YouTube時代の著作権:その「要約」「朗読」は適法か? 翻案権・公衆送信権の法的境界線を徹底解剖

株式会社IPリッチのライセンス担当です。

YouTubeやブログ、SNSの爆発的な普及に伴い、「本の要約」チャンネル、映画のあらすじを紹介する「ファスト映画」、名作を読み聞かせる「朗読」配信など、既存の著作物を活用したコンテンツが急増しています。これら発信者の多くは、「作品のファンを増やすためのプロモーションだ」「批評や研究の一環である」という善意に基づいているかもしれません。しかし、権利者である作家や出版社、映画会社の視点からは、その行為が作品の市場価値を毀損し、本来得られるはずだった収益を奪う「著作権侵害」と映るケースが少なくありません。

本記事は、このデリケートな問題について、知的財産権のプロフェッショナルの観点から、単なる「気をつけましょう」という表面的な注意喚起にとどまらない、一歩踏み込んだ法的分析を提供することを目的とします。コンテンツクリエイター、企業のマーケティング担当者、そして自らの権利を守りたい著作権者、その両方の立場にとって有益な、実践的かつ詳細な法的境界線の解体新書です。

具体的には、以下の3つの主要な法的論点を中心に、著作権侵害のボーダーラインを徹底的に解剖します。

  1. 「要約」と翻案権(著作権法第27条): なぜ「あらすじ」が原作の「改変」にあたるのか。
  2. 「朗読」と複数の権利: 配信行為が「口述権(第24条)」「複製権(第21条)」「公衆送信権(第23条)」を同時に侵害し得るメカニズム。
  3. 「レビュー」と引用(第32条): 適法な「引用」と見なされるための、極めて厳格な法的要件。

本稿が、法を遵守した健全なクリエイティブエコシステムの構築と、皆様の知財戦略の一助となれば幸いです。

目次

なぜ今「要約」「朗読」コンテンツが著作権侵害として問題化しているのか

プラットフォームの隆盛とコンテンツ消費の変容

著作権侵害は、インターネットの黎明期から存在していました。しかし、かつてのファイル共有ソフトなどによる侵害が、コンテンツへの「違法なアクセス」を主目的としていたのに対し、現代のYouTubeやブログにおける侵害は、その様相が異なります。

最大の違いは、侵害行為そのものが「コンテンツ」としてパッケージ化され、広告収益や会員登録を通じて「マネタイズ」されている点です。動画編集ソフトや配信プラットフォームの進化は、コンテンツ制作の民主化をもたらしましたが、同時に、著作権侵害のツールをも民主化してしまいました。

結果として、法律的な知識が十分でないクリエイターが、他者の著作物を再編集して「新しい(しかし違法な)作品」を作り上げ、それを公開・収益化する事例が後を絶ちません。彼らにとっては「レビュー」や「紹介」のつもりでも、法的には作品の「代替」となってしまっているのです。

顕在化する経済的被害:CODA最新レポートが示す海賊版被害の実態

こうした状況を、権利者側が座視しているわけではありません。問題が深刻化している最大の理由は、その経済的被害が無視できないレベルを超え、産業の存続自体を脅かす規模にまで膨れ上がっているためです。

一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構(CODA)とPwCコンサルティング合同会社による調査報告書は、その深刻な実態を数値で示しています [9], [11], [12]。

2019年の時点で、オンラインで流通する日本コンテンツの海賊版被害推計額は、既に約3,333億円から4,300億円に達していました [9], [14]。この時点でも甚大な被害ですが、問題はその後、パンデミックによるデジタル消費の加速も相まって、被害が爆発的に増加したことです。

2022年に実施された最新の調査では、海賊版被害推計額は約1兆9,500億円から2兆2,020億円へと、わずか3年間で約5倍に急増しています [11], [12]。

この驚異的な被害額の増加こそが、出版社や映画会社が「黙認」から「厳格な法的措置」へと方針を転換した最大の動機です。特に被害が深刻なジャンルの内訳を見てみましょう。

表1:日本コンテンツのオンライン海賊版被害額の推移(2019年 vs 2022年)

(出典:CODA発表の2019年および2022年調査報告書 [9], [12], [14] に基づき作成)

