知財部門のための特許収益化KPI

株式会社IPリッチのライセンス担当です。
今回は知財部門の皆様に向けて、特許の収益化に関するKPI(重要業績評価指標)とそのベンチマークについて解説します。特許をどのように収益につなげ、その成功を測定するかは、多くの企業や起業家にとって重要なテーマです。本記事では、特許収益化とは何か、なぜKPIが必要か、具体的な指標例と業界の実態を包括的に紹介します。知財の収益化に取り組む方々の参考になれば幸いです。
特許収益化とは何か?
特許収益化とは、保有する特許権を活用して直接的な収入やビジネス価値を生み出すことを指します。特許は従来、自社製品・サービスの競争優位を守る盾としての役割が強調されてきましたが、それだけではありません。近年では特許そのものを収益源と捉え、積極的に「お金を生む資産」として活用する動きが広がっています。その代表的な方法には以下のようなものがあります【6】。
- ライセンス供与(特許ライセンス): 自社の特許を他社に実施許諾し、ロイヤリティ収入を得る方法です。独占的ライセンス(一社に独占的に許諾)と、非独占ライセンス(複数社に許諾)があります。それぞれ契約形態によって収入や市場への影響が異なります。
- クロスライセンス: 他社と互いの特許を交換し合う契約です。直接の収入には繋がりませんが、自社と相手双方が自由に技術を利用できるメリットがあり、将来的な訴訟リスク低減や開発促進につながります。
- 自社での製品化: 特許技術を自社製品やサービスに組み込み、その売上を通じて間接的に特許から収益を得る方法です。知財の力で製品競争力を高め、結果的に売上・利益増加を図ります。特許の価値を最大化する伝統的な活用法と言えます。
- 特許の売却: 特許権そのものを第三者に売り、売却益を得る方法です。将来のロイヤリティ収入を一括の資金に変えるイメージで、不要な特許の処分や資金調達手段として用いられます。
このように、特許収益化には複数の戦略があります。それぞれにメリット・デメリットや適した状況がありますが、共通する目的は知的財産を眠らせず収益につなげることです。実際、世界的に見ると特許を積極的にライセンスアウトして多額の収入を得ている企業も存在します。例えばIBMは1990年代後半以降、自社の特許ライセンス事業から年間10億ドル規模の収益を上げたことで知られています【3】。特許収益化は企業規模を問わず可能であり、スタートアップでも自社で使い切れない技術をライセンスして収益源にするケースがあります。
特許収益化とKPIが重要な理由
知財部門や経営者にとって、特許の収益化にKPIを設定し管理することはなぜ重要なのでしょうか。大きく分けて二つの理由があります。
一つ目は、投資対効果の可視化です。特許の取得・維持には出願費用や年金(維持費)など多大なコストがかかります。その投資に見合うリターンが得られているか評価するために、定量的な指標が欠かせません。多くの企業では研究開発費の一定割合を知財関連に投じていますが、それが収益(ロイヤリティや売却益)という形でどれだけ回収できているかを示す指標があれば、知財活動の正当性を社内外に説明しやすくなります。経営トップや投資家は知財活動が財務に与えるインパクト——例えばROI(投資収益率)がどれほど改善するか——に関心を寄せるため、KPIによる見える化が重要なのです【5】。
二つ目は、戦略のPDCA(計画・実行・評価・改善)を回すためです。特許の収益化は一朝一夕に成果が出るものではなく、長期的な取り組みです。しかし明確な指標がないと、何が成功を意味するのか曖昧になり、施策の優先順位付けや改善点の抽出が困難になります。KPIを定めて定期的に計測すれば、例えば「今年はライセンス収入が昨年比20%増加した」「保有特許のうち収益化できている割合が10%から15%に向上した」といった具体的な成果を把握できます。それにより、どの特許・分野が稼いでいるか、逆に成果の出ていない部分はどこかが見えてきます。これらのデータは今後の知財戦略の舵取り(例えば重点分野の見直しや不要特許の放出判断)に活用できます。
また背景として、大半の特許は収益化されていないという現実も指摘しておかなければなりません。実は取得された特許の中で、ライセンス供与や製品化によって収益を生み出しているものは一部に過ぎません。ある調査では「全特許の95%はライセンスされることも商業化されることもなく眠っている」とされています【2】。つまり特許資産の大部分は投資コストすら回収できていないのが現状なのです。こうした中で、自社の知財をいかに有効活用して収益につなげるか、その成果を客観的に測定する意義は大変大きいでしょう。KPIは、この困難な挑戦に対する進捗と成果を示す羅針盤の役割を果たします。
特許収益化の主なKPI
それでは、具体的に特許収益化の成功を測るにはどのような指標があるでしょうか。以下に主なKPIの例を挙げ、それぞれの意味を説明します。
