特許侵害の警告状が届いたら取るべき対応策

株式会社IPリッチのライセンス担当です。
経営者や個人事業主の皆様の中には、突然「特許侵害の警告状」が届いて戸惑う方もいるでしょう。本記事では、特許侵害の警告を受けた場合に取るべき対応策について、専門家の見解や公的機関の情報を基にわかりやすく解説します。特許の基礎知識から具体的な対処ステップまで網羅していますので、落ち着いて適切に対応するための参考にしてください。
特許侵害の警告状とは何か?
まず「特許侵害の警告状」とは、他者(特許権者)が自社の製品やサービスが自分の特許権を侵害していると主張し、その侵害行為を止めるよう要求する正式な書面です。多くは内容証明郵便で送られ、弁護士や弁理士の名前で送付されてきます。その警告状には通常、次のような内容が含まれています[1]:
- 特許の特定: 問題となっている特許の番号や名称、出願日など特許権の情報
- 侵害行為の指摘: 貴社のどの製品や行為が特許権を侵害すると考えられているか(例:○○という製品の製造・販売行為など)
- 要求事項: 特許権者からの要求内容。典型的には、当該製品の製造・販売の停止(差止め)や、過去の販売分に対する損害賠償の支払い、今後継続する場合はライセンス契約の締結などが求められます[1]。場合によっては、これまでの販売数量や売上額の開示、特許侵害についての見解を示すよう求める文言が含まれることもあります。
- 回答期限: 一般的に警告状には「〇日以内に回答せよ」といった期限が設けられています。例えば到達から2週間程度の回答期限が設定されるケースが多く見られます[1]。
このように、警告状は特許権者からの公式なクレームであり、放置すれば法的紛争に発展しかねない重要な書面です。単なる迷惑メールや詐欺ではなく、法的根拠に基づく通知ですので、受け取った際には真摯に向き合う必要があります。
特許侵害の警告状を受け取った際の基本対応
突然警告状が届いたとしても、まずは落ち着いて行動することが大切です。以下に、受け取った直後に取るべき基本的な対応策をまとめます。
- 内容と差出人の確認: 警告状の差出人が誰なのか(特許権者本人か代理人の弁護士・弁理士か)を確認し、警告内容をしっかり読み込みます。どの特許権が問題とされているのか、その特許権が現在有効か(存続期間が切れていないか)も確認しましょう。特許番号が記載されている場合は、特許庁のデータベース等で権利状況(有効期限や権利者情報)を調べることをおすすめします。
- 期限の把握と対応方針の準備: 警告状に回答期限が明記されている場合、その期限をカレンダーに記入し、速やかに社内外の関係者と対応を協議します。期限までに十分な検討時間が取れない場合は、回答期限の延長を依頼することも検討してください。法律上、警告状への回答義務はありませんが[1]、期限まで放置すると相手方が「無視された」と判断して早期に訴訟に踏み切る可能性があります[1]。そのため、「現在内容を精査しているが検討に時間を要するため、回答期限を延長してほしい」といった旨を先方に連絡することがあります[1]。
- 決して無視しない: 警告状を無視することは避けるべきです。確かに、日本の法律では訴訟前に警告状を送ること自体は必須ではなく、警告状を無視したことをもって直ちに法的不利益を被るわけではありません[1]。しかし、警告を無視すれば特許権者は他に手段がなくなり、裁判を起こす以外に道が無くなってしまいます[1]。特に「自社は侵害していない」と確信がある場合でも、何の連絡もせず放置すれば訴訟を誘発するリスクが高まります[1]。不要な争訟コストやビジネスの混乱を避けるためにも、相手に何らかのリアクションは示すのが無難です。
- 社内で初期対応策を協議: 経営陣や開発担当者、法務担当者が集まり、まず事実関係の共有と方針の検討を始めます。自社で特許に詳しいスタッフがいれば状況分析を依頼しましょう。自社製品や技術のどの部分が指摘されているのか、該当製品の設計図や仕様書を用意し、何が問題視されているかを洗い出します。
- 専門家への相談: 警告状への対応には専門的な知識が必要となるため、できるだけ早期に弁護士・弁理士など知的財産の専門家に相談することを強くおすすめします[3]。経験豊富な専門家であれば、特許の技術内容の分析から法的なアドバイスまで一貫して対応策を検討してくれます[3]。日本弁理士会などでは中小企業や個人向けに知財に関する無料相談会も開催されていますので、そうした制度を利用するのも良いでしょう。専門家の助言を仰ぐことで、後述する侵害の有無や無効理由の検討を的確に行い、ベストな方針を立てやすくなります。
