米国特許出願でCIPを使うべきか:新しい改良発明の適切な権利化と実務戦略

株式会社IPリッチのライセンス担当です。米国特許の実務において、製品開発や研究が進行するにつれて、元の特許出願時には記載されていなかった新しい実施例や改良技術が後から生まれることは日常茶飯事です。このような場面で、既存の出願を基礎としつつ、新たなデータや技術的事項を追加した別の出願として権利化を図る手法が、Continuation-in-Part(CIP:一部継続出願)です。多くの知財担当者や研究者は、親出願との関連性を保てるため「とりあえずCIPで出願しておけば安心だろう」と考えがちですが、実務上はそれほど単純なものではありません。CIPで追加された新規事項には元の出願日の利益が及ばないことや、特許期間の計算における不利益、さらには2025年に導入された米国特許商標庁(USPTO)の継続出願追加料金など、CIPには慎重に検討すべき点が存在します。本記事では、改良発明をCIPで処理すべきか、あるいは新規出願や通常の継続出願を選択すべきかについて、法制度の仕組みと技術ライセンスや監査といった知財マネタイズの視点を交えて詳しく解説します。
自社で生み出した知的財産は、特許権として保有しているだけでは維持費がかさむばかりのコストセンターになりかねません。しかし、適切な権利化戦略とライセンス活動を組み合わせることで、特許は企業の収益を支える資産となる可能性があります。株式会社IPリッチでは、休眠特許や自社で活用しきれていない技術を収益に変えるためのプラットフォーム「PatentRevenue」を提供しています。知財のマネタイズに課題を感じている企業様は、新たなライセンス収入や事業提携の機会を創出するために、ぜひPatentRevenueの無料登録をご検討ください。強力でクリーンな特許ポートフォリオを構築し、それを市場で適切に展開していくことが、知財収益化の第一歩となります。
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結論:CIPを自動的に選ばず、新規出願や継続出願と比較して判断する
米国出願において新しい改良発明が生じた場合、安易にCIP(一部継続出願)を選択するべきではありません。一方で、CIPを一律に避けるべきとも言えません。親出願に存在しない新規事項を中心に独立した権利を確保し、できるだけ長い特許期間を確保したいのであれば「新規出願」が有力です。親出願の明細書の範囲内で異なるクレームを追求するのであれば「継続出願」が適しています。これに対し、親出願で十分に支持されるクレームと、新たに追加した事項を含むクレームの双方を関連する一つの出願ファミリーで追求したい場合には、CIPを検討する余地があります。
CIPは、親出願の内容と新たに追加した新規事項を一つの出願にまとめられるという点では便利な制度です。しかし、CIPが35 U.S.C. §120等に基づいて古い親出願の利益を主張すると、特許期間は原則としてその継続関係で特定参照された最先の出願から計算されます。その一方で、CIPで初めて追加した事項を必要とするクレームは、親出願日の利益を受けられません。この「クレームの有効出願日」と「特許期間の起算点」が一致しないことが、CIPの大きな注意点です。
さらに、2025年1月に発効したUSPTOの料金体系では、Earliest Benefit Dateから6年を超えて提出される一定の継続出願に追加料金が課されます。古い出願ファミリーにCIPを追加する場合、コスト面でも不利になる可能性があります。したがって、新しい改良技術については、CIP、新規出願、通常の継続出願のそれぞれについて、優先日の利益、特許期間、先行技術、料金、ライセンス上の扱いを比較して決定することが重要です。
米国特許制度における継続出願の基本知識
米国特許制度には、先の出願(親出願)をベースにして後から出願を行う「継続出願(Continuing Application)」という枠組みが存在します。この継続出願制度は、大きく分けて「継続出願(Continuation)」、「分割出願(Divisional)」、「一部継続出願(Continuation-in-Part, CIP)」の3種類に分類されます。これらについて先の米国出願日の利益を得るには、米国特許法および連邦規則集の要件を満たし、原則として親出願の特許発行、放棄または手続終了前に後の出願を行う必要があります。また、親出願と後の出願には少なくとも1名の共通する発明者が必要です。
通常の「継続出願」は、親出願の明細書や図面に新規事項を追加せず、同じ開示内容を基礎として異なるクレームを追求するための制度です。競合他社の製品をカバーするために異なるスコープのクレームを設定したり、別の権利範囲を追求したりする場合に利用されます。
一方で「分割出願」は、一つの出願に複数の独立した発明が含まれているとして審査官から限定要求を受けた場合などに、それらを別の出願として切り分けるために典型的に利用される制度です。
そして本記事の主題である「一部継続出願(CIP)」は、親出願の明細書に記載されている内容の実質的な部分または全部を繰り返しつつ、親出願には開示されていなかった「新規事項(New Matter)」を追加した別の出願です。ベースとなる基本発明と、その後の研究開発で得られた新しい実験データや改良構造を一つの出願に含めることができるのが大きな特徴です。発明そのものが発展・拡張した場合に利用できるという点で、他の二つとは用途が異なります。
