スタートアップが限られた資源で特許を守るには

株式会社IPリッチのライセンス担当です。

スタートアップが独自の技術やアイデアでビジネスを成長させる際、知的財産、とりわけ特許の戦略は重要です。しかし、限られた資源(人材・資金・時間)の中で、どのように知財を守ればよいのでしょうか。本記事では、スタートアップが直面する特許の課題を専門家向けに解説し、効果的な知財保護戦略のポイントを探っていきます。

目次

スタートアップと特許: 重要性と課題

スタートアップ企業は革新的な技術やビジネスモデルで市場に挑戦します。その新規性ゆえに、本来は特許制度と相性が良く、自社の技術を特許で保護すれば模倣品の出現を抑制し競争優位を築けます。また、特許はベンチャーキャピタルなど投資家からの評価にも直結します。特許権は単に独占権ではなく、「他社に真似されにくい」保証となり、事業が失敗しても特許という資産は売却・ライセンス可能なため、投資リスクの低減にも寄与します[3]。実際、「特許など知財に注力する企業ほどVCから資金調達できる可能性が高い」ことを示す調査もあります[3]。

それにも関わらず、日本のスタートアップは必ずしも知財戦略に注力できていないのが現状です。ある調査によれば、スタートアップの経営者自身が「知財戦略の重要性に気づいていない」「スタートアップに通じた知財の専門家に出会えない」「何をすればよいか分からない」と感じているケースが多い[5]。さらに、創業間もない企業では事業開発に経営資源の大半を投入せざるを得ず、特許取得や知財管理は後回しになりがちです[1]。実際に「製品・サービス開発やマーケティングに注力する中で、特許の話は一旦横に置かれる」という状況は珍しくありません[1]。このように、スタートアップにとって特許は重要でありながら、後述する様々な課題によって十分に活用されていないのです。

スタートアップと特許:直面する具体的な課題

では、スタートアップは具体的にどのような特許・知財上の課題を抱えているのでしょうか。主な課題を整理します。

  • 資金面の制約: 特許出願や維持にはまとまった費用がかかります。出願から権利化までに数十万円から数百万円の費用が発生し、海外出願や権利維持料まで含めると負担は更に大きくなります[4]。限られた予算の中、特許取得に投資することはスタートアップにとって悩ましい問題です。特に売上が立たない創業初期には、特許出願にかかる費用や出願準備に要する時間・労力もリターンの見えないコストだと捉えられがちです[1]。
  • 人材・知財知識の不足: スタートアップは少人数で始まることが多く、社内に法務や知財専任者を置く余裕がありません[1]。その結果、知的財産に関する対応が後手に回ったり、適切な助言を得られない状況が生じます。特に地方のスタートアップでは、ビジネス戦略と知財戦略の両面から支援できる専門家との出会いが少ないという指摘もあります[2]。経済産業省の調査でも、スタートアップが抱える経営資源の不足要因として「知財・法務人材の不足」が挙げられています[2]。
  • 時間と手続の問題: 特許出願から権利取得までには通常数年を要し、スタートアップの高速な事業展開スピードにそぐわない場合があります。事業のピボット(方向転換)が起これば、出願時に想定した発明の内容と現在の事業とがずれる恐れもあります。また、他社による特許侵害への対応(クリアランス調査や係争対応)にも時間と費用がかかり、創業期の企業には重荷です[1]。資金力の乏しいスタートアップが高額な特許訴訟に踏み切ることは現実的に難しく、特許を取得しても実際に権利行使(訴訟)まで行えるケースはほぼゼロとの指摘もあります[1]。
  • 知財戦略の優先度と情報不足: スタートアップにとって本業である事業成長が最優先となるため、知財戦略の検討が後回しになる傾向があります。特許で何を保護すべきか、どのタイミングで出願すべきかといった戦略策定は容易ではありません。不十分な知財戦略によって、資金調達やエグジット(売却・IPO)の機会を逃す可能性も指摘されています[5]。また、他社の特許情報の収集や分析に割けるリソースがなく、自社が知らぬ間に他社特許を侵害してしまうリスクもあります。

以上のような課題が複合的に絡み合い、スタートアップの知財活動を難しくしています。実際、スタートアップが始めたビジネスに大企業が追随し、資金力の差でスタートアップが敗れてしまう例も多々あります[1]。特許による参入障壁を構築できなければ、大企業に市場を奪われるリスクは高まります。この現状を踏まえ、次章では限られた経営資源の中でスタートアップが取るべき知財戦略について具体的に見ていきます。