以上が初動対応の基本です。次に、具体的に何を検討し、どのようなステップで対応していくべきかを見ていきましょう。
特許侵害の警告状への具体的な対応策
警告状に対処する際には、大きく分けて「事実関係の調査・分析」と「対応方針の決定・実行」の段階があります。以下では、適切な対応策をとるための具体的なステップを順を追って説明します。
①事実関係の確認と証拠保全
まずは基本に立ち返り、事実関係をしっかり確認します。警告状に記載された特許番号や発明の名称、権利者名を改めてチェックし、その特許の内容を精査しましょう。特許公報や特許庁のデータベースで特許請求の範囲(クレーム)や明細書を入手し、その技術内容や権利範囲を把握します。
次に、自社の製品・サービスの情報整理です。警告対象となっている製品やサービスについて、設計図、仕様書、マニュアル、販売記録など関連資料を収集し、どのような機能・構成を持つかを明確にします。可能であれば、警告状で問題視されている部分がどこか(製品のどの機能や工程か)を特定し、それに関する技術的資料を用意します。
また、後々の紛争に備え、証拠保全の観点からも初動で記録を残すことが重要です。警告状自体のコピーや、封筒・郵便消印、送付日時の記録などはしっかり保管してください。自社内で関係者とやり取りした議事録やメモも、後で役立つ場合があります。
②自社行為が特許侵害に当たるかの検討
次に行うべきは、「自社の行為が本当に特許権の侵害に該当するのか」を専門的に分析することです。特許侵害が成立するためには、特許請求の範囲に記載された発明の構成要件(要素)を、こちらの製品や行為がすべて満たしている必要があります[3]。裏を返せば、一つでも満たさない要素があれば法的には非侵害と主張できます。
この検討のために、専門家は通常クレームチャートと呼ばれる対応表を作成します[1]。特許のクレームを項目ごとに分解し、自社製品の構成・手段と照らし合わせて、どの要素が該当し、どの要素が該当しないかを整理します[1]。特許文献の表現は一見難解ですが、一つ一つの用語を丁寧に読み解き、自社の技術と比較検討する作業が重要です。
この過程で、「自社製品には特許クレームに記載の○○という要件が存在しない」等の非侵害理由が見つかることも少なくありません[3]。例えば、特許クレームが「Aという構成とBという構成を備える装置」と定めているのに対し、自社製品にはBに相当する部分がない場合などです。その場合、特許権侵害は成立しない可能性が高くなります。
他にも検討すべき点として、自社がその技術を正当な権限の下で実施している場合があります。もし相手特許について以前から実施許諾(ライセンス)を正式に得ていたり、あるいは自社が当該発明を相手よりも先に開発・実施していた場合(先使用権の主張)など、特許権侵害にならない事情がないかも確認しましょう[3]。これらの要素も含め、専門家とともに総合的に侵害の有無を評価します。
③相手特許の有効性(無効理由)の検討
仮に自社製品が特許クレームの技術的範囲に入っている可能性がある場合でも、次に検討すべき重要な点があります。それは相手の特許権自体が有効かどうかという点です。特許権は特許庁の審査を経て成立しますが、それでも見落とされた先行技術が存在し、その特許の新規性や進歩性を否定するような場合には、特許無効の理由(無効事由)となり得ます。
日本の特許法では、「無効事由のある特許権は行使できない」という規定があります(特許法第104条の3)[1]。つまり、こちらがその特許に無効理由を見出した場合、特許権者による差止め請求や損害賠償請求に対し「その特許は無効になるべきものなので権利行使できない」と主張することが可能です[4]。
そのため、警告状を受け取った際には無効資料の調査も重要な対応策となります[1]。具体的には、特許の出願よりも前から存在する類似技術や文献(特許文献や学術論文、製品カタログなど)を調べ、特許クレームと同じ内容、または非常に近い内容がないかを探します。もし強力な先行技術が見つかれば、「特許権者は十分な無効調査をしないまま警告している可能性がある」と判断できます[1]。現実には、特許権者側も警告の際に完全な無効調査までは行っていない場合があり、特に中小企業や個人の特許権者ではその傾向が強いと考えられます[1]。
有力な無効資料が見つかった場合、こちらの対応策としては二つの方向性があります。一つは特許無効審判を特許庁に請求し、正式に特許を無効にする手続きをとることです。無効審判には時間と費用がかかりますが、成立すれば相手の特許権は初めから存在しなかったことになります。もう一つは、無効資料の存在を交渉材料として相手に示し、「無効審判を請求しない代わりに低額でライセンスしてほしい」といった和解交渉に活用する方法です[4]。実際、特許の無効可能性を示すことで相手方に訴訟提起を思いとどまらせたり、ライセンス契約の条件を有利に引き出せる場合もあります。
