競合へ事業譲渡する際の知財リスク対策:秘密情報開示の是非

株式会社IPリッチのライセンス担当です。
本記事では、競合企業への事業譲渡に際して自社の秘密情報をどこまで開示すべきか、そしてそれに伴う知的財産(知財)リスクへの対策について解説します。事業売却やM&Aを検討する経営者に向けて、秘密情報漏洩によるリスクと予防策、法的保護策、さらに知財を収益化する観点からの戦略まで、平易な言葉で包括的に説明します。

目次

競合への事業譲渡における秘密情報と知財リスク

競合企業との事業譲渡交渉では、相手に自社の秘密情報を提示する場面が避けられません。そのため、自社の営業秘密が一度相手に渡れば戻らないというリスクを十分に認識する必要があります【1】。実際、デュー・デリジェンス(DD:資産やリスクの精査)の過程では、売手企業は財務情報や技術情報、顧客リストといった機密情報を買手企業に開示せざるを得ません【2】。特に譲渡先が競合企業の場合、自社の秘密情報が相手の手に渡ること自体が大きなリスクとなります。交渉が不成立に終わった場合でも、いったん開示された営業秘密(社内ノウハウや設計情報など)は相手から回収することができず、競合に渡った情報は取り返しがつかなくなる恐れがあります【1】。秘密情報が漏洩すれば、自社の競争優位が失われ、知財価値や市場での立場に重大な損害が生じかねません。

したがって、競合相手への事業譲渡では開示する情報の範囲に細心の注意を払う必要があります。特許など公開済みの知財情報は既に公知のものですが、製造ノウハウや顧客情報など非公開の営業秘密は慎重に扱わなくてはなりません。特許庁の知財デューデリジェンス手引きによれば、DDの結果次第で取引が成立しない可能性もあるため、特に買手が潜在的な競合の場合には、自社の営業秘密を無制限に開示することは好ましくないとされています【3】。実際のM&Aの場面でも、秘密情報の開示範囲を段階的に制限し、初期段階では会社名を伏せたティーザー資料の提供や概要情報のみを共有し、詳細な情報は秘密保持契約(NDA)締結後に開示するなどの対応が取られます。また、重要な技術情報については、買手企業のスタッフではなく外部の専門家(弁護士・公認会計士等)の“クリーンチーム”に閲覧を限定し、買手には報告書のみを提供するケースも見られます【3】。こうした工夫により、競合企業に自社の核となる秘密が直接渡るリスクを低減できます。

秘密情報管理と知財リスク対策(NDAの活用)

競合への事業譲渡で秘密情報を開示する際には、秘密保持契約(NDA)を結ぶことが不可欠です。NDAは秘密情報の取り扱いについて法的拘束力を持たせる契約であり、情報提供側(売手)の秘密情報を受領側(買手)が第三者に漏洩せず、目的外に利用しない義務を課すものです【2】。契約書では「開示された秘密情報は本件取引の検討目的にのみ使用し、相手の事前承諾なく第三者に開示しない」旨を明記し、秘密情報の定義や例外事項も具体的に定めます。また、万一秘密情報が漏洩した場合の責任や損害賠償について取り決めておけば、違反への抑止力になるとともに、いざ漏洩事故が起きてもスムーズな対処が可能になります【2】。

しかし、NDAを結べば万全というわけではありません【4】。実際には、契約違反があっても相手が秘密情報を不正利用または漏洩した事実を立証するのは容易ではなく、訴訟による救済には高いハードルが伴います【4】。例えば、競合が自社内で秘密情報を参考に類似の技術開発を進めても、「独自に開発したものだ」と主張されれば違反を証明するのは難しい場面もあります。また、漏洩によって発生した損害額を立証することも困難です【4】。このため、事前の予防策が何より重要です。

