米国商標の「使用証明」でつまずく会社が多い理由:SpecimenとUse in Commerceの実務対策

米国商標の使用証明で失敗する理由と対策を解説する図。SpecimenとUse in Commerceの基本、認められる使用証明の具体例、Section 1(a)・1(b)・44・66(a)の違い、審査上のリスクを紹介

株式会社IPリッチのライセンス担当です。

自社のブランドやプロダクトの海外展開を見据え、米国市場への商標出願を行ったものの、USPTO(米国特許商標庁)から「Specimen(使用証明)」の不備を指摘され、手続きがストップしてしまう企業は少なくありません。検索者の皆様からも、「米国商標を出願したがSpecimenが拒絶された」「Use in Commerce(商取引における使用)の意味や審査基準が全く分からない」といったご相談を受けます。

本記事では、米国商標における使用証明の根幹を解説し、ECサイトの画面や商品写真、サービスページなど、具体的にどの資料が客観的な証拠として認められやすいのかを、海外展開前の経営者や知財担当者にも明確に分かるよう実務上の観点から整理します。

特許庁で権利化された特許や商標などの知的財産は、単に他社の模倣を防ぐ「守りの盾」として機能するだけでなく、ライセンスアウトを通じたロイヤルティ収入の獲得など、直接的な「知財収益化」の源泉となります。特に、米国での確実な権利取得は、その後のライセンス契約やグローバル事業展開において強力な武器として機能します。

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目次

米国商標登録の成否を分ける使用証明の重要性と実務上の結論

米国商標制度において日本企業が苦労しやすいポイントは、米国特有の「Use in Commerce」の考え方を理解し、それに基づいた適切な「使用証明(Specimen)」を準備することです。

米国においては、商標を実際の商取引において使用していることが、使用に基づく出願や連邦登録の維持における重要な要件となります。

日本の商標法は、先に出願した者を優先する先願主義を採用しているため、将来使用する予定の商標であっても、原則として出願時に使用実績を証明することなく登録を受けられます。一方、米国では市場における商標の使用が重視されます。連邦商標登録には、登録商標の有効性や所有権についての法的推定、第三者への公告などの効果がありますが、その取得・維持には出願根拠に応じた使用の立証が必要になります。

USPTOは、提出された商標が単なる事業アイデアや将来の構想ではなく、現実の市場で消費者の目に触れる形で、商品またはサービスの出所を示す標識として機能しているかを審査します。そのため、ロゴをデザインしただけのデジタルデータや、実際の商業使用を示さないモックアップ、商品との関連や販売機能が確認できない宣伝用ウェブサイトのスクリーンショットを提出しても、適切な証拠とは認められない可能性があります。

米国市場への展開を成功させるためには、出願準備の段階から、どの商品やサービスに対して、どのような形態で商標を付し、どのように消費者に提供・販売するかという商流を設計し、審査基準に合致する証拠資料を確保しておくことが重要です。

日本と根本的に異なる米国商標制度の基本知識と法的な定義

米国商標法(ランハム法)第45条において、「Use in Commerce」は具体的に定義されています。同法によれば、商標の権利を単に確保するためだけに行われる名目的な使用ではなく、通常の取引過程における真正な使用でなければなりません。

この要件を満たすための基準は、商標が付される対象が商品であるか、役務(サービス)であるかによって異なります。

商品に関する商標の場合、商標が商品そのもの、容器、パッケージ、商品に付けられたタグやラベル、または商品に関連する販売時点の表示に付されており、かつその商品が商取引において実際に販売または輸送されていることが求められます。

一方、サービスに関する商標の場合は物理的な実体が存在しないため、サービスの販売、提供または広告において商標が表示され、そのサービスが商取引において実際に提供されていることが求められます。

複数の州にまたがるサービスや、米国と外国との取引は典型的な例ですが、Use in Commerceに該当するかどうかは、連邦議会が規制し得る商取引との関係を含め、実際の事業内容に基づいて判断されます。州内で行われる活動であることだけを理由に、一律に要件を満たさないと判断できるわけではありません。

ただし、社内向けの非公開文書や、現実の取引を伴わないプロトタイプ段階の表示だけでは、通常は十分な使用証明になりません。米国商標を取得するためには、商品やサービスが実際に市場へ提供され、その過程で商標が出所表示として使用されていることを示す必要があります。

出願ベースの選択による制度上の手続きと要件の違い

米国商標を出願する際、出願人は自社の事業状況に合わせて、どの法的根拠に基づいて出願するかを選択する必要があります。実務上、日本企業が利用する主な出願ベースは複数存在し、それぞれ使用証明を提出するタイミングや要件が異なります。

すでに米国市場で製品を販売している、あるいは米国向けのサービスを現に提供している場合は、実際の使用に基づく出願(Section 1(a))を行います。この出願ベースでは、出願時に、原則として各区分について商標が米国の商取引で使用されていることを示す使用証明を提出します。