ジャンル2019年被害推計額2022年被害推計額
映像約1,545億〜2,533億円約9,065億〜1兆4,297億円
出版約1,408億〜1,552億円約3,952億〜8,311億円
音楽約236億〜359億円約224億〜922億円
ゲーム0円(被害僅少と推計)約1,203億〜3,551億円
合計約3,333億〜4,300億円約1兆9,500億〜2兆2,020億円

2022年の被害額のうち、アニメや映画を含む「映像」分野だけで、最悪の場合1.4兆円を超える被害が推計されています [12]。この数値は、権利者側がもはや看過できない「産業の危機」であり、後述する「ファスト映画」に対する刑事・民事両面での厳格な対応の直接的な背景となっています。

【法的論点1】「本の要約」と著作権法第27条「翻案権」侵害の境界線

「翻案権」とは何か? なぜ「あらすじ」が原作の改変にあたるのか

コンテンツクリエイターが陥りやすい最大の誤解の一つが、「自分の言葉で書き直したのだから、コピー(複製)ではない」というものです。これは、著作権法における「翻案権」を見落としています。

著作権法第27条は、著作者がその著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有すると定めています。

「翻案」とは、既存の著作物に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表現することにより、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為、と解されています。

平易に言えば、原作の「骨格(ストーリー展開、アイデア、キャラクター設定など)」を利用して、別の「服(具体的な文章表現)」を着せる行為です。

本の「要約」は、まさにこの典型例です。原作の最も重要な創作的部分であるプロット、論理展開、結末といった「骨格」を抽出し、それを別の文章表現(要約文)に置き換えています。したがって、要約文は原作の「二次的著作物」にあたり、その創作行為は「翻案」に該当します。

よって、権利者の許諾なく詳細な要約を公開する行為は、著作権(翻案権)の侵害となる可能性が極めて高いのです。

事例研究「ファスト映画」判決が示した司法的判断

この「要約=翻案」という法的解釈を、社会的に最も明確に示したのが「ファスト映画」事件です。

ファスト映画とは、映画作品を権利者に無断で10分から15分程度に編集し、ナレーションや字幕を加えてあらすじを解説する動画のことです [2]。これらは「映画レビュー」や「紹介」と称してYouTubeなどに大量にアップロードされました。

権利者側は、これが視聴者の「鑑賞」を代替してしまい、正規の視聴機会を奪うものだとして、刑事告訴および民事訴訟に踏み切りました。その結果、2023年8月には、東京地方裁判所がアップローダーの1人に対し、著作権侵害による損害賠償として5億円の支払いを命じる判決を下しています [1], [3]。

法的には、ファスト映画の制作行為は、原作映画の「翻案権」侵害(元の映像を編集・改変し、新たな「要約動画」という二次的著作物を作出する行為)にあたります。そして、それをYouTubeにアップロードする行為は、「公衆送信権」の侵害にもあたります。

この判決は、たとえ「レビュー」や「紹介」の体裁をとっていても、**原作の内容が詳細に理解できてしまうレベルの「要約」**は、法的に許容されない「翻案」であるという司法の厳しい判断を示したものです。

適法な「紹介」と違法な「要約」を分ける実践的基準

では、クリエイターはどこに一線を引けばよいのでしょうか。その基準は、文字数や割合といった形式的なものではなく、**「機能」**で判断されます。

  • 違法な「要約」(翻案):そのコンテンツに接するだけで、**「原作を読まなくても(観なくても)作品の全体像や結末が理解できてしまう」**もの。これは、原作の市場と競合し、鑑賞機会を奪う「代替物」として機能しているため、翻案権の侵害となります。
  • 適法な「紹介」(批評・レビュー):そのコンテンツに接した結果、**「読者(視聴者)が原作を購入・閲読しなければ全体像がつかめない」**レベルにとどまり、むしろ原作への興味を喚起するもの。これは「代替物」ではなく、作品の「誘導物」として機能しているため、適法なレビューの範囲内と認められやすいです。

この法的な線引きは、ビジネスの世界でも裏付けられています。例えば、書籍の要約サービスを提供している株式会社フライヤー(flier)は、そのビジネスモデルにおいて、出版社や著者から適法に「許諾(ライセンス)」を得てサービスを運営しています [5], [13]。もし詳細な要約が「レビュー」として許諾なく自由に行えるのであれば、彼らがライセンス契約を結ぶ必要はありません。彼らが適法に許諾を得ているという事実こそが、プロフェッショナルな「要約」が権利者の許諾を必要とする「翻案」であることを、市場原理の面からも証明しているのです。

