特許の収益化アイデア10選

株式会社IPリッチのライセンス担当です。
今回の記事では、特許をお持ちの経営者・個人事業主・起業家の方々に向けて、せっかく取得した特許を活用して収益を生み出すためのアイデアを10種類ご紹介します。特定の技術分野に限定せず、あらゆる業種で応用できる一般的な方法をまとめました。自社の発明を眠らせず、有効活用するヒントになれば幸いです。
特許技術の自社製品化による収益化
まず一つ目のアイデアは、自社の特許技術を自社製品やサービスとして商品化し、その市場を独占して利益を得る方法です。特許権は一定期間、同じ発明を他者が勝手に使うことを排除できる強力な権利です。そのため、自社だけがその技術を活かした商品を製造・販売でき、ヒットすれば大きな収益を独占できます。実際、知的財産権の活用法は大きく「競争優位の確立(参入障壁)」と「ライセンス許諾による収益源」の二つに分類できるとされており[1]、まずはこの「自社独占」で競争優位を築く戦略が定番です。ただし、自社で商品化する場合は製造設備や販売網の確保、マーケティングなどのコストやリスクも伴います。市場規模が大きいほど自社資源だけで需要を満たすのは難しくなるため、十分な生産・販売体制を整えることが重要です。また、せっかく良い特許技術を持っていても市場認知を高められなければ埋もれてしまう可能性もあります。独占供給で成功するには、製品自体の魅力に加え、広報・広告などの販促にも注力する必要があります。
特許ライセンス供与による収益化
二つ目のアイデアは、自分では事業化せずに他社に特許を使わせてライセンス料(ロイヤリティ)を得る方法です。これは特許収益化の王道ともいえる手段で、自社で製品化する資金や設備がなくても収入が得られるメリットがあります。特許のライセンス契約とは、特許権者が他社(ライセンシー)に対して特許技術の使用許可を与える契約です。権利を相手に譲渡するのではなく貸し出すイメージで、契約に基づきライセンシーから定期的に使用料を受け取ります。つまり、自ら開発・生産を行わずとも、特許を活用して不労所得的な収入を得ることが可能になります[2]。例えば世界知的所有権機関(WIPO)も、特許ライセンスは「技術を必要とする企業と発明者が互いに利益を得られるWin-Winの関係」を築ける仕組みだと解説しています[2]。特許を自社で眠らせず他社に活用してもらうことで、発明者側は継続的なロイヤリティ収入を得られ、他社側も一から技術開発するより迅速に革新的な製品を市場投入できる利点があります。
ライセンス収入の好例として、大学が持つ特許のケースを挙げてみましょう。京都大学の本庶佑特別教授らが発明した「がん免疫療法(免疫チェックポイント阻害剤)」の技術は、新薬オプジーボとして実用化され、大学は製薬企業との特許ライセンス契約により数十億円規模の収入を得たとされています[2]。このように、自社(発明者)では製品化が難しい技術でも、他社にライセンスすることで大きな収益を生み出すことが可能です。
もっと身近な例では、中小企業や個人発明家が自ら生産設備を持たずに、大手メーカーに技術提供してライセンス料を得るケースもあります。大企業は既存の生産ラインや販路を活かして市場展開できるため、外部の優れた特許技術に対して喜んで対価を支払います。こうしたライセンス戦略は、特に米国で一般的な特許ビジネスモデルとして知られています。日本でも近年はオープンイノベーションの潮流から、自社で活用しきれない特許を他社に提供して収益化を図る動きが広がりつつあります。
特許売却による収益化
三つ目のアイデアは、特許権そのものを売却してしまう方法です。特許は法律上「財産」ですので、売買の対象にもなります[1]。自社では使い道がない特許でも、必要としている企業に売却すれば一時金を得られます。ライセンスと異なり売却の場合は一度きりの収入ですが、まとまった資金が即座に手に入る点がメリットです。特許を売ることで将来のロイヤリティ収入を放棄する代わりに、その現在価値相当の金額を一括で受け取るイメージです。
特許売買は、自社で事業化するリソースがない個人発明家にとって有力な選択肢です。例えば、ある個人が画期的な技術アイデアの特許を取得したものの、自身では製品化できない場合に、その分野の大手企業に特許権を売却するといったケースがあります。その企業にとっては自社開発する時間を買うようなものなので、高値で売れる可能性もあります。また、特許の売却やライセンスによる収入は追加コストがほとんど発生しない純利益であり、企業価値の向上にも直結します[1]。このため、使っていない特許資産を現金化して新規事業の資金に充てたり、経営資源を集中させるため不要な特許を売却する企業もあります。
特許を売却する方法としては、直接取引のほかに専門の仲介業者やオークション、オンラインの特許マーケットプレイスを利用する手段があります。信頼できる機関を通じて適正価格を査定してもらい、買い手を探すことでスムーズな売買が可能です。