これから米国市場に参入する予定である場合は、使用の意思に基づく出願(Section 1(b))を行います。これは、将来米国の商取引において商標を使用する真正な意思を宣誓することで、実際の使用開始前に出願日を確保できる制度です。

出願時点で使用証明の提出は不要ですが、審査を通過してUSPTOから許可通知(Notice of Allowance)が発行された後、原則として6か月以内に使用陳述書(Statement of Use)と使用証明を提出するか、提出期限の延長を申請しなければなりません。

延長申請は6か月ごとに最大5回行うことができ、Notice of Allowanceの発行日から最長3年以内に使用を開始してStatement of Useを提出する必要があります。2026年8月時点では、延長申請の手数料は1区分あたり125ドル、Statement of Useの提出手数料は1区分あたり150ドルです。USPTOの料金は改定される可能性があるため、実際の提出時には最新の料金表を確認する必要があります。最終期限までに適切な使用証明を提出できなければ、出願は放棄となります。

なお、日本での出願または登録を基礎とするSection 44や、マドリッド協定議定書を通じたSection 66(a)のルートでは、米国での登録前に使用証明を提出せずに登録を受けられる場合があります。

しかし、登録後は米国における使用状況を示す手続が必要です。Section 44に基づく登録では、原則として登録後5年目から6年目の間にSection 8の使用宣誓書を提出し、その後は10年ごとの更新手続を行います。Section 66(a)に基づく登録では、対応するSection 71の使用宣誓書を提出します。

したがって、どの出願ルートを選択しても、登録を長期的に維持するためには、米国における実際の使用とその証拠の管理が必要になります。

認められる使用証明の具体例と実務上の準備方法

具体的にどのような資料が使用証明として認められるのかについて、USPTOの審査便覧(TMEP)に基づいて整理します。

商品の証明では、商標が商品やパッケージに直接結びついていること、または販売時点で商品と直接関連付けて表示されていることが重視されます。代表的な証拠は、商品本体に商標が刻印または印刷されている写真や、商標が表示された製品パッケージの写真です。

衣類などの製品に縫い付けられたタグや、商品に実際に取り付けられたハングタグの写真も使用できます。ただし、単にロゴが印刷された紙片を商品に添えただけのような不自然な写真は、現実の商業使用を示していないと判断される可能性があります。

商品の種類に応じて、バーコード、サイズ、素材、成分、取扱方法など、通常の商取引で使用される情報が表示されていることや、タグが実際に商品へ取り付けられている状態は、証拠の真正性を判断する材料になります。ただし、これらの情報がすべての商品で一律に必要になるわけではありません。

なお、商品の性質上、商品自体や容器、タグなどに商標を付すことが現実的に困難な場合には、商品またはその販売に関連する文書が認められる可能性があります。ただし、通常の請求書や船荷証券が当然に認められるわけではなく、商品の性質や商標との関連性を個別に確認する必要があります。

現代のビジネスで多いのが、ECサイトの画面を提出するケースです。ウェブページを商品の使用証明として提出する場合、商標と対象商品が直接関連付けられ、注文または購入につながる販売時点の表示になっていることが必要です。

一般的には、出願した商標、商品の画像または具体的な説明、注文ボタンや購入方法などが、相互の関係を理解できる状態で表示されていることが重要です。価格表示は販売実態を示す有力な要素ですが、あらゆる商品について独立した必須要件とまではいえません。

一方、商品の機能を紹介するだけのページや、注文・購入方法が確認できないオンラインカタログは、単なる広告として不適切と判断される可能性があります。

ウェブページを提出する場合は、ページの完全なURLと、そのページへアクセスした日または印刷した日を示さなければなりません。これらはスクリーンショット内に表示する方法のほか、USPTOの提出フォーム内で必要な宣誓とともに記載する方法も認められています。

サービスの場合は、サービスの提供そのものや広告に関する資料が使用証明として認められます。サービス内容と商標が関連付けて表示された自社ウェブサイトの画面、パンフレット、店舗の看板、サービス提供画面、商標と具体的なサービス内容が記載された請求書などが候補になります。

ただし、単に社名やロゴだけが記載され、出願対象となるサービスとの関係が確認できない名刺やレターヘッドは、適切な証拠とは認められない可能性があります。商標が表示されているだけでなく、その表示を見た顧客が、どのサービスの出所を示す商標であるか理解できることが重要です。

審査の厳格化と事後的な登録取消を招く重大なリスク

USPTOは米国の商標登録簿の正確性を維持し、実態のない出願や登録を排除するため、使用証明の内容を確認しています。

画像編集ソフトを用いて無地の製品写真にロゴを合成した画像、製造前の3Dレンダリング、プリンター用の校正データなど、実際の市場で使用されていないモックアップは、原則として適切なSpecimenにはなりません。

不自然な画像や、実際の販売状況を確認できない資料が提出された場合、審査官から拒絶理由通知(Office Action)が出されるほか、販売ページ、取引資料、商品写真などの追加情報を求められることがあります。

