使用を許諾すれば、スーパーやコンビニのお菓子売り場という、普段アニメを見ない層も訪れる場所でキャラクターの露出(アーンドメディア)を図ることができます 。

一方、ライセンシー側にとってもメリットは明確です。無名の新商品をゼロから売り出すには莫大な広告宣伝費がかかりますが、既に人気のあるキャラクターや有名ブランドの商標を冠することで、発売初日から一定の売上を見込むことができます。これにより、他社製品との差別化を容易にし、マーケティングコストを大幅に削減できるのです 。

しかし、ライセンスビジネスには注意点もあります。最も重要なのが「ブランドコントロール」です。もし、ライセンシーが利益を優先して品質の悪い商品を乱造したり、ブランドの世界観にそぐわないデザインで商品を販売したりすれば、元のブランドイメージそのものが毀損されてしまいます 。一度失われたブランドの信頼を取り戻すことは容易ではありません。そのため、ライセンサーは契約において厳格な使用ルール(レギュレーション)を定め、商品化の際には必ず監修を行うなど、徹底した品質管理を行う必要があります 。

「1・2・3・ダァーッ」が多区分で商標登録されているのも、まさにこのブランドコントロールの一環と考えられます。猪木氏のイメージに合わない商品に勝手に名前を使われることを防ぎつつ、適切なパートナー企業と組んで「猪木ブランド」の商品を世に送り出す。この攻守のバランスこそが、知財戦略の要なのです。

おわりに

アントニオ猪木氏の「1・2・3・ダァーッ」という短いフレーズに込められた商標登録の事実は、私たちに知財の奥深さを教えてくれます。それは単なる独占欲ではなく、築き上げた信用とブランドを守り、さらにそれをビジネスとして発展させるための極めて合理的な手段でした。

企業活動において、ネーミングやキャッチコピーは「顔」となる重要な要素です。他者の権利を侵害していないかを確認する「調査」のプロセス、自社の権利を確実に保護する「出願・登録」のプロセス、そしてその権利を活用して利益を生み出す「収益化」のプロセス。この一連のサイクルを戦略的に回せるかどうかが、企業の競争力を左右します。

特に、デジタル化が進み、SNSで情報が瞬時に拡散される現代においては、商標トラブルのリスクも、逆にIPを活用したビジネスチャンスも、かつてないスピードで拡大しています。「たかが言葉、されど言葉」。その重みを理解し、専門家の知見を借りながら適切な知財管理を行うことが、持続可能なビジネス成長への第一歩となるでしょう。

(この記事はAIを用いて作成しています。)

参考文献

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