まず、開示する情報は最小限に留め、取引の進捗に合わせて徐々に範囲を広げる「段階的開示」を徹底しましょう。機微な設計図や顧客リストなど核心情報は、基本合意締結後や最終段階まで共有を遅らせることも検討すべきです。また、データルームなどアクセス制限された環境で情報提供し、閲覧者を特定・記録することで情報流出時の追跡を容易にします。提供資料には「機密」ラベルを明示し、社内外の関係者にも秘密情報であることを認識させることが重要です。

さらに、買手企業との交渉では、必要に応じて競業避止や利用制限を強化する条項を盛り込むことも検討します。例えば「本取引が成立しなかった場合、受領情報を一切使用しない」旨の特約や、取引期間中および一定期間の競業禁止を求める取り決めなどです。ただし、競合が相手ではあまりに厳しい義務は交渉段階で敬遠される恐れもあるため、実効性と現実性のバランスに留意しましょう。

知財リスク対策としての法的保護策

事前対策と並行して、法的な知財保護策も講じておくことが重要です。日本の不正競争防止法では、企業の秘密情報が不正に持ち出された場合、差止めや損害賠償請求などの民事措置に加え、悪質なケースでは刑事罰(10年以下の懲役など)も科すことが可能です【1】。ただし、そのためには対象の情報が法律上の「営業秘密」として適切に管理されている必要があります【1】。営業秘密として法的保護を受けるための3要件は、①秘密として管理されていること(秘密管理性)、②事業に有用な情報であること(有用性)、③公然と知られていないこと(非公知性)です【6】。言い換えれば、単に「社外秘」とスタンプを押しただけでは不十分で、社内規程の整備や権限管理、技術情報へのアクセス制御などによって「実際に秘密として扱っている」ことを示す必要があります。

平時から自社の重要情報を営業秘密として厳格に管理しておけば、万が一漏洩してしまった場合でも、不正競争防止法に基づく差止めや損害賠償などの法的救済を受けやすくなります。経済産業省も「営業秘密管理指針」や「秘密情報の保護ハンドブック」などを公表しており、秘密情報の適切な管理方法や漏洩時の対応策について具体例を示しています。自社の秘密情報管理レベルを定期的に点検し、弱点があれば早めに補強しておくと良いでしょう。例えば、重要データへのアクセス権限を最小限に抑える、退職者や取引先とも秘密保持契約を交わす、持ち出しを技術的に制限する――といった多層的な防御策を講じておくことが肝要です。

また、譲渡交渉に入る前に知財権の手当も検討すべきです。もし開示予定の技術が特許出願可能であれば、交渉開始前に出願を済ませ権利化を図ることも一案です。特許出願によって発明内容が公開される代わりに一定期間独占権を得られるため(メリット)、企業ブランド向上などの効果も期待できますが、一方で公開によって技術内容が広く知られてしまう(デメリット)リスクもあります【7】。発明を秘密にしておく場合と比べ、特許として権利化しておけば、仮に競合にアイデアを知られても先に特許を取得される心配はありませんし、成立した特許は事業譲渡の取引対象として明確な価値を持つ資産となります。もっとも、特許化により自社の技術情報が公開されてしまう以上、特許にせず営業秘密のまま保持すべきかどうかは慎重に判断する必要があります(その技術が模倣されやすいか、公開しても優位性を保てるか等を検討)。いずれにせよ、譲渡対象となる知財の権利関係を整理し、必要な権利取得や契約上の手当を事前に済ませておくことが、リスク軽減と交渉力向上につながります。

知財の収益化を見据えた事業譲渡戦略

競合への事業譲渡に臨むにあたっては、自社の知財価値を最大限に引き出す視点も欠かせません。知的財産は企業にとって重要な無形資産であり、その適切な評価と活用次第で大きな収益源となり得ます。譲渡交渉では、自社の特許やブランド、ノウハウの価値が正当に評価されるよう努めましょう。必要に応じて知財評価の専門家に査定を依頼したり、競合だけでなく他社にも当該事業の売却打診を行うことで、市場原理による適正価格を追求することが考えられます。

