米国税関で模倣品を止める:商標・著作権のCBP記録制度とブランド防衛策

商標登録だけでは模倣品を止められず、米国税関・国境警備局(CBP)への権利記録により国境で差し止める仕組みを示した図

株式会社IPリッチのライセンス担当です。米国Amazonでの販売、D2Cブランドの展開、アパレルやキャラクター商品の輸出、あるいは高度な部品ビジネスにおいて、国内拠点から米国へ進出する企業が直面する大きな悩みが「米国市場へ偽物や模倣品が入ってくるのを止めたい」という課題です。本記事では、訴訟という高額な手段に訴える前に実行できる強力なブランド防衛策として、米国税関国境警備局(CBP)の記録(e-Recordation)制度を活用した水際取締りの仕組みを徹底解説します。登録された商標や著作権をCBPに記録することで、税関による侵害品の留置・差押え・没収などを促す実務上のノウハウが得られます。

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目次

米国進出企業が直面する模倣品リスクとCBP水際取締りという結論

米国市場への進出を果たす企業にとって、第三者による悪質な模倣品や海賊版の流通は無視できないリスクです。一度市場に模倣品が出回ってしまうと、米国内の広大なネットワークから販売者を特定し、連邦裁判所で侵害訴訟を提起するには相応の時間と法務費用が必要となります。そこで訴訟前から検討できる防衛策の一つが、米国税関国境警備局(CBP)と連携した水際での取り締まりです。

CBPは、米国各地の港湾や空港などで日々膨大な貨物を監視しています。商標や著作権をCBPに記録(Recordation)することで、自社の知的財産情報がCBPのIPRデータベースに登録され、税関職員による疑わしい貨物の識別や検査に利用されます。これにより、侵害品が米国の商業網に流入する前に留置や差押えなどの措置が取られる可能性が高まります。また、Amazon Brand Registryなどのプラットフォーム側の保護機能と、CBPによる国境での水際対策を組み合わせることで、オンライン上の出品対策と物理的な輸入対策を並行して進めることができます。

商標・著作権のCBP記録制度を支える基本知識

多くの企業が誤解している点として、米国特許商標庁(USPTO)で商標を登録すれば、または米国著作権局(USCO)で著作権を登録すれば、自動的に税関が模倣品を止めてくれるという認識があります。しかし、USPTOやUSCOへの「登録(Registration)」と、CBPへの「記録(Recordation)」は異なる手続きであり、それぞれ独立した目的を持っています。税関による積極的な取り締まりを受けやすくするためには、登録済みの権利をCBPの「IPRR(Intellectual Property Rights e-Recordation)」を通じて別途記録することが重要です。

商標の場合、CBPに記録するためには、原則としてUSPTOのPrincipal Registerに有効な商標登録を有している必要があります。Supplemental Registerの商標はCBP記録の対象になりません。著作権の場合もUSCOにおける著作権登録が基本ですが、著作権登録を申請中であることを証明できる場合には、CBPの案内に基づき6か月間の一時的な記録を申請できる仕組みがあります。特許権についてはIPRRシステムの対象外であるため、後述する別の法的アプローチが必要となります。

CBP記録制度における申請手続きと費用の詳細

CBPへの記録手続きは、IPRRのオンラインポータルを通じて行われます。現在CBPが案内している記録費用は、商標の場合は国際分類(International Class of Goods)1区分につき190ドル、著作権の場合は1著作権につき190ドルです。商標の記録は、基礎となるUSPTO商標登録の有効期間と連動して管理されます。著作権の記録は原則として20年間で、著作権自体が存続していれば更新することができます。

記録の更新費用は、商標1区分または著作権1件につき80ドルです。CBPの現行案内では、記録が失効した後も90日以内であれば更新手続きが可能とされていますが、期限管理を前提に、失効前に手続きを進めることが安全です。期間を超えた場合には新規記録としての申請が必要となる場合があります。また、担当窓口(Point of Contact)やライセンシー、製造国などの既存情報に変更が生じた場合には、会社のレターヘッドを使用した書面をCBPの指定窓口へ送付して情報を更新することが求められています。

米国税関による留置・差押え・没収と民事制裁金の実務

CBPは、記録された商標や著作権を侵害する疑いのある物品に対し、合衆国法典第19編(19 U.S.C. § 1526)および連邦規則集第19編(19 C.F.R. Part 133)などに基づいて対応します。実務では、留置(Detention)、差押え(Seizure)、没収(Forfeiture)などの手続きが問題となります。

