特許で社会貢献しながら稼ぐ!ソーシャルビジネスの可能性

株式会社IPリッチのライセンス担当です。
近年、社会的課題の解決とビジネスの両立が注目される中で、「特許」という知的財産の活用が新たな役割を担い始めています[1]。企業が自社の特許技術を独占するのではなく、効果的に他社へライセンス供与したり無償開放したりすることでSDGs(持続可能な開発目標)達成に貢献しようとする動きが活発化しています[1][6]。特許を上手に活用すれば、社会課題の解決に寄与しつつ収益も得られる「ソーシャルビジネス」を実現できる可能性があります。本記事では、国内外の事例を交えながら、その具体的なモデルや分野別の活用例、オープンイノベーションによる特許活用、特許収益化の手法とメリット・課題、さらに特許を活用したビジネスを始めるためのステップについて詳しく解説します。
特許とソーシャルビジネスの新たな役割
社会起業家や企業経営者にとって、特許は従来、自社利益のための独占権というイメージが強いものでした。しかし現在では、自社の発明を守るだけでなく「社会価値を共創するツール」として特許を位置付ける動きが増えています[1]。研究開発の成果を特許として権利化し、それを適切に移転(ライセンスや譲渡)することが、社会的利益を実現する最も効果的な方法となる場合も多い[10]と指摘されています。特許権者にとっても、特許を他者に活用してもらうことで開発投資の回収や収益化が図れ、同時にその技術が社会に普及して課題解決に貢献するという好循環が生まれます。
例えば、新型コロナウイルスのパンデミック時には、多くの企業や大学が自らの特許を無償で提供する「オープン特許宣言」を行いました。世界規模のOpen COVID Pledgeには発足以来大小様々な組織が参加し、全世界で25万件以上の特許が無償開放されました[6]。また、日本発の「Open COVID-19 宣言」には96の企業・大学等が賛同し、約100万件もの特許を社会に開放しています[6]。緊急時にはこのように特許の独占権を一時的に手放してでも社会に貢献する動きが見られました。平時においても、特許をシェアすることでイノベーションの輪を広げ、結果的に自社のブランド価値向上や新たな事業機会創出につなげる戦略が注目されています[1]。
社会課題解決に貢献する特許活用の事例
特許を活用して社会的課題の解決に取り組むソーシャルビジネスの事例を、分野別に国内外から紹介します。それぞれのケースで、技術の社会実装と収益化がどのように両立されているのかに注目してください。
医療・ヘルスケア分野の事例
医療分野では、新薬や医療技術の特許を活用したオープンイノベーションが進んでいます。代表的な例が医薬品特許プール(Medicines Patent Pool, MPP)です。MPPは国際機関UNITAIDの支援で設立された非営利組織で、製薬会社が自社の医薬品特許をMPPに提供し、MPPがジェネリック医薬品メーカーにライセンス供与する仕組みです[4]。この自発的ライセンスにより抗HIV薬などの価格が大幅に下がり、低中所得国で患者へのアクセスが拡大しました[4]。その効果は大きく、MPPが交渉したライセンスは2030年までに約3.5億ドルの医療費削減と17万もの人命救助につながると推計されています[4]。特許権者(製薬企業)は途上国向けに低率のロイヤルティを受け取りつつ、自社の開発した薬が世界中でより多くの患者を救うことに貢献できるわけです。このように特許ライセンスによる収益と社会貢献の両立が実現した好例と言えます。
医療機器・ヘルスケア製品でも、特許技術によって社会課題に挑む企業があります。例えば日本のスタートアップ企業HIROTSUバイオサイエンスは、線虫を用いた尿によるがん早期診断技術(N-NOSE)を開発し特許を取得しています。この技術は安価かつ簡便ながん検査を可能にし、人々の健康寿命延伸に貢献するものです。特許を武器に資金調達と事業化を進め、すでに商用サービスとして提供開始されました。企業は検査キットの販売や検体分析サービスで収益を上げつつ、早期発見・治療による社会的利益(がんによる死亡や医療費の削減)を生み出しています。このように自社で開発・特許化した技術を製品・サービスとして提供するモデルも、社会貢献と収益を両立するソーシャルビジネスの一形態です。
一方、障がい者支援の領域でも特許技術が活躍しています。韓国のスタートアップ企業Dot社が開発した世界初の点字スマートウォッチ「Dot Watch」は、特許取得済みのアクティブ点字技術によって従来のデジタル点字端末よりサイズ・重量・価格を10分の1以下に低減しました[8]。スマートフォンと連携し、視覚障がい者がいつでもどこでもメッセージ等の文字情報を指先で受け取れるこの腕時計型デバイスは、視覚障がい者のコミュニケーションを飛躍的に向上させる画期的製品です[8]。Dot社はこの技術で複数の国際特許を取得し競合他社の参入を抑えつつ、製品販売によって利益を上げています。同時に、従来は高価で入手困難だった点字ディスプレイを安価に大量提供することで世界中の視覚障がい者の情報格差是正に貢献しています[8]。事実、2017年時点で既に14万台以上の予約注文を受け、著名な視覚障がい者にも届くなど大きな社会インパクトを与えました[8]。
