米国特許訴訟を起こされたらIPRはいつまでに検討する?1年のTime Barを起点にした初動管理

IPR申立ての1年期限は訴状の送達日が起点で、送達日の固定、社内判断の前倒し、訴訟対応との並行検討を示す図解

株式会社IPリッチのライセンス担当です。米国で特許侵害訴訟を提起されたとき、まず答弁期限や証拠保全、訴訟代理人の選任に意識が向きます。しかし、無効化手段としてInter Partes Review(IPR)を使う可能性があるなら、裁判対応と並行して早い段階から検討を始める必要があります。理由は、35 U.S.C. §315(b)に、侵害訴訟のcomplaintを送達されてから原則1年を超えるとIPRを開始できないというTime Barがあるためです。

知財を収益化する側にとっても、相手方がIPRを使えるかどうかはライセンス交渉や訴訟戦略に影響します。特許の価値は、登録されているという事実だけでなく、無効資料に対してどこまで耐えられるか、どの手続で争われ得るかによっても変わります。株式会社IPリッチが運営するPatentRevenueは、日本国内の特許を無料登録し、売却・ライセンス募集につなげるサービスです。米国特許は登録対象ではありませんが、海外訴訟やライセンスを含む知財戦略では、IPRの期限管理は重要な実務論点です。

IPRは、米国特許商標庁のPatent Trial and Appeal Board(PTAB)で行われる特許無効化手続です。35 U.S.C. §311(b)により、IPRで主張できる無効理由は、原則として特許・刊行物を先行技術とする§102または§103の問題に限られます。訴訟で主張できるすべての無効理由をIPRへ持ち込めるわけではありません。

また、§315(b)の1年は「1年あるからゆっくり準備できる」という意味でもありません。先行技術調査、クレームチャート、専門家との技術分析、real party in interest(RPI)やprivyの確認、他の被告との関係、訴訟での無効主張との役割分担まで詰める必要があります。期限直前に初めて検討すると、質の高いpetitionを準備できないだけでなく、誰がTime Barの対象になるかという論点を見落とすおそれがあります。

この記事では、米国特許訴訟を起こされた企業が、IPRの1年Time Barをどのように初動管理へ組み込むべきかを整理します。

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目次

IPRは「訴訟の外で特許の有効性を争う」手段

IPRでは、特許所有者以外の者がUSPTOへpetitionを提出し、一定の特許クレームを無効とするよう求めます。35 U.S.C. §311(a)は、特許所有者でない者がIPRを申し立てられると定めています。

ただし、IPRの射程は限定されています。§311(b)では、§102または§103に基づく無効理由で、先行技術が特許またはprinted publicationである場合に限ってクレーム取消しを求められるとされています。

したがって、訴訟で争点になり得る記載要件、実施可能要件、特許適格性などをそのままIPRへ移すことはできません。被告側では、IPRで扱う先行技術ベースの無効論と、地方裁判所で残す他の無効論を分けて設計する必要があります。

この違いは、IPRを使うかどうかの判断にも直結します。強い特許文献・刊行物が見つかっているならIPRが有力になる一方、主な防御が非侵害や記載要件にある案件では、IPRの優先度が下がることがあります。

1年Time Barの起点はcomplaintの送達

35 U.S.C. §315(b)は、petitioner、real party in interest、またはprivyが、その特許の侵害を主張するcomplaintをservedされた日から1年を超えてpetitionが提出された場合、IPRをinstitutedできないと定めています。

ここで重要なのは、単に訴訟が裁判所へfileされた日ではなく、条文上はcomplaintのserviceが基準になっていることです。

社内で訴状を受け取ったら、事件番号や原告名を登録するだけでは不十分です。「いつ、誰に、どの方法で送達されたか」を記録し、1年後の日付を期限管理表へ入れる必要があります。

また、複数の関連会社や共同被告がいる場合は、自社だけを見て終わらせないことが重要です。条文はpetitioner本人だけでなくRPIやprivyのserviceも対象にするため、関係会社や実質的な利害関係者の状況がTime Barに影響し得ます。

「まだ11か月ある」と考えると遅い

IPR petitionは、無効資料を一つ見つけて提出するだけの書面ではありません。

まず、asserted claimsを確定し、クレーム解釈を踏まえて先行技術を探索します。候補文献について、公開日や優先日、先行技術適格性を確認し、各クレーム要素との対応を整理します。複数文献を組み合わせてobviousnessを主張する場合は、なぜ当業者がその組合せを行うのかという論理も必要です。

技術分野によっては専門家の宣誓供述書を準備することもあります。petitionのページ数・形式要件を満たしつつ、どのクレームをどのgroundで争うかを絞り込む必要があります。

さらに、地方裁判所の訴訟ではclaim construction、invalidity contentions、discoveryなど別の期限が進みます。IPRだけを独立したプロジェクトにせず、訴訟スケジュールと一体で管理することが重要です。

