特許出願増加の背景とソフトバンクの影響

みなさん、こんにちは。株式会社IPリッチのライセンス担当です。今回は「特許出願増加の背景とソフトバンクの影響」というテーマでお話しします。本記事では、日本国内における特許出願件数が近年再び増加に転じた現状と、その背景にあるAI技術の台頭、およびソフトバンクグループの特異な特許戦略について分析します。特許出願が増える要因と今後の展望を、わかりやすく解説していきます。

目次

日本の特許出願件数増加の現状

まず、日本における特許出願件数の近年の推移を見てみましょう。日本の特許出願件数は長年減少傾向にありましたが、2021年頃からわずかながら持ち直し、2023年にはついに30万件の大台を回復しました。特許庁の統計によれば、2023年の国内特許出願件数は300,133件で、前年比約3.7%増と4年ぶりに30万件台を突破しました【1】。2020年は新型コロナウイルスの影響で大きく落ち込みましたが、2021年(+0.3%)、2022年(+0.1%)と僅かながら増加に転じ、そして2023年に成長率が大きく跳ね上がった形です。さらに2024年も特許出願件数は増加傾向が続き、前年より約6,700件増の30.6万件(約306,855件)に達しました【2】。このように2年連続で明確な増加が見られたのは近年では異例であり、コロナ禍で落ち込んだ出願件数が順調に回復しているようにも見えます【2】。

出願件数増加の内訳を見ると、日本を支える中小企業による出願も着実に伸びています。出願全体に占める中小企業の割合は近年上昇傾向にあり、2022年には全体の約14%を占めました【3】。以前は大企業偏重だった特許出願ですが、中小・スタートアップ企業の技術開発意欲の高まりもうかがえます。ただし、依然として出願件数の85%以上は大企業によるものであり、出願動向には大企業の戦略が大きく影響します【3】。つまり、特定の大企業の動き次第で、国内全体の出願件数に大きな変化が生じる可能性があるのです。

出願増加の背景:AI技術ブームと知財戦略

では、なぜこのように特許出願が増加に転じているのでしょうか。その背景には、近年の急速なAI(人工知能)技術の発展と各企業の知財戦略の変化が密接に関係しています。とりわけ2022年末から公開された生成AI(ジェネレーティブAI)技術――例えば高度な文章生成AIの登場は世界的な話題となり、日本企業もこぞってこの新技術への取り組みを加速させました。AIは今や産業や社会を変革する基幹技術と目されており、各社はAI関連の発明をいち早く特許として押さえることで将来的な競争優位を得ようとしています。まさに「AI時代の特許戦争」が静かに幕を開けた状況と言えるでしょう。

実際、AI関連発明の特許出願は日本でも増加傾向にあります。例えば国内のAI関連特許出願件数は2022年には約1万件にも上りました【4】。従来、ソフトウェアやAI分野の特許出願はハードウェア等に比べて慎重な動きも見られましたが、近年は企業が競ってAI技術の知財化に乗り出しています。その背景には「自社のAI技術を守りつつ、他社に先んじて技術標準を確立したい」という狙いがあります。特に生成AIのような新領域では、技術の進歩が早い分、知財面で先行した者が将来のビジネスをリードできる可能性が高まります。こうした状況下で、ソフトバンクグループが見せた動きはひときわ突出しています。次に、このソフトバンクの特許出願戦略について詳しく見てみましょう。

ソフトバンクの大量特許出願とその影響

日本の特許出願件数増加において、2023年以降ソフトバンクグループが果たした役割は極めて大きなものがあります。同社はAI技術分野の特許出願を爆発的に増やし、国内の出願動向を大きく塗り替えました。具体的には、ソフトバンクグループ(以下ソフトバンク)は2022年にわずか89件だった特許出願件数を、2023年には9,403件へと急増させています【4】。実に前年度比で100倍超という前例のない増加であり、一企業が一年間に出願した件数として国内史上例を見ない規模です。その結果、2023年の国内特許出願件数ランキングにおいて、長年トップ争いの常連だったトヨタ自動車(例年5,000~7,000件台)などを抑えて、ソフトバンクが初めて首位に立ちました。しかも、この急増分の大部分はAI関連の発明です【4】。国内全体で見ても、2022年の日本におけるAI関連特許出願が約1万280件程度だったことを考えると【4】、ソフトバンク一社でこれと同規模のAI特許を1年間で出願した計算になります。ソフトバンクがいかに突出した取り組みを行ったかが分かるでしょう。