CIP制度のメカニズムと優先日の複雑な仕組み
CIPを利用する上で最も理解が難しく、かつ実務上のトラブルを引き起こしやすいのが「優先日」、より正確には各クレームがどの出願日の利益を受けられるかという問題です。CIPは親出願の出願日の利益を「引き継ぐ」と表現されることがありますが、これは追加された新規事項に対しても過去の出願日がそのまま適用されるという意味ではありません。先の出願日の利益を受けられるかはクレームごとに判断されます。
CIP出願における各クレームが親出願の出願日の利益を享受できるかどうかは、親出願の開示が米国特許法112条(a)に基づく記述要件や実施可能要件を満たしているかによって判断されます。具体的には、CIP出願に含まれるクレームのうち、親出願の明細書によって十分に支持されているクレームについては、親出願の早い出願日の利益を享受することができます。しかし、CIPで新たに追加された改良技術や新規実施例を必要とするクレーム、あるいは親出願だけでは十分に支持されない新旧の特徴を組み合わせたクレームについては、その親出願日の利益を受けられず、CIP自体の出願日が適用されます。
ここで実務上よく見られる危険な誤解が、「一つのクレームの中で、親出願に記載された構成要件には古い優先日が、追加した構成要件には新しい優先日が付与される」という要素ごとの分割思考です。米国実務では、35 U.S.C. §120に基づく出願日の利益を受けられるかはクレーム全体について判断されます。クレーム全体が親出願によって十分に支持されていなければ、そのクレームは親出願日の利益を受けることができません。
例えば、ソフトウェア特許において、特許適格性等を意識して後からCIPで技術的な詳細特徴を追加したとします。この場合、新たに追加された特徴を含むクレームについて親出願の開示による十分なサポートがなければ、親出願の出願日の利益を享受することはできず、CIPの出願日が基準になります。この「クレームごとに有効な出願日が異なり得る」という点は、審査においてどの先行技術が適用されるかを判断する重要な要素となります。
実務目線で見るCIPの重大なリスクと注意点
新しい改良発明を保護するためにCIPを用いることには、利便性と引き換えにいくつかの実務的リスクがあります。ライセンス交渉や特許権の行使を見据える場合には、これらを事前に検討する必要があります。
特許期間の短縮メカニズム
最初の大きなデメリットは、特許期間が短くなる可能性です。米国の特許権の存続期間は、原則として米国出願日から20年ですが、出願が35 U.S.C. §120、§121、§365(c)または§386(c)に基づいて先の出願を特定参照している場合には、原則としてその中で最も早い出願日から20年で計算されます。
CIP出願で特許が成立した場合、CIPで追加された新規事項を含むクレームが親出願日の利益を受けられないとしても、特許期間の計算は別問題です。CIPが§120等に基づいて古い親出願を特定参照していれば、原則としてその最先の出願日を基準に特許期間が算定されます。本来、独立した新規出願としていればその新規出願日を基準に20年の期間を確保できた可能性がある改良発明について、CIPを選択することで実質的な残存期間が短くなる場合があります。医薬品や通信規格、あるいは長期にわたって利用される基礎技術などでは、この期間差が事業価値やライセンス収益に影響する可能性があります。
親出願が先行技術となる自己衝突のリスク
次に懸念すべきは、親出願の公開内容がCIPのクレームに対する先行技術となる可能性です。特に、CIPのクレームが親出願日の利益を受けられず、その有効出願日より前に親出願が公開されている場合には注意が必要です。
AIA適用出願では、発明者自身に由来する公開であっても、有効出願日の1年を超えて前に行われた公開については、35 U.S.C. §102(b)(1)の1年間の例外を利用できません。そのため、親出願の公開内容が後のCIPの新規性や非自明性の判断に影響する場合があります。
ただし、親出願が公開されていれば常に「自己衝突」するわけではありません。発明者由来の公開に対する1年間のグレースピリオドや、米国特許・公開公報が§102(a)(2)の先行技術となる場合の発明者由来・共通所有等に関する例外など、適用される法定例外があります。したがって、親出願の公開日、CIPの各クレームの有効出願日、発明者、権利者、公開された具体的内容を確認して判断する必要があります。
最新のUSPTO料金改定によるコスト増
さらに、USPTOは2025年1月19日に発効した料金体系において、Earliest Benefit Date(EBD)から長期間が経過した継続出願に対する追加料金を導入しました。
現行料金では、実際の出願日がEBDから6年を超え9年以下の場合、通常の大規模事業体では2,700ドル、9年を超える場合には4,000ドルの追加料金が課されます。この料金はContinuationだけでなく、一定のDivisionalやCIPにも適用されます。なお、料金計算上のEBDは37 CFR §1.17(w)に従って判断されるため、単純にすべての優先権主張の中で最も古い日と考えるべきではありません。
この追加料金は、長期間経過後に提出される継続出願について、USPTOが審査コストをより直接的に回収することなどを目的として導入されたものです。USPTOは、遅い時期に提出された継続出願では十分な残存特許期間がなく、維持費による審査コスト回収が難しくなる点も料金設定の理由として説明しています。