税関職員が検査において偽造マークが付されていると疑う物品を発見した場合、CBPは原則として商品が検査のために提示された日から最長30日間留置できます。留置を決定した日から5営業日以内に、CBPは輸入者に対して書面で通知を行います。輸入者には、通知後7営業日以内に、その物品が偽造マークを付したものではないことを示す情報を提出する機会があります。回答がない場合や、提出された情報だけでは偽造品ではないと判断できない場合、CBPは一定の条件のもとで、権利者に無修正の写真や商品・パッケージ上の識別情報などを開示し、真贋判定への協力を求めることがあります。

最終的にCBPが偽造品などに該当すると判断した場合には、物品を差し押さえ、没収手続きへ進めることがあります。その後の処分はCBPの規則に従って行われ、輸入者には没収からの救済を求める手続きも用意されています。

さらに、商品の没収とは別に民事制裁金(Civil Fines)が問題となる場合があります。19 U.S.C. § 1526(f)および19 C.F.R. § 133.27では、販売または公衆への流通を目的とした偽造マーク付き商品の輸入を指示、資金面その他で援助、または幇助した者について、初回の対象となる差押えでは、その物品が真正品であった場合の米国内メーカー希望小売価格(MSRP)相当額を上限とする民事制裁金を科すことができます。2回目以降では、その2倍を上限とすることができます。模倣品の輸入者にとって無視できない経済的リスクです。

小口貨物の模倣品対策:de minimis免税停止後も監視が重要

Eコマースの普及に伴う大量の小口貨物は、長年にわたりブランドオーナーとCBPにとって大きな課題となってきました。従来、米国の関税法上の「Section 321」により、一定の条件を満たす1人1日800ドル以下の少額貨物にはde minimisの免税措置があり、Entry Type 86などを利用した簡易な電子申告も行われていました。

しかし、この制度は大きく変更されています。2025年8月29日から、原則として全ての国を対象に、従来の19 U.S.C. §1321(a)(2)(C)に基づく800ドル以下の商業貨物に対するde minimis免税が停止されました。2026年2月にもこの停止を継続する措置が取られており、非郵便貨物については金額にかかわらず適用される関税・税・手数料等の対象となり、適切なentry typeを使ってACEで申告することが基本となっています。

もっとも、小口貨物自体が模倣品対策上の重要課題でなくなったわけではありません。CBPによれば、FY2024にはde minimis貨物が知的財産権侵害品の差押え件数の97%を占めていました。制度変更後も、国際宅配便や郵便などを利用して多数の小口貨物に分散させる輸送形態を監視する必要性は残っています。

ブランド所有者としては、自社の模倣品がどのようなルートで送られているのかという情報を収集し、CBPのe-AllegationsによるTrade Violations Reportingを通じて疑わしい輸入や当事者の情報を提供する方法があります。税関のみですべての侵害品を発見することには限界があるため、権利者側でも市場監視を続け、具体的な輸送経路、輸出者、商品情報などを把握しておくことが実務上重要です。

グレーマーケットと並行輸入を防ぐレバー・ルールの適用

模倣品(偽造品)とは異なり、真正品ではあるものの、米国の商標権者の意図しないルートで輸入される「並行輸入品(グレーマーケット商品)」への対応は、実務上複雑な問題です。連邦規則集第19編(19 C.F.R. § 133.23)では一定のグレーマーケット商品について輸入制限の仕組みが設けられていますが、米国の商標権者と海外の商標権者が同一または共通の所有・支配下にある場合などには、通常のグレーマーケット保護がそのまま適用されない場合があります。

しかし、米国市場に進出する企業にとって、海外仕様の製品が米国内で安価に出回ることは、価格政策やブランド管理、顧客対応に影響を与える可能性があります。ここで検討対象となるのが「レバー・ルール(Lever-rule)」による保護です。

米国向けに販売される製品と海外市場向けに販売される製品との間に「物理的および物質的な差異(Physical and material differences)」が存在する場合、一定の要件のもとでCBPにLever-rule protectionを求めることができます。物理的・物質的な差異には、化学成分、製品の構造や部品、性能・動作特性、法規制や認証要件による違いなどが含まれ得ます。