共同開発・技術提携による特許収益化
四つ目のアイデアは、自社単独ではなく他社と手を組んで特許技術を事業化する方法です。特許を起点として共同開発や技術提携を行い、成果や利益をパートナー企業とシェアする形です。このアプローチでは、自社は技術(特許)を提供し、相手は生産設備や販売チャネル、資金などを提供して、お互いの強みを活かして新製品やサービスを生み出します。例えば、ベンチャー企業が有望な特許技術を持っている場合に、大手企業と共同研究を行い、その成果を商品化して売上を分配するといったケースが考えられます。
共同開発により、自社だけではリーチできなかった市場に参入できたり、大規模プロジェクトを実現できるメリットがあります。特許権者にとっては、自社単独で事業化するよりもリスクと負担を抑えつつ収益化を狙える点が魅力です。一方で、契約面では知的財産権や利益配分の取り決めが重要になります。提携契約を結ぶ際には、自社の特許の扱いや、新たに生まれる知見の権利帰属などについて明確に合意しておく必要があります。
具体例としては、大学や研究機関が企業と共同で技術開発プロジェクトを立ち上げ、その成果を企業が製品化して売上の一部をライセンス料として大学に還元するようなケースがあります。これにより発明者側は研究に専念しつつ収益を得られ、企業側は有望な技術を取り込めるというwin-winの関係が築けます。
クロスライセンスによる特許収益化
五つ目のアイデアは、複数の特許権者がお互いの特許を相互に利用できるようにする「クロスライセンス」です。クロスライセンス契約では、双方が自社の特許を相手に実施許諾し合い、通常はライセンス料の授受を相殺します[3]。直接的な金銭収入が発生しない場合もありますが、他社の特許を無料または低コストで使えるようになるため、支出の削減や新製品開発の加速という形で間接的な収益貢献があります。
クロスライセンスは、大企業同士が多数の特許を抱える業界でよく見られる戦略です。一つの製品に複数社の特許技術が絡み、互いに権利を侵害し合ってしまうような状況では、争訟に発展するよりもクロスライセンスで手を打つ方が双方にメリットがあります。実際、特許紛争を避けるために和解の一環としてクロスライセンス契約が結ばれるケースも多く報告されています[3]。訴訟は年単位の時間と巨額の費用を要するため、クロスライセンスによってお互いの特許を好きに使えるよう合意すれば、その分開発や市場投入を迅速化できます。
また、クロスライセンスは競合他社の市場参入を抑制する目的で用いられることもあります。例えば国内ビール市場では、キリンHDとサントリーHDが「糖質ゼロビール」の製法特許についてクロスライセンス契約を締結し公表しました。この契約により、両社以外のメーカーは糖質ゼロビールを製造販売できなくなり、後発他社への参入障壁を高める効果を狙ったものと考えられています[3]。このようにクロスライセンスには独占的地位の強化という側面もありますが、一方で自社の特許を他社も使えるようにするため独占権を手放すデメリットも伴います。自社と相手の技術力や市場シェアを見極め、総合的に判断して活用すべき手法と言えるでしょう。
標準化・パテントプールによる特許収益化
六つ目のアイデアは、自分の特許を業界標準に組み込んだり、パテントプールに参加したりすることで収益を得る方法です。標準化とは、通信規格や映像フォーマットなど業界全体で統一される技術標準に自分の特許技術を採用してもらうことです。標準に必須の特許(標準必須特許)となれば、関連製品を作る多数の企業からライセンス料を得るチャンスが生まれます。実際、通信や動画圧縮の分野では、多数の企業が保有する特許を集約して共同でライセンスするパテントプールが設立されています。例えばMPEGやDVDの技術規格では、複数企業の特許群を一括管理するパテントプールが構築され、技術を利用する企業にワンストップでライセンスを提供しています[4]。
パテントプールに参加すると、自分一人で各社と交渉する手間を省き、プール運営主体がライセンス料の徴収・分配を代行してくれます[4]。これは、特許権者にとっては事務負担を減らしつつ確実に広範囲から収益を上げる仕組みと言えます。ただし、プールに参加するとライセンス料率が一定程度抑えられる傾向があり、個別交渉より単価が下がる可能性もあります。また、標準必須特許の場合、公正な条件(FRAND)でのライセンス提供義務が課されるため、特許権者が恣意的に高額の料率を設定することはできません。
それでも、自社の特許を事実上の業界標準にできれば、長期間にわたり安定したロイヤリティ収入を得られる可能性があります。実際、米国企業のクアルコムは通信規格の標準必須特許を多数抱え、ライセンス収入だけで年間数十億ドル規模の利益を計上した年もあります[1]。自社技術にそれだけの波及力がある場合、標準化戦略は非常に魅力的な収益化手段となるでしょう。