加えて、1回目の継続審査請求(RCE)費用は1,360ドルから1,500ドルに、2回目以降は2,000ドルから2,860ドルに引き上げられました。また、独立クレームが3項を超える場合の追加料金は1項600ドル、総クレーム数が20項を超える場合は1項200ドルとなっています。後者は従来の100ドルから倍増していますが、独立クレーム超過料金は従来の480ドルから600ドルへの増額であり、倍増ではありません。古い出願ファミリーにCIPを追加する場合には、このような費用も含めて判断する必要があります。
技術ライセンス契約と監査実務から見る改良発明の取り扱い
自社の特許を他社にライセンスし、収益化を図るフェーズにおいても、改良発明をCIPとして出願したか、それとも独立した新規出願としたかが契約上重要になる場合があります。ライセンス交渉では、対象となる特許群の定義範囲をどこまで広げるかが重要な論点となります。
ライセンス対象範囲の明確化と独占ライセンスの注意点
特許ライセンス契約書の定義条項において、「本特許の継続出願、分割出願、および一部継続出願(CIP)を含む」と規定されることがあります。ライセンシー側からすれば、将来にわたって関連技術を安定して実施するため、関連する継続出願やCIPを対象に含めたいという要求には合理性があります。
一方、ライセンサー側では、将来生まれる改良発明まで既存契約の対象に含めるのかを慎重に検討する必要があります。CIPが定義上ライセンス対象特許に含まれていても、追加のロイヤルティなしで当然に利用できるかどうかは、契約におけるLicensed Patents、Improvements、Licensed Products、対価などの定義によって異なります。本来は独立した技術資産として別途ライセンスしたい改良発明まで既存契約に取り込まないよう、契約時に範囲を明確にしておくことが重要です。特に独占ライセンスでは、将来の改良技術を第三者にライセンスできる範囲にも影響する可能性があります。
グラントバック条項の適切な運用
また、ライセンス契約において利用されるグラントバック条項にも注意が必要です。グラントバック条項とは、ライセンシーがライセンス技術を利用して改良発明を行った場合、その権利をライセンサーに譲渡したり、一定のライセンスを許諾したりすることを定める条項です。
ライセンシーによる改良技術をどのように出願するかについては、発明者、権利帰属、既存契約の内容、新規事項の程度などを確認する必要があります。CIPとして既存の特許ファミリーに加える方が適切な場合もあれば、独立した新規出願として権利化した上でライセンス関係を整理した方が分かりやすい場合もあります。単純にCIPか新規出願かを契約上の形式だけで決めるのではなく、技術内容と権利帰属を合わせて判断することが重要です。
クレームチャート作成と監査条項の難航
さらに、知財収益化を確実なものにするためには、契約書における監査条項の適切な設計と運用が重要です。監査条項とは、ライセンシーが契約通りにロイヤルティを計算・支払いしているかを、ライセンサーや独立した専門家が帳簿や業務記録を確認できるようにするものです。
ライセンス対象製品が特許クレームの技術的範囲に属するかを検討する際には、クレームの各構成要件と製品仕様を対比したクレームチャートが利用されることがあります。CIPは親出願とは別の出願・特許ですが、CIPから成立した特許の中では、親出願で支持されるクレームと、新規事項のためCIP出願日しか利用できないクレームが併存する場合があります。そのため、有効出願日や適用され得る先行技術をクレームごとに確認する必要があり、ライセンス対象や特許の有効性が争点になった際の分析が複雑になる可能性があります。独立した新規出願とする場合には、このような関係を分離しやすいという利点があります。
自社特許の収益化を見据えた適切な出願戦略
ここまでの法制度と実務的リスクを踏まえ、新しい改良発明が生まれた際の米国出願戦略を整理します。重要なのは、発明の性質と目的に応じて「新規出願」「継続出願」「CIP」を使い分けることです。
第一に、親出願の明細書に記載されていない新しい構成要素、最新の実験データ、新たな用途、あるいは改良構造を中心として独立した権利を確保したい場合には、「新規出願」が有力な選択肢となります。特に、親出願との継続関係による早い出願日の利益よりも、新しい技術について長い特許期間を確保することを優先する場合には、新規出願のメリットが大きくなります。外部への公開によって新規性等に問題が生じないよう出願時期を管理し、新規出願とすることで、2025年に導入された古い継続出願に対する追加料金も回避できます。
第二に、親出願に既に記載されている明細書や図面の開示範囲内で、異なる権利範囲を獲得したい場合や、競合他社の回避設計製品を捕捉するクレームを追求したい場合には、純粋な「継続出願」を活用できます。新規事項を追加しない継続出願であれば、親出願が35 U.S.C. §112(a)の要件を満たす範囲で、クレームは親出願日の利益を受けられます。ただし、継続出願でもEBDから6年を超える時点などで提出すると追加料金の対象となるため、出願時期を計画する必要があります。
第三に、CIPを検討する余地があるのは、親出願によって十分に支持される重要なクレームを維持しながら、その後に生まれた新規事項を含む別のクレームも関連する一つの出願として追求することに実務上の意味がある場合です。ただし、新規事項を含むクレームについては親出願日の利益を受けられず、特許期間は古い継続関係の影響を受ける可能性があります。