CBPに対して具体的な証拠を添えて申請し、保護が認められると、その商標と対象商品についてCustoms Bulletinで公示されます。一方、物理的・物質的に異なるグレーマーケット商品であっても、規則で定められた表示を商品または包装に付すことで輸入できる場合があります。

なお、19 C.F.R. §133.23のグレーマーケット保護は米国の商標権者を前提とした制度です。日本企業が直接商標権を保有しているケースなどでは、自社の権利保有構造が要件に当てはまるかを確認する必要があります。食品、化粧品、仕様が異なる部品などを展開する企業がLever-ruleの利用を検討する際には、この点も含めて個別に判断することが重要です。

特許権保護とITC(米国国際貿易委員会)のSection 337排除命令

前述の通り、CBPのe-Recordation制度は主に商標と著作権を対象としており、特許権についてはこのシステムに記録して税関に通常のIPR記録と同じ取り締まりを求めることはできません。特許権侵害品の水際差し止めを実現する代表的な手段として、米国国際貿易委員会(ITC)における「Section 337調査」があります。

1930年関税法第337条に基づくこの手続きは、特許権などの知的財産権侵害を含む、輸入貿易における一定の不公正行為を調査する行政手続きです。連邦地裁での訴訟とは異なる制度で、損害賠償ではなく、輸入を阻止する「排除命令(Exclusion Order)」などが重要な救済措置となります。調査期間は案件によって異なり、USITCの統計では、FY2025に本案で終結した調査の平均期間は16.3か月でした。

排除命令には、調査対象となった特定の被申立人の製品を対象とする「限定的排除命令(Limited Exclusion Order: LEO)」と、一定の要件を満たす場合に、特定の供給源に限定せず侵害品の輸入を対象とする「一般的排除命令(General Exclusion Order: GEO)」があります。GEOには独自の要件があり、すべての案件で認められるものではありません。

ITCによって排除命令が発出された後、国境でその命令を執行する役割を担うのがCBPです。高度な技術を要する電子機器や部品などでは、輸入業者が設計変更した製品について排除命令の対象外であると主張するケースもあります。このような場合には、19 C.F.R. Part 177に基づくCBPの行政裁定などを通じて、変更後の製品が排除命令の対象となるかが検討されることがあります。特許権者にとっては、ITCで排除命令を得た後も、その執行状況を確認することが重要です。

税関職員を味方にする実務:プロダクトIDトレーニングガイド

CBPに商標や著作権を記録し、あるいはITCから排除命令を得ただけで十分とは限りません。港湾や空港に配置されている税関職員が、特定ブランドの細かな真贋判定ポイントをあらかじめ把握しているとは限らないためです。制度を実務で機能させるためには、権利者側からCBPへの商品情報の提供や教育も重要になります。

CBPは権利者に対し、真正品の識別を支援するProduct Identification Training Guideの活用や、オンライン・対面での商品識別トレーニングを案内しています。こうした資料により、CBP職員が真正品と疑わしい商品を見分ける際に必要な情報を提供することができます。

効果的なトレーニング資料では、現在有効なCBP記録番号やUSPTO・USCO登録番号を確認できるようにした上で、真正品(Authentic)と疑わしい製品(Suspect)の比較写真などを用います。ロゴの印字、パッケージ、バーコード、縫い目、シリアル番号など、その商品について現場で確認できる客観的な特徴を示すことが有効です。

一方で、CBPの案内では、資料の中で「これは偽造品である」「侵害品である」といった法的結論を示したり、留置・差押えを行うべきだと指示したりすることは避けるよう求めています。判断そのものはCBPが行うため、権利者の資料は真正品の特徴を理解するための教育資料として作成する必要があります。また、真贋判定についてCBPから問い合わせがあった場合に対応できるPoint of Contact(POC)を最新に保っておくことも重要です。

模倣品リスクを極小化する技術ライセンス契約の重要条項

自社の商標や技術を用いて米国市場を開拓する際、現地のディストリビューターや海外の提携工場に対してライセンスを付与するケースは珍しくありません。しかし、ライセンス契約の管理が不十分であれば、意図しないグレーマーケット商品や品質基準を満たさない製品が流通する原因となることがあります。CBPによる水際対策と並行して、ベースとなる技術ライセンス契約や商標ライセンス契約を適切に設計することも重要です。

