成功報酬型で戦える特許とは?法律事務所・ファンドが見ている“勝てる案件”の条件

成功報酬型で戦える特許の条件を解説したインフォグラフィック。米国特許訴訟の高額な費用を踏まえ、法律事務所や訴訟ファンドが重視する「十分な損害賠償規模」「侵害を示す証拠性」「特許の有効性と相手方の支払い能力」の3条件を中心に、デューデリジェンスのポイント、主なリスク、勝てる案件に近づける準備ステップ、成功報酬契約や訴訟ファイナンスの仕組みを図解している。

株式会社IPリッチのライセンス担当です。自社の特許が第三者に無断で使用されている可能性に気づきながらも、米国での特許訴訟には莫大な費用がかかるという現実を前に、権利行使を諦めてしまう企業は少なくありません。しかし、米国では、初期費用を抑えて訴訟を進める「成功報酬型(コンティンジェンシー・フィー)」や、第三者が訴訟費用を拠出する「訴訟ファイナンス(サードパーティ・ファンディング)」が利用されています。

成功報酬の割合は契約条件によって異なりますが、回収額の一定割合を法律事務所に支払う設計が一般的であり、案件によっては30%から45%程度が設定されることもあります。ただし、法律事務所が負担する費用、訴訟の進行段階、敗訴リスク、実費の負担者などによって条件は大きく変わります。

本記事では、外部資金や成功報酬で動いてもらえる特許には、どのような市場性・証拠性・損害規模が必要かを整理し、実務上の有用な知見を提供します。

知財収益化は、企業が過去の研究開発への投資を回収し、次なるイノベーションにつなげるための重要な経営戦略です。株式会社IPリッチが運営する知財収益化プラットフォーム「PatentRevenue」では、休眠特許の売却やライセンスアウト、米国での権利行使に向けたパートナー探しまで、特許の価値を最大化するための選択肢を提案しています。

成功報酬型訴訟や訴訟ファイナンスの活用を見据えた案件評価なども支援しています。プラットフォームへの登録は無料ですので、自社特許のポテンシャルを確認したい方はぜひご登録ください。

\ その特許、放置したままではもったいない。特許番号と連絡先だけ 最短60秒! /

目次

結論:ファンドと法律事務所が投資を判断する重要条件

米国で成功報酬型の法律事務所や訴訟ファイナンスファンドを動かすためには、単に「特許が侵害されている可能性がある」というだけでは不十分です。法律事務所やファンドは、法律上の勝敗だけでなく、費用、回収可能性、訴訟期間などを含めた投資採算性から案件を評価します。

外部資金を引き出すための重要条件は、大きく3つに分けられます。

第一の条件は、十分な損害賠償規模、すなわち市場性です。訴訟ファイナンスでは、投資額、資金拘束期間、敗訴リスクを踏まえ、拠出費用を大きく上回る回収可能性が求められます。期待回収額が投資額の何倍必要かについて統一的な基準はありませんが、十分なリターンが残らない案件は投資対象になりにくいのが実情です。

第二の条件は、侵害を示す証拠性です。対象製品やサービスが特許請求項の各構成要件をどのように満たすかを示すクレームチャートが作成されており、公開情報や製品分析によって一定の立証ができることが重視されます。

第三の条件は、特許の有効性と相手方の支払い能力です。被告からIPRなどを申し立てられても維持できる可能性が高い特許であることに加え、相手企業に和解金や賠償金を支払える資力があることが必要です。

これらの条件が揃うことで、数百万ドル規模になり得る訴訟費用を、法律事務所や第三者ファンドと分担できる可能性が生まれます。

米国特許訴訟の費用と成功報酬が必要とされる背景

なぜ米国において成功報酬型や訴訟ファイナンスが求められているのかを理解するには、米国特許訴訟の費用構造を知る必要があります。

米国政府説明責任局(GAO)は、米国知的財産権法協会(AIPLA)の2023年経済調査を引用し、求める損害額の規模によっては、特許訴訟をトライアルまで進める費用の中央値が300万ドルを超えると説明しています。

特許訴訟では、裁判所への申立てだけでなく、証拠開示手続き(ディスカバリー)、電子データの収集・レビュー、ソースコードの解析、クレーム解釈、専門家証人の起用、損害額の分析などに多額の費用が発生します。争点となる特許や被告の数、対象技術の複雑さによっては、さらに費用が増加します。

