米国でPatent Pendingと表示してよいタイミングと虚偽表示リスク・実務上の対策

米国でPatent Pending(特許出願中)と表示できる期間を、仮出願・本出願・PCT国際出願、表示できない例、虚偽表示リスク、契約実務、出願中技術の活用戦略とともに解説した図

株式会社IPリッチのライセンス担当です。

自社の優れた技術や新製品を米国市場で展開する際、投資家や取引先に対して自社の技術的優位性をアピールするツールとして「Patent Pending(特許出願中)」という表示があります。しかし、米国特許実務において、仮出願や本出願の後に具体的にいつからこの表示を開始してよいのか、また、出願が失効・放棄された後も表示を続けるとどのようなリスクがあるのかについて、正確に理解している方は決して多くありません。実態と異なる表示を、公衆を欺く目的で行えば、米国特許法上の虚偽表示として法的リスクが生じます。本記事では、いつからPatent Pendingと表示できるのか、Webサイトや製品資料でどう表現すべきかを実務目線で徹底的に解説します。

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目次

米国でPatent Pendingを表示してよい具体的なタイミング

米国において製品やWebサイト、広告資料に「Patent Pending」または「Patent Applied For」と表示する基本的な前提は、対象となる発明について実際に特許出願が行われ、その出願が係属していることです。実務上は、USPTOへの出願後、Filing Receiptなどによって出願番号と出願日を確認した段階で表示を開始する運用が安全です。

具体的には、米国特許法第111条(b)に基づく「米国仮出願(Provisional Application)」を行った場合、正式なクレームや宣誓書が要求されない簡易な出願であっても、「Patent Pending」の表示を使用できます。USPTOも、仮出願によって発明について「Patent Pending」という表示を使用できることを明示しています。ただし、仮出願自体は実体審査されず、原則として出願日から12か月で放棄されます。

また、米国特許法第111条(a)に基づく通常の「本出願(Non-provisional Application)」についても、出願が係属している間はPatent Pendingと表示できます。特許協力条約(PCT)に基づく国際出願についても、米国を指定した国際出願は、国際出願日から米国の国内出願としての効果を有します。その後、米国国内段階へ適切に移行して係属が継続している場合も、引き続きPatent Pending表示の根拠となります。

一方で、「現在、特許事務所に依頼して出願準備中である」にすぎない場合や、仮出願から12か月が経過し、後続する出願もなく仮出願が放棄された場合などは、Patent Pendingと表示する根拠がありません。また、特許が発行され、対象技術について他に係属中の関連出願が存在しない場合には、Patent Pendingではなく発行済み特許に対応した表示へ切り替えることが適切です。

Patent Pending表示がもたらすビジネス上の意義と基本知識

「Patent Pending」というステータスは、その表示自体によって特許権が発生するものではなく、他者の模倣を直接的に差し止める権利が直ちに得られるわけでもありません。それにもかかわらず、多くの企業がこの表示を製品等に付与するのには、明確なビジネス上の理由が存在します。

第一に、投資家や取引先に対するマーケティング効果です。Patent Pendingの表示は、その技術について実際に権利化手続を進めていることを示すことができます。ただし、特許が最終的に成立することや、その製品の革新性・独自性が法的に保証されていることまで意味するものではありません。

第二に、競合他社に対する抑止効果です。競合が類似製品の開発を検討した際、「Patent Pending」の表示を見れば、将来的に特許が成立する可能性を考慮することになります。結果として、競合他社が特許出願の内容を確認したり、研究開発の方向性を検討し直したりする契機になる可能性があります。

第三に、米国特許法における「仮保護の権利(Provisional Rights)」との関係です。特許出願は一定の例外を除き原則として早期の優先日から18か月後に公開され、公開されたクレームと最終的に登録されたクレームが実質的に同一であることなどの要件を満たした場合、特許権者は特許発行後に、公開から登録までの一定の侵害行為について合理的な実施料相当額を請求できる場合があります。ただし、35 U.S.C. §154(d)に基づくこの権利には、相手方が公開された特許出願について実際の通知を受けていることなどが必要です。単に製品へ「Patent Pending」と表示しただけで、この通知要件が当然に満たされるわけではありません。

