米国特許出願で発明者・譲渡書類を後回しにするリスクとM&A・資金調達への影響

株式会社IPリッチのライセンス担当です。米国へ特許出願を行う際、現地の特許事務所から「Assignment(譲渡証書)」や「Declaration(発明者の宣誓書)」の提出を求められ、その重要性が分からず手続きを後回しにしてしまうケースは少なくありません。しかし、米国特許制度においては、「誰が真の発明者であり、誰が正当に権利を保有しているのか」が極めて重要です。特にスタートアップ企業やオープンイノベーションを推進する企業において、創業者、退職者、外部エンジニア、共同研究先などが発明に関与している場合、後から権利関係を整理しようとしても深刻なトラブルに発展することがあります。本記事では、米国出願における権利譲渡や宣誓書の手続きを後回しにした場合に生じるリスクと、M&Aや資金調達のデューデリジェンスの前に慌てないための権利整理の実務ポイントについて詳しく解説します。
整理されたクリーンな権利関係は、特許を通じた知財収益化において重要な前提条件となります。権利帰属が曖昧な特許は、将来的なライセンス交渉や事業売却の場面で評価を下げ、むしろ事業の足枷になりかねません。自社の技術を正当に評価し、しっかりと収益に変えるためには、出願初期段階からの適切な権利保護が重要です。弊社が運営する特許収益化プラットフォーム「PatentRevenue」では、権利関係が適切に整理された特許技術をベースに、ライセンスアウトや売却を通じたマネタイズを支援しています。自社の価値ある特許を確実な収益へとつなげるため、まずはPatentRevenueへのご相談および無料の会員登録をご活用ください。
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米国特許制度における権利帰属の基本原則と日本との違い
日本の特許制度においては、職務発明規定に基づく「予約承継」などの仕組みが広く利用されており、出願時に個々の発明者から米国のような宣誓書を求める制度にはなっていません。一方、米国では発明者の特定が特許手続き上重要な意味を持ちます。2012年に施行された米国特許法の改正により、発明者から権利を譲り受けた企業などが出願人として手続きを行うことも可能になりました。それ以前は、原則として発明者が特許出願人となる制度でした。
この法改正によって企業の手続き上の利便性は向上しましたが、発明者に関する手続きが完全に不要になったわけではありません。米国特許法は、原則として各発明者に対し、自分が当該出願でクレームされている発明の発明者または共同発明者であると信じる旨などを含む宣誓または宣言を求めています。また、虚偽の申告には法律上の責任が伴います。
米国では、発明に関する権利は原則としてまず発明者に帰属し、企業がその権利を取得するためには契約等による権利移転が重要になります。そのため、発明者の適切な特定と、発明者から企業への権利譲渡を適切に処理しておくことが、企業が自社の特許として安全に保有し、将来の収益化に活用する上で重要なのです。
発明者宣誓書の提出遅延がもたらす実務的コスト
出願実務において、発明者宣誓書の提出を後回しにすることは制度上可能です。しかし、意図的に、あるいは漫然と後回しにすることには追加費用と実務上の負担が伴う可能性があります。
宣誓書等を非仮出願と同日に提出しなかった場合、所定のサーチャージが必要になることがあります。また、必要な宣誓書等が不足した状態が続けば、米国特許商標庁から提出を求める通知を受けることになります。多数の米国出願を行う企業にとって、こうした追加手続きが積み重なれば、知財予算や管理工数を無駄に圧迫することにもなります。
さらに重要なのは、必要な宣誓書等を最終的に整える必要があるという点です。一定の場合、特許査定後に発行される「Notice Requiring Inventor’s Oath or Declaration」に適切に応答せず、発行手数料の支払い前または同時までに必要な対応を行わなければ、出願が放棄扱いとなる可能性があります。
出願から特許査定までには長期間を要することがあります。もし手続きを後回しにしている間に、重要な発明者が会社を退職してしまったり、会社とトラブルになって連絡が取れなくなったりした場合、通常の宣誓書の取得が難しくなり、代替手続きが必要になることがあります。宣誓書の取得は、発明者が在籍し連絡を取りやすい出願時に済ませておくことが実務上合理的です。
署名拒否や行方不明時に直面する代替手続きの壁
