サービス・オブ・プロセスの遅延と国際協力:手続きの違いが訴訟コストを左右する

サービス・オブ・プロセスの遅延と国際協力を解説するグラレコ。訴状送達の目的、日本と米国の送達スピード比較、ハーグ送達条約、外国送達ルート、FRCP Rule 4、代替送達の活用を図解し、国際特許訴訟における手続き遅延と訴訟コストへの影響を示している。

株式会社IPリッチのライセンス担当です。本記事では、国際的な特許侵害訴訟において極めて重要な初期プロセスである「訴状の送達(サービス・オブ・プロセス)」について、日本と米国の法制度の違いや、それに伴う手続きの遅延がもたらす影響について詳細に解説いたします。日本では訴状の送達を裁判所が担当し、外国企業が被告となる場合には管轄官庁や在外公館を通じて送達を行うため、完了までに6ヶ月以上の長期間を要することも珍しくありません。一方、米国では原告自身が直接送達を行うことが一般的であり、初期手続きが比較的迅速に進むという特徴があります。国際的な特許侵害訴訟の現場においては、これらの送達手続きにかかる時間やコストを十分に考慮した上で、訴訟計画の立案やライセンス交渉のタイミングを決定する必要があります。本記事を通じて、実務担当者が直面する送達の課題とその戦略的な対策について深掘りしていきます。

特許権をはじめとする知的財産権は、単に権利として保有しているだけでは不十分であり、それをいかに事業に活用して利益を生み出すかという「知財の収益化」が、現代の企業戦略において最も重要なテーマとなっています。特許侵害訴訟やそれに伴うライセンス交渉は、この知財の収益化を実現するための強力な手段ですが、本記事で後述するように、国際的な送達手続きには多大な時間と莫大な法務コストがかかるリスクが潜んでいます。そのため、訴訟という多大なリソースを消費する強硬手段に発展する前の段階から、効率的に特許を流通させ、適切なパートナーとライセンス契約を結ぶことが強く推奨されます。特許権の売買やライセンスに関心がある方は、特許売買・ライセンスプラットフォーム「PatentRevenue」で特許権の売買又はライセンスの希望者に無料で登録することをお勧めいたします。早期にこのような適切なプラットフォームを活用することで、不要な訴訟コストを回避し、迅速かつ効果的な知財の収益化を目指すことが可能になります。

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目次

訴状送達における国家主権の壁と多国間条約による国際協力の枠組み

民事訴訟において、訴状や召喚状を被告に届ける「送達」という手続きは、単なる郵便物の配達とは根本的に異なる性質を持っています。送達とは、訴訟が正式に提起されたことを被告に対して公式に通知し、反論や防御の機会を保障するための法的手続きであり、国家の公権力の行使に他なりません。したがって、ある国の裁判所が、自国の領域を越えて他国の領域内にいる人物や企業に対して直接的に公権力を行使して文書を送達することは、当該国の国家主権を侵害する行為とみなされるため、国際法上の原則として許されていません 。

このように国境を越えた法的プロセスの執行において生じる国家主権の衝突を回避し、国際的な司法協力を円滑に進めるために設けられているのが、多国間条約に基づく「嘱託(しょくたく)」という相互協力の枠組みです。代表的な条約として、「民事訴訟手続に関する条約(民訴条約)」や「民事又は商事に関する裁判上及び裁判外の文書の外国における送達及び告知に関する条約(ハーグ送達条約)」が存在します 。これらの条約は、各国の主権を尊重しつつ、指定された公式なルートを通じて他国の行政機関や司法機関に送達の執行を依頼するための国際的なルールを定めています。

国際的な特許侵害訴訟において被告が外国企業である場合、原告はこれらの国際的な送達ルールを厳密に遵守しなければなりません。もし、相手国の主権を無視したり、条約で認められていない不適切な方法で送達を行ったりした場合、被告側から管轄権の欠如や手続きの瑕疵を理由として訴えの却下を求められるリスクが生じます。さらに深刻なケースでは、勝訴判決を得たとしても、その判決を相手国で承認・執行させることが不可能になることもあります。したがって、国際特許訴訟を提起するにあたっては、被告が所在する国がどの条約に加盟しているか、どのような送達方法を容認しているかを事前に正確に把握し、最適な協力ルートを選択することが実務上不可欠となります 。

日本の民事訴訟における裁判所を経由した外国送達手続きと期間の実態

日本の民事訴訟法においては、外国に所在する被告に対して送達を行う場合、原告が自ら送達を行うのではなく、裁判所が主体となって手続きを進める「職権送達」の原則が貫かれています。民事訴訟法第108条の規定に基づき、事件を担当する裁判長が、管轄官庁や現地の日本国大使、公使、または領事などに対して送達の実行を嘱託するという厳格な形式がとられます 。