実務上は、訴状受領後すぐにIPR検討を開始し、少なくとも数か月前には「出す・出さない」の判断をできる状態へ持っていく方が安全です。法定期限ぎりぎりまで待つことに事業上の利点があるとは限りません。

RPIとprivyの確認を後回しにしない

§315(b)で見落としやすいのがreal party in interestとprivyです。

企業グループでは、訴訟の名義上の被告と、製品事業を実質的に運営している会社が異なることがあります。親会社・子会社、販売会社、製造会社、共同開発先、補償義務を負う取引先などが関係する場合もあります。

誰がRPIまたはprivyに当たるかは事実関係によるため、単に「別法人だから無関係」とは判断できません。petitionではRPIを特定する要件があり、Time Barの分析でも関係者の訴訟履歴を確認する必要があります。

そのため、訴訟初動では、対象製品の製造・販売主体、訴訟費用の負担者、意思決定者、補償関係、共同防御関係などを整理します。後から「実は関連会社が1年以上前に同じ特許でcomplaintをservedされていた」と分かれば、IPR戦略全体に影響しかねません。

先に無効確認訴訟を起こすと§315(a)も問題になる

IPRの期限管理は§315(b)だけではありません。

35 U.S.C. §315(a)(1)は、petitionerまたはRPIが、IPR petitionを提出する前に、その特許クレームの有効性を争うcivil actionをfileした場合、IPRをinstitutedできないと定めています。

つまり、侵害訴訟を受ける前後に「先に特許無効の確認訴訟を起こそう」と考える場合は、IPRとの順序関係を確認する必要があります。

一方、侵害訴訟に対するcounterclaimとして無効を主張することは、§315(a)のcivil actionには含まれないと条文が定めています。ここでも「無効を裁判所で主張したら全部IPR不可」と単純化せず、どの形で主張したかを確認する必要があります。

1年Time Barにはjoinderの例外があるが、前提にしない

§315(b)は、1年の制限が§315(c)のjoinder requestには適用されないと定めています。

ただし、これを「期限を過ぎても後で既存IPRへ参加すればよい」と計画するのは危険です。joinderはDirectorの裁量が関係し、USPTOのTrial Practice Guideでも、time-barred petitionerによる同一当事者・新規論点のjoinderは極めて限定的な状況で扱う方針が示されています。

したがって、通常の案件では1年以内に自らpetitionを提出できるよう準備するのが基本です。joinderは例外的な手段として理解し、期限管理の代替にはしない方が安全です。

IPRを出すと後の無効主張にestoppelが生じる

IPRには、期限だけでなく「出した後」の制約もあります。

35 U.S.C. §315(e)では、IPRがfinal written decisionに至った場合、petitioner、RPI、privyは、そのクレームについて、IPRでraisedまたはreasonably could have raisedしたgroundを、一定のUSPTO手続や地方裁判所・ITCで主張できなくなるestoppelが規定されています。

そのため、IPR petitionを作るときは「とりあえず一番強そうな文献だけ出す」という判断が後の訴訟戦略へ影響します。どの先行技術をIPRへ投入し、どの論点を地方裁判所で維持するかを、早い段階で整理する必要があります。

ここで重要なのは、IPRの勝敗だけではなく、最終書面決定まで進んだ場合にどの無効論が封じられ得るかを理解したうえで手続を選ぶことです。

地方裁判所の訴訟が自動で止まるわけではない

IPR petitionを提出したからといって、侵害訴訟が自動的に停止するわけではありません。

被告は地方裁判所へstayを申し立てることがありますが、裁判所が認めるかは事件の進行状況、IPRが訴訟を簡素化する可能性、当事者への不利益などを踏まえて判断されます。

したがって、IPRを出せば訴訟費用を直ちに止められると期待するのは危険です。特に訴訟がかなり進んでからpetitionを提出すると、stayが認められるかという事業上の不確実性も大きくなります。

IPRの申立時期を決める際は、法定Time Barだけでなく、地方裁判所のスケジュール、claim constructionの時期、trial date、他の共同被告の動きも確認します。

PTABのinstitutionは期限内提出だけで保証されない

1年以内にpetitionを提出しても、それだけでIPRが開始されるわけではありません。

35 U.S.C. §314(a)では、少なくとも1つのchallenged claimについてpetitionerがprevailするreasonable likelihoodがあるとDirectorが判断しなければIPRをinstitutedできないとされています。

そのため、Time Barを守ることは必要条件の一つですが、petitionの内容自体が弱ければinstitutionに至りません。期限直前の不十分な調査・分析で提出するより、早い段階で候補文献を評価し、強いgroundに絞ることが重要です。

また、USPTOの現行ガイダンスやprecedential decisionsは、institutionに関する運用へ影響することがあります。実際にpetitionを提出する時点では、最新のPTAB Trial Practice Guide、Rules、Director Reviewやprecedential decisionsも確認すべきです。