発明者が退職等の理由で宣誓書への署名を拒否した場合、または十分な努力をしても連絡がつかない場合でも、直ちに特許化を諦めなければならないわけではありません。米国特許法および連邦規則集の規定に基づき、一定の要件を満たせば、発明者本人の宣誓書に代えて代替宣誓書を提出することが認められています。
代替宣誓書を利用できるのは、発明者が死亡している、法的な行為能力を喪失している、十分な努力をしても発明者を発見または連絡できない、あるいは発明者が宣誓書への署名を拒否している場合などです。また、代替宣誓書を提出する者についても法令上の要件があります。
もっとも、代替手続きが存在するからといって、発明者との書類取得を後回しにしてよいわけではありません。発明者との連絡経緯や、企業が権利を取得する根拠となる契約関係などを確認しなければならない場合があり、通常の宣誓書を取得できる場合より対応が複雑になる可能性があります。
後回しにした結果として発明者と揉め、最終的に代替宣誓書の手続きが必要になれば、現地代理人による追加対応や社内調査などのコストが生じます。出願時に速やかに署名を取得しておけば回避できた可能性のある問題が、後に時間と費用を要するトラブルへ発展することもあります。これは知財部門の管理体制にも関わる問題と言えます。
譲渡証書の米国特許庁への記録と三ヶ月ルールの罠
発明者宣誓書と並んで重要なのが、発明者から企業への権利の譲渡を証明する譲渡証書です。米国特許法において、特許は動産に類する財産として扱われ、特許出願、特許またはそれらの持分の譲渡は書面によって行うことが定められています。
さらに、米国特許実務において注意すべき規定が、同法に定められている三ヶ月ルールです。35 U.S.C. §261では、譲渡等がその日付から三ヶ月以内、またはその後の購入者等が権利を取得する前に米国特許商標庁に記録されていない場合、先の譲渡について知らず、対価を支払って権利を取得した後の購入者等に対して、その先行する譲渡を対抗できない場合があると規定されています。
これは実務上、何を意味するのでしょうか。例えば、ある企業が発明者から特許の権利を譲り受けたものの、米国特許商標庁への記録手続きを長期間行わなかったとします。その後、発明者が同じ権利を別の企業に譲渡し、その別企業が先の譲渡を知らず、対価を支払い権利を取得した場合には、記録の時期によって権利の優劣が問題になる可能性があります。
したがって、譲渡契約を締結したら、必要な記録手続きを速やかに行うことが権利保護上重要です。単に社内で譲渡証書を保管しているだけでは、第三者との関係で十分とは限らない点に注意する必要があります。
共同発明者の権利と外部関与者に潜む致命的なリスク
権利帰属を整理する上で、共同発明者が存在する場合には特に注意が必要です。米国特許法では、共同発明者は物理的に一緒に作業していなくても、貢献の種類や程度が同等でなくても、また各人がすべてのクレームに貢献していなくても、一定の場合には共同発明者として認められます。
そして、別段の合意がない限り、各共同所有者は他の共同所有者の同意を得ることなく、また原則として他の共同所有者への利益分配を要せずに、特許発明を実施できるという米国特許法上のルールがあります。共同所有者によるライセンスも、権利行使に重大な影響を与える場合があります。
この問題を象徴する米国連邦巡回区控訴裁判所の判例がEthicon, Inc. v. United States Surgical Corp.です。医療機器に関する特許について、訴訟の過程で、当初発明者として記載されていなかった人物が一部のクレームの共同発明者であると認定されました。その共同発明者は競合企業側にライセンスを付与していました。
裁判所は、一部クレームについて共同発明者である者も、原則として特許全体について持分を有する共同所有者となると判断しました。その結果、その共同所有関係とライセンスが、競合企業に対する侵害訴訟に重大な影響を与えました。
この判例は、社外のエンジニア、コンサルタント、共同研究先の研究者などが発明に関与していた場合、正しい発明者を特定し、必要な権利譲渡を処理しておくことの重要性を示しています。発明者の確定と権利の譲渡を後回しにすれば、後の権利行使やライセンス交渉を大きく損なう可能性があります。
雇用契約書の文言が明暗を分ける現在譲渡と将来譲渡の違い
発明者が自社の従業員である場合、入社時に職務発明規定や雇用契約書にサインさせているから、個別の特許出願における譲渡手続きは後回しでも問題ないだろうと考えることがあります。しかし、米国では契約書の文言が実際の権利移転の時期や効果に大きな影響を与える場合があります。