【法的論点2】「朗読・読み聞かせ」配信が抵触する複数の著作権

オンライン配信で問われる3つの権利(著作権法第21条、23条、24条)

「要約」と並んで、特にリスクが高いのが「朗読」配信です。小説や詩、絵本などをそのまま読み上げる行為は、クリエイター本人に悪意がなくとも、著作権法上の複数の権利を同時に侵害する可能性をはらんでいます。

YouTubeなどで「朗読動画」を1本制作・公開する行為は、法的に分解すると、主に以下の3つの権利侵害を引き起こす可能性があります。

  1. 複製権(第21条)の侵害:著作者は、その著作物を複製する権利を専有します。「複製」とは、録音・録画その他の方法により有形的に再製することを指します。朗読をデジタルデータ(MP4やMP3ファイルなど)として録音・録画する行為は、それ自体が「複製」にあたります。
  2. 口述権(第24条)の侵害:著作者は、その言語の著作物を公に口述する権利を専有します。「口述」には朗読も含まれます。YouTubeやSNSでのライブ配信のように、不特定多数の視聴者に向けて読み聞かせる行為は「公に口述する」ことに該当します。
  3. 公衆送信権(第23条)の侵害:著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあっては、送信可能化を含む)を行う権利を専有します。録画した朗読動画をサーバーにアップロードする行為(送信可能化)、またはライブ配信する行為(公衆送信)は、この権利の侵害にあたります。

つまり、権利者の許諾なく書籍の朗読動画をアップロードする行為は、(1)録音という「複製」を行い、(2)それを「公衆送信」し、さらに(3)動画の内容自体が「口述」権の範疇である、という複合的な権利侵害を引き起こしているのです。

著作権法第38条第1項の例外規定:「非営利・無料・無報酬」の厳格な解釈

ここで、「収益化していなければ問題ないのではないか?」「非営利目的の読み聞かせは許されるはずだ」という反論がよく聞かれます。これは、著作権法第38条第1項の例外規定に関する重大な誤解に基づいています。

確かに、同条項は「営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金(いずれの名義をもつてするかを問わず、著作物の提供又は提示につき受ける対価をいう)を受けない場合には、公表された著作物を公に上演し、演奏し、上映し、又は口述することができる」と定めています。

しかし、この条文には決定的に重要な続きがあります。「ただし、当該上演、演奏、上映又は口述について、実演家又は口述を行う者に対し報酬が支払われる場合は、この限りでない」とされています。

この規定を厳格に解釈すると、以下のようになります。

  1. 対象は「対面」のみ: この例外規定が免除しているのは、あくまで「口述権」など、その場での実演に関する権利です。前述の「複製権(録音)」や「公衆送信権(アップロード)」は、この例外規定の対象外です。
  2. オンライン配信は対象外: したがって、たとえ非営利・無料であっても、朗読を「録音・録画」した時点、あるいは「ライブ配信(公衆送信)」した時点で、第38条第1項のセーフハーバー(免責領域)からは外れてしまいます。図書館での無料の読み聞かせ会(対面・録音なし)が適法なのは、この条文が適用されるからです。
  3. 「報酬」の広義の解釈: さらに、YouTubeの広告収益は、たとえそれが少額であっても、配信者(口述を行う者)に対して支払われる「報酬」と解釈される可能性が極めて高いです。その場合、「無報酬」の要件も満たさなくなります。

結論として、「非営利だから」「収益化していないから」という言い分は、オンラインでの朗読配信において、法的な免責事由にはなりません。

特に注意すべき漫画・イラストの「読み上げ」配信

小説などの言語の著作物の朗読でさえ上記のような複数のリスクを伴いますが、漫画やイラスト、絵本の「読み上げ」配信は、さらに深刻な法的リスクを負います。

なぜなら、漫画作品の「読み上げ」動画は、作者のセリフ(言語の著作物)を朗読するだけでなく、同時に**コマの画像(美術の著作物)**を動画内に映し出すことになるからです [10], [12]。

漫画のコマやイラストは、それ自体が独立した「美術の著作物」であり、極めて強い著作物性を持っています。「1コマだけだから」という弁解は通用しません [10], [12]。