このソフトバンクの大量出願によるインパクトは、国内全体の統計にも表れています。前述のとおり日本の特許出願件数は2023年から増加に転じましたが、その増加分の相当な割合をソフトバンクが占めているのです。ある分析によれば、2022年を基準とした2024年までの特許出願件数増加分(約17,000件強)のうち、約60%近くがソフトバンクによる出願で占められていたといいます【2】。言い換えれば、もしソフトバンクの動きがなければ国内特許出願件数の増加はごくわずかだった可能性もあり、それほど同社の影響は無視できない規模となっています。さらに注目すべきは、ソフトバンクの出願した特許の内容です。同社が一社で、しかもAI分野に集中してこれほど多数の出願を行った結果、類似した技術内容・実施形態の特許も数多く含まれているとみられます【2】。つまり実質的な発明のネタとしては数値ほど多くはない可能性も指摘されていますが、それでも知的財産として幅広く権利を押さえにいく戦略であることは明らかです。

では、ソフトバンクはいかにしてこれほど大量の特許出願を実現したのでしょうか。その背景には、全社を挙げたAIプロジェクト推進発明の創出促進策があります。ソフトバンクでは2023年5月から社内で「生成AI活用コンテスト」を開催し、社員からAI技術の活用アイデアを募集しました。その結果、2024年末時点で累計19万件ものアイデア提案が集まったとされ、社内には特許出願可能なネタが無数に蓄積されたのです。実際の出願にあたっては、社内の発明提案を迅速に特許にする体制が敷かれました。例えば、2023年9月19~20日のわずか2日間で約1,800件もの特許を一斉に出願するといった、極めて異例のスピード出願も行われています【5】。出願に関与した発明者(社員)の数も6,000人以上にのぼり、社員一人ひとりのアイデアをボトムアップ型で拾い上げ大量出願につなげたことがうかがえます。また、出願された技術分野も多岐にわたります。生成AIを軸に、テキスト生成・画像生成・音声認識、データ分析、RPA(業務自動化)などAI応用分野全般を網羅する勢いで特許が出願されているようです【5】。加えてソフトバンクは、自社社員だけでなく外部の人材のアイデアも取り込もうとしています。2025年8月からは学生を対象とした「ソフトバンク生成AI活用アイデアコンテスト」を開催し、優秀なアイデアを募る計画です。この学生コンテストでは、最優秀賞に1,000万円(総額2,000万円)の賞金が提供されるだけでなく、応募に際して新たに生まれた知的財産権(特許や著作権等)はすべてソフトバンクグループに譲渡される規定になっています。そして、その特許によって将来収益が生じた場合には、経費控除後の3分の1が応募者(学生側)に還元される仕組みです【6】。この画期的な取り組みからは、将来有望なAI関連の発明を学生からも取り込み、自社の特許ポートフォリオをさらに強化しようというソフトバンクの狙いが読み取れます。

ソフトバンクがここまで積極的にAI特許の取得に動く背景には、AIが将来のビジネスの鍵になるとの経営判断があります。同社の孫正義代表は、「AIは社会のあらゆる領域を変革する第四次産業革命の主役であり、この分野で主導権を握ることが重要だ」と繰り返し強調しています。そのために、競合に先駆けて広範なAI技術について特許を網羅的に確保し、市場での優位性と交渉力を高めようとしているのです。実際、ソフトバンクの知財戦略には明確な意図が見て取れます。初期段階で膨大な特許網を構築することで、他社が類似技術へ容易に参入するのを牽制すると同時に、自社の特許を交渉カードとしてライセンス供与や提携交渉で優位に立つ狙いがあります【5】。いわば「量」による知財の防御壁を築きつつ、それ自体を将来の収益源にしようという戦略です。さらに、ソフトバンクは通信事業で培った資金力を背景にAI関連のテクノロジー企業への投資も強化しています。自ら取得した特許群によって、そうした投資先企業の技術分野でも主導権を握り、将来の事業展開を有利に進める布石としているのです【5】。このように事業戦略と知財戦略を組み合わせた大胆な取り組みは、日本企業として極めて異例と言えますが、それだけAI時代の競争に本気で臨んでいる表れでしょう。ソフトバンクの突然の大量出願は他企業にも少なからず刺激を与え、「追随して自社もAI特許を強化しなければ」という機運を生みつつあります。今後、ソフトバンクに触発された他の大企業がAI分野の特許出願を加速させれば、日本におけるAI特許競争はさらに激化していくことが予想されます。

