米国商標のStatement of Useを出し忘れるとどうなるか?Notice of Allowance後の実務と対応策

株式会社IPリッチのライセンス担当です。米国へ事業展開するにあたり、事前にブランド名を押さえようと「Intent-to-Use(使用を意図する)」ベースで米国商標を出願したものの、審査通過後にUSPTO(米国特許商標庁)から届いた「Notice of Allowance(NOA)」の意味が分からず戸惑っていませんか。米国のIntent-to-Use出願では、NOA発行後にStatement of Use(SOU:使用宣誓書)を期限内に提出しなければ登録に進むことができません。海外展開前にブランド名を押さえたつもりでも、使用証明の準備が遅れると出願が放棄になる可能性があります。本記事では、SOUを出し忘れた際のリスクから、期限内に提出すべき「使用証明」の具体的な準備方法、EC、アプリ、BtoBサービスで「使用」と認められやすい資料の揃え方まで、実務に即して詳しく解説します。
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結論:Statement of Useを提出し忘れると原則として出願は放棄される
米国商標の審査において、Notice of Allowance(許可通知:NOA)が発行された後、指定された期限内にStatement of Use(SOU:使用宣誓書)または期限延長申請を行わなかった場合、その商標出願は原則として「放棄(Abandonment)」となり、登録プロセスを継続できなくなります。
少なくともIntent-to-Use(ITU)に基づく出願では、登録に進む前に米国の商取引における実際の使用(Use in Commerce)を示す必要があります。出願人はNOA発行日から6か月以内にSOUを提出するか、SOU提出のための期限延長申請(Extension of Time)を行う必要があります。この期間内にいずれの手続きも行わなかった場合、出願は放棄され、TSDR上でも「Dead」として扱われます。せっかく時間と費用をかけて審査を通過していても、最終段階の期限管理を誤れば、そのITU出願に基づく優先的な地位を失うことになります。
出願が放棄された場合、そのままでは登録を得ることができず、同じ商標を他社が使用したり出願したりするリスクも高まります。ただし、意図せずSOUも延長申請も提出し忘れた場合には、37 CFR 2.66に基づく復活申請(Petition to Revive)という救済措置があります。原則としてNotice of Abandonmentの発行日から2か月以内に、遅延が「意図的ではなかった(Unintentional)」旨を示し、所定の費用と、本来必要だったSOUまたは延長申請等を提出します。Notice of Abandonmentを受領していなかった場合には、放棄を知った日から2か月以内、かつTSDR上の放棄日から6か月以内という期限が適用されます。ただし、この救済措置によっても、NOA発行から36か月というSOU提出期間の上限を超えて出願を維持することはできません。
Notice of AllowanceとIntent-to-Use出願の基本知識
この厳格な期限管理を理解するためには、まず米国の「Intent-to-Use(ITU)」という出願制度の仕組みを正しく把握する必要があります。米国では、すでに商標を使用している場合の出願と、将来的に使用する真正な意図に基づくITU出願など、出願の基礎が分かれています。
まだ製品を製造・販売していない段階で商標を確保したい企業は、連邦商標法(15 U.S.C. 1051(b))に基づくITU出願を行うことができます。この出願方式は、製品の発売前にブランドを確保するための有効な手段です。将来的に主登録簿への登録が完了した場合には、ITUの出願日が「擬制的な使用日(Constructive Use Date)」として全国的な優先権の基準になります。ただし、この効果は登録を条件とするものであり、出願日前から商標を使用していた第三者など、法律上の例外があります。
USPTOの審査を通過し、公式公報での異議申立期間(通常30日間ですが、第三者からの申請により延長される場合があります)を経て異議申立て等がなければ、USPTOからNotice of Allowance(NOA)が発行されます。多くの日本の出願人はこのNOAを「商標登録証」と誤解しがちですが、実際には異なります。NOAは、登録に向けて実際の商業使用を開始し、その証拠をSOUとして提出する段階に入ったことを知らせる通知です。つまり、NOAの受領はゴールではなく、実際のビジネス展開と使用証明(Specimen)を準備するための期限付きカウントダウンの始まりを意味しています。
期限延長申請と出願分割による制度の柔軟な活用
実際のグローバルビジネスにおいて、NOAが発行されてから6か月以内に、製品の最終的な仕様を固め、製造し、米国内での販売を開始することは容易ではない場合があります。そのため、USPTOには期限延長や出願分割の制度があります。