まず、現地のパートナーに対してライセンスを付与する場合、それが独占的なライセンスなのか、非独占的なライセンスなのかを明確に定義する必要があります。どの地域の、どの製品カテゴリーについて権利を認めるのかを整理しておかなければ、ライセンシーから指定外の地域へ製品が流れ、米国へ還流するリスクが生じます。

また、製造ノウハウや製品の設計図、特殊な配合などの秘密情報を海外のパートナーに開示する場合には、NDA(秘密保持契約)などによって情報の利用目的、秘密保持義務、第三者提供の制限などを定めておくことが実務上重要です。

ライセンス契約では、ロイヤルティ(実施料)の算定基準と支払い条件を明確にするとともに、必要に応じて監査条項(Audit clauses)を設けることも有効です。監査権を定めておけば、報告されている製造数量や売上高などについて、契約に基づいて確認できる体制を構築できます。提携工場が契約上認められた数量を超えて製品を製造し、無断で市場へ流通させるようなケースでは、商品自体から正規品と無権限品を区別することが難しい場合もあるため、製造ロットや数量の管理は重要になります。

さらに、将来ITCでのSection 337調査や連邦地裁での訴訟に発展する可能性がある場合には、自社の特許技術が自社製品やライセンシーの製品にどのように実施されているか、また侵害が疑われる製品と特許請求の範囲がどのように対応するかを整理したクレームチャート(Claim charts)などを準備しておくことも、必要に応じて検討すべき実務対応です。

自社特許や商標を守りながら収益につなげる次の一手

国内から米国という巨大な市場へ挑戦する企業にとって、知的財産権の保護は単なる法務コストではなく、事業継続やブランド価値を左右する経営上の課題です。事後的な裁判だけで模倣品を排除しようとすれば、多くの資金とリソースが必要になる可能性があります。

そのため、USPTOで商標登録を取得した企業は、自社の模倣品リスクや米国への輸入状況に応じて、CBPのe-Recordationシステムへの記録を検討する価値があります。現在の申請費用は商標1区分につき190ドルであり、CBPによる水際取締りをブランド防衛策の一つとして利用できます。同時に、商品識別資料によるCBPへの情報提供や、契約面でのNDA、ライセンス範囲、監査条項などを組み合わせることで、社内外から生じる模倣品・無断流通リスクを抑えやすくなります。

こうした防衛策を整備することは、自社の技術やブランド価値を維持し、ライセンスビジネスを通じた収益化を検討するうえでも重要です。自社特許を収益につなげる次の一手として、保有する知的財産の棚卸しと、米国市場における保護状況の再確認を推奨します。弊社プラットフォーム「PatentRevenue」では、こうした守りを固めた知財を次のビジネスチャンスや新たな収益化へ結びつけるための支援を行っております。知財を事業価値へ結びつける選択肢の一つとして、ぜひご活用をご検討ください。

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(この記事はAIを用いて作成しています。)

参考文献リスト
  1. CBP Intellectual Property Rights e-Recordation (IPRR)
    https://iprr.cbp.gov/s/
  2. IPR – How CBP protects intellectual property rights
    https://www.help.cbp.gov/s/article/Article-1047?language=en_US
  3. IPR – How to apply, update, or record trademark with CBP
    https://www.help.cbp.gov/s/article/Article-1090?language=en_US
  4. 19 CFR Part 133 – Trademarks, Trade Names, and Copyrights
    https://www.ecfr.gov/current/title-19/chapter-I/part-133
  5. 19 USC 1526: Merchandise bearing American trade-mark
    https://uscode.house.gov/view.xhtml?req=granuleid:USC-prelim-title19-section1526&num=0&edition=prelim
  6. IPR Product ID Training Guide
    https://www.cbp.gov/document/guidance/ipr-product-id-training-guide
  7. e-Allegations Frequently Asked Questions
    https://www.cbp.gov/trade/e-allegations/faqs
  8. About Section 337 – U.S. International Trade Commission
    https://www.usitc.gov/about_section_337.htm
  9. Section 337 Statistics: Average Length of Investigations
    https://www.usitc.gov/intellectual_property/337_statistics_average_length_investigations.htm
  10. Continuing the Suspension of Duty-Free De Minimis Treatment for All Countries
    https://www.whitehouse.gov/presidential-actions/2026/02/continuing-the-suspension-of-duty-free-de-minimis-treatment-for-all-countries/

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