ミームは著作権侵害? フェアユースで守られる“ネットの笑い”

皆様、こんにちは。株式会社IPリッチのライセンス担当です。

インターネットが社会の隅々まで浸透した現代において、「インターネットミーム(以下、ミーム)」は、私たちのコミュニケーションに欠かせない文化的現象となっています。SNSを開けば、見覚えのある画像や短い動画に、ユーモラスなテキストや風刺的なメッセージが重ねられ、瞬く間に拡散されていく光景が日常となっています。これらは、国境を越えて「笑い」や「共感」を共有する強力なツールです。

しかし、この楽しい「ネットの笑い」の裏には、複雑な知的財産権の問題が潜んでいます。ミームの多くは、既存の写真、映画のワンシーン、イラストなど、他者が創作した著作物を素材として利用しています。これらの素材を権利者の許可なく改変し、公開する行為は、原則として著作権侵害にあたる可能性があります。では、私たちが気軽に作成し、シェアしているミームは、法的にどのように扱われるのでしょうか。

この問題を考える上で鍵となるのが、特に米国で発展してきた「フェアユース(Fair Use:公正利用)」という法理です。フェアユースは、一定の条件下で著作権者の許可なく著作物を利用することを認める考え方であり、ミーム文化の存続に深く関わっています。本記事では、ミームと著作権の関係性に焦点を当て、フェアユースの具体的な判断基準や最新の判例動向、そして日本の著作権法との違いについて、詳しく解説していきます。

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ミームの経済的価値と「知財の収益化」

ミームが持つ爆発的な拡散力は、単なるコミュニケーションツールとしての役割を超え、今や大きな経済的価値を生み出しています。これは「知財の収益化」の新たな形として注目されています。例えば、企業がミームをマーケティング戦略に取り入れ、ブランド認知度を急速に高める動きが活発化しています。消費者の共感を呼ぶミームは、従来の広告手法よりも効果的な場合があります。

さらに近年、ミーム自体が資産として取引されるようになりました。有名なミーム画像がNFT(非代替性トークン)として高額で取引され、デジタル資産としての価値が認められる事例が登場しています。これは、インターネット上の創作活動や話題性が、直接的な収益化につながる道筋を示しています。

しかし、知財の収益化が進むほど、権利関係は複雑になります。ミームの利用が元の著作物の市場価値を毀損する場合や、商業目的で無断利用する場合には、著作権侵害のリスクが顕著になります。ミーム文化の自由な発展を阻害することなく、クリエイターの権利を守り、健全なライセンス市場を構築するためには、著作権法、特にフェアユースのような柔軟な法解釈の理解が不可欠となるのです。

目次

ミームとは何か? 著作権法との基本的な衝突点

私たちが日常的に使っている「ミーム」という言葉は、元々は生物学的な概念から派生したものです。進化生物学者のリチャード・ドーキンスが1976年の著書『利己的な遺伝子』の中で、遺伝子(Gene)が生物学的情報を伝えるように、文化的な情報(アイデア、流行など)が模倣を通じて人から人へと伝達・拡散していく様子を指す言葉として提唱しました。[1]

これが転じて、インターネット上で模倣、改変、拡散される画像、動画、テキストなどのコンテンツ全般を「インターネットミーム」と呼ぶようになりました。その最大の特徴は、ユーザーが既存のコンテンツを素材とし、新しい文脈や意味、ユーモアを付加する「参加型」の性質にあります。

なぜ著作権法と衝突するのか

ミーム文化は創造的ですが、その素材の多くは他者が作成した「著作物」です。写真、イラスト、映画などは著作権法によって保護されており、著作権者には以下のような権利が専有的に認められています(日本の著作権法第21条~第28条など)。[2]

  1. 複製権: 著作物をコピーする権利。ミーム作成のために画像をダウンロードする行為も複製にあたります。
  2. 翻案権(改変権): 著作物を改変し、二次的著作物を作成する権利。画像にテキストを重ねたり、加工したりする行為が該当します。
  3. 公衆送信権: 著作物をインターネットなどで不特定多数に公開する権利。作成したミームをSNSに投稿する行為が該当します。