まず、SOUの提出は37 CFR 2.89の規定に基づき、6か月単位で期限延長申請を行うことが認められています。最初の延長申請では、所定の費用を支払い、引き続き米国の商取引で商標を使用する真正な意図がある旨を示します。2回目以降の延長申請では「正当な理由(Good Cause)」が必要となり、製品の研究開発、市場調査、製造活動、販売・流通に向けた準備など、商標を使用するための継続的な努力を示すことが一般的です。延長は最大5回まで可能であり、NOA発行日から最長36か月までSOUの提出期間を確保できます。この上限を超えて延長することはできません。
また、複数の商品やサービスを指定して出願している場合、事業の進捗によって一部の商品・サービスだけ先に使用を開始できることがあります。この場合、37 CFR 2.87に基づく「Request to Divide(出願の分割請求)」を活用できます。使用を開始した商品・サービスを分割してSOUの手続きを進め、登録に向けて先行させる一方、まだ準備中の商品・サービスはITU出願として残し、必要な延長申請を続けることが可能です。これにより、展開が早い商品のブランド保護を不必要に遅らせず、事業の進捗に合わせて段階的に権利化を進めることができます。
実務で認められやすい使用証明(Specimen)の準備方法
SOUを提出する際、日本の企業が最も苦労するのが「使用証明(Specimen)」の準備です。USPTOの審査便覧(TMEP 904.03)では、商標が米国の商取引において実際にどのように使用されているかが審査されます。CGで作成しただけの製品モックアップ、単なるコンセプト画像、将来の広告案など、実際の使用を示していない資料は原則として使用証明にはなりません。現代のビジネスモデルであるEC、アプリ、BtoBサービスにおいて、どのように実務的な証拠を揃えるべきかを詳述します。
有体物である商品(Goods)をECサイトを通じて販売する場合、Webページを「電子的なディスプレイ(陳列)」として使用証明に用いることがあります。TMEP 904.03(i)によれば、Webページが有効な使用証明として認められるためには、商品の写真や説明があり、商標との関連が明確に示され、さらに消費者が商品を注文するための手段が示されている必要があります。注文手段は「カートに入れる」ボタンや購入リンクに限らず、状況によっては注文用の電話番号などでも認められる場合があります。また、WebページをSpecimenとして提出する際には、該当ページのURLとアクセス日または印刷日をUSPTOに提供する必要がありますが、これらを必ずスクリーンショット自体に印字しなければならないわけではなく、提出フォーム等で示すこともできます。商品を注文する手段がなく、単なる広告にとどまるWebページは、商品の使用証明としては通常認められません。
アプリケーションやソフトウェア(第9類など)の提供においては、物理的なパッケージが存在しないため、ソフトウェアの実行・起動画面や、購入・ダウンロードページなどが使用証明となる場合があります。アプリの起動時に表示される画面などを使用する場合も、商標と対象となるソフトウェアとの関連が明確に分かることが重要です。また、AppleのApp StoreやGoogle Playなどで、商標と対象アプリが明確に結びつき、実際にダウンロードできるストアページも使用証明となり得ます。Webページを提出する場合は、URLとアクセス日等についても忘れずに情報を提供する必要があります。
一方、BtoB向けのサービス(Services)の場合は商品とは異なり、サービスの販売、提供、広告などにおける商標の使用状況が審査されます。商標が表示されたサービスのパンフレット、インボイス、サービス内容を説明する企業のWebサイトなどが使用証明の候補になります。重要なのは、単に「社名」や「商号」として表示されているだけではなく、出願している特定のサービスと商標との直接的な関連が読み取れることです。
SOU提出後、無事に登録された後も使用状況の管理は必要です。USPTOは登録維持手続きの一部について「Post-Registration Audit Program(登録後監査プログラム)」を実施しています。一定の条件を満たす登録が無作為監査の対象となるほか、提出資料に疑わしい特徴がある場合には対象を絞った監査が行われることもあります。監査では、追加の商品・サービスについて使用証明の提出を求められる場合があり、使用を証明できない項目は削除が必要になることがあります。監査に適切に応答しなければ、登録全体が取り消される可能性もあるため、実態のない使用証明や加工・捏造された資料を提出してはいけません。
商標の譲渡制限とライセンス契約における必須条項
海外展開の戦略変更に伴い、登録前の商標出願を現地のパートナー企業や米国子会社に譲渡したいと考えるケースがありますが、ここには米国法特有の注意点があります。連邦商標法(15 U.S.C. 1060)は、Intent-to-Use出願について、原則としてAAU(Amendment to Allege Use)またはSOUに相当する使用申立を行う前の譲渡を制限しています。この法律は、自身で使用する意図がないにもかかわらず商標を先取りし、取引の対象とする行為を防ぐ趣旨を含むものです。
