米国特許訴訟における「特許表示(マーキング)」の罠:35 U.S.C. §287が損害賠償額と収益化戦略に与える決定的影響

米国特許法35 U.S.C. §287の特許表示(マーキング)制度について、損害賠償の起算点、物理的マーキングと仮想マーキング、虚偽表示、ライセンス契約、和解時の注意点、収益化を守る実務対策を動物イラストで解説した図

皆様、こんにちは。株式会社IPリッチのライセンス担当です。本日は、米国で特許権を取得し、その権利をビジネスやライセンス交渉に活用しようとお考えの皆様に向けて、非常に重要でありながら見落とされがちな「特許表示(マーキング)制度」について詳しく解説いたします。米国特許法においては、単に特許を保有しているだけでは、過去の特許侵害に対する損害賠償を十分に回収できない可能性があります。本記事では、特許製品への適切な表示義務、警告状を送付するタイミング、そしてこれらが将来の賠償額にどのような決定的な影響を与えるのかを、最新の判例を交えながら平易な言葉で紐解いていきます。米国市場における知財戦略の強化に、ぜひ本記事をお役立てください。

企業の成長戦略において、「知財の収益化」は極めて重要なテーマとなっています。自社で開発した優れた技術や特許権は、単に他社の模倣を防ぐ防衛的な盾として機能するだけでなく、適切なライセンス供与や売却を通じて直接的な収益を生み出す強力な資産となります。しかし、この収益化を最大化するためには、本記事で解説するような米国特許法の細かな要件を確実に遵守し、権利の価値を毀損させないことが不可欠です。もし皆様が、保有する特許権の売却やライセンス供与による収益化をご検討されている場合、あるいは優れた特許技術の導入(ライセンス受け)を希望されている場合は、特許売買・ライセンスプラットフォーム「PatentRevenue」へのご登録をおすすめいたします。特許権の売買又はライセンスの希望者は無料でご登録いただけますので、知財の収益化戦略の第一歩としてぜひご活用ください。

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目次

米国特許における特許表示制度の基礎知識と目的

米国特許法に基づく特許権の行使や収益化戦略において、最も誤解されやすく、かつ特許権者にとって致命的な結果をもたらす可能性のある法的要件の一つが「特許表示(パテント・マーキング)」です。多くの特許権者や知財担当者は、米国特許を取得しさえすれば、侵害行為が発覚した際、自動的に過去の損害賠償を請求できると認識しがちです。確かに、米国特許法第286条は、提訴から過去最大6年間の侵害に対する損害賠償の請求を原則として認めています。しかし、この6年間という期間はあくまで理論上の最大値に過ぎません。実際にその全期間の損害を回収できるか否かは、米国特許法第287条が定める特許表示および通知の要件を厳格に満たしているかどうかに完全に依存しているのです

米国特許法第287条(a)は、特許権者またはそのライセンシーが特許で保護された物品を米国内で製造、販売、または輸入する場合、その製品に対して特許番号等の適切な表示を行うことを求めています。この制度の根底には、公衆に対する通知という極めて重要な公益的要請が存在します。判例によれば、マーキング要件には密接に関連する3つの公益的目的があります。第一に、公衆が特許で保護されていると知らずにその技術を模倣・実施してしまう「善意の侵害」を防止することです。第二に、自身の製品が特許で保護されていることを公衆に明示するよう特許権者に対してインセンティブを与えることです。そして第三に、市場に流通している物品が特許で保護されているか否かを、公衆が容易に識別できるように支援することです。特許権者がこれらの公益的義務を果たさない場合、そのペナルティとして過去の損害賠償請求権が厳しく制限されるという構造になっています

過去の損害賠償を左右する現実の通知と建設的通知の違い

特許法第287条は、損害賠償の起算点を決定するための通知として、二つの形態を規定しています。特許権者は、これらのいずれかの通知を完了させない限り、損害賠償の時計を動かすことはできません。それが「建設的通知」と「現実の通知」です。

建設的通知とは、特許製品に法律が定める方法で表示(マーキング)を行うことです。特定の侵害者への直接通告なしに、公衆全体への通知が完了したと法的に擬制されます。一度マーキングを開始した後は、流通する特許製品の実質的にすべてに対して、一貫して継続的に行われなければなりません。この要件を満たせば、最大過去6年間の損害を遡及して回収することが可能となります

一方、現実の通知とは、特許表示が行われていない場合に、特許権者が特定の被疑侵害者に対して、具体的な特許侵害の事実を直接的かつ肯定的に伝達することを指します。この通知には厳格な要件があり、単なる特許ポートフォリオの紹介や包括的なライセンス協議の打診では不十分です。対象となる特許番号と、それを侵害している特定の製品を明示して告発する必要があります。侵害訴訟の提起そのものも現実の通知を構成します。重要なのは、現実の通知が行われた時点からのみ損害賠償が発生し、それ以前の損害は一切回収できなくなるという点です