米国特許法における表示制度と虚偽表示規定の構造

米国特許法において、特許表示に関する規定は大きく2つの側面に分かれています。一つは、発行済み特許について損害賠償との関係を定める「マーキング要件(米国特許法第287条)」であり、もう一つは不適切な表示を規制する「虚偽表示(米国特許法第292条)」に関する規定です。

米国特許法第287条は、特許権者等が特許製品を製造・販売する場合について、「Patent」や「Pat.」と特許番号を表示することなどによって公衆へ通知する制度を設けています。§287が適用される場合に適切なマーキングを行わなければ、侵害者に実際の通知を行う前の期間について損害賠償を回収できないことがあります。

一方で、本記事のテーマである「Patent Pending」に直接関係するのが、米国特許法第292条の虚偽表示規定です。この条文は、対象について特許出願が行われていないにもかかわらず「Patent Applied For」や「Patent Pending」と表示することや、出願が行われていてもすでに係属していない状態でそのような表示を、公衆を欺く目的で行うことを規制しています。したがって、単なる管理ミスと、出願が存在しない・係属していないことを認識しながら欺く目的で表示する場合は区別して考える必要があります。

Webサイトや製品資料での実務的な表示方法とステータス管理

ここからは、実務担当者が直面する具体的な疑問に答える形で、Webサイトや製品資料における「Patent Pending」の運用方法を解説します。

表示を開始するタイミングは、対象となる特許出願が実際に行われ、係属していることを確認できた段階です。実務的には、弁理士や特許法律事務所から出願完了の報告やFiling Receiptを受けた後、マーケティング部門やWeb制作部門に指示を出し、表示を開始する方法が安全です。表現としては、「Patent Pending」あるいは米国出願であることを明示する「U.S. Patent Pending」などが考えられます。

表示を終了・変更するタイミングは、最も実務上のリスクが潜むポイントです。特許が発行され、対象製品に関係する他の係属出願が存在しない場合には、Patent Pendingの表示を見直し、発行済み特許に対応したマーキングへ切り替える必要があります。また、出願が放棄されるなどして対象となる出願がもはや係属していない場合には、Patent Pending表示を削除する必要があります。

このステータス変更に伴う表示の切り替えを物理的な製品の金型やパッケージだけで管理することは、コストと時間を要します。発行済み特許については、2011年のLeahy-Smith America Invents Act(AIA法)によって導入された「バーチャル・マーキング(Virtual Marking)」を利用できます。

35 U.S.C. §287(a)のバーチャル・マーキングでは、製品本体に「Patent」または「Pat.」という言葉とともに、製品と対応する特許番号を確認できる公開されたインターネットページのアドレスを表示する方法が認められています。ただし、この制度は発行済み特許のマーキングに関するものであり、Patent Pending表示そのものの法的要件を定めた制度ではありません。出願中案件については、社内の出願管理データとWebサイト・製品資料の表示を連動させ、係属状況の変化に応じて表示を更新する運用が重要です。

技術ライセンス契約やNDAにおける出願中技術の取り扱い

自社の技術を他社へライセンスアウトする際、あるいは共同開発に向けて契約を締結する際にも、対象技術が「Patent Pending」であることは重要な意味を持ちます。ここでは、知財実務において重要となるポイントを解説します。

まず、他社と技術協議を行う際の基本となるのが「NDA(秘密保持契約)」です。未出願の技術を開示する場合には、秘密保持契約によって情報の使用目的や取扱いを明確にしておくことが重要です。また、開示前に仮出願を行うことで、後続する出願について早い出願日の利益を確保できる場合があります。

ただし、仮出願を行って「Patent Pending」と表示しただけで、第三者による技術の利用を直ちに差し止められるわけではありません。仮出願そのものから発行済みの特許権が生じるわけではないため、出願とNDAはそれぞれ異なる役割を持つリスク管理手段として考える必要があります。

ライセンス契約においては、Exclusive License(独占的ライセンス)またはNon-exclusive License(非独占的ライセンス)の対象となる「Licensed Patent Rights」などの定義に、現在係属中の特許出願や、その継続出願・分割出願、将来発行される特許などを含める契約設計が考えられます。これにより、ライセンシーは将来特許が成立した際の権利関係をあらかじめ契約で定めることができます。