例外として認められるのは、その商標が関連する「進行中の既存事業(Ongoing and existing business)」またはその商標に関連する事業部分を引き継ぐ後継者に対する譲渡です。この制限に反する譲渡は無効と判断される可能性があり、その譲渡を前提として成立した登録についても取消し等の問題につながるおそれがあります。そのため、ITU出願を米国子会社や提携先へ移転する場合には、単なる名義変更として処理せず、譲渡時点の使用状況や承継する事業の実態を確認することが重要です。
適法にSOUを提出し、商標権を確保した後は、自社で直接事業を展開するだけでなく、現地の企業にライセンスを供与して収益化を図ることも選択肢になります。提携に向けた初期交渉で非公開のノウハウやブランド戦略を共有する場合には、必要に応じてNDA(秘密保持契約)を締結し、開示情報の範囲や利用目的を管理することが重要です。
ライセンスの形態としては、現地のパートナーに積極的な事業投資を促すために「独占的ライセンス」を付与することも考えられます。特定の地域などで他社にライセンスを出さないことを約束する代わりに、ロイヤルティ(使用料)条件を設定します。また、ロイヤルティが販売実績ベースで計算される場合には、ライセンシーからの報告の正確性を確認するため、監査条項(Audit clause)を設けることも有効です。監査の対象、頻度、費用負担などをあらかじめ契約で明確にしておくことで、ライセンス契約の実効性を高めることができます。
取消リスクとNaked Licensing(裸のライセンス)の脅威
米国での商標ライセンスにおいて、注意すべき法理の一つが「Naked Licensing(裸のライセンス)」です。商標には、商品やサービスの出所を識別する機能があります。そのため、商標権者が第三者に商標の使用を許諾する場合には、ライセンシーが提供する商品やサービスの性質・品質について十分な管理を維持することが重要です。
ライセンサーが十分な品質管理を行わずに商標の使用を許諾した場合、Naked Licensingとして商標権の放棄につながる可能性があります。ただし、品質管理条項が書面で存在しなければ直ちにNaked Licensingになるわけではなく、管理が包括的であることも常に要求されるわけではありません。重要なのは、ライセンサーが実際に商品・サービスの性質や品質について合理的かつ十分な管理を行っているかどうかです。実務上は、契約書に品質基準、サンプル確認、報告や検査に関するルールを設けるとともに、契約締結後も必要な品質管理を実際に実施し、その記録を残しておくことがリスク管理につながります。
さらに、2020年商標近代化法(TMA)によって、不使用を理由に第三者が登録の取消しを求めるための手続きが整備されています。「Expungement(抹消)」手続きでは、原則として登録から3年以上10年以内に、その商標が対象の商品・サービスについて一度も商業使用されていないことを理由として、登録の全部または一部の取消しを求めることができます。また、「Reexamination(再審査)」手続きでは、登録から5年以内であれば、法律上定められた基準日までに商標が実際には使用されていなかったことを理由として、対象の商品・サービスについて再審査を求めることができます。SOU提出時に実際の使用がないにもかかわらず不適切な証拠を提出して登録を得ても、その後に不使用を理由として登録の取消しを求められるリスクが残ります。
自社特許や商標を収益につなげる次の一手
Intent-to-Use出願から始まり、Notice of Allowanceの受領、そして要件を満たす使用証明を伴うStatement of Useの提出を経て、米国での商標登録に至ります。SOUの期限徒過という管理ミスで出願を失うこと、あるいは使用申立前の不適切な譲渡によって権利関係に問題を生じさせることは、海外進出における大きな機会損失です。ECやアプリなど、現代のデジタルビジネスに適合した証拠を期限内に正確に揃え、ライセンス展開においては品質管理を徹底することが、ブランド防衛の重要なポイントとなります。
そして、強固な権利を取得した後は、それをコストセンターとして眠らせておくのではなく、プロフィットセンターへと転換させる視点も重要です。品質管理条項や監査条項を備えた適切なライセンス契約を結び、必要に応じて特許やノウハウと組み合わせてブランドを展開することで、自社単独での事業展開とは異なる形で知財から収益を生み出せる可能性があります。
私たちが提供する知財収益化プラットフォーム「PatentRevenue」では、現状は国内特許を対象として、特許の売却・ライセンスによる収益化を支援しています。自社が保有する特許をどのように収益につなげるべきか、次のビジネスチャンスを見つけるために、ぜひプラットフォームへの登録をご検討ください。