資金調達による特許収益化
七つ目のアイデアは、特許をテコにして資金調達を行う方法です。具体的には、特許を担保として金融機関から融資を受けたり、特許評価を武器に投資家から出資を募ったりする形です。知的財産を活用した融資(IP担保融資)は近年注目を集めており、日本や欧州でもスタートアップ向け融資で知財が一定の役割を果たすことが期待されています[5]。米国などでも知財担保金融は将来有望視されていると言われています[5]。
特許を担保にお金を借りる場合、金融機関はその特許の市場価値や事業への貢献度を評価します。事業計画がしっかりしており、特許も有望であれば、動産や不動産が乏しくても融資を受けられる可能性があります。ただ現状では、特許だけで貸付額を賄うのは難しいケースが多く、土地や設備と合わせて担保評価されることが一般的です。また、万一返済不能となった際には特許権を売却して現金化し回収に充てる必要があるため、市場性の高い特許でなければ金融側も慎重になります。
一方、投資の場面では特許を持つことでベンチャー企業の企業価値が大きく跳ね上がることがあります。強力な特許はその企業の将来性を裏付けるものとして、資金調達やM&Aで高い評価額につながるケースがあります[1]。実際、優れた特許ポートフォリオを持つ企業は資金調達や上場時に評価額が上乗せされるケースがあり、特許資産と企業パフォーマンスには一定の相関関係が認められるという分析もあります[1]。将来的にエグジット(会社売却や株式上場)を目指すなら、独自の特許技術を確保しておくことは有効な戦略となるでしょう。
このほか、公的支援として特許を活用した補助金・助成金制度を利用する道もあります。自治体や国の施策で、特許を取得している中小企業に対し新製品開発費を補助してくれるケースや、特許の維持管理費用を支援してくれる制度も存在します。自社の状況に応じて、こうした資金確保策も検討すると良いでしょう。
特許権行使(訴訟等)による収益化
八つ目のアイデアは、特許権を積極的に行使して収益を得る方法です。つまり、自分の特許を他人が無断使用している場合に、ライセンス料の支払いを要求したり、訴訟を提起して損害賠償や和解金を得たりすることです。特許権は独占権であると同時に、侵害に対して差止めや損害賠償を請求できる権利でもあります。他社が自社特許を侵害していると判断したら、まずは警告して使用停止やライセンス契約締結を求め、それに応じなければ裁判で争うことになります。
この権利行使による収益化は、いわば「防御から攻撃へ」転じる戦略です。自社では使っていない特許であっても、他社がその技術を使って利益を上げているなら、その一部を請求できる可能性があります。実際、世の中には自らは製造販売せず特許権の行使だけで収益を得る専門業者も存在します。いわゆる「パテントトロール(特許トロール)」と呼ばれる団体は、使われていない特許を安価に買い集めておき、対象技術を実施している企業に対して和解金やライセンス料を要求するビジネスモデルをとっています[6]。企業側も高額な訴訟コストを避けるため、訴えられる前に一定の金額を支払って解決してしまうことが少なくありません[6]。
もっとも、特許訴訟には時間も費用もかかるため、正当な権利行使とはいえハイリスクな面もあります。また、過度に権利を振りかざすと取引先との関係悪化や企業イメージ低下を招く恐れもあります。そのため、自社が被る損害が大きい場合や相手が明らかに故意に侵害している場合など、慎重に状況を見極めて行うことが重要です。しかし正当な対価を得るという意味では、泣き寝入りせず権利主張することも特許保有者の大切な選択肢です。他社による特許侵害に気付いた際は、専門の弁理士や弁護士に相談し、適切な対応を検討しましょう。
特許マッチングによる収益化
九つ目のアイデアは、特許マッチングプラットフォームを活用する方法です。特許マッチングとは、特許を持つ側(権利者)と技術を必要とする側(企業など)を結びつけるサービスです。近年、国内には膨大な未活用特許が存在し、その数は約160万件に及ぶと言われます。そのうち半数近くは大企業に保有されたまま利用されていない「休眠特許」だとも指摘されています[7]。こうした眠れる特許と活用ニーズをマッチングすることで、新たなビジネス創出につなげようという取り組みが活発化しています。
具体的には、特許マッチングの専門サイトやデータベースに自分の特許情報を登録し、興味を持った企業からアプローチを受ける仕組みです。特許の内容や想定用途、希望する提携形態(ライセンス提供・売却可否など)を公開しておくと、それを見た企業から問い合わせや提案が届きます。自分では思いもよらなかった業界から技術ニーズが見つかることもあり、特許の新たな活路が開けるでしょう。マッチングを通じてライセンス契約や特許譲渡が成立すれば、もちろん収益が発生します。
