投資家目線の特許戦略: スタートアップが評価される理由

株式会社IPリッチのライセンス担当です。
本記事では、スタートアップが投資家からどのように評価されるかという視点で、特許を核とした知財戦略の重要性を解説します。特許が企業価値を押し上げ、資金調達や事業拡大を後押しするメカニズムを、知財の収益化という切り口も交えながら丁寧に紐解いていきます。
特許がスタートアップの企業価値を左右する理由
デジタル経済が進展する現代では、企業価値の大半を無形資産が占めると指摘されています[1]。その中心に位置するのが特許権です。特許は単なる技術の権利保護にとどまらず、スタートアップの将来収益を示す「価値の証拠」です。創業初期に特許を取得したスタートアップは、取得していない企業に比べ資金調達成功率が約十倍に上るという欧州特許庁とEU知財庁の共同研究もあります[2]。
投資家はこうした統計を熟知し、特許の有無を企業価値評価(バリュエーション)に反映させます。特に医薬品や半導体など知財依存度の高い産業では、基本特許を押さえることで市場参入障壁を高め、単価を維持しやすくなります。無形資産がもたらす高収益モデルを投資家が期待できるかどうかは、特許ポートフォリオの質にかかっていると言っても過言ではありません。
近年はソフトウェア関連発明やAIモデルに対する知財保護のニーズも急速に高まっています。機械学習アルゴリズムの独自性をクレームに落とし込み、データセットの生成プロセスを秘密情報として保持する戦術を採る企業も増えました。こうした複合的な知財保護は事業の持続的優位性を担保し、投資家の長期的なリターン予測をポジティブにします[11]。
投資家が重視する特許戦略と評価ポイント
投資家はスタートアップの特許戦略を主に三つの観点で評価します。第一に、権利の確からしさです。発明者からの譲渡契約や共同研究先との取り決めが適切に整備され、出願・登録が一貫して自社名義になっているかを厳格に確認します[3]。学術機関の研究成果を基に起業したケースでは、大学の職務発明規程との整合性も重要視されます。
第二に、事業との整合性です。大量の周辺特許を保有していても、マネタイズ戦略とリンクしていなければ高評価は得られません。投資家は「技術トレンド」「市場規模」「競合動向」を踏まえ、コア技術に直結する特許を中心に厚い層を構築できているかを精査します[4]。例えばバイオ医薬品であれば、製剤特許・製造プロセス特許・用途特許を組み合わせて多層防御を形成できているかがポイントです。
第三に、知財ガバナンス体制です。発明の記録方法、秘密情報管理、競合権利のクリアランス調査を含め、知財紛争リスクを未然に防ぐ社内ルールが機能しているかを確認します[5]。知財管理ツールの導入状況や、外部特許事務所との連携体制、経営層が知財戦略をKPI化して追跡しているかなど、運用の実効性まで細かく見るのが近年の潮流です。
これら三点を満たすスタートアップは「失敗しにくい企業」と見なされ、より高いバリュエーションでの投資を呼び込みます。逆に、基礎特許を取り逃している、あるいは特許管理体制が脆弱と判断された場合、投資家は大幅なディスカウントや出資見送りを決断することが珍しくありません。
「現在侵害されている特許」が高く評価されるワケ
投資家の世界には「最も価値が高いのは、現在進行形で他社に侵害されている特許」という格言があります。侵害発生は、その技術に市場需要があることを示唆する強力なシグナルだからです。スマートフォン設計特許を巡る係争で巨額賠償が認められた事例は記憶に新しく、特許を保有していた企業の株価は訴訟報道を機に大幅に上昇しました[6]。
スタートアップの場合でも、侵害が確認されれば投資家は期待キャッシュフローを試算します。ライセンス料の獲得、和解金、判決による損害賠償—いずれも企業価値の上振れ要因となります。実際、米国では特許侵害訴訟の平均和解額が年々増加しており[7]、投資家は訴訟ファイナンスの仕組みを活用しながらハイリスク・ハイリターンの案件に資金を投じています。
もちろん訴訟はコストも時間もかかりますが、投資家が資金面・法務面で支援することで、スタートアップ単独では難しい権利行使を現実的な選択肢へ変えられます。侵害が大手企業によるものであれば、市場規模の大きさとライセンス収入の継続性が見込めるため、特許の評価額は跳ね上がります。侵害調査レポートやエビデンスパッケージを準備しておくことで、投資家に具体的なリターンシナリオを示すことができ、資金調達の成功確率も高まります。
知財ポートフォリオ構築と収益化で価値を最大化
特許を中心とする知財ポートフォリオは「守り」と「攻め」を両立させることで真価を発揮します。守りは競合による模倣排除、攻めは知財の収益化です[8]。自社事業と直結しない周辺特許でも、大企業が喉から手が出るほど欲しがる技術要素であればライセンス収入を生む立派な資産です。
資金調達後に事業ピボットを行った場合、当初の研究開発で取得した特許群が新規事業と整合しないこともあり得ます。その際、特許売却によるキャッシュインはスタートアップの資金繰りを支え、投資家の資金回収期間短縮にも寄与します[9]。さらに、クロスライセンスを活用して製造コスト削減や市場アクセス拡大を図る事例も増えています。知財の活用によって経営効率を高めるアプローチは、投資家が重視する「キャッシュフロー最適化」の観点からも高評価を受けます。
加えて、データやソフトウェアコードのライセンス体系を特許と連動させることで、SaaS型収益モデルを強化する戦略も注目されています。技術標準化団体やオープンソースコミュニティとの協調を図りつつ、コア特許を活かした差別化を維持する手法はクラウド・AI系スタートアップで採用が進んでいます[12]。
投資家とスタートアップが協働する知財ガバナンス
グローバル展開を志向するスタートアップは、創業初期から国際出願戦略を視野に入れるべきです。PCTルートを利用すれば出願費用の平準化ができ、各国の審査結果を踏まえ権利化する地域を絞り込むことで、限られた資金を効率的に配分できます[10]。これは投資家が重視する「キャピタルエフィシェンシー」に合致し、早期のマルチカントリーポートフォリオ形成を可能にします。