- ライセンス収入額: 一定期間(通常年度単位)に特許ライセンスによって得られた収入の総額です。純粋な金額ベースの指標で、知財部門が直接生み出した収益として経営層にも分かりやすい数字です。例えば「年間ライセンス収入○○万円」などと表し、増減を見ることで収益化戦略の成果を評価します。企業によっては、この収入額をさらに分析し、特許1件あたり平均収入や技術分野別の収入内訳などをKPI化する場合もあります。
- ライセンス契約件数: 実施許諾契約の件数です。収入額と合わせて、「どれだけのパートナー企業とライセンス交渉を成立させたか」を示します。件数が増えることは、自社技術に興味を示す企業が増えたことを意味し、市場での技術需要の高さを表す一つの指標になります。ただし、件数だけでは一件あたりの規模が分からないため、平均ライセンス料(契約あたりの平均収入)などを補助的に見ることが望ましいでしょう。
- 特許ポートフォリオ収益化率: 保有する特許総数に対し、その中で実際に収益(ライセンス収入または売却益)を生み出している特許の割合です。例えば100件特許を持っていて、そのうち5件がライセンス契約等で収益を上げていれば収益化率5%となります。前述のように業界平均では5%前後とも言われる低い値ですが【2】、この指標をトラッキングすることで自社ポートフォリオの活用度がわかります。収益化率の向上は即ち“死蔵特許”の有効活用が進んでいることを意味します。
- ROI(投資収益率): 特許収益化におけるROIは、知財活動への投資に対してどれだけのリターンを得たかを示す指標です。計算式としては (特許による収益 – 特許関連コスト) ÷ 特許関連コスト で求め、パーセンテージで表します【4】。例えば特許取得・維持に年間100万円かけている部署が、ライセンス収入で年間150万円を得た場合、ROIは(150-100)÷100=50%となります。ROIがプラスで高いほど、知財への投資効率が良いことを意味します。逆にマイナスであれば投資額に見合う収益が得られていない状態です。ROIは単年度だけでなく中長期で追跡し、知財戦略全体の費用対効果を検証するのに有用です。
- 特許あたり収益・コスト: 単一特許または特許ファミリー単位で見た収益額やコスト額も重要です。例えば「一件あたり年間○○万円のライセンス収入がある特許の件数」や、「取得から現在までに○○万円以上の累積収益を生んだ特許数」などの形でモニタリングします。これにより、特に稼ぎ頭の特許はどれか、あるいはコスト倒れになっている特許はどれかを把握できます。上位の高収益特許に注目し、その共通点(技術分野や権利範囲の広さなど)を分析すれば、今後重点を置く技術領域の選定にも役立つでしょう。
以上のほかにも、企業によっては特許関連収入の売上比率(全社売上に対するライセンス収入の割合)や、特許流通(売買)による収益、訴訟で獲得した損害賠償額などをKPIに加えるケースがあります。特許を事業にどう位置付けるかにより、適切な指標は変わりますが、いずれも「知財がもたらす金銭的価値」を定量化しようとする試みです。
特許収益化KPIのベンチマークと業界動向
設定したKPIを評価するには、業界標準や他社事例との比較(ベンチマーク)も参考になります。ここでは、特許収益化に関するいくつかの指標について一般的な水準や注目すべきデータを紹介します。
まずライセンス収入額に関して、ハイテク業界の大企業では桁違いの実績を持つ例があります。前述のIBMは、1996年から2022年までの約26年間で累計270億ドル(日本円で数兆円規模)もの知的財産収入を計上しました【3】。近年は年間数百億円規模に落ち着いているものの、それでもIBMにとって特許ライセンスは主要な収益源の一つです。また通信分野ではQualcomm(クアルコム)のように、自社収益の半分近くを特許ライセンス料が占めるビジネスモデルも存在します(※Qualcommは2022年に約65億ドルのライセンス収入を得ています)。このような特例的な大手を別にすれば、一般の製造業で特許ライセンス収入が売上全体に占める割合は数パーセントにも満たないのが通常です。それでも、自社のコア技術を標準化して業界各社から広くライセンス料を得るケースや、大学・公的研究機関が技術移転で毎年数億円単位の収入を得ている例など、知財収益で黒字を計上する組織は着実に増えています。