また、親出願の記載が不足していたからといって、CIPに新しいデータを追加すれば不足部分について親出願日まで遡れるわけではありません。親出願が35 U.S.C. §112(a)の支持を欠く事項について、CIPによって後からその不足を補っても、その事項を必要とするクレームが親出願日の利益を受けることはできません。したがって、CIPを「親出願の記載不備を遡って治す制度」と捉えるのは危険です。
CIPは優先日・特許期間・事業価値をセットで判断する
米国特許実務において、改良発明をどのように権利化するかは、単なる出願手続きの問題ではなく、将来の事業競争力やライセンス収益にも影響する戦略的判断です。CIPは新旧の発明を一つの出願にまとめられる便利な制度である一方、クレームごとに異なり得る有効出願日、古い親出願に連動する特許期間、親出願の公開が先行技術となる可能性、そしてUSPTOの継続出願追加料金などを考慮する必要があります。
新しい実施例や改良技術について独立した新規出願とすることが有利な場合は少なくありませんが、親出願で支持されるクレームと新規事項を含むクレームを一つの関連出願として追求する必要がある場合にはCIPにも意味があります。「新規事項があるからCIP」「CIPは不利だから常に新規出願」と機械的に判断せず、各クレームの支持関係、残存特許期間、先行技術、費用、ライセンス戦略を比較することが重要です。
的確な出願戦略によって構築された米国特許は、企業の事業やライセンス活動を支える重要な資産となります。自社で活用しきれていない国内特許や、他社へのライセンス・売却を検討している国内特許をお持ちであれば、知財のマネタイズを検討する選択肢があります。株式会社IPリッチの「PatentRevenue」では、現時点では国内特許を対象として、買い手やライセンシーとのマッチング、特許売買・ライセンスのサポートを行っています。特許の登録や相談は無料ですので、知財の新たな収益化の第一歩としてPatentRevenueへの登録をご検討ください。
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(この記事はAIを用いて作成しています。)
参考文献リスト
- Manual of Patent Examining Procedure (MPEP) §201.08 Continuation-in-Part Application
https://www.uspto.gov/web/offices/pac/mpep/s201.html - Manual of Patent Examining Procedure (MPEP) §211.05 Sufficiency of Disclosure in Prior-Filed Application
https://www.uspto.gov/web/offices/pac/mpep/s211.html - Manual of Patent Examining Procedure (MPEP) §2153 Prior Art Exceptions Under 35 U.S.C. 102(b)(1)
https://www.uspto.gov/web/offices/pac/mpep/s2153.html - Manual of Patent Examining Procedure (MPEP) §2701 Patent Term
https://www.uspto.gov/web/offices/pac/mpep/s2701.html - 35 U.S.C. §120 Benefit of Earlier Filing Date in the United States
https://uscode.house.gov/view.xhtml?req=granuleid:USC-prelim-title35-section120&num=0&edition=prelim - 35 U.S.C. §154 Contents and Term of Patent; Provisional Rights
https://uscode.house.gov/view.xhtml?req=granuleid:USC-prelim-title35-section154&num=0&edition=prelim - Federal Register, Setting and Adjusting Patent Fees During Fiscal Year 2025
https://www.federalregister.gov/documents/2024/11/20/2024-26821/setting-and-adjusting-patent-fees-during-fiscal-year-2025 - USPTO Fee Schedule
https://www.uspto.gov/learning-and-resources/fees-and-payment/uspto-fee-schedule - USPTO, Quick Reference Guide to the Continuing Application Fee (CAF)
https://www.uspto.gov/sites/default/files/documents/quick-reference-guide-to-the-continuing-application-fee-caf.pdf