知財の収益化と今後の展望

特許出願件数の増加とソフトバンクの戦略的な動きから浮かび上がるのは、知的財産の価値に対する企業の意識の高まりです。技術革新が進む現代において、特許を取得すること自体が目的ではなく、それをいかに事業に役立て収益を生み出すかが重要になっています。ソフトバンクのケースでは、大量のAI特許を将来的な交渉力や収益源とする狙いがあると考えられますが、これは裏を返せば知財の収益化を念頭に置いた戦略と言えます。特許は権利化しただけでは利益を生みませんが、他社にライセンスして使用料収入を得たり、自社の事業で独占的に活用して競争優位を築いたり、あるいは売却して資金化したりすることで、初めて経済的な価値を発揮します。

昨今では、自社で使い切れない特許を他社にライセンスするオープンイノベーションの動きや、特許売買マーケットの整備も進んでいます。特に中小企業や大学などは、自ら事業展開するリソースが乏しくとも、保有する優れた特許を活用してもらうことで収益を得るチャンスがあります。特許出願件数の増加は、そうした知財取引の潜在的な市場も拡大していることを意味します。せっかく取得した特許も、眠らせていては宝の持ち腐れです。今後ますます競争が激しくなる知財の世界では、権利の取得活用による収益化の両輪が重要になるでしょう。

特にAIなど成長分野の特許は国内外から注目度が高く、上手く収益化すれば企業の重要な収入源となりえます。例えば、ソフトバンクが保有するAI特許群も、将来的にはスタートアップ企業へのライセンス提供や共同事業によってマネタイズされる可能性があります。また、自社では事業化しない技術であっても、特許として確保しておくことで他社への知財提供ビジネスが成立するケースも増えてきました。知財立国を目指す日本において、企業・研究者それぞれが「特許をどう収益に結び付けるか」を意識することがますます重要になっているのです。

もし皆さんが特許の保有者であり、その特許を活用して収益化したいとお考えでしたら、ぜひ弊社が提供する特許売買・ライセンスプラットフォーム「PatentRevenue」(https://patent-revenue.iprich.jp)をご活用ください。PatentRevenueでは、売却やライセンスしたい特許を無料で登録し、国内外の潜在的なニーズとマッチングさせることができます。大切な知的財産を適切に活用し、新たな収益につなげていきましょう。

(この記事はAIを用いて作成しています。)

参考文献リスト

  1. ’23年の国内特許出願数、4年ぶりに30万件突破 ~JPO Status Report 2024~, https://chizaioen.com/number-of-patents-2023/
  2. 営業秘密ラボ「日本の特許出願件数の推移とソフトバンクのAI特許出願」(2025年7月31日), https://www.xn--zdkzaz18wncfj5sshx.com/2025/07/ai.html
  3. 特許行政年次報告書2023年版 (特許庁), https://www.jpo.go.jp/resources/report/nenji/2023/index.html
  4. 声で聞く知財(コエチザ)「ソフトバンク、特許出願が前年の100倍越え。AI時代の特許戦争の始まり」(2025年7月26日), https://note.com/voice_chizai/n/n25b2bbcdfce4
  5. +VISION「ソフトバンクG、特許で覇権狙う 生成AI時代の知財マネジメント」(2025年6月20日), https://vision00.jp/topic/10672/
  6. ソフトバンクグループ プレスリリース「大学生・大学院生・高等専門学校生を対象とした『ソフトバンク生成AI活用アイデアコンテスト』を開催」(2025年7月11日), https://group.softbank/news/press/20250711
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