現実の通知が行われるまでの期間、侵害者がどれほど意図的に侵害を行っていたとしても、あるいは特許の存在自体を認識していたとしても、特許表示の欠如はそれらの主観的事情を凌駕し、過去の損害賠償を完全に遮断してしまいます。つまり、特許を知りながら悪意を持って模倣していた競合他社であっても、特許権者がマーキングを怠っていれば、過去の損害を支払う義務を免れることができるのです。

物理的マーキングから仮想マーキングへの移行とそのメリット

特許権者が建設的通知の利益を享受するためには、法律が定める厳格な方法に従って表示を実施しなければなりません。特許表示には、伝統的な物理的マーキングと、近年の法改正で導入された仮想マーキングの二つの手法が存在します

物理的マーキングは、製品そのものに「Patent」または「Pat.」の文字と特許番号を直接付す方法です。製品のサイズが極端に小さい場合や、製造上の制約から直接マーキングを行うことが過度な負担となる場合に限り、製品のパッケージやラベルへの表示が許容されます。しかし、物理的マーキングには、新たな特許が発行されたり既存の特許が失効したりするたびに、高額な金型の修正やパッケージの刷り直しが必要となるという経済的な欠点があります

これに対し、2011年の法改正(AIA)で導入された仮想マーキングは、製品またはパッケージに「Patent」または「Pat.」の文字とともに、無償で公開されているインターネット上のURLを記載する方法です。このURLにアクセスすると、どの製品がどの特許番号で保護されているかを関連付けたウェブページが表示される仕組みです。仮想マーキングは製造プロセスの変更コストを大幅に削減し、リアルタイムで特許情報を更新できるため、現在多くの企業で主流となっています。ただし、将来の訴訟において特定の期間に適切な表示が行われていたことを証明できるよう、定期的なアーカイブを残す強固な運用体制を構築することが求められます

虚偽表示のリスクとペナルティに関する注意点

マーキング要件を遵守する一方で、特許権者は過剰な表示による「虚偽表示(フォルス・マーキング)」の法的リスクにも注意を払う必要があります。虚偽表示とは、特許で保護されていない製品に「Patent」と表示したり、実際には出願を行っていないにもかかわらず「Patent Pending」と表示したりする行為であり、公衆を欺く意図を持って行われた場合に成立します

特許が期限切れを迎えた際や、製品の設計変更により特許クレームの範囲外となったにもかかわらず、漫然と古い特許番号を表示し続けることは、非常に危険です。過去には、この規定違反に対して製品1個につき高額な罰金が科され、無関係の第三者が政府に代わって訴訟を起こす事態が多発しました。現在では法改正により、虚偽表示に基づく民事訴訟を提起できるのは、その虚偽表示によって個人的な競争上の損害を被った競合他社等に制限されていますが、依然として注意すべきコンプライアンス上の課題です。このリスクを軽減するためにも、特許情報の更新が容易な仮想マーキングの導入が強く推奨されます。

方法クレームと特許表示要件の複雑な関係性

特許表示制度には、特許の性質に基づく重要な例外が存在します。それが「方法クレーム」に対する適用除外です。特許法第287条(a)は特許された「物品」へのマーキングを義務付けているため、製造方法や通信プロセスなどの方法クレームのみで構成される特許の場合、マーキングすべき物理的な物品自体が存在しません。そのため、裁判所は、特許がプロセスまたは方法のみに向けられている場合、マーキング義務は適用されないと一貫して判断しています。この場合、特許権者はマーキングを行っていなくても過去6年間の損害賠償を全額請求できる可能性があります

しかし、一つの特許の中に装置クレームと方法クレームの両方が含まれている場合は極めて危険です。訴訟において両方のクレームを主張した場合、あるいは過去にその特許を実施する製品を販売していた場合、装置に対するマーキング義務を怠っていれば、方法クレームを含むその特許のすべての過去の損害賠償が制限されてしまいます。訴訟の途中で装置クレームを取り下げて方法クレームのみに絞ったとしても、この制限から逃れることはできないとするのが最新の判例の傾向です

非実施主体に対する特許表示の落とし穴と最新判例

現在、米国の特許訴訟において実務家に最も深刻な影響を与えているのが、自らは製品を製造・販売しない非実施主体(NPE)に対するマーキング義務の適用範囲です。基本原則として、純粋な非実施主体は市場に製品を提供していないため、マーキング義務を負いません