原則として、これらの行為を著作権者の許諾なく行うことは、著作権侵害となります。ミームは、その性質上、他人の著作物を「許可なく」「改変」し、「拡散」することを前提としているため、法的には常に緊張関係にあるのです。

米国著作権法における「フェアユース」の概念

著作権法の原則を厳格に適用すると、多くのミームは著作権侵害となる可能性があります。しかし、インターネットミームの多くが生まれ、グローバルに拡散する起点となっている米国においては、ミーム文化を法的に保護しうる強力な概念が存在します。それが「フェアユース(Fair Use)」です。

フェアユースは、米国著作権法第107条に規定されている法理で、「批評、論評、ニュース報道、教育、学問、または研究などの目的」であれば、著作権侵害とはみなされない「公正な利用」を認めるものです。[3]

この規定の背景には、米国憲法が保障する「表現の自由」があります。著作権保護があまりに強力すぎると、既存の著作物を利用した新たな創造活動や批評活動が阻害され、文化の発展が妨げられてしまう恐れがあります。フェアユースは、著作権者の権利と公共の利益とのバランスを取るための「調整弁」として機能しているのです。

重要な点は、フェアユースは明確なルールではなく、ケースバイケースで判断されるということです。著作権侵害で訴えられた場合、利用者が「自分の利用はフェアユースにあたる」と主張(抗弁)し、裁判所がそれを認めるかどうかで決まります。その判断基準となるのが、次に解説する「4つの要素」です。

フェアユースの判断を左右する「4つの要素」の詳細分析

米国著作権法第107条では、ある利用行為がフェアユースに該当するかどうかを判断するために考慮すべき4つの要素が示されています。[3] これらは独立しているのではなく、相互に関連し合いながら総合的に評価されます。

要素1:利用の目的と性格(The Purpose and Character of the Use)

最初の要素では、著作物が「どのように」「何のために」使われたのかが問われます。特に重視されるのは以下の2点です。

a. 商業的利用か非商業的利用か?

利用が利益を得ることを目的としている(商業的)場合、非営利目的(教育、批評、個人的な楽しみなど)の利用よりもフェアユースが認められにくくなります。一般ユーザーがSNSでミームを共有する行為は非商業的と考えられますが、企業が広告目的で利用する場合は商業的と判断されます。

b. 変容的利用(Transformative Use)か?

近年、最も重視されているのがこの「変容的利用」です。これは、元の著作物を単にコピーするのではなく、それに「新しい表現、意味、またはメッセージ」を付加し、異なる目的のために利用することを指します。[4]

ミームは、まさにこの変容的利用の典型例と言えます。例えば、深刻なニュース写真が、全く関係のない日常の出来事を面白おかしく描写するために使われる場合、元の写真の報道的な意味は失われ、新しいユーモラスな意味が付加されています。パロディや風刺も、元の作品を批評したり、笑いの対象にしたりすることで新しい文脈を創造するため、変容的利用として保護されやすい傾向にあります。

要素2:著作物の性質(The Nature of the Copyrighted Work)

2番目の要素では、利用された「元の著作物」がどのような性質を持っているかが考慮されます。

一般的に、フィクションや芸術作品のように創造性が高い著作物よりも、事実やデータに基づいた著作物の方が、公共の利益のために利用する必要性が高いとされ、フェアユースが認められやすい傾向があります。また、未公表の作品は、公表済みの作品よりも強く保護されます。

要素3:利用された部分の量と実質性(The Amount and Substantiality of the Portion Used)

3番目の要素では、元の著作物のうち、どれだけの量が、そしてどの程度重要な部分が利用されたかが問われます。

原則として、利用する量が少なければフェアユースは認められやすくなります。しかし、ミームの場合、画像全体を利用することが多いです。ただし、裁判所は、利用の目的(要素1)を達成するために必要な量であったかどうかも考慮します。パロディやミームにおいては、元の作品が何であるかを認識させるために、全体または核心部分を利用することが不可欠な場合があります。そのため、画像全体を利用していたとしても、それが変容的な目的のために必要であれば、フェアユースが否定されるとは限りません。

要素4:潜在的市場または価値への影響(The Effect of the Use upon the Potential Market for or Value of the Copyrighted Work)