この日本からの外国送達には、相手国との条約関係に応じていくつかのルートが存在しており、それぞれ完了までに要する所要期間や手続きの負担が大きく異なります。 第一のルートとして挙げられるのが「領事送達」です。これは、被告が所在する外国に駐在している日本の領事が、現地の被告に対して訴訟文書を郵送し、被告が任意にそれを受け取って受領書を返送することをもって送達が完了する制度です。この方法は日本の官公庁ネットワークを直接経由するため、現地国の行政機関の介入を最小限に抑えることができ、相手国の公用語への翻訳文の添付が必須ではないケースも存在します。手続きとしては比較的迅速であり、例えば米国への領事送達であれば約3ヶ月、フランスへの送達であれば約4ヶ月程度が完了の目安とされています 。

第二のルートが、ハーグ送達条約に基づく「中央当局送達」です。これは、条約加盟国がそれぞれ自国内に指定した中央当局(日本の場合は外務省)を通じて、相手国の中央当局へ送達を依頼するルートです。この方法を利用する場合、原則として送達する文書を相手国の公用語に翻訳することが求められます。また、両国の行政機関同士の煩雑なやり取りを挟むため、非常に多大な時間を要するのが実情です。実務上の目安として、米国への中央当局送達には約12ヶ月、フランスへは約6ヶ月程度かかるとされており、これが特許訴訟の初期段階における大きな遅延要因となっています 。

さらに、これらのあらゆる手段を尽くしてもなお送達が完了しない場合や、そもそも送達先の住所が不明な場合の救済措置として、「公示送達」という制度が用意されています。日本の民事訴訟法第110条においては、外国への送達が不可能である場合や、外国の管轄官庁へ嘱託を発してから6ヶ月が経過しても送達を証明する書面が日本側に返送されない場合には、公示送達への移行が認められています 。ただし、外国に対する公示送達の効力発生時期については、国内の通常の公示送達が掲示開始から2週間で効力を生じるのとは異なり、裁判所の掲示板に掲示を始めた日から「6週間」の経過をもって効力が生じるという特則が設けられています。この6週間の期間は法律上短縮することができないため、裁判の期日調整やスケジュール管理において十分に留意する必要があります 。

また、裁判所に外国に対する公示送達の申し立てを行うにあたっては、単に「被告が外国にいると思われる」という推測だけでは許可されません。原告は、被告の日本国内における最後の住所地において、実際に郵便受けの状態や電気・水道メーターの稼働状況を確認したり、近隣住民や物件の管理会社へ聞き込み調査を行ったりするなど、綿密な現地調査を実施する義務があります。こうした調査活動を通じて、被告が日本国内に確実に不在であることを示す客観的かつ詳細な報告書を作成し、裁判所に疎明資料として提出しなければなりません。実務では、この厳密な調査を正確に実施し、裁判所が求めるフォーマットに準拠した報告書を作成するために、元裁判所書記官が監修するような専門の調査機関が活用されることも多くあります 。

米国連邦民事訴訟規則(FRCP)が定める原告主体の送達手続きの迅速性

日本が裁判所主導の送達制度を採用しているのに対し、米国の法制度、特に連邦裁判所での特許訴訟に適用される連邦民事訴訟規則(Federal Rules of Civil Procedure: 略称FRCP)においては、全く異なるアプローチがとられています。米国では、裁判所ではなく原告自身が責任をもって訴状および召喚状(Summons)を被告に対して送達する「当事者送達」の原則が採用されています。特許侵害訴訟を含むすべての連邦民事訴訟は、このFRCP Rule 4の規定に厳格に従って進行することになります 。

FRCP Rule 4(m)は、原告に対して送達の期限を非常に厳しく設定しています。具体的には、原告は訴状を裁判所に提出した日から「90日以内」に、対象となる被告に対する送達を完了させなければなりません。もし原告が正当な理由(Good cause)を示すことなくこの90日という期限を徒過した場合、裁判所は職権で、あるいは被告側からの申し立てにより、当該被告に対する訴えを偏見なしに却下(Dismissal without prejudice)することが義務付けられています 。ただし、この厳格な90日ルールについては、後述する「外国に所在する被告に対する送達(Rule 4(f))」のケースなどには適用されないという例外措置が設けられており、国際訴訟における物理的な困難さに一定の配慮がなされています 。

