米国特許のPatent Term Adjustmentを確認しないと損をする理由:ライセンス収益と企業価値を最大化する実務対応

株式会社IPリッチのライセンス担当です。自社の米国特許の存続期間について、「出願日から20年」という大原則のみで管理し、実際に登録された後の正確な満了日を確認していないケースが散見されます。読者の皆様からも、米国特許の存続期間が想定より長い、あるいは短い理由を知りたいという実務上のご相談をよく伺います。米国には、米国特許商標庁(USPTO)側の審査遅延を補填するために特許期間が調整される「Patent Term Adjustment(PTA)」という制度が存在します。このPTAによる期間調整は、ライセンス料の算定、特許侵害に対して権利行使できる期間、さらにはM&Aにおける企業価値評価にも影響する可能性があります。本記事では、登録後にPTAの期間を確認し、その結果を契約や評価に正しく反映させるための実務的な視点を詳しく解説します。
知財収益化は、企業が時間とコストをかけて生み出した技術資産からリターンを獲得し、次なる研究開発投資へとつなげるための重要な事業戦略です。しかし、特許の正確な存続期間や権利価値を把握していなければ、本来得られる可能性があるロイヤルティ収入を取り逃がすおそれがあります。弊社では、未活用の知的財産から新たな収益機会を創出する特許売買・ライセンスサービス「PatentRevenue」を提供しています。現在は国内特許を対象に、売買・ライセンスの相手先探索や契約交渉などの収益化をサポートしており、特許の登録や相談は無料です。保有する国内特許を経営に貢献する資産として活用したいとお考えの企業様は、PatentRevenueへの無料登録をご検討ください。
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米国特許における存続期間の結論とPatent Term Adjustmentが及ぼす影響
米国特許の実質的な存続期間は、単純な「出願日から20年」の計算だけでは導き出せません。原則的な20年の期間に加え、USPTOの審査遅延に対するPatent Term Adjustment(PTA)、出願人側の遅延、Terminal Disclaimer、対象となる特許ではPatent Term Extension(PTE)なども確認したうえで満了日を判断する必要があります。
PTAによる期間調整を確認しないことは、企業にとって収益機会を見落とす原因になり得ます。特許期間が延長されれば、その期間も特許権が存続するため、自社製品の独占性や第三者とのライセンス契約に経済的な意味を持つ場合があります。逆に、実際の満了日を誤って認識すれば、ライセンス料の計算や競合参入時期、特許ポートフォリオの評価を誤る可能性があります。特に、特許期間終盤にも大きな売上やライセンス収入が見込まれる事業では、数ヶ月から1年程度の差であっても無視できません。
スタンフォード大学の研究者らによる大規模な調査では、2000年5月29日以降に出願され、2005年以降に発行された約450万件の米国特許を分析した結果、63.6%の特許が何らかのPTAを獲得していました。PTAを取得した特許の平均延長日数は411日、中央値は290日で、全特許の25%超が1年以上のPTAを得ていたと報告されています。したがって、自社特許についてもPTAが存在する可能性を前提に確認する価値があります。
登録された米国のユーティリティ特許や植物特許のフロントページにはPTAの日数が表示されますが、この日数はUSPTOのシステムによる計算を基礎としており、審査履歴や入力データによっては再確認が必要になる場合があります。ライセンス契約の締結や特許ポートフォリオの価値評価を行う際には、表示されたPTAだけでなく、必要に応じて審査履歴との整合性を確認する視点が重要です。
米国特許の存続期間とPatent Term Adjustmentの基本知識
米国における特許の存続期間の算定方法は、国際調和に向けた法改正によって大きく変わりました。旧制度では原則として「特許発行日から17年」とされていましたが、1995年6月8日以降に出願された特許については、原則として「米国出願日、または一定の継続・分割等について基礎となる最先の出願日から20年」とされています。なお、1995年6月8日より前に出願された案件には移行規定があり、一定の場合には20年基準と登録から17年のうち長い期間が適用されます。
存続期間の基準が出願日に変更されたことで、USPTO側の処理が長期化すると、登録後に特許権を行使できる期間が短くなるという問題が生じます。こうした審査遅延を補償する制度として、1999年のAmerican Inventors Protection Act(AIPA)によって整備されたのがPatent Term Adjustment(PTA)です。
現在のPTA制度は、2000年5月29日以降に出願されたユーティリティ特許および植物特許に適用されます。なお、意匠特許(Design Patent)はPTAの対象外です。意匠特許の存続期間は、2015年5月13日以降に出願されたものについては原則として発行日から15年で、それ以前の対象出願では14年となります。