④今後の対応方針の検討
侵害の有無と特許の有効性について一定の見解がまとまったら、次に対応方針を決定します。大きく分けて、自社のスタンスとしては「非侵害を主張して争う」か「相手と和解・ライセンス交渉を行う」かの二択になりますが、ケースに応じて柔軟に判断します。
- 非侵害を主張する方針: 自社として特許は侵害していないと結論づけた場合、この立場を貫き、相手に対して非侵害を主張していく方針です。具体的には、相手に送る回答書で「弊社製品は貴殿の特許権を侵害していないと考えております」という旨を伝えます。その際、法的義務はありませんが可能であればその理由(例えば「当該製品には特許請求の範囲に記載の〇〇がないため非侵害です」等)も簡潔に示すと、相手方を納得させやすくなります[1]。回答内容が説得力のあるものであれば、特許権者がそれ以上の追及を断念することも期待できます[1]。なお、非侵害であるとの回答書を送った後、特許権者がそれでも納得しない場合には、特許権者側から民事訴訟(差止めや損害賠償請求)が提起される可能性があります。その場合に備え、こちらも準備を進めておく必要があります(証拠の整理や反論資料の用意など)。
- 和解・ライセンス交渉を行う方針: 自社製品が特許侵害に該当する可能性が高い場合、ビジネス上その製品を継続する必要があるかを検討します。製品の継続が重要であれば、特許権者との間でライセンス契約の締結や和解交渉による解決を図ることが現実的です[4]。例えば、今後の製品販売について一定のロイヤリティを支払って実施許諾(ライセンス)を受けることで合意し、過去の侵害分については和解金を支払う、といった形で解決するケースがあります[4]。この場合、双方で和解契約書を取り交わし、再発防止の取り決め(例:将来その特許について争わない、など)を明確に定めておきます[4]。一方、侵害の疑いがある製品のビジネス上の重要度が低く、代替手段がある場合には、製品の改良や販売中止によって特許回避を図る選択肢もあります。「設計変更を行うので訴えないでほしい」という交渉も成立する場合があります。その際も、将来的に再度問題とならないよう、相手方との間で合意内容を書面化しておくことが望ましいでしょう。
いずれの方針をとるにせよ、相手との交渉は慎重に進める必要があります。特許権者とのやり取りは可能な限り書面やメールで行い、記録を残すようにします[1](電話だけでの口頭交渉は、言った言わないの争いになる可能性があるため避けるのが無難です[1])。また、感情的な応酬は避け、ビジネス上の判断として冷静に対処しましょう。
⑤警告状への回答と交渉の進め方
対応方針が決まったら、特許権者への回答書の送付を検討します。回答書は必ずしも内容証明郵便で送る必要はありません。通常の郵送やメールでも構いませんが、後日の証拠として内容が残る方法を選びましょう[1]。回答書には、自社の立場を明記します。非侵害を主張する場合はその旨を、和解の意思がある場合はその旨を丁寧に伝えます。
もし警告状に侵害の具体的根拠(どの部分がどのように特許を侵害しているかの説明)が書かれていない場合、こちらから根拠の開示を求めることも重要です[1]。本来、特許侵害の立証責任は特許権者側にあります[1]。根拠の不明なまま一方的に回答を求められている状況であれば、「侵害か否か判断するために貴社特許発明と当方製品のどの点が対応するのか、ご見解を示してください」と依頼することも正当な対応です[1]。相手が確固たる侵害の証拠を持っていない場合、この要請により相手側の主張を弱めることができます。
また、警告状で販売数量や売上高の開示を求められる場合もあります[1]。法的に開示義務はありません。しかし、もし当該製品の販売数量が僅かで損害賠償額もごく小さいと見込まれる場合には、敢えてその情報を開示する戦略も考えられます[1]。損害額がごくわずかであると示せれば、特許権者にとって訴訟を提起するメリットが乏しくなり、追及を断念する可能性もあります[1]。ただし、相手が損得抜きで権利行使に固執するケースもあり得るため、この点は専門家と相談して判断してください[1]。
交渉が進む中で、両者の主張が平行線をたどる場合も少なくありません[1]。お互いに譲れない場合、最終的には裁判所に判断を仰ぐほかなくなることもあります[1]。しかし、訴訟は時間・費用の負担が大きいため、可能な限り交渉で解決するに越したことはありません。必要に応じて、裁判外紛争解決手段(ADR)として日本知的財産仲裁センターなど第三者機関の調停・仲裁サービスを利用することも検討しましょう。中立的な専門家の仲介によって合意点を見出せるケースもあります。