この原告主導の送達制度をさらに効率化し、訴訟の立ち上がりを迅速にするための米国特有の制度として、Rule 4(d)に規定される「送達の放棄(Waiver of service)」があります。これは、原告が被告に対して、コストのかかる正式な送達手続きを省略することに自発的に同意するよう要請することができる仕組みです。被告がこの要請に応じ、送達放棄書(Waiver form)に署名して原告に返送した場合、被告は訴状に対する答弁(Answer)の提出期限に関して大幅な優遇措置を受けることができます。通常の正式な送達を受けた場合、被告は送達日から21日以内に答弁書を提出しなければなりませんが、送達の放棄に同意した場合には、その期限が60日へと延長されます。さらに被告が米国外に所在している場合には、最大で90日までの猶予が与えられます 。

この送達の放棄という制度は、双方にとって明確なメリットがあります。原告側にとっては、多額の費用と手間がかかる送達のプロセス(特に民間プロセスサーバー等の利用費用)を節約でき、手続き上のミスによる却下リスクを回避できます。一方の被告側にとっても、訴状の内容を精査し、特許訴訟という複雑な事案に対する防御戦略を練るための十分な準備期間を合法的に確保できるため、実務上極めて頻繁に利用されています 。

ハーグ送達条約の限界と米国訴訟における代替的送達手段の戦略的活用

米国国内での送達は前述のように迅速に進められますが、被告が外国企業である場合には状況が一変します。外国企業に対する送達については、FRCPのRule 4(f)および4(h)(2)が適用されます。Rule 4(f)(1)はハーグ送達条約などの国際的に合意された手段による送達を定めており、Rule 4(f)(2)は相手国の現地法が規定する手段などによる送達を許容しています 。しかし、国際的な特許訴訟の実務において近年特に注目を集め、原告側から積極的に活用されているのが、裁判所の裁量によって国際合意に違反しない「その他の代替手段」による送達を許可するRule 4(f)(3)の存在です 。

このRule 4(f)(3)という包括的規定(キャッチオール規定)が重用される背景には、ハーグ送達条約の中央当局ルートが抱える構造的な遅延問題があります。とりわけ、中国企業に対する送達の困難さは深刻です。中国の法務部等の中央当局を経由した正規の送達手続きは、完了までに2年以上かかることも珍しくなく、さらに送達が完了したことを証明する書類が米国側に返送されるまでに追加で数ヶ月を要するなど、事実上の訴訟手続きの停滞を引き起こしていました 。

こうした異常な遅延を是正するための具体的な救済事例として、「Victaulic Company v. Allied Rubber & Gasket Co., Inc.」事件が挙げられます。この事件で、原告は中国の被告に対するハーグ条約に基づく送達を試みましたが、中国当局側の著しい処理の遅れにより、送達期限の延長を5回も裁判所に申請せざるを得ず、事件は提訴から3年近くも停滞状態に陥りました。この事態に対し原告は、Rule 4(f)(3)に基づく代替的送達の許可を裁判所に申し立てました。裁判所は、中国がハーグ条約において郵便ルート(postal channels)による送達を拒否している事実は認めつつも、米国法曹界の解釈として「電子メールやウェブサイトを通じた電子的手段は郵便ルートには含まれない」と判断しました。その結果、被告企業のウェブサイト上に掲載されている連絡先電子メールアドレスへの送付と、アジア地域の有力経済紙への公告を組み合わせた代替手段による送達を合法的なものとして許可しました 。また、同様の事例である「Sulzer Mixpac AG v. Medenstar Industries Co.」事件においても、中国当局の遅延を理由に、電子メールおよびウェブサイト記載の住所宛の国際郵便による代替送達が承認されています 。

Rule 4(f)(3)の適用は、あくまで裁判所の広範な裁量に委ねられています。裁判所は適用を許可するにあたり、米国憲法上のデュープロセス(適正手続の保障)の観点から、原告が提案した代替送達の手段が、被告に対して訴訟の存在を確実に通知し、防御の機会を与えるために「合理的に計算された方法(reasonably calculated to give notice)」であるかどうかを厳格に審査します。とはいえ、外国当局の非効率性を理由に何年も訴訟がストップすることを防ぐため、米国の連邦裁判所はこの代替手段を柔軟に認める傾向を強めています 。

日本政府による郵便送達の拒否宣言が国際的な特許訴訟に与える影響

国際的な送達手続きにおいて、法曹関係者の間で長年激しい議論の的となっていたのが、ハーグ送達条約第10条(a)の解釈問題です。第10条(a)は、「文書の宛先となる国(名宛国)が拒否を宣言しない限り、外国にいる者に対して直接、郵便を用いて司法文書を送付(send)する自由を妨げない」という趣旨の規定です。この規定の中心にある「送付(send)」という文言の中に、法的な強制力を持つ「訴状の送達(service of process)」という概念までが含まれるのかどうかについて、米国の各地域の連邦裁判所間で判断が大きく分かれていました 。