したがって、漫画の読み上げ動画は、「言語の著作物」に対する口述権・複製権・公衆送信権の侵害に加えて、「美術の著作物」に対する複製権(スキャンや撮影)・公衆送信権(アップロード)の侵害という、二重の著作権侵害を引き起こすことになります。これは法的に非常に悪質な行為と評価されやすく、権利者側も特に厳しく監視している分野です。

【法的論点3】「書評・レビュー」における適法な「引用」の厳格な4要件

「引用」が複製権侵害の例外となるための法的要件

では、作品を紹介する「書評」や「レビュー」は、どのように行えばよいのでしょうか。著作権法は、一定の条件を満たす場合において、権利者の許諾なく著作物を利用できる例外規定を設けています。その代表格が、第32条の「引用」です。

ただし、一般のクリエイターが考える「引用」と、法的に認められる「引用」の間には、大きな隔たりがあります。適法な「引用」として認められるためには、判例上、以下の4つの要件をすべて厳格に満たす必要があります。

  1. 明瞭区別性:引用する部分(他者の著作物)と、それ以外の部分(自身のオリジナルな文章や意見)とが、カギ括弧や段落分け、引用タグ(blockquote)などによって、明確に区別されていること。
  2. 主従関係(付従性):自身の著作物(レビューや批評)が「主(メイン)」であり、引用する部分が、その主張を補強・説明するための「従(サブ)」であるという、質的・量的な主従関係が明確であること。
  3. 目的上正当な範囲(必要性):批評や研究といった引用の「目的」に照らして、引用する必要不可欠な箇所を、必要最小限の分量だけ利用していること。
  4. 出典の明示:引用した著作物の書名、著者名、出版社名など、その出所を明記すること。

これら4つの要件は、一つでも欠ければ適法な「引用」とは認められず、原則として複製権や公衆送信権の侵害となります。

書評動画・ブログで陥りがちな「引用」の失敗例

多くの「自称:書評」コンテンツが違法と判断される最大の理由は、上記の**「主従関係」**の要件を満たしていないためです。

例えば、以下のようなケースは「引用」とは認められません。

  • 動画やブログ記事の大半(例えば9割)が原作のあらすじの紹介や長文の抜粋で占められており、自身の感想や批評が「面白かった」「感動した」といった一言(1割)に過ぎない。

この場合、コンテンツの価値の源泉は、明らかにクリエイター自身の批評(主)ではなく、原作の抜粋や要約(従であるべきもの)にあります。主従関係が逆転しており、実質的には原作の無断利用(複製または翻案)に他なりません。

適法な「引用」とは、あくまで自身のオリジナルの批評・分析がコンテンツの核であり、その論証のために「ほら、原作のこの部分にこう書いてあるでしょう」と、必要最小限の証拠として原作を提示する行為を指します。

書影(表紙画像)のサムネイル利用と著作権法上のリスク

書評ブログや動画で日常的に行われている、本の表紙画像(書影)をサムネイルとして利用する行為にも、法的なリスクが潜んでいます。

本の表紙は、それ自体がデザイナーやイラストレーターによる「美術の著作物」です。これを無断でコピーして自身のブログや動画のサムネイルに設定する行為は、法的には「複製権」および「公衆送信権」の侵害にあたります [10]。

これが「引用」として認められるか(例えば、その表紙デザイン自体を批評する目的など)は議論の余地がありますが、単に読者の目を引くための「アイキャッチ」として利用する場合は、適法な引用の要件を満たさない可能性が高いです。

現状、多くの出版社がプロモーションになるとして黙認している側面はありますが、それは権利者が「権利を放棄した」わけではなく、「権利行使を(一時的に)留保している」に過ぎません。

最も安全な方法は、出版社が公式に提供している書影データを利用規約の範囲内で使用するか、あるいはAmazonなどのアフィリエイトリンクに付随する画像を規約に則って使用することです。

著作権侵害を回避し、適法にコンテンツを制作するための実践的戦略

最優先事項:権利者からの「許諾」取得

ここまで見てきたように、著作権法上の「翻案」や「引用」の境界線は、素人が判断するにはあまりに曖昧でリスクが高いものです。

したがって、法的に100%安全な方法で、作品の内容に踏み込んだ「要約」や「朗読」を行いたい場合、結論は一つしかありません。それは、事前に著作権者(著者、出版社、映画会社など)から「許諾(ライセンス)」を得ることです。