4番目の要素は、その利用が、元の著作物の現在の市場、あるいは将来的に想定される市場(ライセンス市場など)において、売上や価値にどのような影響を与えるかが問われます。

もし、その利用が元の著作物の代替品となり、権利者の収益機会を奪うようであれば、フェアユースは否定されます。しかし、多くのミームは低解像度であり、元の作品とは異なる文脈で消費されるため、市場で競合することは少ないと考えられます。むしろ、ミーム化によって元の作品への注目が高まり、価値が上がるケースすらあります。変容的利用の度合いが高ければ高いほど、市場への悪影響は少ないと評価されます。

フェアユースの境界線:判例と事例から学ぶ

フェアユースの概念は抽象的であるため、具体的な事例や判例を見ることで、その適用範囲と限界がより明確になります。

変容的利用の解釈:ウォーホル判決(2023年)の影響

フェアユースの解釈において、近年最も注目されたのが、2023年の米国最高裁判所の判決です。これは、アンディ・ウォーホルが写真家リン・ゴールドスミスの撮影したミュージシャン「プリンス」の写真を基に制作した作品に関する訴訟でした。最高裁は、ウォーホルの利用はフェアユースにあたらないとの判断を下しました。[5]

最高裁が重視したのは、第1要素である「利用の目的と性格」でした。ウォーホルの作品は、ゴールドスミスの写真と同様に「雑誌にプリンスの肖像を掲載する」という商業目的で利用されており、市場で競合していました。ウォーホルの作品は独自のスタイルが付加されてはいるものの、元の写真と比較して、新しい意味やメッセージを伝える「変容性」が十分ではなく、商業的な目的が優先されていると判断されたのです。

この判決は、単に芸術的な加工を施すだけでは「変容的利用」とは認められず、利用の「目的」が重要であることを再確認させました。これはミーム文化にも影響を与える可能性があります。ミームが単なる画像の加工に留まり、新しい批評的・風刺的なメッセージを伴わない場合や、特に商業的な文脈で利用される場合には、フェアユースの適用がより厳格に判断されるようになるかもしれません。

商業利用とミームの紛争事例

ミームが商業的に利用された場合、フェアユースの主張は難しくなり、紛争に発展するケースが多く見られます。

例えば、「Grumpy Cat(不機嫌な猫)」として世界的に有名になった猫の権利管理会社は、ライセンス契約を結んだ飲料会社が、契約範囲を超えてキャラクターを使用したとして訴訟を起こしました。2018年、裁判所は著作権侵害および商標権侵害を認め、約71万ドルの損害賠償を命じました。[6]

また、人気ミームである「Nyan Cat」や「Keyboard Cat」の作者たちは、これらのキャラクターがビデオゲーム『Scribblenauts』で無断使用されたとして、ゲーム開発会社を訴えました。ゲーム内での利用は明らかに商業目的であり、最終的にはライセンス契約を結ぶ形で和解しました。[7]

これらの事例は、ミームであっても、商業的な利用においては権利者の許諾が必要であることを明確に示しています。

知財コントロールの成功例:「Disaster Girl」のNFT化

一方で、ミームの人気を積極的に活用し、知財を収益化した事例もあります。「Disaster Girl(災害少女)」として知られるゾーイ・ロス氏は、子供の頃に父親が撮影した写真が世界中でミームとして拡散しました。

彼女は2021年、このミームのオリジナル画像をNFTとしてオークションに出品し、結果として約50万ドル相当で落札されました。[8] 彼女たちは著作権を保持したままNFTを販売しており、これはミームという現象を受け入れつつも、自身の知的財産権を戦略的にコントロールし、収益化に成功した画期的な事例と言えます。

日本におけるミームと著作権の考え方

ここまで米国のフェアユースを中心に解説してきましたが、日本の著作権法では状況が大きく異なります。日本には、米国のような包括的で柔軟なフェアユース規定は存在しません。

日本の著作権法では、著作権者の許諾なく著作物を利用できる場合(権利制限規定)が、法律上で厳格に限定列挙されています。[9]