しかし、この有利な立場は、非実施主体が第三者に特許の実施を許諾(ライセンスアウト)した瞬間に崩壊します。法律は、特許権者だけでなく「その者の下で」特許物品を製造、販売する者にもマーキングを求めているからです。ライセンシーが特許製品の販売を始めた時点で法的なマーキング義務が直ちに発生し、特許権者はライセンシーにマーキングを遵守させるための「合理的な努力」を行う義務を負います

この点で特許権者に致命的な打撃を与えたのが、連邦巡回控訴裁判所(CAFC)によるArctic Cat事件の判決です。この事件では、特許権者であるArctic Catがホンダに対して特許をライセンスしましたが、ホンダのマーキング義務を免除していました。ホンダは無表示で製品を販売し、その後Arctic Catは別の企業を提訴しました。裁判所は、被告側は「無表示の製品が存在すること」を指摘するだけでよく、それが特許の範囲外であること、あるいは適切にマーキングされていたことを証明する責任は特許権者側に転換されると判断しました。Arctic Catはこれを立証できず、過去の損害賠償請求権を完全に喪失しました

さらに厳しい判断を下したのがLighting Defense Group事件です。この事件では、ライセンシーがほんの一時期だけ無表示で製品を販売していた事実がありました。裁判所は、損害賠償対象期間内の「いかなる時点」であってもマーキング義務に違反した期間があれば、それ以前の義務がなかった期間を含め、現実の通知を行う前のすべての損害賠償請求権が消滅すると判示しました。特許表示の欠落は、文字通り過去の権利をすべて白紙に戻してしまうほどの威力を持っているのです。

ライセンス契約および和解契約における特許表示の重要性

さらに恐ろしいのは、非実施主体が過去に行った「訴訟の和解契約」が、将来のビジネスを破壊する時限爆弾になるという最近の動向です。非実施主体は通常、複数の企業を相手に訴訟を起こし、一部の企業とは早期に和解して資金を確保する戦略をとります。和解契約書には当然「侵害を認めない」という条項が含まれます。

しかし、Ortiz事件およびVDPP事件において、裁判所はこの従来の和解実務を根底から覆す判断を下しました。Ortiz事件では、過去の和解(訴訟の取り下げ)が実質的な「ライセンス付与」に該当し、和解相手がその後も無表示で製品を販売し続けたことで、特許権者にマーキング義務違反が成立したとみなされました。VDPP事件でも同様に、過去に結んだ11件もの和解契約にマーキング義務を課していなかったことが致命傷となり、特許権者の訴えは棄却されました。さらに恐ろしいことに、法的に回収不可能な損害を求めて訴訟を継続したとして、これらのケースでは特許権者や代理人弁護士に対して極めて高額な制裁金(相手方弁護士費用の支払い)が命じられています

過去の少額和解が、マーキング義務という導火線を通じて、将来の巨大な損害賠償請求権を食いつぶすだけでなく、企業にペナルティをもたらすという現実は、知財ビジネスに携わるすべての者が知っておくべき事実です

将来の知財収益化に向けた戦略的な特許管理のベストプラクティス

これまでの判例と法制度の分析から、米国特許の資産価値を守り、将来の収益化を最大化するために企業が採るべき具体的な防衛策が見えてきます。

まず、自社で特許製品を製造・販売する企業は、仮想マーキングへの全面的な移行を急ぐべきです。これにより、製品仕様の変更や特許の増減に即座に対応でき、意図しないマーキング漏れのリスクを大幅に削減できます。同時に、過去のウェブページを定期的にアーカイブし、証拠化する社内体制の構築が不可欠です

他社にライセンスを供与する企業や非実施主体は、契約書の文言に細心の注意を払う必要があります。将来の実施を許諾するライセンス契約を締結する場合、ライセンシーに対して米国特許法に基づくマーキングを法的義務として課す条項を必ず含めなければなりません。また、定期的な監査権を契約に盛り込み、実際にマーキング状況を確認した記録を残すことで、特許権者として「合理的な努力」を尽くしたという証拠を確保することが重要です

和解契約を結ぶ際にも、単に「侵害を認めない」とするだけでなく、「本合意は将来の特許実施を許諾するものではない」という免責条項を明記し、マーキング義務の発生リスクを遮断する工夫が求められます。米国で特許を取得しただけで安心してはならず、自社製品の管理、ライセンシーへの監査、和解契約の文言精査に至るまで、マーキング要件を軸とした一貫した知財マネジメントを行うことこそが、米国市場における知財収益化の絶対条件と言えるでしょう。

(この記事はAIを用いて作成しています。)

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