PTAは、主としてUSPTOの手続遅延を補償する制度です。これとは別に、医薬品や一定の医療機器などが規制当局の承認を得るために要した期間の一部を回復するPatent Term Extension(PTE:特許期間延長)という制度も存在します。PTAとPTEは根拠となる法律も計算方法も異なりますが、35 U.S.C. 156上の「original expiration date」には35 U.S.C. 154(b)によるPTAが含まれるため、両制度が適用される特許では双方を考慮して最終的な満了日を確認する必要があります。
Patent Term Adjustmentを構成する3つの遅延と計算制度
PTAの計算メカニズムは複雑であり、35 U.S.C. 154(b)および37 CFR 1.702〜1.705に詳細な規定が設けられています。基本的な構造は、USPTOの遅延である「A期間」「B期間」「C期間」を算定し、期間の重複を調整したうえで、出願人側の遅延(Applicant Delay)を減算するというものです。
A期間による延長
第一の要素であるA期間(Type A Delay)は、USPTOが定められた期限内に一定のアクションを行わなかった場合に発生します。具体的には、35 U.S.C. 111(a)による出願または国際出願の米国国内段階開始から14ヶ月以内に所定の通知またはNotice of Allowanceを発行しなかった場合や、出願人の応答から4ヶ月以内に次のアクションを行わなかった場合、PTABや連邦裁判所の一定の決定後4ヶ月以内に手続きを進めなかった場合などが該当し、その超過日数が加算されます。
B期間による延長
第二のB期間(Type B Delay)は、出願の長期係属に対する保証です。原則として、実際の出願日または国際出願の米国国内段階開始から3年を超えて特許発行まで時間がかかった場合、その超過期間がB期間の計算対象になります。ただし、RCE(継続審査請求)による継続審査に費やされた期間など、法律で定められた期間は除外されます。
RCEについては、原則としてRCEを提出した日からNotice of Allowanceが発行されるまでの期間が「continued examinationに費やされた期間」としてB期間から除外されます。一方、Notice of Allowance後から特許発行までの期間は、USPTOが実際に審査を再開した場合などを除き、一律にRCE期間として除外されるわけではありません。
C期間による延長
第三のC期間(Type C Delay)は、通常の審査以外の特殊な事情による遅延です。派生手続(Derivation Proceeding。旧制度のInterferenceを含む)、政府による秘密保持命令、またはPTABや連邦裁判所での不服申立て等において出願人に有利な最終判断が得られた場合の一定の期間が対象となります。
計算ルールを変えた重要な判例
PTA実務における重要な転換点の一つが、A期間とB期間の重複に関する計算方法です。かつてUSPTOは、A期間とB期間が存在する場合の重複を広く捉える計算方法を採用していました。しかし、2010年のWyeth v. Kappos事件においてCAFCは、この解釈を退けました。
現在は、A期間とB期間が暦日として実際に重なっている部分について重複を控除し、それ以外の対象期間を算定する考え方が採られています。したがって、単にA期間とB期間のうち長い方だけを採用する計算ではありません。
出願人の遅延減算を防ぐ特許実務とセーフハーバー規定
USPTO側の遅延によって生じるPTAも、出願人側に「審査を終結させるための合理的な努力を怠った」と評価される期間があれば減算されます。特許期間を適切に確保するためには、出願から登録までのプロセキューションにおいて、こうした出願人遅延を不要に発生させない管理が重要です。
典型的なのが、USPTOからの通知に対する応答の遅れです。35 U.S.C. 154(b)(2)(C)および37 CFR 1.704では、対象となる通知への応答に3ヶ月を超える期間を要した場合、その超過期間がPTAから減算される場合があります。また、一度応答書を提出した後に審査官から要求されていない補充書面を提出することや、Notice of Allowance後にUSPTOから明示的に求められていない37 CFR 1.312の補正等を提出することも、規則上、PTA減算につながる場合があります。
米国特許実務で特に注意が必要なのが、情報開示陳述書(IDS)の提出です。米国では、特許性に重要な情報についてUSPTOへの開示義務がありますが、既に応答を提出した後やRCE後に追加のIDSを提出すると、一定の場合に出願人遅延として扱われます。