また、事業譲渡のスキーム自体を工夫し、知財の収益化につなげる戦略もあります。たとえば、自社が有する特許や技術について、競合に対しては事業譲渡ではなくライセンス供与(使用許諾)する選択肢です。競合に自社事業を丸ごと売却すると、一度きりの売却益しか得られませんが、ライセンス契約であれば継続的なロイヤリティ収入を期待できます。もちろん、競合が自社事業を丸ごと買収したい場合や、ライセンスでは市場から排除できないと判断する場合もあるため、常に可能な手段ではありません。しかし、自社の保有する知財を分離して考えることで、「事業そのものの譲渡」と「知財の活用」を組み合わせた柔軟な交渉が可能になるケースもあります。

さらに、競合への譲渡を検討する一方で、自社の特許ポートフォリオを第三者に売却・活用する道を探ることも知財収益化の一環です。自社で十分に活用できていない特許や技術については、専門のプラットフォームを通じて売買やライセンス提供することで、新たな収益源を得られる可能性があります。例えば、特許の売買・ライセンスプラットフォーム「PatentRevenue」(URL: https://patent-revenue.iprich.jp)に特許を無料登録し、興味を持つ企業にアプローチすることも有効でしょう。実際に自社で事業化しない知財であっても、他社にとって価値ある技術であればライセンス料や売却益を得ることができます。事業譲渡の交渉と並行して、自社知財の他の収益化ルートを検討しておくことで、経営者としての選択肢と交渉上の余力が広がります。

知財リスク対策と収益化のまとめ

競合への事業譲渡は、自社の秘密情報や知的財産を相手に明かすリスクを伴う繊細なプロセスです。事前に秘密保持契約を締結し、開示情報を厳選・管理することで、不要な漏洩リスクを抑えることができます。また、万一に備えて自社の重要情報を法的に保護された営業秘密として管理し、知財権の整備を進めておくことが肝要です。こうした対策により、最悪の事態を避けつつ、自社知財の価値を守ることができます。

同時に、知財は守るだけでなく活かす視点も重要です。知財の価値を適切に評価し、交渉に反映させることで、事業譲渡においても有利な条件を引き出せます。さらに、譲渡に限らずライセンス供与や第三者への売却といった収益化の可能性を検討すれば、自社の知財ポートフォリオから生み出される利益を最大化できます。特許等の知財をお持ちで収益化をご希望の方は、ぜひ特許売買・ライセンスプラットフォーム「PatentRevenue」(https://patent-revenue.iprich.jp)に無料登録し、知財の新たな活用機会を模索してみてください。知財の収益化まで視野に入れた戦略的な事業譲渡によって、競合相手との交渉においても自社の価値を最大限に高めることができるでしょう。

(この記事はAIを用いて作成しています)


参考文献

  1. 経済産業省 知的財産政策室「秘密情報は大切な財産です~秘密情報の漏えい対策等について~」(令和5年度 技術流出・安全保障貿易管理説明会(初級編)資料)https://www.meti.go.jp/policy/anpo/seminer/shiryo/gijutyu_eigyou_2023.pdf
  2. 小西法律事務所「事業承継 ~秘密保持契約書(CA・NDA)について~」https://www.konishilaw.jp/column/4608/
  3. 特許庁「知的財産デュー・デリジェンス標準手順書 及び解説」(平成30年3月公表)https://www.jpo.go.jp/support/startup/document/index/2017_06_kaisetsu.pdf
  4. Stella Consulting, Inc. ブログ「秘密保持契約は本当に売り手を守るのか①」https://stella-consulting.jp/archives/1084
  5. 経済産業省「営業秘密~営業秘密を守り活用する~」https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/trade-secret.html
  6. 弁護士法人 咲くやこの花法律事務所「不正競争防止法の営業秘密とは?3つの要件と漏洩時の罰則を解説」https://kigyobengo.com/media/useful/1461.html
  7. DataClasysコラム「『特許』『営業秘密』による知的財産の保護について」https://www.dataclasys.com/column/intellectual_property_protection_20201228/
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次