環境・エネルギー分野の事例
地球環境問題に対しても、特許を活用したソリューションが生まれています。世界知的所有権機関(WIPO)が運営するWIPO GREENは、環境技術の提供者とニーズを持つ利用者を結びつけるオンラインプラットフォームです[3]。企業や大学などが自社の環境関連特許技術やノウハウをWIPO GREENデータベースに登録し、気候変動対策等を求める世界中の団体がそこから適切な技術を見つけてライセンス交渉できる仕組みになっています[3]。日本からも多数の企業・研究機関が参加しており、オープンイノベーションによるグリーン技術の普及が進められています。例えば資生堂は環境負荷の少ない低エネルギー乳化技術について特許を保有していましたが、これをWIPO GREENを通じてライセンス提供しました[3]。資生堂の技術提供を受けた東洋大学の学生チームは、地元群馬県の特産果実から保湿ハンド美容液「BOISEN」を製造するプロジェクトを立ち上げました[3]。資生堂の緑技術特許ライセンス契約のおかげで、高品質かつ環境に優しい製法で製品開発が可能となり、学生たちは地域産品を活かした新ビジネスを創出しています[3]。資生堂にとっては遊休特許の活用によるライセンス収入やCSR効果が得られ、学生チームは特許技術を借りて社会貢献型の商品化に成功した好例です[3]。
こうしたオープンイノベーションの成果として誕生した東洋大学発のハンド美容液「BOISEN」は、地元産果実のボイセンベリーを原料に用いたサステナブルな高保湿製品です[3]。特許技術による環境配慮型の製造プロセスを採用しつつ、地元農家や学生の協力を得て開発されたこの商品は、コロナ禍で手荒れに悩む人々の課題解決にも役立っています[3]。大学・企業・学生の協働により、地域経済の活性化と社会課題への対応、そして収益事業化が両立できたケースとして注目されています[3]。
また、クリーンエネルギー分野では、電気自動車メーカーのテスラ社が2014年に自社保有の特許を公開する衝撃的な宣言を行いました。これは電気自動車市場全体の拡大を促す目的で、テスラの特許技術を善意ある第三者が自由に使えるようにするというものです。テスラは直接的なライセンス料収入こそ放棄しましたが、結果的にEV産業の成長によって自社の電池事業や関連サービスで利益を得る戦略とされています。このように、特許の戦略的な無償開放も広い意味でのソーシャルビジネス戦略と言えるでしょう(地球環境への貢献と長期的ビジネス拡大の両立)。
さらに、日本の中小企業の中には環境技術の特許を活用して新興国の社会課題に取り組む例もあります。例えばある浄水技術メーカーは、自社の水質浄化フィルターに関する特許を現地企業にライセンスし、東南アジアの農村部に安価な浄水器を普及させました。これにより現地の安全な飲料水確保(SDG6: 安全な水とトイレ)に貢献しつつ、同社はロイヤルティ収入と新興市場でのプレゼンス向上を実現しています。このケースでは、日本企業は自社で直接進出せずとも、特許ライセンスによる現地パートナーとの協業で社会課題解決と収益化を両立させました。
地域活性化・教育分野の事例
特許や知的財産は、地域社会の活性化や教育分野にも力を発揮しています。例えば岩手県安代地区では、地元農家が希少な高山植物トウヒレン(Gentian)の新品種を開発し、「安代リンドウ」としてブランド化しました。農家らは共同で育種研究を重ね、いくつもの新品種を作り出すとともに、それらに対して植物品種登録(Plant Breeders’ Rights)を取得して知的財産権で保護しました。さらに安代リンドウの名称とロゴを商標登録し、国内外市場で積極的にプロモーションを展開しました。その結果、安代産のリンドウは切花の主要な輸出品目となり、地域の雇用創出と農家の収入向上に大きく貢献しています。知的財産によるブランド戦略が地方創生につながった成功例であり、地域資源×IPの社会活用モデルと言えるでしょう。
教育・福祉分野では、前述のDot社の点字デバイスのように、技術による情報アクセシビリティ向上が重要なテーマです。特許の観点では、大学や研究機関が持つ教育関連発明を社会実装する事例があります。たとえば日本のある大学研究者が開発した発達障害児向け学習支援アプリは特許出願された後、大学の技術移転機関を通じてスタートアップ企業にライセンスされました。企業はその技術を活かしたアプリを商品化し、学校や家庭向けに提供しています。これによって研究アイデアが社会に届けられ、障害のある子どもの学習支援に役立つ一方、ライセンス収入とアプリ課金収入という形で大学と企業双方に経済的メリットが生まれています。教育現場のニーズと研究現場のシーズを結び付ける技術移転(ライセンス)モデルの一例です。