スタートアップと特許:課題を克服する戦略

資源が限られる中でも、自社の知的財産を守り活用するためにスタートアップが取り得る戦略をいくつか紹介します。

  • コア技術に絞った特許戦略: 全てのアイデアを特許出願することは現実的ではありません。自社のコアとなる技術や事業の要素を見極め、そこに経営資源を集中して特許を取得することが重要です[4]。限られた予算でも、競争優位を支える発明に特許を取得しておくことで、将来の事業展開に大きな保険となります。また、周辺技術については特許公開制度等を活用してディスクロージャー(先行公開)し、他社による特許化を牽制する戦術も検討できます。
  • 知財専門家の活用と知財デューデリジェンス: 社内に知財の専門知識がない場合は、積極的に弁理士・弁護士といった専門家の力を借りるべきです。創業初期から信頼できる知財顧問を持つことで、出願戦略や他社特許のクリアランス調査などの助言を得られます。調査によれば、創業期・成長期ともに知財相談相手として「弁理士・弁護士」の情報が最も役に立ったとスタートアップは評価しています[2]。また、投資家や共同研究先との交渉に備え、知財デューデリジェンス(自社の特許ポートフォリオや権利関係の棚卸し)を行い、自社の知財価値を客観的に把握しておくことも重要です。
  • 公的支援策の最大限活用: 特許庁や関連機関はスタートアップ向けに様々な支援策を提供しています。例えば、特許庁の「スタートアップ支援専用早期審査」制度を利用すれば、一次審査通知まで平均2.3か月、最終権利化まで約5.3か月と通常より早く特許を取得できます[6](最短で約2.7か月での権利化も可能な「スーパー早期審査」もあり、いずれも追加費用なく利用可能)。権利化のスピードは、資金調達や市場での優位確立において重要な意味を持ちます。また、特許庁は中小・スタートアップ企業向けに特許関連料金の減免措置を設けており、一定の要件を満たせば審査請求料や特許料などが大幅に軽減されます[6]。資金面のハードルを下げるこれら制度は積極的に活用すべきです。
  • 知財アクセラレーションプログラムの活用: 特許庁が2018年度から開始した「IPAS(知財アクセラレーションプログラム)」では、ビジネスと知財の専門家チームがスタートアップの知財戦略構築を集中的に支援しています[5]。2023年度までに104社が支援を受け、大型資金調達やエグジットを果たす企業も輩出されるなど成果を上げています[7]。このような公的プログラムに応募し、専門的なメンタリングを受けることで、自社では気付けない知財戦略の課題を洗い出し、施策を講じることができます。知財戦略と事業戦略を一体的に策定する経験は、スタートアップにとって大きな財産となるでしょう。
  • 知的財産の多角的な活用: 特許は権利行使だけが目的ではありません。特許を取得している事実自体が技術力のアピールとなり、営業・マーケティングで信頼性を高める効果があります[1]。また、特許や特許出願中の技術をベースに他社と提携交渉を行えば、自社に有利な条件を引き出す交渉材料となります[1]。特許権を自社製品に表示(パテントマーク)することで競合他社への牽制にもなります。さらに、事業戦略上不要となった特許はライセンス供与や譲渡によって収益化することも可能です。他社にとって価値のある特許であれば、ライセンス料収入や一時金による資金獲得につながります。

以上のように、スタートアップでも工夫次第で知財を守り育てることは十分可能です。知財戦略を事業計画に組み込み、限られたリソースを有効活用することで、知財は単なるコストではなく将来のリターンを生む投資となります[8]。知財への適切な対応は、スタートアップが大企業に負けず持続的に成長するための鍵と言えるでしょう。

まとめ

スタートアップにおける特許の課題は、資金・人材の不足や時間との戦いなど厳しいものがあります。しかし、適切な戦略と支援策の活用により、それら課題を乗り越えて知的財産を効果的に保護・活用することが可能です。知財を制する者が競争を制すると言われる時代、限られた資源の中でも知財への目配りを怠らず、賢い知財戦略で事業の成長を加速させてください。

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(この記事はAIを用いて作成しています。)

参考文献

  1. 日本弁理士会 『スタートアップの特許出願を巡る諸問題 ―現実とベストプラクティス―』 (パテント, 2014年6月号) https://www.jpaa.or.jp/old/activity/publication/patent/patent-library/patent-lib/201405/jpaapatent201405_003-009.pdf
  2. 特許庁 『スタートアップが直面する知的財産の課題に関する調査研究報告書』 (令和3年度調査研究報告書, 2022年) https://www.jpo.go.jp/resources/report/sonota/startup/
  3. WIPO Magazine “Opportunities to finance innovation with IP” (December 2022) https://www.wipo.int/wipo_magazine/en/2022/06/article_0007.html
  4. マネーフォワード 『スタートアップの知財戦略の重要性は?競争力強化と成長のポイントを解説』 (IPOサポートメディア, 2023年) https://biz.moneyforward.com/ipo/basic/11604/
  5. 加島広基 「スタートアップが抱える知財課題と特許庁スタートアップ支援施策の紹介(前編)」 (note, 2020年6月24日) https://note.com/kashima510/n/na259665bfb79
  6. 経済産業省 特許庁 『スタートアップ向け情報 – スタートアップ支援策一覧』 (特許庁ウェブサイト) https://www.jpo.go.jp/support/startup/index.html
  7. 経済産業省 『スタートアップ支援の成果をまとめた「IPAS2023事例集」を公開します』 (ニュースリリース, 2024年6月3日) https://www.meti.go.jp/press/2024/06/20240603003/20240603003.html
  8. WIPO Magazine “Empowering SMEs to leverage IP for innovation” (No. 2, June 2021) https://www.wipo.int/wipo_magazine/en/2021/02/article_0003.html
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