米国のクラスアクションや特許侵害訴訟、あるいは製造物責任訴訟において、米国の原告側は時間とコストがかかる中央当局(日本の場合は外務省)を経由する正規ルートを避け、この第10条(a)を法的根拠として、日本の被告に対して直接国際郵便やフェデックス等で訴状を送りつけるという手法を頻繁に用いていました。日本の法制度下では、訴状を郵便を用いて送達する行為は裁判所の権限であり、民間の原告が直接郵送することは本来想定されていません。しかし、日本政府はこの第10条(a)に対して長らく明確な賛否の態度を示さず、公式な「拒否宣言」を行わないまま曖昧な状態を放置していました 。

この不透明な状況を一変させたのが、2017年5月に米国連邦最高裁判所が下した「Water Splash事件」の判決です。最高裁は、ハーグ送達条約第10条(a)における「送付」という言葉には、法的な「訴状の送達」も明確に含まれるとの統一的な判断を下しました。これにより、名宛国である日本政府が正式に拒否宣言をしていない以上、米国の原告が日本の被告企業に対して直接郵送で訴状を送達する行為が、米国法上は完全に有効な手続きとして認められる可能性が極めて高くなりました 。

この判決がもたらす重大な影響を考慮し、日本政府は長年の曖昧な状態に終止符を打つ決断を下しました。2018年12月21日、日本政府はハーグ送達条約第10条(a)に対する反対(拒否)の宣言を公式に行い、関係各国に通知しました。さらに同時に、外国の外交官や領事館による自国内での代替的な送達を認める第8条についても、同様に拒否の宣言を行いました 。

この日本政府による拒否宣言の波紋は特許訴訟の実務において極めて大きく、これ以降、米国等の原告が日本の企業に対して訴訟を提起する場合、国際郵便による直接送達は明確な条約違反となり、一切の法的効力を持たなくなりました。現在、日本に所在する被告に対して法的に有効な送達を行うための手段は、外務省を中央当局とする正式なハーグ条約ルートを経由するか、領事送達などの限定された公式ルートのみとなっています。これは、日本の企業にとっては、外国から突然訴状が送り付けられるような不意打ち的な訴訟を防ぐ「強力な防波堤」として機能する一方で、米国企業等の原告にとっては、日本の特許侵害者に対して訴訟を仕掛ける際の送達コストと所要時間が劇的に増加することを意味しており、戦略的な見直しを迫る結果となっています 。

送達手続きの遅延が特許訴訟コストとライセンス交渉に及ぼす波及効果

これまでに詳述してきたような、日米間の送達手続きの複雑さとそれに起因する物理的な遅延は、単なる法務部門の手続き上の問題にとどまりません。それは、企業の特許訴訟コストの膨張や、最終的な知財の収益化戦略の成否に多大かつ直接的な影響を及ぼす重要なビジネスファクターです。

まず、原告側の視点に立てば、送達手続きの完了までに6ヶ月から2年以上もの期間を要するという事実は、莫大な機会損失そのものを意味します。特許の不正使用による経済的損害は日々蓄積していく一方で、訴訟が実質的に開始されない待機期間中、原告は高額な弁護士費用、証拠収集のための調査費用、技術専門家のコンサルティング費用といった重い訴訟コストを先出しで負担し続けなければなりません。米国特許法286条の規定により、特許侵害に対する損害賠償請求は過去6年間に遡って認められています。また、連邦最高裁判所による近年の重要判決(SCA Hygiene事件やStar Athletica事件等の法理)により、この6年という法定期間内であれば、原告の提訴の遅れを理由とした「懈怠(ラッチェス)」の抗弁は原則として認められなくなりました。つまり、送達が遅れたからといって法的な損害賠償の請求権そのものが直ちに消滅するわけではありません 。しかし、長期にわたって早期の差し止め処分や和解によるロイヤリティ収入を得ることができない状態が続くことは、企業のキャッシュフローの観点から見れば、事業戦略上の重大な足かせとなります。