ただし、ライセンサー側としては、現在Patent Pendingである技術について、将来必ず特許として登録されるとの誤解を与えないことが重要です。契約書の表明保証や免責において、特許の成立や特定のクレーム範囲を保証しないことを明確にする方法も検討されます。

対価となる「ロイヤルティ」の設定においても、出願中と特許発行後で料率を変えるステップアップ方式などを採用することは選択肢の一つです。ただし、具体的な料率や支払条件は、出願の進捗、技術価値、市場性、独占性などに応じて契約ごとに設計する必要があります。

さらに、公開済みの特許出願をライセンス交渉に活用することも可能です。公開された出願クレームと相手方製品を比較した分析資料を作成し、将来の権利化可能性を踏まえて交渉材料とする方法があります。ただし、係属中のクレームは審査の過程で補正される可能性があり、まだ発行済み特許ではないため、現時点で特許侵害が成立しているかのような断定は避ける必要があります。

最後に、ライセンシーが製品を製造・販売する場合には、発行済み特許について適切なマーキングを行うことや、出願中案件について正確なPatent Pending表示を維持することを契約で定める方法もあります。ライセンサーが定期的に表示状況を確認できる仕組みを設けることで、出願の放棄や特許発行後も古い表示が残り続けるリスクを抑えることができます。

虚偽表示のペナルティリスクと法改正の歴史

Patent Pendingの表示はメリットがある反面、実態と異なる表示を、公衆を欺く目的で行った場合には法的リスクがあります。米国特許法第292条は、このような虚偽表示について、1つの違反につき500ドル以下の罰金を定めています。現在、この法定罰金を求める訴えを提起できるのは米国政府です。

この法律が米国知財実務において大きな注目を集めたのは、2009年の連邦巡回区控訴裁判所(CAFC)による「Forest Group, Inc. v. Bon Tool Co.」事件の判決です。それまで、裁判所では継続的なマーキング行為を一つの違反として扱う考え方もありました。しかし、CAFCはこの判決において、当時の35 U.S.C. §292について、虚偽表示された製品ごとに違反を算定する「per article」の解釈を採用しました。

この判決の下では、多数の製品に欺く目的で虚偽表示を行った場合、理論上は非常に大きな法定罰金につながる可能性がありました。ただし、CAFC自身も、製品1個につき必ず500ドルを科すという意味ではないことを明確にしており、500ドルは上限で、量産品については1個当たりごく少額の罰金とする裁量も認められるとしていました。

さらに、当時の法律には「Qui Tam(私人による告発)」規定があり、一般の私人が政府に代わって虚偽表示の訴訟を提起し、罰金の一部を受け取ることが可能でした。その結果、不適切な特許表示を探して訴訟を提起する、いわゆる「マーキング・トロール」が問題となりました。

この状況を受け、米国議会は2011年のAIA法によって米国特許法第292条を改正しました。改正後は、法定罰金を求める訴えを提起できるのは米国政府のみとなり、従来のQui Tam訴訟は廃止されました。私人が訴訟を提起できるのは、虚偽表示によって直接的な「競争上の損害(Competitive Injury)」を受けた場合であり、その場合には損害を補償するための賠償を求めることができます。また、かつて製品をカバーしていた特許が満了した後、その特許に関する表示が残っていること自体は§292違反とはされません。

AIA改正によって一般市民から無差別に法定罰金を求められるリスクは大幅に縮小しましたが、Patent Pendingの表示を自由に行ってよいわけではありません。企業としては、対象となる出願が実際に係属しているかを確認し、知財部門とマーケティング部門が連携して表示ステータスを管理し続けることが重要です。

出願中のステータスを活用した高度な知財収益化戦略

特許審査の継続中というステータスは、単にリスクを管理して待つだけの期間ではありません。製薬業界やハイテク産業などでは、この「Patent Pending」の期間を事業戦略や資金調達、ライセンス交渉に活用するケースがあります。

たとえば、「ローリング・プロビジョナル」と呼ばれることのある出願戦略があります。これは、基礎となる技術の仮出願を行った後、研究開発が進んで新しいデータや改良構造が判明するたびに、新たな仮出願を行っていく手法です。これにより、開発の進展に応じた発明を順次出願し、複数の出願が係属している状態を形成できます。