マッチングプラットフォームを利用するメリットは、広く相手を募れる点と、交渉プロセスを仲介者がサポートしてくれる点です。自社だけで売り込み先を探すのは手間と時間がかかりますが、プラットフォーム上には多数の企業が検索に訪れるため効率的です。また、契約条件の調整や知財専門のアドバイスを提供してくれるサービスもあり、初めて特許取引を行う場合でも安心して進められます。特許をお持ちで「宝の持ち腐れ」になっている方は、こうした場を活用してみる価値があるでしょう。
M&Aによる特許収益化
最後、十つ目のアイデアは、特許を梃子にして自社の企業価値を高め、M&Aによって成果を得る方法です。特許は無形資産として企業価値評価の重要な要素となりえます。実際、米国株式市場では企業価値の約90%が特許やブランドなどの無形資産だとの報告もあり、欧州でも約75%が無形資産とされています。一方で日本の主要企業では無形資産割合が32%程度という分析があり、日本企業は特許など知財を十分活用しきれていないとも指摘されています[1]。裏を返せば、特許を適切に評価・活用できれば企業価値を大きく押し上げる余地があるということです。
強い特許を持っていることは、競合他社にはない独自技術を持つことを意味します。これにより将来の安定収益が見込める企業として買収側から高く評価される可能性があります。特許は攻めと守りの両面で企業価値に貢献すると言われます。守りの面では特許による参入障壁で自社の利益を守り(上述の独占戦略)、攻めの面では特許ライセンス収入という新たな収益源を生み出せます[1]。例えば、米Qualcomm社は自社製品だけでなく特許ライセンスによって多額の利益を上げており、ある年度には約78億ドル(約1兆円)のライセンス収益を計上したこともあります[1]。このように特許が生み出す収益力は企業の将来キャッシュフローを増大させ、買収価値を直接高めます。
また、スタートアップ企業においても、特許を有していることで投資家や買収候補からの評価が上がることがあります。実際、優れた特許ポートフォリオを持つ企業は資金調達や上場時に評価額が上乗せされるケースがあり、特許資産と企業パフォーマンスには一定の相関関係が認められるという分析もあります[1]。将来的にエグジット(会社売却や株式上場)を目指すなら、独自の特許技術を確保しておくことは有効な戦略となるでしょう。
以上、特許を活用した収益化アイデア10選をご紹介しました。自社での独占的な事業化から他社へのライセンス供与、さらには資金調達や企業売却に至るまで、特許には様々な形でビジネス価値を生み出すポテンシャルがあります。ぜひご自身の状況に合った方法を検討し、眠っている特許を宝に変えてみてください。
なお、特許の収益化手段を模索する際には、専門家の助言を得ながら適切に進めることをお勧めします。契約条件の検討や市場価値の評価など、知財ビジネスには独特のポイントがありますので、信頼できる窓口を活用しましょう。
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(この記事はAIを用いて作成しています。)
参考文献
- 特許で企業価値アップ?M&Aで注目される知財の力 (PatentRevenue, 2025年) – https://patent-revenue.iprich.jp/一般向け/1384/
- 特許ライセンスで稼ぐ!初心者向けガイドと成功事例 (PatentRevenue, 2025年) – https://patent-revenue.iprich.jp/専門家向け/917/
- クロスライセンスとは?メリットデメリット、事例を解説 (知財タイムズ, 2022年) – https://tokkyo-lab.com/co/crosslicence
- 特許権プールって何?どう活用するの? (知財辞苑, 2020年) – https://tizai-jien.co.jp/2020/10/06/post_1198/
- スタートアップの資金調達に知的財産権の活用を(前編)デット・ファイナンスに向けて果たしうる役割とは (ジェトロ, 2021年) – https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2021/9bc84b6a37231e40.html
- コラム51 パテントトロールの対策方法 (吉川国際特許事務所, 2022年) – https://yoshikawa-pat.com/news.php?id=123
- 特許ライセンスマッチングとは?発明を必要な企業に繋げる仕組み (PatentRevenue, 2025年) – https://patent-revenue.iprich.jp/一般向け/1334/