次に特許ポートフォリオ収益化率について見てみましょう。繰り返しになりますが、全体としては多くの特許が未収益のままです。一般的な目安として、5%前後という数値がしばしば挙げられます【2】。つまり100件特許を持っていて実際お金を生んでいるのはせいぜい5件程度ということです。もちろん業種によって差はあります。ハードウェア製造業のように自社製品で特許を活かす業界では「自社実施率」は高くなりますが、他社へのライセンスという形で収益化している割合となるとそれほど高くありません。一方、大学や独立系の発明家など自ら製品化しない主体では、権利をライセンス・売却して収益化することが唯一の手段ですから、ポートフォリオ中収益化できた特許の比率がそのまま成功率と言えます。例えば米国のトップ大学では毎年数百件の特許出願に対し、ライセンス契約締結件数は数十件という報告もあります。わずかな割合でも継続的に収益化できていれば上出来であり、むしろ自社特許から何ら収入を得ていない企業の方が多数派なのです。この点で、自社の収益化率が業界平均を上回っているなら知財活用の効率は高いと評価できるでしょう。
さらに注目すべき視点として、「価値が高いのは現在進行形で侵害されている特許」というものがあります。少々皮肉にも聞こえますが、特許投資ファンドなどの間では「他社に無断使用(侵害)されている特許こそ潜在価値が大きい」と言われます【1】。第三者が権利を侵してでも使っている技術ということは、それだけ市場ニーズが実証されている特許ということです。そのような特許を権利者が保有していれば、侵害している企業とのライセンス交渉による使用料収入や、場合によっては訴訟による差止め・損害賠償で大きな利益を得られる可能性があります。実際、欧米には侵害されている有望な特許を見つけ出して買い取り、侵害企業からライセンス料を回収するビジネスモデル(いわゆる特許エンフォースメントやNPE=Non-Practicing Entityによる収益化)も存在します。したがって、自社の特許が他社に使われていないかチェックすることも重要なKPIの一環と言えます。もし侵害の事実が判明すれば、それをてこに収益化を図るチャンスが生まれるからです。
まとめ:KPIを活用した知財収益化戦略
特許の収益化KPIは、単なる数字の集計ではなく、知財戦略の羅針盤として機能します。KPIを定めて追跡することで、知財部門は自らの活動を客観的に振り返り、経営陣やステークホルダーにその価値を示すことができます。重要なのは、得られた指標を踏まえてアクションにつなげることです。例えば、「目標とするライセンス収入に届いていない」のであれば、有望な特許の追加ライセンス先を開拓したり、収益性の低い特許のコスト削減(権利放棄や売却)を検討するといった施策が考えられます。逆に「特定分野の特許が突出した収益を生んでいる」のであれば、その分野に類似の特許出願を強化したり、周辺技術を更に充実させて独占力を高める戦略も有効でしょう。
最後に、知財部門や発明者の方々に覚えておいていただきたいのは、特許は適切に活用して初めて価値が現実のものとなるということです。KPIはその活用度合いを測る定規ですが、測るだけで満足してはいけません。KPIで得た洞察をもとに行動を起こし、知財から生み出される価値の最大化を図ることが肝要です。
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(この記事はAIを用いて作成しています。)
参考文献
- 日本貿易振興機構(JETRO)ニューヨーク事務所『米国における知財の活用状況に関する調査報告書』(特許庁委託事業, 2025年3月) – https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Ipnews/us/2025/202503.pdf
- Jay Walker『特許制度が抱える課題:95%の特許が活用されていない』(WIRED寄稿, 2015年1月5日) – https://www.wired.com/2015/01/fixing-broken-patent-system/
- Jenner & Block ニュースレター「IBM No Longer Tops in Annual U.S. Patents Issued」(2023年2月) – https://www.jenner.com/en/news-insights/publications/ibm-no-longer-tops-in-annual-us-patents-issued
- Dennemeyer “Key metrics for analyzing Intellectual Property performance”(ブログ, 2021年11月22日) – https://www.dennemeyer.com/ip-blog/news/key-metrics-for-analyzing-intellectual-property-performance/
- 高野誠司特許事務所『チャレンジングな知財・無形資産KPI』(所長コラム, 2024年8月14日) – https://takano-pat.com/news/column-20240814/
- 弁理士法人 服部国際特許事務所『特許権の収益化(第1回)』(ブログ, 2024年9月10日) – https://www.hattori.co.jp/blog/特許権の収益化-第1回/