加えて、米国の民事訴訟では、原則として各当事者が自身の弁護士費用を負担する「アメリカン・ルール」が採用されています。米国特許法285条により、例外的な事件では勝訴当事者への弁護士費用の支払いが命じられる場合がありますが、勝てば常に費用を相手から回収できるわけではありません。

資金力のある被告が広範な証拠開示や複数の申立てを行えば、特許権者側の負担が増える可能性もあります。従来の時間制報酬では、これらの費用と敗訴リスクを依頼者が負担します。そのため、中小企業や個人発明家が権利行使を進めるには、法律事務所や外部資金提供者とリスクを分担する仕組みが重要になります。

成功報酬と訴訟ファイナンスの制度設計

費用の壁を乗り越える代表的な手段が、法律事務所による成功報酬型契約と、第三者ファンドによる訴訟ファイナンスです。

成功報酬型契約とは、依頼者が通常の時間制報酬を支払う代わりに、勝訴や和解によって得られた回収金の中から、一定割合を弁護士報酬として支払う仕組みです。

成功報酬の割合は、案件のリスクや費用負担によって異なります。訴訟を最後まで進める案件では、回収額の30%から45%程度が設定される例もありますが、すべての案件に共通する相場ではありません。

完全成功報酬型(フル・コンティンジェンシー)の場合、法律事務所は多額の弁護士報酬を回収できないリスクを負います。ただし、裁判所費用、専門家費用、技術分析費用、出張費などの実費については、依頼者が負担する契約もあります。

通常の時間単価を一部支払いつつ、回収時に追加報酬を支払うハイブリッド型も存在します。フル・コンティンジェンシーより依頼者の負担は増えますが、法律事務所側のリスクが軽減されるため、採用可能性が高まる場合があります。

一方、訴訟ファイナンスは、訴訟の当事者ではない第三者が、弁護士費用や専門家費用などを提供し、回収に成功した場合に一定のリターンを得る仕組みです。

多くの訴訟ファイナンスはノンリコース型であり、回収がなければ、原則として特許権者が提供資金を返済する義務を負いません。ただし、契約違反、虚偽説明、表明保証違反などがある場合の扱いは契約によって異なります。

回収に成功した場合は、ファンドが投資元本と合意されたリターンを優先的に受け取り、残額を特許権者や法律事務所に配分する設計が用いられます。GAOが確認した契約の中には、特許権者への分配に先立って、ファンドが投資額の2倍から3倍を受け取る設計もありました。

GAOによれば、第三者資金を利用した特許訴訟は2019年以降大きく増加しています。Westfleet Advisorsの調査では、2023年の訴訟ファイナンスの新規コミットメントのうち、特許案件が19%を占めました。また、Unified Patentsは、2022年に提起された特許訴訟の約30%に第三者資金が関係していたと推計しています。

ただし、米国では資金提供契約の開示を一律に義務付ける連邦ルールがなく、市場全体の規模や利用件数を正確に把握することは困難です。

デューデリジェンスとクレームチャートの評価

法律事務所やファンドは、投資として訴訟を支援します。そのため、案件を持ち込む特許権者は、侵害の可能性、特許の有効性、回収可能性を示す必要があります。

実務上、特に重視される資料が「クレームチャート(侵害対比表)」です。クレームチャートとは、特許請求項の各構成要件と、対象製品やサービスの具体的な機能・構造を対比した文書です。

資金審査用のクレームチャート自体が直ちに裁判上の証拠や主張書面になるわけではありません。しかし、訴訟前の侵害分析の中核となり、訴訟開始後にローカルルールに基づいて提出する侵害主張書面の基礎にもなります。

ファンドの審査担当者は、各構成要件について、公開資料、製品マニュアル、技術仕様、実機調査、ソースコードなどのどの証拠で立証できるかを確認します。外部から確認できない内部処理に依存するクレームの場合、ディスカバリー前に侵害を立証することが難しく、評価が下がることがあります。

多数の特許を保有していること自体が、必ずしも有利に働くわけではありません。多数の弱い特許を並べるよりも、侵害立証が明確で、重要な製品をカバーし、有効性リスクが比較的低い特許に絞る方が、審査しやすい場合があります。

さらに、マークマン・ヒアリングと呼ばれるクレーム解釈手続を見据え、明細書、図面、審査履歴に照らして、クレーム文言がどのように解釈されるかも確認されます。

出願時の意見書で権利範囲を狭く説明していないか、関連訴訟やIPRで不利な解釈が示されていないか、先行技術との差異を一貫して説明できるかも重要です。

資金提供契約のコントロールと情報保護

デューデリジェンスを通過し、契約を結ぶ際には、「訴訟の主導権」「情報保護」「予算管理」の扱いを確認する必要があります。

第三者ファンドが関与する場合でも、原告である特許権者が、訴訟や和解に関する最終的な判断権を維持する契約が一般的です。GAOの調査でも、ファンドと法律事務所は、原告が最終的な和解判断を維持すると説明しています。