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(この記事はAIを用いて作成しています。)
参考文献リスト
- Electronic Code of Federal Regulations, 37 CFR §2.88 “Statement of use after notice of allowance”
https://www.ecfr.gov/current/title-37/chapter-I/subchapter-A/part-2/subject-group-ECFRa02e95cbb262a20/section-2.88 - Electronic Code of Federal Regulations, 37 CFR §2.89 “Extensions of time for filing a statement of use”
https://www.ecfr.gov/current/title-37/chapter-I/subchapter-A/part-2/subject-group-ECFRa02e95cbb262a20/section-2.89 - United States Patent and Trademark Office, “Intent-to-use applications”
https://www.uspto.gov/trademarks/apply/intent-use-itu-applications - United States Patent and Trademark Office, “Reviving an abandoned application”
https://www.uspto.gov/trademarks/apply/reviving-abandoned-application - United States Patent and Trademark Office, “Additional information for post-Notice of Allowance process”
https://www.uspto.gov/trademarks/apply/additional-information-post-notice-allowance-process - Trademark Manual of Examining Procedure, §904.03 “Material Appropriate as Specimens for Trademarks”
https://tmep.uspto.gov/RDMS/TMEP/print?href=TMEP-900d1e636.html&version=current - Trademark Manual of Examining Procedure, §1301.04 “Specimens of Use for Service Marks”
https://tmep.uspto.gov/RDMS/TMEP/print?href=TMEP-1300d1e266.html&version=current - 15 U.S.C. §1057 “Certificates of registration”
https://uscode.house.gov/view.xhtml?edition=prelim&num=0&req=granuleid%3AUSC-prelim-title15-section1057 - 15 U.S.C. §1060 “Assignment”
https://uscode.house.gov/view.xhtml?edition=prelim&num=0&req=granuleid%3AUSC-prelim-title15-section1060 - Trademark Manual of Examining Procedure, §1201.03(e) “License and Franchise Situations”
https://tmep.uspto.gov/RDMS/TMEP/print?href=TMEP-1200d1e1.html&version=current - United States Patent and Trademark Office, “Post Registration Audit Program”
https://www.uspto.gov/trademarks/maintain/post-registration-audit-program - United States Patent and Trademark Office, “Requesting an expungement or reexamination proceeding”
https://www.uspto.gov/trademarks/protect/requesting-expungement-or-reexamination-proceeding