この減算が争われた代表的な事例がSupernus Pharmaceuticals, Inc. v. Iancu事件です。この事件では、USPTOはRCE提出後にIDSが提出されたことなどを理由に646日を出願人遅延として扱いました。このうちSupernusは、RCE提出からEPOによる異議申立て通知までの546日について、その間は提出すべき新情報が存在せず、合理的に取り得る行動がなかったとして争いました。CAFCは、この546日まで一律に出願人遅延として減算することはPTA法の限界を超えると判断しました。
こうしたIDS提出による減算を回避する仕組みとして、37 CFR 1.704(d)にはセーフハーバーが設けられています。例えば、対応する外国・国際出願などに関する特許庁からの通信で引用された情報について、その通信が37 CFR 1.56(c)所定の者に受領されてから30日を超えないうちにIDSを提出し、所定の条件を満たす陳述を併せて行えば、一定のPTA減算を回避できます。
2023年7月17日以降に提出する37 CFR 1.704(d)の陳述については、USPTO指定のフォームPTO/SB/133を使用し、適切なドキュメントコード「PTA.IDS」で提出することが必要です。この形式を外すとUSPTOの自動計算でセーフハーバーが反映されず、再考請求が必要になる可能性があるため、実務上のプロセス管理が重要です。
さらに、ライセンス期間を左右する重要な要素として、Terminal Disclaimer(ターミナルディスクレーマー)の存在があります。自明型二重特許(ODP)への対応などでTerminal Disclaimerを提出し、特許期間を特定の日付より後について放棄した場合、35 U.S.C. 154(b)(2)(B)により、PTAはそのTerminal Disclaimerで設定された満了日を超えて特許期間を延ばすことができません。
そのため、PTAが大きい案件では、Terminal Disclaimerを提出する前に、関連特許の満了日や権利範囲、事業上の影響を確認することが重要です。Terminal Disclaimerが必要かどうかは案件ごとのクレームや出願関係によって判断する必要があり、単純に別の出願形態を選択すれば回避できるものではありません。
技術ライセンス契約におけるPatent Term Adjustmentの取り扱い
特許の存続期間が変わることは、技術ライセンス契約の設計やロイヤルティの算定にも影響を与える場合があります。ライセンス契約を締結する際、あるいはライセンス供与中の特許を管理する際には、契約上の支払期間と実際の特許存続期間が一致しているかを確認することが重要です。
一般的なライセンス契約では、ロイヤルティの支払い義務が生じる期間を「対象となる有効なクレーム(Valid Claim)が存続している期間」などと定義することがあります。その定義や契約構造によっては、Patent Term AdjustmentやPatent Term Extensionを含む満了日を明示しておくことで、将来の解釈上の争いを避けやすくなります。ライセンシー側が「出願日から20年」の日付だけを基準に支払いを停止すると、実際にはPTAによって特許が存続しているにもかかわらず、契約上必要な支払いが漏れる可能性があります。
また、多くのライセンス契約には、ライセンシーの売上報告やロイヤルティ計算の正確性を確認するための監査条項(Audit Clause)が設けられます。この監査を行う際には、経理上の数字だけでなく、対象特許の実際の存続期間と支払期間が整合しているかを確認することも有用です。特に米国市場で対象製品の販売が続いている場合には、PTAを反映した満了日を管理しておく必要があります。
独占的なライセンスなどでは、ライセンシーが特許のプロセキューションに関与したり、費用を負担したりするケースもあります。この場合には、必要に応じて秘密保持契約を締結するとともに、プロセキューションの進行状況を共有し、出願人遅延を不用意に発生させない運用を検討することが望まれます。例えば、対象となるUSPTO通知への応答を3ヶ月以内に行うことを基本方針とし、不要な追加書面の提出を避けるといった運用が考えられます。
また、第三者に対する権利行使のためのクレームチャートを作成する際にも、対象特許がPTAを考慮して現在も存続しているのか、いつ満了するのかを確認することは重要な前提の一つとなります。
Patent Term Adjustmentの確認漏れがもたらすビジネス上のリスク
PTAを軽視することは、単なる手続き上の問題ではなく、企業の経営判断や財務評価に影響する場合があります。
企業買収(M&A)や事業譲渡に伴う知的財産デューデリジェンスでは、ターゲット企業が保有する特許ポートフォリオの残存期間は重要な評価要素です。特許価値の評価に将来キャッシュフローを用いる場合、米国特許の満了日を一律に「出願日+20年」で計算すると、PTAによる延長期間が反映されない可能性があります。特許期間終盤にも相応の収益が予測される事業では、その差が評価結果に影響することがあります。逆に、Terminal Disclaimerなどによって想定より早く満了する特許を過大評価しないようにすることも必要です。
