大学発特許のビジネス展開:ライセンスとスタートアップ支援の現状

株式会社IPリッチのライセンス担当です。
本稿では、大学発の特許技術を事業に活かすための方法と支援策について、最新の動向を紹介します。既存企業への特許ライセンス供与や大学発スタートアップ育成の現状と課題を、特許ライセンス戦略や官民のスタートアップ支援策、国内外の成功事例も交え、企業経営者や起業家など非専門家の方々にも理解いただけるよう幅広く解説します。
大学特許の現状とライセンス戦略
大学で生み出された研究成果は特許として知的財産化され、社会に役立てられることが期待されています。米国では1980年のバイ・ドール法(Bayh-Dole法)制定によって、大学などが政府資金で得られた発明の特許権を保有し、自ら企業へのライセンス活動を行う道が開かれました[1]。この法律をきっかけに米国の大学は技術移転オフィス(TTO)を整備し、研究成果の事業化を積極化します。その結果、米国の大学は2016年には全体で25億ドル以上もの特許実施料収入を得るまでになっています[2]。大学の研究が産業競争力強化や新興企業(スタートアップ)の創出に直結した成功例として知られています。
日本でも、米国にならい1990年代末から産学連携の制度整備が進みました。1998年には「大学等技術移転促進法」(TLO法)が制定され、大学が技術移転機関(TLO)を設立して特許の出願・ライセンス活動を行うことが促進されました。さらに1999年には産業活力再生特別措置法により、日本版バイ・ドール制度が導入され、国の委託研究の成果特許を大学や企業が保有できるよう制度改正されています[1]。こうした施策により、日本の大学でも発明の権利化と民間への活用が本格化しました。
大学特許を企業にライセンスする戦略は、既存企業の持つ開発力・市場展開力を活かせる点が利点です。大学側は特許をライセンス供与(実施許諾)することで対価を得て、得られた収入を研究費に再投資できます。例えば、日本の大学では東京大学が約4,200件と最多の特許を保有し[4]、京都大学や大阪大学など主要大学がそれに続きます。近年のデータでは、京都大学が年間約8億9千万円と大学別で最高額の特許実施料収入を上げており、東京大学も約5億5千万円を得ています[4]。このように大学が特許ライセンスで収入を得るケースも増えてきましたが、裏を返せばまだ多くの特許が十分に活用されていないことも示唆しています。
実際、日本では大学が保有する特許のうち実用化に結びついているものは一部に留まります。内閣府の知財委員会によれば、東京大学・京都大学でさえ保有特許の3割程度、その他の大学では2割前後しか活用できていないとの報告があります[3]。また大学の特許の約6割は企業との共同出願特許ですが、その場合、大学がスタートアップに特許をライセンスするには共同出願先企業の同意が必要となります[3]。このため企業から同意が得られずに大学発の技術を起業に活かせない例も指摘されています[3]。こうした課題に対応すべく、東京大学では共同研究契約のひな型に「企業が所定期間内に特許を実施しない場合、大学がスタートアップ等にライセンスできる」条項を設ける取り組みも進められています[3]。
大学発スタートアップの台頭と大学の支援
大学の特許や研究シーズを基に、自ら起業して事業化を図る「大学発スタートアップ」も重要な形態です。大学発スタートアップは、大学が持つ最新技術を核に革新的な製品やサービスを生み出す存在として注目されています。その最大の強みは、大学に蓄積された特許など研究成果を活用しやすい点にあるとされています[6]。研究者自らが起業したり、大学が起業家人材を支援することで、大学の技術を直接市場に届けることが可能になります。
日本では2000年代初頭に「大学発ベンチャー1000社計画」が掲げられ、大学からの起業が奨励されました。その後、一時停滞期もありましたが、近年再び大学発スタートアップの数は増加傾向にあります。経済産業省の調査によれば、2022年度時点で確認された大学発スタートアップは3,782社で、前年から約500社増加しました[5]。さらに2023年10月時点では4,288社と4,000社を初めて超え、過去最高を更新しています[5]。大学別の内訳では、東京大学発のスタートアップが420社と最多で、慶應義塾大学(291社)、京都大学(273社)、大阪大学(252社)、筑波大学(236社)と続いており、上位校には国立だけでなく私立大学も食い込んできています[5]。このように大学発の企業数は年々拡大しており、日本でも大学からイノベーションを起こす土壌が整いつつあります。