ただし、仮出願はそれ自体で排他的な特許権を与えるものではなく、それぞれの仮出願には原則12か月の係属期間があります。また、後に提出する本出願のクレームについて先の仮出願日の利益を得るためには、そのクレームの内容が当該仮出願に十分に記載されている必要があります。したがって、単に仮出願を繰り返せば優先日が維持されるわけではなく、出願期限と記載内容の管理が重要です。

また、Patent Pendingの技術は、M&Aや資金調達のデューデリジェンスにおいても評価対象となり得ます。権利化前であっても、どのような技術について出願しているのか、クレームがどこまで事業をカバーする可能性があるのか、審査がどの段階にあるのかなどは、知財ポートフォリオを評価する材料になります。

一方で、複数の出願が係属しているだけで高額なライセンスフィーや企業評価額が保証されるわけではありません。クレームの内容、先行技術、審査状況、競合製品との関係、対象市場の規模などを踏まえ、Patent Pendingの状態を事業価値へどのようにつなげられるかを説明することが重要です。

自社特許を収益につなげる次の一手

米国における「Patent Pending」の表示は、対象となる仮出願、本出願、米国を指定したPCT国際出願などが実際に係属している場合に利用できます。投資家へのアピールや競合への牽制に活用できる一方、特許の成立や独占権を保証する表示ではありません。

また、対象となる出願がもはや係属していないにもかかわらず、公衆を欺く目的でPatent Pending表示を続ければ、米国特許法第292条の虚偽表示が問題となる可能性があります。発行済み特許については§287のバーチャル・マーキングを利用し、出願中案件については出願管理とWebサイト・製品資料の表示を連動させるなど、ステータスを正確に管理することが安全な運用の鍵となります。

こうした緻密な知財管理や、出願中技術の価値評価、ライセンス交渉に向けた戦略構築は、高度な専門知識を要する業務です。せっかく投資を行って「Patent Pending」のステータスを得た技術も、適切なパートナーにアピールできなければ、十分に活用できない可能性があります。

弊社が運営する知財収益化プラットフォーム「PatentRevenue」では、権利化前の出願中技術であっても、そのビジネス価値を適正に評価し、ライセンスアウトや共同開発の機会を創出するサポートを行っています。自社の技術をより多くの企業に認知させ、新たな収益源を確保するための第一歩として、ぜひPatentRevenueへの無料登録をご活用ください。知財をコストからプロフィットセンターへ変革するための具体的な戦略を、私たちが共に構築いたします。

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(この記事はAIを用いて作成しています。)

参考文献リスト
  1. 35 U.S.C. §292 — False marking
    https://uscode.house.gov/view.xhtml?req=%28title%3A35+section%3A292+edition%3Aprelim%29
  2. 35 U.S.C. §287 — Limitation on damages and other remedies; marking and notice
    https://uscode.house.gov/quicksearch/get.plx?section=287&title=35
  3. 35 U.S.C. §154 — Contents and term of patent; provisional rights
    https://uscode.house.gov/view.xhtml?edition=prelim&num=0&req=granuleid%3AUSC-prelim-title35-section154
  4. 35 U.S.C. §363 — International application designating the United States: Effect
    https://uscode.house.gov/view.xhtml?edition=prelim&num=0&req=granuleid%3AUSC-prelim-title35-section363
  5. USPTO「Provisional Application for Patent」
    https://www.uspto.gov/patents/basics/apply/provisional-application
  6. USPTO「Applying for Patents」
    https://www.uspto.gov/patents/basics/apply
  7. USPTO「AIA Studies and Reports — Virtual Marking」
    https://www.uspto.gov/patents/laws/america-invents-act-aia/aia-studies-and-reports
  8. Leahy-Smith America Invents Act, Pub. L. 112-29
    https://www.govinfo.gov/app/details/PLAW-112publ29
  9. Forest Group, Inc. v. Bon Tool Co., 590 F.3d 1295 (Fed. Cir. 2009)
    https://www.cafc.uscourts.gov/opinions-orders/09-1044.pdf

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