知財は社内だけで完結するテーマではありません。投資家・弁護士・特許事務所など外部ステークホルダーとの連携体制が、リスクマネジメントと資産価値最大化の鍵を握ります。四半期ごとに知財レビューを実施し、競合権利の動向と自社事業の方向性を照合しながら、出願中案件の優先度を見直したりクレーム補正を決断するなど、投資家と情報を共有しながら機動的にポートフォリオを更新する仕組みが望まれます。こうしたガバナンス体制は最終的に投資家の安心感につながり、追加出資や共同事業提携を呼び込む好循環を生み出します。
さらに、知財情報を明確かつ魅力的に開示することも重要です。発明の市場適用範囲、競合比較、将来的なライセンスプランなどを定量的に示す知財レポートは、投資家との対話を円滑にし、企業価値を正当に評価してもらうための武器となります。
投資家との対話で価値を伝える知財ストーリー
技術を語るだけでは、投資家は真の価値を理解しきれません。特許の範囲、優位性、行使シナリオ、そして収益化ロードマップを盛り込んだ知財ストーリーを示すことが不可欠です。たとえば、同じディープテック企業でも「取得済み特許数が50件で、うち15件が競合に侵害されている可能性が高く、今後3年間で5億円のライセンス収入が見込める」と具体的に説明できる企業と、ただ「技術に強みがある」とだけ語る企業では評価差は歴然です。
知財ストーリーの作成では、市場規模をエビデンスで裏付けることが重要です。ターゲット市場の年間成長率、競合企業の特許出願動向、技術標準化のタイムラインなど、外部データを交えながら特許の独自性と将来キャッシュフローを説得的に描き出しましょう。投資家はリスクとリターンのバランスをシビアに見極めるため、ロジックの一貫性と数値根拠が不可欠です。
こうした知財ストーリーを武器にピッチを行えば、投資家は知財を含めた事業全体の価値を立体的に理解しやすくなります。結果として、資金調達ラウンドでの交渉力が高まり、より好条件での出資や提携を取り付けられる可能性が高まるでしょう。
まとめ―特許を活かし投資家の支持を得る
スタートアップにとって特許は、技術を守る盾であると同時に、投資家を動かす剣でもあります。権利の確からしさ、事業との整合性、侵害の有無、収益化の見通し――これらを総合的に設計・運用できる企業こそ、資金調達と市場拡大の両面で飛躍するチャンスを掴めます。現在侵害されている特許を擁する場合は、その潜在価値を客観的に試算し、交渉・訴訟に備えた体制を早急に整えましょう。
もし貴社が眠れる特許をお持ちであれば、今こそ知財の収益化に舵を切る時です。特許売買・ライセンスプラットフォーム「PatentRevenue」(https://patent-revenue.iprich.jp)では、特許を無料で登録し、国内外の潜在的ライセンシーや買い手企業とマッチングできます。特許を活かして新たな収益源を創出し、投資家の信頼を勝ち取る第一歩として、ぜひご活用ください。
(この記事はAIを用いて作成しています。)
参考文献
[1] 経済産業省『通商白書2022年版 第II部 第2章 第3節 無形資産と経済成長』https://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2022/2022honbun/i2230000.html
[2] European Patent Office & EUIPO “Deep Tech Start‑ups and Intellectual Property Study” (2023) https://www.epo.org/news-events/press-centre/press-release/2023/17-10-2023.html
[3] 特許庁 IP BASE『スタートアップと投資家のための知財デューデリジェンスガイド』https://ipbase.go.jp/learn/content/guidance/01/
[4] OECD『Intellectual Property and Innovation in the Digital Economy』(2021) https://www.oecd.org/sti/ieconomy/ip-innovation-digital-economy.htm
[5] WIPO『Intellectual Property Management Guidelines for Startups』(2020) https://www.wipo.int/startups/en/
[6] U.S. District Court, Northern District of California “Apple Inc. v. Samsung Electronics Co., Ltd.” (2012) Judgment documents.
[7] PwC『2019 Patent Litigation Study』https://www.pwc.com/us/en/forensic-services/assets/2019-patent-litigation-study.pdf
[8] KPMG『Maximizing IP Portfolio Value through Monetization Strategies』(2022) https://advisory.kpmg.us/articles/2022/ip-monetization.html
[9] LES International『Licensing Executive Society Global Deals Review 2024』https://www.lesi.org/news/2024/ip-deals-review
[10] WIPO “Guide to Filing International Patent Applications under the PCT” (2023 edition) https://www.wipo.int/pct/en/texts/guide/
[11] Harvard Business Review『The Rise of Intangible Assets in the Knowledge Economy』(2022) https://hbr.org/2022/04/the-rise-of-intangible-assets
[12] Nature Machine Intelligence『Patenting AI: Trends, Challenges and Opportunities』(2024) https://www.nature.com/articles/s42256-024-00741-0