「引用」(第32条)の厳しい要件

ミームの利用に関連する可能性のある規定としては、主に「引用」が挙げられます。しかし、引用として認められるためには、厳格な要件を満たす必要があります。[10]

  • 主従関係: 自分の著作物が「主」であり、引用部分が「従」であること。
  • 明瞭区別性: 引用部分が明確に区別されていること。
  • 必然性: 引用する必然性があること。
  • 出所の明示: 引用した著作物の出所を明記すること。

ミームの場合、画像そのものがメインコンテンツであることが多く、テキストが少し添えられているだけでは、画像が「主」となってしまい、「主従関係」の要件を満たすのは難しいと考えられます。したがって、多くのミームは日本の法的な意味での「引用」には該当しない可能性が高いです。

日本での現状:「黙認」という不安定なバランス

このように、日本の現行法では、多くのミームは厳密には著作権侵害にあたる可能性が高いと言わざるを得ません。

現状、日本国内でミームが広く流通しているのは、法的に認められているからではなく、多くの場合、権利者が権利行使を「黙認」しているからです。権利者にとって、個人の非商業的なミーム利用を一つ一つ訴えることはコストに見合わず、また、ミーム化によって作品の知名度が上がるというメリットも考慮されている可能性があります。

しかし、これは非常に不安定なバランスの上に成り立っています。もし権利者が方針転換した場合、いつでも著作権侵害として訴えられるリスクがあるのです。特に日本企業がマーケティング目的で安易にミームを利用することは、法的に非常に危険な行為と言わざるを得ません。

まとめ:ネット文化の発展と知財保護のバランス

インターネットミームは、既存のコンテンツを素材としながら新しい価値を生み出す、現代社会における創造的な文化現象です。

米国におけるフェアユースの法理は、こうした変容的な創造活動を保護し、表現の自由と著作権者の権利のバランスを取るための重要なメカニズムとして機能しています。4つの要素、特に「変容的利用」であるかどうかが、ミームが保護されるかどうかの分かれ目となります。しかし、近年のウォーホル判決が示すように、その解釈は常に流動的であり、特に商業利用においては厳格な判断が下されます。

一方、フェアユース規定を持たない日本では、ミームの法的地位は依然として曖昧であり、権利者の黙認に依存している状況が続いています。

ミームという文化を楽しみ、発展させていくためには、私たち一人ひとりが知的財産権への理解を深め、元の作品のクリエイターに対するリスペクトを持つことが不可欠です。ネット文化と知的財産権が健全に共存する道を探求し続けることが、私たちに求められています。

(この記事はAIを用いて作成しています。)


参考文献リスト

[1] リチャード・ドーキンス(著)、日高敏隆ほか(訳)(2018).『利己的な遺伝子 40周年記念版』. 紀伊國屋書店. [2] e-Gov法令検索. 著作権法(昭和四十五年法律第四十八号). https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=345AC0000000048 [3] U.S. Copyright Office. U.S. Copyright Law, Section 107: Limitations on exclusive rights: Fair use. https://www.copyright.gov/title17/92chap1.html#107 [4] U.S. Copyright Office. More Information on Fair Use. https://www.copyright.gov/fair-use/more-info.html [5] Supreme Court of the United States. (2023). ANDY WARHOL FOUNDATION FOR THE VISUAL ARTS, INC. v. GOLDSMITH ET AL. https://www.supremecourt.gov/opinions/22pdf/21-869_87ad.pdf [6] Reuters. (2018). ‘Grumpy Cat’ wins $710,000 payout in copyright lawsuit. https://www.reuters.com/article/idUSKBN1FD253/ [7] Open Legal Community. (2024). ミームと著作権問題の理解. https://openlegalcommunity.com/understanding-memes-and-copyright-issues/ [8] The New York Times. (2021). The World Knows Her as ‘Disaster Girl.’ She Just Made $500,000 Off the Meme. https://www.nytimes.com/2021/04/29/arts/disaster-girl-meme-nft.html [9] 文化庁. 著作権の制限(許諾を得ずに利用できる場合). https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/gaiyo/chosakubutsu_jiyu.html [10] 公益社団法人著作権情報センター(CRIC). 著作物が自由に使える場合. https://www.cric.or.jp/qa/hajime/hajime7.html


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