Time Barの判断は後から簡単に争い直せるとは限らない

§315(b)のTime Barをめぐっては、PTABが「期限内」と判断してIPRをinstitutedした後、その判断をどこまで裁判所で争えるかも重要です。

米国最高裁はThryv, Inc. v. Click-to-Call Technologies, LPで、§315(b)の適用に関するPTABのinstitution判断は、§314(d)との関係で原則として上訴審での司法審査が遮断されると判断しました。

被告側から見ると、「後で期限論を整理すればよい」と考えるのではなく、petition提出前にservice dateやRPIを丁寧に確認する必要性が高いということです。特許権者側でも、Time Barの主張はPatent Owner Preliminary Responseなどinstitution前の段階で明確に提示することが重要になります。

訴状を受け取った最初の30日で作るべき管理表

IPRの初動管理では、訴訟チームと知財チームが同じ情報を見られる一覧を作ると効率的です。

最初に、complaintのservice dateと1年後の日付を記録します。次に、asserted patents、asserted claims、原告、各被告、RPI候補、privy候補を整理します。

そのうえで、既存のFTO資料、過去の先行技術調査、審査履歴、同族特許、関連する他社訴訟や既存IPRを確認します。

先行技術調査は、特許・刊行物に絞ったIPR用調査と、訴訟全体の無効防御を分けて管理します。製品の先使用や販売証拠など、IPRでは直接使えない可能性のある材料も、地方裁判所では重要になることがあります。

さらに、petition提出判断の社内期限を法定期限より前に置きます。たとえば、先行技術候補の一次評価、外部弁護士によるレビュー、経営判断、petition作成という段階に分け、それぞれの締切りを逆算します。

IPRは「無効にできるか」だけでなく事業効果で判断する

IPRを利用するかどうかは、法律論だけでなく事業判断です。

強い無効資料があり、訴訟の中心クレームをまとめて攻撃できるなら、IPRは有力な選択肢になります。一方、対象クレームが少ない、非侵害が強い、重要な無効論がIPRの対象外である、estoppelの影響が大きい、といった場合は、地方裁判所での防御を中心にした方がよいこともあります。

ライセンス交渉が並行している場合は、IPR petitionが交渉力に与える影響も考えます。petition提出前の交渉、institution後、final written decision前後では、当事者のリスク認識が変わることがあります。

経営側には、単に「IPRを出せます」と報告するのではなく、成功可能性、費用、訴訟stayの見込み、estoppel、事業継続への影響、和解余地をまとめて提示すると判断しやすくなります。

まずservice dateを固定し、法定期限より前に社内期限を置く

米国特許訴訟でIPRを検討する際、最初に確認すべきなのは「強い先行技術があるか」だけではありません。complaintがいつservedされたかを確定し、§315(b)の1年Time Barを期限管理へ入れることが出発点です。

次に、petitionerだけでなくRPIやprivyとなり得る関係者を確認します。過去の訴訟履歴や関連会社のserviceを見落とすと、petition全体がTime Barの問題を抱える可能性があります。

そのうえで、§311(b)の範囲に合う特許・刊行物の先行技術を調査し、IPRで使うgroundと地方裁判所に残す論点を分けます。§315(e)のestoppelも見据え、単に提出できるかではなく、提出後の訴訟戦略まで含めて判断します。

実務では、法定1年期限を最終締切りとして管理するのではなく、それより十分前に「IPRを出すかどうか」の社内判断期限を設定することが重要です。訴訟受領時点で、service date、RPI、先行技術、裁判所スケジュール、IPR候補groundを一つの表で管理すれば、期限切れによる選択肢喪失を防ぎやすくなります。

米国特許訴訟の初動では、裁判所への対応とPTABへの対応を別々に進めないことがポイントです。1年というTime Barは長く見えますが、調査・分析・経営判断・petition作成まで逆算すると、検討開始は早いほど有利です。

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(この記事はAIを用いて作成しています。)

参考文献リスト
  1. U.S. Code, 35 U.S.C. §311 Inter partes review
    https://uscode.house.gov/view.xhtml?req=(title:35%20section:311%20edition:prelim)
  2. U.S. Code, 35 U.S.C. §314 Institution of inter partes review
    https://uscode.house.gov/view.xhtml?req=(title:35%20section:314%20edition:prelim)
  3. U.S. Code, 35 U.S.C. §315 Relation to other proceedings or actions
    https://uscode.house.gov/view.xhtml?req=(title:35%20section:315%20edition:prelim)
  4. USPTO「Trial Practice Guide」
    https://www.uspto.gov/patents/ptab/trial-practice-guide
  5. USPTO「PTAB Resources and Guidance」
    https://www.uspto.gov/patents/ptab/resources
  6. Supreme Court of the United States, Thryv, Inc. v. Click-to-Call Technologies, LP, 590 U.S. 45 (2020)
    https://www.supremecourt.gov/opinions/19pdf/18-916_f2ah.pdf

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