ただし、原告が自由に判断できることと、ファンドの意見が一切影響しないことは同じではありません。契約によっては、和解案を受け入れる前の協議義務、予算超過時の承認、資金提供の停止条件などが設けられます。

ファンドへの優先分配額が大きい場合、一定額以下の和解では特許権者にほとんど利益が残らない可能性もあります。資金調達前に、想定される複数の和解額について、各当事者への分配額を計算する必要があります。

また、審査段階では、特許の弱点、侵害分析、先行技術調査、損害額、訴訟戦略などの機密情報をファンドに開示することになります。そのため、開示前に秘密保持契約を締結し、提供する資料を段階的に管理することが重要です。

ファンドとの情報共有について、ワーク・プロダクト保護が認められた裁判例はあります。しかし、弁護士・依頼者間秘匿特権や共通利益法理の扱いは裁判所によって異なり、NDAを締結しただけで、すべての資料が自動的に開示対象外になるわけではありません。

資金提供者へ資料を渡す前に、どの情報を、誰から、どの目的で共有するかを米国弁護士と整理し、必要に応じて要約資料と原資料を分ける対応が必要です。

IPRなど権利行使に伴うリスク

成功報酬型や訴訟ファイナンスを利用できたとしても、特許訴訟には大きなリスクがあります。

重要なリスクの一つが、米国特許商標庁(USPTO)の特許審判部(PTAB)における当事者系レビュー(IPR)と付与後レビュー(PGR)です。

被告は、特許侵害訴訟への対抗策としてIPRを申し立て、先行特許や刊行物に基づいて特許請求項の無効を主張することがあります。IPRが開始された場合、PTABは原則として開始決定から12か月以内に最終書面決定を出します。申立てから開始判断までの期間を含めれば、全体でおおむね18か月前後になる場合があります。

2026年7月時点のUSPTOの公定費用では、20請求項までのIPR申立費用は23,750ドルであり、手続が開始された場合には28,125ドルの開始後費用が追加されます。これ以外に、弁護士費用、専門家費用、先行技術調査費用などが必要です。

ファンドや法律事務所は、地方裁判所での訴訟だけでなく、IPRへの対応費用も考慮して予算を組む必要があります。そのため、資金審査では、特許の審査履歴、既知の先行技術、関連する外国特許の調査結果、過去の無効資料などが精査されます。

また、訴訟の目的と和解方針の不一致もリスクです。米国の特許訴訟の多くは、トライアルに至る前に和解、取下げ、略式判決その他の形で終了します。

ファンドは、資金拘束期間と敗訴リスクを考慮し、合理的な時点での和解を重視する場合があります。一方、特許権者が差止めや事業上の目的を優先する場合、金銭回収を重視するファンドと利害が一致しない可能性があります。

訴訟を始める前に、最低限受け入れられる和解条件、ライセンスの範囲、差止めの必要性、訴訟を継続する期間について、特許権者、弁護士、ファンドの認識をすり合わせることが重要です。

損害賠償額と市場性の見極め

資金提供を受けるための大きなハードルが、損害賠償額と市場性の評価です。

特許権者は、侵害被疑製品の売上全体を基礎として損害額を計算したくなるかもしれません。しかし、特許技術が製品の一部だけに関係する場合、製品全体の売上をそのままロイヤルティ基礎額にできるとは限りません。

米国特許訴訟における代表的な損害算定方法には、「逸失利益(Lost Profits)」と「合理的実施料(Reasonable Royalty)」があります。

逸失利益を請求するには、侵害がなければ特許権者が販売できた数量や利益を立証する必要があります。特許権者と被告が直接競合していない場合や、代替製品が存在する場合には、立証が難しくなります。

合理的実施料は、仮に侵害開始時点で当事者がライセンス交渉を行っていたとすれば、どの程度の実施料で合意したかを推定する方法です。比較可能なライセンス契約、特許技術の重要性、代替技術、利益率などが考慮されます。

対象製品全体の売上を基礎とするEntire Market Value Ruleは、特許技術が製品全体の需要を生み出す場合など、限定的な条件で問題になります。複雑な製品の一部に特許技術が使われている場合には、特許技術が貢献する部分に損害基礎額を絞る按分が求められます。