知財の収益化は、多くの場合、訴訟の進行と並行して行われるライセンス交渉の場において結実します。特許訴訟という法的措置は、相手方に侵害の事実とリスクを深刻に受け止めさせ、適正なライセンス料(ロイヤルティ)の支払いに応じさせるための最も強力なレバレッジ(てこ)として機能します。しかしながら、送達が完了せず、裁判所からの本格的なディスカバリー(証拠開示)手続きなどのプレッシャーがかからない期間においては、被告側も真剣な和解交渉やライセンス契約の締結に応じるインセンティブが働きにくくなります。むしろ、被告である外国企業から見れば、ハーグ条約の中央当局ルートに起因する遅延は、自社の防御戦略を練るための準備期間を合法的に稼いだり、原告の訴訟体力を消耗させて交渉を有利に進めたりするための「事実上の時間稼ぎの戦略」として機能する側面があります。日本政府による郵便送達の拒否宣言は、日本の被告企業に対してこの時間の猶予を確保する合法的な手段を提供しています 。

さらに、知財の収益化を機関の重要な財源としている大学等の研究機関にとっても、この問題は深刻です。例えば、カリフォルニア大学(UC Davis等)のような大規模な研究機関では、保有する特許権から生み出されるライセンス収益(Patent Revenue)を、大学本部、各キャンパス、そして発明者である研究者等の間で分配するための極めて複雑な予算モデルを構築しています 。この分配モデルにおいて重要なのは、得られた総収益から、特許の出願・維持管理費(Patent Prosecution/Maintenance Expenses)や、訴訟等の法務防衛費用(Legal Defense)が控除された後の「純収益(Net Income)」が分配の原資となるという点です 。国際的な送達手続きの長期化によって訴訟が長引き、法務費用が異常に膨れ上がった場合、その莫大なコストは特許収益から直接差し引かれます。最悪の場合、数年間にわたって収益が相殺され、発明者や研究現場への還元額が大幅に減少、あるいはゼロになってしまうリスクを孕んでいます 。長引く送達手続きは、このような運用コストを不必要に押し上げ、知財戦略全体の費用対効果を著しく低下させる要因となります。

国際的な特許訴訟に向けた実務的対応と戦略の構築

グローバル化が急速に進む現代のビジネス環境において、特許侵害訴訟は単一の国で完結することは少なく、複数の管轄国をまたぐ極めて複雑な様相を呈しています。本稿で詳述したように、日本と米国では送達手続きに対する基本的な法理とアプローチが全く異なります。

日本の企業が米国で特許訴訟を提起される被告の立場に立たされた場合、日本政府によるハーグ条約第10条(a)の郵便送達拒否宣言により、中央当局(外務省)を通じた公式な送達のみが合法とされているため、一定の猶予期間を確保できる可能性が高まっています。しかし、米国の原告側もこのような制度的遅延をただ座視しているわけではありません。前述のVictaulic事件などに代表されるように、FRCP Rule 4(f)(3)の特例規定を駆使して、被告の国内代理人への送達や、電子メール、ウェブサイトを通じた代替的送達を積極的に裁判所に申し立てる戦略を一般化させています。したがって、日本企業は単に「正規ルートの送達には時間がかかるから当面は安全である」と高を括るのではなく、代替送達が突然認められて答弁の期限が急迫するリスクを常に想定しておく必要があります。平時から米国の訴訟弁護士(Litigation Counsel)との連絡体制を構築し、有事に即応できる準備を整えておくことが不可欠です。

一方で、優れた技術を武器に知財の収益化を目指して外国企業を提訴する原告の立場からは、送達手続きの遅延リスクを事前に正確に見積もり、それを織り込んだ戦略を立案することが求められます。相手国がハーグ条約の中央当局ルートしか認めていない場合、訴状等の膨大な書類の翻訳作業や、行政手続きに要する数ヶ月から数年の期間を、初めから訴訟スケジュールに組み込んでおく必要があります。この不毛な遅延を回避するためには、相手方が米国内に代理人や関連事業所を有していないか、あるいはウェブサイト上で連絡先を明確に提示していないかなど、Rule 4(f)(3)に基づく代替送達の要件を満たすための証拠を、訴訟前の調査段階から綿密に収集しておくことが重要です。提訴と同時に代替送達の申し立てを行えるよう周到に準備を整えておくことが、早期決着を図る上で極めて有効な戦術となります。

結論として、サービス・オブ・プロセス(訴状の送達)という手続きは、単なる事務的で形式的なプロセスではありません。それは、数百万ドル単位の訴訟コストの増減や、企業間のライセンス交渉の主導権とタイミングを左右する、極めて戦略的かつダイナミックな要素です。国際的な司法協定の枠組み、各国の条約への加盟状況と宣言内容、そして日米の最新の判例動向を総合的に分析し、自社にとって最適な送達ルートとタイムラインを緻密に設計することが、真の「知財の収益化」を成功に導くための最も重要な鍵となるのです。

(この記事はAIを用いて作成しています。)

参考文献リスト
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