前述した書籍要約サービス「flier」が、ビジネスとして成立しているのは、まさにこの「許諾」という法的手続きを正しく踏んでいるからです [5], [13]。プロフェッショナルなコンテンツ配信を目指すのであれば、この「許諾」プロセスをビジネスの必須コストとして組み込む発想が不可欠です。

出版社の公式ガイドラインを遵守する

とはいえ、個人クリエイターが個別に許諾を得るのは現実的ではありません。そこで次善の策として重要になるのが、出版社や権利元が公式に発表している「著作物利用ガイドライン」を確認し、それを徹底して遵守することです。

近年、多くの出版社が、ファンによる二次創作や「ゲーム実況」などに関するガイドラインを公開しています。

  • 例1:集英社ゲームズ同社のガイドラインでは、YouTubeやTwitchなどが公式に提供する「パートナー機能」(広告収益化)を使用した収益化は例外的に認める一方で、それ以外の商用・営利目的の投稿は原則として禁止しています [6]。
  • 例2:KADOKAWA同社は、VTuber Fes Japanの二次創作ガイドラインにおいて、YouTubeなどでの二次的コンテンツ(ファン創作物)の公開を一定のルール下で認めています。しかし同時に、「『KADOKAWA CORPORATION』からの『著作権の申し立て』の表示が出る場合がある」と明記し、それは自動検知によるものであり「異議申し立て」をしないよう求めています [4]。

これらのガイドラインが示す重要な点は、これらが**著作権法上の「権利」をクリエイターに与えるものではなく、あくまで権利者の裁量による「条件付きの許諾(セーフハーバー)」**であるということです。

KADOKAWAの例が示すように、権利者は著作権の「申し立て」を行う権利を留保しており、ガイドラインは「このルールを守っている限りは、我々は今のところ法的措置をとりません」という意思表示に過ぎません。クリエイターは、このガイドラインという名の「 revocable license(取消可能な許諾)」の範囲内で、慎重に活動することが求められます。

パブリックドメインとCCライセンスの活用

著作権の許諾やガイドラインの複雑さを一切回避したいと考えるクリエイターにとって、最も安全な道は、**著作権が消滅した作品(パブリックドメイン)**を利用することです。著者の死後70年を経過した作品などがこれにあたります。

また、作者自身が「一定の条件(例:非営利、改変禁止、出所明示など)を守れば自由に使ってよい」と事前に許可を与えている**「クリエイティブ・コモンズ(CC)ライセンス」**が付与された作品を活用することも、有効な戦略です。

【プロの視点】デジタルコンテンツと著作権ビジネスの未来

議論の最前線:「デジタル消尽」は認められるか

本記事で扱ってきた「要約」や「朗読」配信の問題は、より大きな「デジタルコンテンツと所有権」という法的摩擦の表層に過ぎません。知的財産権のプロフェッショナルが今、最も注目している議論の一つに**「デジタル消尽」**の問題があります。

「消尽」理論(あるいは「ファーストセール・ドクトリン」)とは、著作物の「現物(例:紙の本)」が一度適法に譲渡されれば、その「現物」を転売(中古販売)する権利については、もはや著作権者の権利は及ばない(消尽する)、という法理です。私たちが中古書店で本を自由に売買できるのは、この理論のおかげです。

しかし、問題は「デジタルコンテンツ(電子書籍やダウンロード版の映画・ゲーム)」です。

欧州司法裁判所は、過去の判例(UsedSoft事件)で、ダウンロードされた「コンピュータプログラム(ソフトウェア)」については、ライセンスの再販売(中古販売)を限定的に認めました [4]。しかし、その後の判例(Tom Kabinet事件)では、「電子書籍」については、その性質がソフトウェアと異なることなどから、再販売(デジタル消尽)を否定しました [4]。

日本においても、デジタルコンテンツは「有体物(現物)」の譲渡ではなく、著作権者からの「利用許諾(ライセンス)」の付与に過ぎないと解されており、原則として消尽理論は適用されないと考えられています [4]。

この「デジタルコンテンツは『所有』できず、『ライセンス』されるだけ」という法的現実は、本記事のテーマと深く結びついています。「ファスト映画」や「朗読配信」を行うクリエイターの心理の根底には、「一度購入したコンテンツなのだから、それをどう料理(要約・朗読)しようと自由だ」という、物理的なモノに対する「所有権」に近い感覚があるのではないでしょうか。