ファンドは、この按分を考慮した現実的な損害モデルを基に投資採算性を判断します。売上規模が大きくても、対象となる機能の価値が小さい場合や、損害対象期間が短い場合には、期待回収額が大幅に下がります。

特許訴訟ファイナンスでは、複雑さと期間の長さから、500万ドル以上の資金需要がある案件を中心に検討するファンドもあります。ただし、すべてのファンドに共通する最低額ではなく、より小規模な案件を扱う資金提供者や法律事務所も存在します。

必要な資金額が大きいほど、期待される回収額も大きくなければ、特許権者、法律事務所、ファンドの全員に十分な利益が残りません。損害規模が不足する場合には、ハイブリッド型の報酬契約、複数被告への権利行使、ポートフォリオ型の資金調達、特許の売却やライセンスなど、訴訟以外の手段も比較する必要があります。

“勝てる案件”に近づけるための準備

米国における成功報酬型訴訟や訴訟ファイナンスは、資金力に限りのある企業が知的財産を守り、収益を獲得するための有力な選択肢です。

ただし、外部資金が利用できるのは、単に登録特許を保有している案件ではありません。侵害の証拠、特許の有効性、損害規模、被告の資力、訴訟予算、回収までの期間を総合的に評価した結果、十分な投資採算性があると判断される必要があります。

自社特許を収益につなげるための次の一手は、保有する特許ポートフォリオを客観的な視点で棚卸しすることです。

どの特許が市場で使われている可能性が高いかを確認し、初期的なクレームチャートを作成します。さらに、先行技術と審査履歴を調査し、特許の有効性リスクを評価します。

その上で、侵害対象となる製品、販売期間、対象地域、特許技術の貢献部分を特定し、按分を考慮した損害規模を試算する必要があります。

案件を法律事務所やファンドに提示する際は、特許公報を送るだけでは不十分です。特許権の帰属、残存期間、クレームチャート、侵害証拠、先行技術調査、損害試算、対象企業の資力などを整理した案件資料を準備することで、審査を進めやすくなります。

自社内での評価や、適切な法律事務所・ファンド探しに限界を感じた場合は、株式会社IPリッチの「PatentRevenue」をご活用ください。専門家の知見を交えた評価とマッチングを通じて、保有特許の収益化を支援します。

(この記事はAIを用いて作成しています。)

参考文献リスト
  1. U.S. Government Accountability Office, “Intellectual Property: Information on Third-Party Funding of Patent Litigation,” GAO-25-107214
    https://www.gao.gov/products/gao-25-107214
  2. United States Patent and Trademark Office, “USPTO Fee Schedule”
    https://www.uspto.gov/learning-and-resources/fees-and-payment/uspto-fee-schedule
  3. United States Patent and Trademark Office, “Inter Partes Review”
    https://www.uspto.gov/patents/ptab/trials/inter-partes-review
  4. American Intellectual Property Law Association, “2023 Report of the Economic Survey”
    https://www.aipla.org/home/news-publications/economic-survey/2023-report-of-the-economic-survey
  5. World Intellectual Property Organization, “U.S. Contingency Fees: A Level Playing Field?”
    https://www.wipo.int/en/web/wipo-magazine/articles/us-contingency-fees-a-level-playing-field-37140
  6. Legal Information Institute, “35 U.S. Code § 285 — Attorney Fees”
    https://www.law.cornell.edu/uscode/text/35/285
  7. Supreme Court of the United States, “Octane Fitness, LLC v. ICON Health & Fitness, Inc.”
    https://www.law.cornell.edu/supremecourt/text/12-1184
  8. Burford Capital, “Introduction to Legal Finance”
    https://www.burfordcapital.com/introduction-to-legal-finance/
  9. Burford Capital, “Patent & IP Litigation Financing”
    https://www.burfordcapital.com/what-we-do/disputes-we-finance/patent-ip/
  10. Fox Rothschild LLP, “Patent Litigation Funding: What You Need to Know”
    https://www.foxrothschild.com/publications/patent-litigation-funding-what-you-need-to-know
  11. Longford Capital, “IP Litigation Funding”
    https://www.longfordcapital.com/Portals/1/Documents/Longford_IP%20Litigation%20Funding.pdf
  12. Woodsford, “A Practical Guide to Patent Litigation Funding”
    https://woodsford.com/wp-content/uploads/2021/05/A-Practical-Guide-to-Patent-Litigation-Funding.pdf

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次