⑥専門家・公的制度の活用
前述のとおり、知財専門の弁護士・弁理士のサポートは非常に有用です。加えて、日本には特許紛争の解決や予防に役立つ公的な制度も存在します。その代表が特許庁の「判定制度」です。判定制度とは、特許庁に対して「ある製品や方法が特定の特許権の技術的範囲に属するか否か」について公式な判断(判定)を求める制度です[2]。例えば、特許権者と被疑侵害者との間で見解が対立している場合に、特許庁の審判官が中立的立場で技術的範囲の該当性について判定を下してくれます。
判定制度を利用すると、特許庁から判定書という書面が交付されます。この判定書は、特許権者側から見れば相手に警告する際の裏付け資料になりますが、逆に警告を受けた側にとっては反論の根拠資料として利用することも可能です[2]。つまり、「特許庁のお墨付き」で自社製品は非侵害だという判断を得られれば、それをもとに特許権者に警告の撤回や交渉での有利な条件を引き出すことが期待できます。
判定結果自体に法的拘束力はありませんが、裁判になった場合に技術的判断の一資料として提出することもできます[2]。また、判定制度を利用する前提で特許権者と「判定に従う」契約を結んでおけば、判定結果に沿った迅速な和解解決も図れます[2]。費用も訴訟より低廉なため、特許紛争の早期解決手段として有効に活用できるでしょう。
この他にも、前述のADRの利用や、場合によっては差止請求権・損害賠償請求権不存在確認訴訟(被疑侵害者側から起こす訴訟で、自社が侵害していないことの確認を求める)といった法的手段もあり得ます[4]。しかし、これらは専門家の判断を仰ぎつつ、最終手段として検討すべきものです。まずは交渉や公的制度で解決を図り、それでも決着しない場合に裁判を検討するという流れが一般的です。
まとめ:適切に対応し、将来に備える
特許侵害の警告状を受け取った場合の対応策について、ポイントを整理しました。大切なのは「放置せず、慌てず、専門家の力を借りて冷静に対処する」ことです[3]。適切な対応を取れば、警告状は必ずしも事業の終わりを意味するものではありません。非侵害を立証できれば訴訟を回避できますし、仮に侵害していたとしても交渉次第で事業継続の道が開けます。
また、この機会にぜひ考えていただきたいのは、自社の知的財産戦略を強化することです[3]。自社が苦労して開発した技術については、できるだけ特許や実用新案、意匠などで権利化することを検討しましょう[3]。自社に特許権があれば、逆に相手から警告を受けにくくなったり、万一警告を受けてもクロスライセンス交渉で有利に働く場合があります。知的財産は攻めにも守りにも使える「企業の盾」です。今回のようなトラブルを教訓に、ぜひ自社の知財戦略を見直してみてください。
最後になりますが、特許権のライセンス交渉や売買による解決を図りたい場合は、弊社が運営する特許売買・ライセンスプラットフォーム「PatentRevenue」(https://patent-revenue.iprich.jp)へのご登録をご検討ください。PatentRevenueでは、特許の権利売買やライセンス契約のマッチングを支援しており、円滑な紛争解決やビジネス機会の創出にお役立ていただけます。
(この記事はAIを用いて作成しています。)
参考文献:
- 特許紛争と対策, 特許庁・発明協会アジア太平洋工業所有権センター(2011), https://www.jpo.go.jp/news/kokusai/developing/training/textbook/document/index/Patent_Dispute_and_Countermeasures2011_jp.pdf
2. 特許権侵害の警告書に対応する義務はあるか。警告書の内容・法的効果(時効中断効)と対応方法, 笠原基広弁護士(知財FAQ), https://chizai-faq.com/1_patent/4207
3. 特許庁判定制度ガイドブック ~権利の侵害・非侵害でお悩みの方に~, 特許庁審判部 (令和5年12月), https://www.jpo.go.jp/system/trial_appeal/shubetu-hantei/document/hantei-seido-guidebook/hantei_all.pdf
4. 権利侵害の警告書が来たら…, 東京綜合知的財産事務所オフィシャルサイト, https://www.tokyo-ip.jp/category/1230469.html