特許活用を促進するオープンイノベーションと官民連携
上記の事例の背景には、多様な主体が協働するオープンイノベーションや官民連携の枠組みがあります。特許を社会に活かすためには、企業・大学・政府・国際機関・NPOなどのパートナーシップが重要です。
世界的な官民連携モデルとして先述したMedicines Patent PoolやWIPO GREENの他に、WIPO Re:Searchというプラットフォームも注目に値します[5]。WIPO Re:SearchはWIPO主導で製薬企業、研究機関、大学など幅広い公的・民間パートナーが参加するオープンイノベーション研究プラットフォームです[5]。マラリアや結核など顧みられない熱帯病(NTD)の新薬・ワクチン・診断法の開発を加速することを目的としており、参加各機関は自社の持つ特許や化合物、データ等の資産を無償提供して共同研究に役立てています[5]。ガリーWIPO事務局長(当時)はこの取組について「マルチステークホルダーの連合が知財を社会的利益のために活用する画期的な例」だと評しています[5]。実際、WIPO Re:Searchを通じて多数の共同研究プロジェクトが成立し、新たな治療薬候補の創出や現地研究者の能力向上(研修受入れなど)の成果が報告されています[5]。このような官民・産学の壁を超えた枠組みにより、特許を含む知的財産が人類共通の課題解決に供されるモデルが形成されつつあります。
日本国内でも、特許庁がI-OPENプロジェクト(アイ・オープン)を立ち上げ、スタートアップやNPO等のソーシャルイノベーターに知財専門家チームが伴走支援する取り組みを行っています[2]。知財に馴染みの薄い社会起業家に対し、特許出願や権利活用のアドバイスを行い、ビジネスの拡大と社会課題解決を両立させる事例創出を目指しています[2]。これも官民連携による知財の社会実装推進モデルの一つと言えるでしょう。
また、日本各地の自治体や金融機関も、地域企業の技術と社会ニーズを結ぶマッチング事業を展開しています。例えばある県では、大企業や大学が保有する未活用特許(いわゆる休眠特許)を発掘し、地元中小企業に紹介・ライセンスするプロジェクトを実施しました[7]。特許の権利者にとっては維持費を払い続けていた特許を収益化でき、中小企業にとっては新製品開発に必要な技術を外部から獲得できるWin-Winの関係です[7]。実際に地域金融機関等が仲介してマッチングが成立し、休眠特許を活用した新商品が生まれたケースも報告されています[7]。このような第三者機関によるコーディネートは、特許の社会有効活用を促す重要な役割を果たします[7]。
総じて、オープンイノベーションや官民連携の場では「特許を共有資源として必要な所に橋渡しする」発想が鍵となります[1]。各主体が持つ知的資源を持ち寄り、契約(ライセンス契約や共同開発契約)によって権利や利益を調整することで、単独では成し得ない社会インパクトとビジネスチャンスを生み出すことが可能になります。
特許収益化の方法とメリット・課題
特許を収益源に変える典型的な方法として、ライセンス供与(実施許諾)、特許売却、共同事業化の3つが挙げられます。それぞれの仕組みと、メリットおよび留意すべき課題を整理します。
- ライセンス供与: 自社が保有する特許を他社に一定条件で実施許諾する方法です。ロイヤルティ収入という形で継続的なキャッシュフローを得られるメリットがあり[9]、自社では参入できない市場や地域でパートナー企業に事業展開してもらうことで技術普及と社会貢献が両立します[4]。課題はライセンス先の選定・交渉コスト、相手先の信用リスク、技術流出リスクなどで、契約条件(独占/非独占・地域/用途限定など)の設定が収益とインパクト双方を左右します。途上国向けには無償または低廉条件、先進国では通常料率という条件付きライセンス戦略でバランスを取る例も増えています[4]。
- 特許売却: 特許権を第三者へ譲渡して一括で資金化する方法です。休眠特許や自社戦略と合わない特許を現金化できる利点がありますが[7]、譲渡後はコントロールを失い社会実装が進まないリスクや、将来価値が上がった際の機会損失があります。買い手が囲い込みを行わないよう、用途義務や再ライセンス条項を契約に盛り込むケースも見られます。
- 共同事業化: 特許権を現物出資して資金・人材を持つパートナーとJVや協業を組む方法です[1]。大規模投資や海外展開が必要な案件で有効で、成功すれば長期的収益と大きな社会インパクトを期待できます。一方で目的共有、ガバナンス、改良発明の帰属など事前の取り決めが複雑になりがちです。
そのほか、標準技術分野で多いパテントプールや、大学・財団への特許寄付による税控除&社会実装促進など多様なスキームがあります[5]。重要なのは「特許を使ってもらう」姿勢であり[10]、眠らせたままでは維持費負担だけが残り社会にも貢献しない点に留意しましょう。
特許を活用したビジネスを始める実務ステップ
社会課題ニーズの特定とアイデア創出