大学発スタートアップの中からは、着実に成果を上げている企業も現れています。経済産業省のデータでは、2021年度時点で全大学発スタートアップ約3,300社のうち約50社に1社は株式上場を果たし、1,000社に1社程度は企業価値1,000億円以上の「ユニコーン企業」に成長しています[6]。業種的にはバイオ・ヘルスケア分野が最も多く、次いでIT分野が多いという傾向も報告されています[6]。こうした成功例が出てきたことで、大学関係者や学生の間でも起業への関心が高まり、好循環が生まれつつあります。
大学もスタートアップ支援に本腰を入れています。多くの大学でインキュベーション施設や起業家育成プログラムが設けられ、技術系人材がビジネススキルを身につける支援が提供されています。また大学がベンチャーキャピタル(VC)を設立し、自ら大学発企業に出資して成長を後押しする動きも見られます[8]。例えば東京大学は産学協創プラットフォーム開発(東大IPC)という100%子会社を通じて大学発ベンチャーへの投資・支援を行っていますし、京都大学や東北大学なども独自のVCファンドを組成しています。こうした大学側のエコシステム構築努力も、スタートアップの成功確率を高める重要な要素です。
大学発スタートアップ支援:官民連携の施策
大学発特許を事業化するには、公的支援と民間資金の両面からのバックアップが欠かせません。政府も近年、スタートアップ支援を国家戦略の柱に据えており、特に大学発スタートアップの振興に力を入れています。2022年には政府が「スタートアップ育成5か年計画」を策定し、官民のスタートアップ投資額を現在の8,000億円から2027年度には10兆円規模に拡大する目標を掲げました[6]。この中で、大学発スタートアップはイノベーションの担い手として重視され、各研究大学で「1大学につき50社のスタートアップ創出とそのうち1社のエグジット(株式公開等)達成」を目指す運動を展開する方針が打ち出されています[6]。
政府の支援策も具体化しています。例えば、大学の研究成果の事業化を支援するため、2022年度第2次補正予算では約988億円が計上されました[6]。この資金は、大学の研究成果を基にしたスタートアップの創出や、大学間連携によるオープンイノベーション拠点整備などに充てられています。また、科学技術振興機構(JST)の「大学発新産業創出プログラム(START)」では、研究者と起業家人材をマッチングし、事業化に必要な資金・メンタリングを提供しています。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)も技術シーズの事業化支援やスタートアップ向け助成金(NEDOピッチなど)を通じて大学発技術の育成を行っています。
民間側でも、大企業や投資ファンドとの連携が進んでいます。大企業が大学と共同研究した成果をベンチャーとしてスピンアウトさせるケースや、企業が大学発スタートアップと資本業務提携して成長を支える例も増えています。官民連携による大規模なアクセラレータープログラムも各地で開催され、大学の研究者が起業ノウハウや経営支援を得られる環境が整いつつあります。国も地方自治体も、産学官連携のハブを形成し、大学発イノベーションが地域経済を牽引するモデルを推進しています。
大学発特許ビジネスの成功事例
実際に大学発の特許や技術がビジネスとして結実した事例も数多く存在します。ここでは、大学特許のライセンス活用や大学発スタートアップの成功例をいくつか紹介します。
- グーグル(Google):スタンフォード大学の大学院生だった創業者が開発したウェブ検索アルゴリズム「PageRank」は大学から特許が出願され、後にグーグル社がスタンフォード大学から独占ライセンスを受けました。大学は対価として受け取ったグーグル株180万株を売却し、2005年に約3億3600万ドル(約400億円)の収益を得ています[7]。これは大学が知財収入で巨額の利益を上げた代表例であり、大学発技術が世界的企業の礎となったケースです。