また、USPTOが算出したPTAについて審査履歴との不一致が疑われる場合、特許権者はRequest for Reconsiderationによって再考を求めることができます。この手続には厳格な期限があり、原則として特許発行日から2ヶ月以内に申請する必要があります。この2ヶ月の期間は37 CFR 1.136(a)に基づき最大5ヶ月追加で延長できるため、最大では発行から7ヶ月以内となります。
この期限を過ぎると、原則として37 CFR 1.705(b)に基づくPTAの再考請求手続を利用できなくなります。そのため、ライセンス交渉やM&Aが始まってから初めてPTAを確認するのではなく、登録直後に公式のPTA決定を確認することが重要です。
さらに注意したいのが、分割出願(Divisional Application)などの継続的な出願の扱いです。特許そのものの20年の基本期間は、35 U.S.C. 121等に基づいて利益を主張する先の出願日まで遡って計算される場合があります。一方、PTAは各特許について、その基礎となった出願自身のUSPTOでの処理状況に基づいて計算されます。したがって、親出願に付与されたPTAの日数が、そのまま分割出願から発行される特許に引き継がれるわけではありません。ポートフォリオを管理する際には、それぞれの特許についてPTAを確認する必要があります。
知財収益化を最大化するための特許期間管理と運用体制
これまで述べてきたリスクを抑え、自社の特許ポートフォリオを適切に評価するためには、権利化プロセスの各段階でPTAを意識した管理体制を構築することが有効です。
まず、審査係属中は、出願人遅延を不要に発生させないことが重要です。対象となるUSPTO通知への応答について3ヶ月を一つの管理基準とし、他国で得た審査情報に基づいてIDSを提出する場合には、37 CFR 1.704(d)の30日要件を確認します。セーフハーバーを利用する場合にはPTO/SB/133とドキュメントコード「PTA.IDS」を正しく使用する必要があります。
また、Patent Centerでは審査中からUSPTOに記録された書類の種類や受領日などを確認できます。これらのデータに誤りがある場合は、PTA計算にも影響する可能性があるため、できるだけ早い段階でUSPTOに訂正を求めることが重要です。
現在の制度では、USPTOはNotice of Allowanceの時点では正式なPTA決定を通知していません。特許発行前のIssue Notificationで予備的なPTA計算が示されますが、特許のフロントページに表示されるPTAがUSPTOの公式な決定です。そのため、特許が正式に発行された時点で、社内の知財担当者や米国代理人が審査履歴と照合し、必要に応じてA期間、B期間、C期間、重複期間および出願人遅延の計算を確認する運用が有効です。
もしUSPTOの計算に疑義がある場合は、37 CFR 1.705(b)の期限を踏まえて速やかにRequest for Reconsiderationを検討します。なお、特許権者側が表示されたPTAが長すぎると判断した場合、USPTOはその旨を伝える書簡をファイルに収録する取り扱いを認めています。また、必要に応じてTerminal Disclaimerによって期間を放棄する方法もあります。一方、PTAの表示を単純にCertificate of Correctionだけで修正することは原則としてできません。
自社特許を収益につなげる次の一手
米国特許のPatent Term Adjustmentは、単なる行政上の数字ではなく、特許がいつまで存続するのかを判断するうえで重要な要素です。延長された期間を正確に把握し、ライセンス契約の支払期間や監査、M&A・事業評価に適切に反映させることで、保有する技術資産を過小評価したり、収益機会を見落としたりするリスクを減らすことができます。
自社の米国特許ポートフォリオの中に、正確な存続期間が再検証されていない特許やライセンス対象特許が含まれていないでしょうか。一度、主要な特許についてフロントページのPTA表示と審査履歴を確認し、事業戦略や契約条件との整合性を確認することを推奨します。
また、PatentRevenueでは現在、国内特許を対象として、保有特許の売却・ライセンスの相手先探索や交渉を通じた収益化を支援しています。米国特許のPTA管理とは別に、自社が保有する国内特許について売却やライセンスの可能性を検討している企業様は、無料の特許登録・相談を通じてPatentRevenueの活用をご検討ください。
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(この記事はAIを用いて作成しています。)
参考文献リスト
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https://law.stanford.edu/wp-content/uploads/2024/09/2024-09-30_Our-More-than-Twenty-Year-Patent-Term.pdf