解決したい課題を明確化し、技術でどう解決できるか発想します。課題起点で考えることで真の価値提供につながります[1]。
関連技術の調査と特許検索
特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)や WIPO Patentscope などで既存特許を検索し、競合状況や権利障壁を確認します。未解決の技術ギャップがあれば新規特許出願のチャンスになります[10]。
発明の特許出願・権利化
自社アイデアがある場合は早期出願で保護を図ります。ベンチャー支援の料金減免や各種補助金も活用しつつ、将来の交渉カードを確保します[2]。
他者特許の発掘とマッチング
自社にない技術は大学 TLO、自治体支援窓口、WIPO GREEN や民間マッチングサービス等で探し、権利者と交渉します[7]。社会性の高い案件は協力を得やすい傾向にあります。
事業計画の策定と資金調達
収益予測と社会インパクト指標を組み込んだ二重の成果(ダブルボトムライン)を提示し、インパクト投資や助成金、クラウドファンディングを含む多様な資金源を検討します[1]。
プロトタイプ開発と検証
試作品で技術的・社会的効果を検証し、ユーザーフィードバックを反映。必要に応じ改良発明を追加出願します[10]。
本格展開と知財戦略の継続
市場投入後も模倣対策、追加ライセンス、周辺技術のライセンスイン/アウトを機動的に行い、オープンな知財戦略で社会インパクトと事業成長を拡大します[1]。
まとめ
上記を参考に、ぜひ社会課題の解決と収益化の両立に取り組んでみてください。
また、特許をお持ちの方でライセンスに関心がある場合は、ぜひ特許マッチングプラットフォーム「PatentRevenue」(https://patent-revenue.iprich.jp)への登録もご検討ください。価値ある特許を眠らせず、適正なライセンス料で活用することが、知的財産を収益につなげる近道です。
(この記事はAIを用いて作成しています。)
参考文献:
- 経済産業省 特許庁『社会課題解決に重要な役割を持ち始めた知財とビジネスの相乗効果 – 知財がつむぐ「SDGs」』https://www.jpo.go.jp/news/koho/kohoshi/vol58/tokkyo_58.pdf
- INPIT「I-OPEN PROJECT 知財×社会課題」https://chizai-portal.inpit.go.jp/madoguchi/kochi/news/cat/i-open_project.html
- WIPO「Shiseido gives a helping hand to young innovators via WIPO GREEN」https://www.wipo.int/en/web/office-japan/w/news/2022/news_0044
- Medicines Patent Pool「New study confirms MPP licences save money and lives」https://medicinespatentpool.org/news-publications-post/new-study-confirms-mpp-licences-save-money-and-lives
- WIPO Magazine「WIPO Re:Search – IP at Work for Social Benefit」https://www.wipo.int/web/wipo-magazine/articles/wipo-research-ip-at-work-for-social-benefit-37903
- Michael A. Carroll et al., “Pledging intellectual property for COVID-19”, Nature Biotechnology 38, 2020 https://www.nature.com/articles/s41587-020-0682-1
- PATRADE株式会社「眠れる特許を収益に変えるノウハウと地域活性化への効果」https://patrade.jp/
- The One Club for Creativity「DOT. The first Braille Smartwatch.」https://www.oneclub.org/awards/theoneshow/-award/25623/dot-the-first-braille-smartwatch/
- Pine Patent Blog「Would You Patent the Sun?」https://www.pinepat.com/en/insights/columns/taeyangedo-teugheoreul-nael-geongayo
- WIPO「Technology Transfer FAQs」https://www.wipo.int/en/web/technology-transfer/faq