- ユーグレナ:東京大学発のバイオベンチャーで、微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)の大量培養技術を核に2005年に起業しました。学内の研究成果を活用して食品やバイオ燃料を開発し、2012年に東京大学発ベンチャーとして初めて東証一部(現プライム市場)に上場しました。現在ではヘルスケア製品やジェット燃料への応用も進めており、大学発スタートアップの成功例として知られます[6]。
- スパイバー(Spiber):慶應義塾大学発のスタートアップで、クモの糸の人工合成技術を開発しました。繊維や素材メーカーとの提携により、培養タンパク質素材の量産化を進めており、2021年には一度の資金調達額として国内最大となる約344億円を調達しました[8]。大学の基礎研究発のベンチャーが巨額の民間資金を引きつけた例として注目されました。
- サイバーダイン:筑波大学の研究成果から生まれたロボットベンチャーで、装着型ロボットスーツ「HAL」を開発しました。創業者の山海教授は自ら会社を立ち上げ、医療・介護分野で製品化を推進。大学の特許技術をもとに2004年に起業し、同社はその後株式上場も果たしています。研究室発のロボット技術が実用化・事業化された成功例です。
これらの事例からも分かるように、大学発の特許や技術は、適切な事業化支援や資金投入があれば、社会に大きな価値をもたらす製品・企業へと成長し得ます。大学と企業、投資家、政府の協力体制の下で、画期的なイノベーションが次々と生み出されているのです。
まとめ
大学発の特許をビジネス展開することは、大学にとっても企業にとっても、そして社会全体にとっても大きなメリットがあります。大学側は研究成果が社会に普及し、ライセンス収入が次の研究の原資となり、企業側は最新の技術を取り込むことで競争力を強化できます。また、新しい製品やサービスが創出されることで消費者や社会も恩恵を受けます。もっとも、大学の技術が事業化に至るまでには適切な橋渡しや支援が欠かせません。技術移転の専門家やエコシステムの存在が、今後ますます重要になるでしょう。
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(この記事はAIを用いて作成しています。)
参考文献
- 経済産業省「日本版バイ・ドール制度(産業技術力強化法第17条)」解説ページ – https://www.meti.go.jp/policy/economy/gijutsu_kakushin/innovation_policy/bayh_dole_act.html
- UNITT (大学技術移転協議会)「Bayh-Dole Act and Installation of Technology Transfer Office」 – https://unitt.jp/ja/tlo/bayhdole/
- 経団連タイムス「スタートアップ・大学を中心とする知財エコシステムの強化」(2023年1月12日号) – https://www.keidanren.or.jp/journal/times/2023/0112_05.html
- J-CAST会社ウォッチ「大学での研究成果はどれくらい『収入』に結びつくのか?特許件数、特許権収入、知的財産権収入が多い大学ランキング」(2023年5月7日) – https://www.j-cast.com/kaisha/2023/05/07459964.html
- 経済産業省「令和5年度大学発ベンチャー実態等調査」速報 (2024年5月) – https://www.meti.go.jp/press/2024/05/20240515001/20240515001.html
- 公明新聞「経済成長のカギ握る ‘大学発’スタートアップ」(2023年1月5日) – https://www.komei.or.jp/komeinews/p275036/
- Los Angeles Times “Stanford Reaps Windfall From Google Stock Sale” (Dec. 2, 2005) – https://www.latimes.com/archives/la-xpm-2005-dec-02-fi-calbriefs2.3-story.html
- TOMORUBA (eiicon)「大型資金調達に成功するなど、注目を集める大学発ベンチャー…」(2021年9月9日) – https://tomoruba.eiicon.net/articles/2969