また、単なる装飾的な使用とみなされるケースも拒絶の対象になります。Tシャツの胸元やマグカップの側面に大きくスローガンやロゴをプリントしただけの場合、消費者がそれを商品の出所を示す商標ではなく、デザイン上の装飾として認識すると判断される可能性があります。

衣類などについて確実な証拠を準備するためには、装飾的なプリントだけに依存せず、首元に縫い付けられたブランドタグ、商品に取り付けられたハングタグ、商標が表示されたパッケージなど、ブランドの出所表示として認識されやすい使用形態を検討する必要があります。

米国では商標近代化法(Trademark Modernization Act)に基づき、第三者が証拠を提出して、登録商標の全部または一部について抹消手続または再審査手続を請求できる制度が設けられています。

抹消手続は、対象となる商品またはサービスについて商標が一度も商取引で使用されていないことを理由とする手続です。再審査手続は、登録に必要な特定の基準日までに商標が使用されていなかったことを理由とする手続です。

そのため、不適切な合成画像や実態のないウェブサイトによって登録を受けた場合、登録後に第三者から手続を申し立てられ、対象となる商品・サービスが登録から削除される可能性があります。

また、審査中の出願について、第三者が登録拒絶に関連する証拠をUSPTOへ提出するLetter of Protestの制度もあります。使用証明は出願時の形式的な提出資料ではなく、登録後の権利維持にも影響する重要な証拠として管理する必要があります。

技術ライセンス契約に向けた知財マネジメントの重要性

審査基準を満たして確立した商標権や特許権は、単なるブランド防衛にとどまらず、技術ライセンスやフランチャイズ展開といったビジネスの基盤になります。

米国市場で自社ブランドを用いたライセンス契約を締結する場合、USPTOに登録され、適切に維持されている連邦商標登録を保有していることは、ライセンシーに対する交渉力と信頼性を高める要素になります。

特定の製品カテゴリーについて米国企業に独占的なライセンスを付与し、ロイヤルティを受領するビジネスモデルを構築するためには、商標や特許の権利関係が整理され、契約上の利用範囲が明確になっていることが前提です。

ライセンス後の運用にも米国特有の注意点があります。一定の要件を満たすライセンシーの使用は、商標権者のための使用として扱われ得ますが、ライセンサーは、商標を付した商品やサービスについて適切な品質管理を行う必要があります。

実質的な品質管理を行わず、ライセンシーに商標を自由に使用させる状態は「Naked Licensing」と評価され、商標の出所表示機能や商標権の有効性に重大な影響を及ぼす可能性があります。

したがって、海外企業とのライセンス契約では、商品・サービスの性質や取引形態に応じて、品質基準、ブランド表示ルール、事前承認、サンプル確認、販売・使用状況の報告、記録の確認などの方法を設計することが重要です。

すべての契約で同一の条項が必要になるわけではありませんが、契約書に品質管理の権限を記載するだけでなく、実際に管理を行い、その記録を残しておくことが求められます。また、交渉段階で非公開の技術情報や営業情報を開示する場合には、情報の内容と交渉状況に応じてNDA(秘密保持契約)の締結を検討する必要があります。

知財収益化によるグローバルビジネスの加速

米国商標登録における使用証明の要件は、日本企業がグローバル進出において直面しやすい実務上の障壁ですが、制度の趣旨を理解し、事業計画の初期段階から適切な証拠資料を準備することで対応できます。

商標を表示した製品タグの設計、購入機能を備えたECサイトの構築、提供サービスを明確に記載したウェブページやパンフレットの制作などを、事業展開と同期させて進めることが重要です。

不十分なモックアップや実体を伴わないダミーサイトによる出願は、Office Actionによる審査の長期化や追加費用を招くだけでなく、商標近代化法に基づく登録後の抹消・再審査手続の対象となるリスクがあります。

価値のある知的財産の保護を実現するためには、現実のビジネス展開スケジュールと知財戦略を一致させ、使用開始日、販売ページ、商品写真、取引記録などの証拠を継続的に保存することが重要です。

このようにして確立・維持された知財権は、海外展開を安全に支えるだけでなく、戦略的なライセンスアウトによって自社にロイヤルティをもたらす収益基盤になり得ます。

自社特許や商標を収益につなげる次の一手

自社の商標や技術特許といった知的財産を、維持費ばかりがかかるコストセンターとして眠らせるのではなく、事業価値へ転換していく視点は、グローバル経営において重要です。

株式会社IPリッチが運営する知財マネタイズプラットフォーム「PatentRevenue」では、知財のプロフェッショナルが企業の保有する商標や特許資産の活用可能性を検討します。

国内外でのライセンスパートナーの探索から、NDAの締結、条件交渉、ライセンス契約の締結、収益化に至るまでをサポートします。

自社の技術やブランドを収益につなげる次の一手として、まずは無料の会員登録をご利用いただき、知財マネタイズへの第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

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(この記事はAIを用いて作成しています。)

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