しかし、法律は、デジタルコンテンツが物理的なモノとは根本的に異なり、その利用は著作権者が設定した「ライセンスの範囲内」に厳格に制限されるべきである、という方向性を明確にしています。「要約」や「朗読」は、そのライセンスの範囲を著しく逸脱した「再利用」であり、だからこそ権利侵害となるのです。今後、NFT(非代替性トークン)など新たなデジタル資産の形態が登場する中で、この「所有」と「ライセンス」の境界線をめぐる法的議論は、さらに激化していくことが予想されます。

締めくくり

本記事では、YouTubeやブログにおける「要約」「朗読」「レビュー」コンテンツが、なぜ今、著作権侵害として深刻に問題視されているのかを、法的論点と最新の経済的データを交えて詳細に解説しました。

CODAが示すように、海賊版による経済的被害は年間2兆円規模という、産業の存続を揺るがすレベルに達しています [11], [12]。「ファスト映画」への5億円という巨額の損害賠償判決は [1]、もはや権利者側が「黙認」するフェーズが完全に終了したことを示す象徴的な出来事です。

「プロモーションのつもりだった」という善意は、法的な免責事由にはなりません。コンテンツクリエイターが今後、持続的に活動していくためには、著作権法への深い理解と尊重が不可欠です。

適法な道は、(1)権利者から正式に許諾を得る、(2)出版社などの公式ガイドラインを厳守する、(3)「引用」の厳格な4要件(主従関係など)を徹底して満たす、(4)パブリックドメイン作品を利用する、のいずれかしかありません。本稿が、クリエイターと権利者の双方が共存共栄できる、健全なデジタルコンテンツ市場の発展に寄与できれば幸いです。

著作権の保護と活用が複雑化する現代において、自社の権利が侵害されているか、あるいは他者の権利を侵害していないかを監視・分析することは、企業にとって不可欠なリスク管理です。株式会社IPリッチでは、特許権のみならず、オンライン上の様々な知的財産権の侵害を検知・分析するための「特許侵害製品発見サービス」を提供しており、皆様の知的財産戦略を強力にサポートします。

(この記事はAIを用いて作成しています。)

参考文献一覧

一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構 (CODA), 「ファスト映画:所在不明のアップローダーに対し5億円の損害賠償を命じる判決」 (2023年8月24日), https://coda-cj.jp/news/1645/

著作権判例データベース (著作権情報センター), 「“ファスト映画”著作権侵害事件B」 (令和5年8月24日 東京地裁 令和4年(ワ)第12062号), https://jucc.sakura.ne.jp/precedent/precedent-2023-08-24.html

J-STAGE, 岡本 恵, 「デジタルコンテンツと消尽理論」 (知的財産法政策学研究 Vol. 5, 2014), https://www.jstage.jst.go.jp/article/jicp/5/1/5_69/_html/-char/ja

VTuber Fes Japan 2023 公式サイト (KADOKAWA CORPORATION), 「二次創作ガイドライン」, https://vtuberfesjapan.jp/audition/fanfic_guideline/

ニコニコチャンネル (メンタリストDaiGoの「心理分析してみた!」), 「本の要約は著作権侵害か?」 (2019年7月11日), https://ch.nicovideo.jp/mentalist/blomaga/ar1771045

株式会社集英社ゲームズ, 「著作物利用ガイドライン」, https://shueisha-games.com/guideline/posting_guidelines/

一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構 (CODA), 「2022年・オンラインで流通する日本コンテンツの海賊版被害額を推計」 (PDF, 2023年4月21日), https://coda-cj.jp/wp/wp-content/uploads/2023/04/coda_newsrelease_20230421.pdf

一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構 (CODA), 「2022年・オンラインで流通する日本コンテンツの海賊版被害額を推計」 (ニュースリリース, 2023年4月21日), https://coda-cj.jp/news/1472/

一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構 (CODA), 「2019年・オンラインで流通する日本コンテンツの海賊版被害額を推計」 (ニュースリリース, 2020年12月16日), https://coda-cj.jp/news/454/

株式会社IPリッチ, 「要約・読み上げ・紹介:著作権侵害のボーダーライン」 (2025年7月6日更新), https://patent-revenue.iprich.jp/%e4%b8%80%e8%88%ac%e5%90%91%e3%81%91/1608/ (※本記事の再編集元であり、参考文献としては使用していませんが、関連情報として記載)

e-Gov法令検索, 「著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)」, https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=345AC0000000048

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次