これを示す代表的な事件が、Board of Trustees of the Leland Stanford Junior University v. Roche Molecular Systems, Inc.です。この事件では、大学の研究者が企業の施設で研究を行う際、企業との契約に署名していました。その契約には、一定の発明について権利を現在の時点で譲渡する趣旨の文言が含まれていました。
一方、研究者が所属する大学との契約には、職務に関する発明の権利について将来の譲渡を約束する趣旨の文言が使用されていました。
Federal Circuitでは、こうした文言の違いが権利移転の効果を判断する上で重要視されました。その後、最高裁判所は、Bayh-Dole Actによって連邦資金を受けた大学等に発明の権利が自動的に帰属するわけではなく、原則として発明者から権利が始まるという考え方を確認しました。
この教訓から、企業は従業員や外部委託先との契約において、単に将来譲渡するという約束にとどまらず、発明について適切な権利移転が生じる契約文言になっているかを法務部門や米国法の専門家と連携して確認することが重要です。そして、契約書の文言だけに依存せず、個別の特許出願について必要な譲渡書類を整え、適切に記録しておくことが安全な実務につながります。
継続出願および一部継続出願における譲渡記録の実務的取り扱い
米国特許制度には、親出願の開示内容を引き継いで新たなクレームを追求する継続出願や分割出願、さらに新しい技術事項を追加する一部継続出願など、特有の派生出願制度があります。ここでも、譲渡書類の取り扱いには注意が必要です。
米国特許商標庁の審査便覧によれば、親出願の譲渡は、親出願に含まれていた事項を対象とする継続出願や分割出願にも及ぶものとして扱われます。そのため、通常の継続出願・分割出願と、一部継続出願では譲渡記録の扱いが異なる可能性があります。
一部継続出願では親出願に含まれていなかった新しい技術事項を追加できるため、親出願時の譲渡がその新規事項までカバーするのかを確認する必要があります。MPEP上も、一部継続出願等について、新たな譲渡の記録が問題となる場合が示されています。ただし、2012年9月16日以降に提出された一部継続出願で、譲受人が当初から出願人となっている場合などには取扱いが異なるため、「一部継続出願では必ず新しい譲渡証書が必要」と一律に判断することは適切ではありません。
また、譲受人が米国特許商標庁において権利者として一定の手続きを行う場合には、37 CFR 3.73(c)に基づくstatement等により、譲受人としての権利関係を示す必要があることがあります。日頃から譲渡関係を整理していないと、継続出願その他の手続きを進める場面で、権利関係の確認に余計な時間がかかる可能性があります。
権利関係の不備が資金調達や知財デューデリジェンスに与える悪影響
ここまでは特許庁に対する手続き上のリスクを述べてきましたが、より大きな問題がビジネスの現場で顕在化することもあります。スタートアップ企業の資金調達や、企業間のM&A、あるいは技術の独占的ライセンス交渉などの取引において、買収側や投資側が知財デューデリジェンスを実施することがあります。
知財デューデリジェンスにおいて重要な確認事項の一つが、特許の権利の連鎖です。米国特許商標庁の記録や契約書等を通じて、特許・出願の譲渡関係が適切に整理されているか、必要な発明者の宣誓書等が揃っているか、漏れている共同発明者はいないか、従業員や外部関係者との権利帰属が適切に処理されているか、といった点が確認対象となります。
もし、譲渡手続きが後回しにされており、発明者がすでに退職済みで署名回収の見通しが立っていない重要特許が発見された場合、その特許の評価が引き下げられたり、追加の確認や是正を求められたりする可能性があります。権利帰属上の問題が重要な特許に及ぶ場合には、資金調達やM&Aの条件やスケジュールに影響することも考えられます。
また、投資契約やM&A契約では、知的財産の所有状況等について表明保証が設けられることがあります。実際の権利関係と表明保証の内容が一致していなければ、契約上の責任が問題になる可能性があります。特許権を重要な事業資産として位置付けている企業ほど、権利帰属の不備を軽視することはできません。
自社特許を収益につなげる次の一手
米国特許における発明者の正確な特定、宣誓書等の提出、そして譲渡証書の適切な作成・記録は、後回しにしてよい単なる事務作業ではありません。米国特許では、発明者から企業へと権利がどのように移転したのかが重要であり、ここを曖昧にすれば、第三者との権利関係、権利行使、そしてM&Aや資金調達といった重要なビジネス機会に影響する可能性があります。
次の一手として、まずは自社が保有する米国特許および係属中の出願の譲渡記録状況を総点検し、欠落している書類がないか確認してください。また、社内の雇用契約書や、外部パートナーとの共同研究契約書、秘密保持契約書などの条項において、将来の発明に関する権利移転が適切に規定されているか、法務部門や専門家と連携して見直すことも重要です。
権利関係が適切に整理された特許ポートフォリオを構築できれば、それは自社を守る盾となるだけでなく、利益を生み出す資産として活用できる可能性があります。株式会社IPリッチが提供する特許収益化プラットフォーム「PatentRevenue」では、このように適切に権利関係が整理された特許技術をベースに、ライセンスアウトや売却を通じたマネタイズを支援しています。自社の価値ある特許を確実に収益へとつなげるために、まずはPatentRevenueへのご相談・無料登録をご活用ください。
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(この記事はAIを用いて作成しています。)
参考文献リスト
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https://www.uspto.gov/web/offices/pac/mpep/s301.html - USPTO, MPEP 306 – Assignment of Division, Continuation, Substitute, and Continuation-in-Part in Relation to Parent Application
https://www.uspto.gov/web/offices/pac/mpep/s306.html - USPTO, MPEP 602 – Oaths and Declarations
https://www.uspto.gov/web/offices/pac/mpep/s602.html - USPTO, MPEP 604 – Substitute Statements
https://www.uspto.gov/web/offices/pac/mpep/s604.html - USPTO, MPEP 1303 – Notice of Allowance
https://www.uspto.gov/web/offices/pac/mpep/s1303.html - 35 U.S.C. §115 – Inventor’s oath or declaration
https://uscode.house.gov/view.xhtml?edition=prelim&num=0&req=granuleid%3AUSC-prelim-title35-section115 - 35 U.S.C. §261 – Ownership; assignment
https://uscode.house.gov/view.xhtml?edition=prelim&num=0&req=granuleid%3AUSC-prelim-title35-section261 - 35 U.S.C. §262 – Joint owners
https://uscode.house.gov/view.xhtml?edition=prelim&num=0&req=granuleid%3AUSC-prelim-title35-section262 - Ethicon, Inc. v. United States Surgical Corp., 135 F.3d 1456 (Fed. Cir. 1998)
https://law.justia.com/cases/federal/appellate-courts/F3/135/1456/507580/ - Board of Trustees of the Leland Stanford Junior University v. Roche Molecular Systems, Inc., 563 U.S. 776 (2011)
https://www.supremecourt.gov/opinions/boundvolumes/563BV.pdf

